第3話 「恐怖?機動 天野唯」(後編)
重い溜め息をつきながら横島たちを見つめる元幽霊の少女。
確かに彼女にしてみれば敵味方とも言える今の立場は複雑であろう。
横島に対する自分の恋心は自覚している。
実際に告白したこともあるのだ。もっとも例によってあっさり流され、その後の食人鬼との騒動でうやむやになってしまったが。
彼女に自覚は無いがそれが心に小さな棘となって刺さっていた。
その特殊な経歴ゆえにどこか古風な彼女にとって、あれ以上の告白をし、それをまた流されたら…その思いゆえに二の足を踏み続けていた。
そして少年は運命の出会いと別れを経験し、その慟哭を見てしまった故に少女の自縛はますます深まる。
少年に思いを寄せる女性が多いことは気がついていた。
同居人の人狼の元気な少女のあけすけなアプローチには、美女と見れば飛び掛るはずの少年が奇妙な自制心を発揮したためか師弟という関係から進展せず、それゆえに安堵の思いを抱きながら微笑ましく見ていることが出来た。
もう一人のキツネの少女はそのクールな外見もあいまってそれほど危機感は抱かなかった。
…最大のライバルになるかと思われた彼女の雇用主は、恋愛以前に自分の中に生じている子供っぽい葛藤を処理しきれずに居るように見える。
そんなおキヌが心の中で密かにライバルと思っていたのは少年の隣に住む少女だったのだ。
真似事とは言え彼と結婚し、隣に住み、いつでも会えるポジションにいる小鳩。
明け透けで裏表の無い彼の真価を知る数少ない人物。
その控えめな性格ゆえに自分からアプローチすることは考えられなかったが、もし彼女が積極的になれば間違いなく最大のライバルになりえただろう。
だが…幸いにも少年は学校より事務所にいる時間が長く、食事も事務所で済ますことが多かった。
ゆえに小鳩との接点は少なかったのだ…今までは…。
それが天野唯と言う少女の出現によって変わった…。
彼女が眠りにつく経緯は令子から聞いた。
その時、横島と彼女ら…唯と今は亡き蛍の少女との間にどんな会話があったかおキヌは知らない。
だが…あの一件以来、横島は確かに変わっていった。
それにつられるかのように彼の周りもどんどん変化していく。
最初に変わったのはタマモである。
彼が来ている時は彼女は饒舌になる。
彼が来ないときは、「この夜更かし寝ぼすけキツネめ」と笑いながら横島に言われたこともある彼女が早寝する。
それが早朝の散歩のためだったとおキヌが気がつくのはすでにタマモの散歩が習慣化してきていた後だった。
さらに目覚めた唯が横島の隣に住み、愛子が加わり、少年の周りに新たな絆が出来ていく。
そして決定的に彼女を落ち込ませたあの夜。
仕事が早く終わって、横島に心づくしを振舞おうとしたおキヌ。
「横島さん。今日の晩御飯何か食べたいものありますか?」
愛用のエプロンを纏いつつ聞いたおキヌに予想もしてない答えが返ってきた。
「あ~。ごめん…この時間なら愛子たちが飯作ってくれているから…」
「「え…」」
その台詞に硬直するおキヌと令子。
横島は心底申し訳ないといった顔で軽く頭を下げる。
見ればシロもタマモも特に驚いた様子は無い。知っていたということだろう。
自分の声がかすかに震えているのを自覚する。
「あ…あの…横島さん…ご飯とかも一緒に食べているんですか?」
「うん…そのほうが節約になるし…」
「ちょっと…それって私に対するあてつけかしら…」
額に井桁を浮かべてユラリと立ち上がる令子に、シロタマは狐と狼なのに脱兎のごとき素早さで部屋から逃げ出す。
「い、嫌だなぁ…そんなことないっすよ!時給が安いとかこんなんでやってけるかい!なんて思ってないっすから…」
「ふーん…そんなこと思ってたんだ…」
「ああっ!俺の馬鹿っ!!いやぁぁぁ!神通棍は止めてぇぇ!!」
「やかましい!」
令子の折檻にたちまちボロ雑巾が出来上がる。
もっとも令子の怒りとて後付けの理由であるのは明白だ。
なぜなら、横島が口を滑らすより先に彼女は不機嫌さをかもし出していたのだから。
折檻される横島を見つめるおキヌの顔にいつもの苦笑はない。
かわりに彼女の顔を彩るのは落胆である。
その夜、おキヌはベッドでちょっとだけ泣いた。
何が…という訳ではない。
ただ…どんどん横島が自分を置いていくような気がして…だから…。
だが、おキヌとてわかっている。
横島の肝心な部分は変わってない。
だから…彼がバイトを続ける限り、おキヌと横島の絆も失われないはずだった。
この時ばかりはおキヌは令子に感謝したくなった。
時給が安ければ横島はおキヌたちとともに居る時間が長くなる…そのはずだった。
しかし、その彼女の複雑な希望も鬼の形相で乱入してきた美智恵によって打ち砕かれることとなる。
横島の時給が安いことは知っていたが、まさかそれを脱税に利用しているとは流石の彼女も思い至らなかったのだ。
もっとも令子とて心の奥底ではおキヌと同じ理由で彼の賃金を設定していたのだろう、それを申告に反映したのは令子らしい合理的思考の産物だとは思う。
しかし…結果として令子は横島の時給アップを確約させられ、尚且つ美智恵からシミュレーションルームでの百鬼抜きを厳命され、それが出来ぬうちは仕事を請けることまかりならぬと言い渡されてしまった。
自分と横島の接点がどんどん削られていく…思わず誰かを恨みたくなるおキヌ。
そんなモヤモヤした思いを抱えて迎えた対抗戦。
窓の向こうでワキャワキャとはしゃぐ横島たち一行に自分の知らない少女とノーマークだった魔女までも見つけて、心の小波を抑えきれないおキヌだった。
「氷室さん…どうかなさったの?」
親友の一人が話しかけてくる。
何でもないと答えようとしたとき、第一試合の出場者を呼ぶアナウンスが聞こえてきた。
「何かあるんでしたらこの試合が終わった後の祝勝会でお聞きしますわ。」
僧兵服と錫 杖といういつもの戦闘スタイルで出て行く弓をおキヌは笑顔で見送った。
校庭に作られた結界は以前に横島が見たものよりかなり大規模なものだった。
審判役の鬼道教諭が結界の中央に進み出ると、試合の開始を今か今かと待ち望んでいた両校の生徒達から歓声が沸き起こる。
やがて鬼道のコールとともに校舎から現れる弓かおり。
盛り上がる六女側応援団。
その雰囲気に押されたか、元々闘争的な性格ではない唯が自信なさげにこちらを見てくる。
「まずいな…飲まれている…」
加藤の呟きにコクリと頷くと魔鈴はここがコーチの見せどころとばかりに唯と…どういう訳かアリエスまで呼び寄せた。
「へう?何ですかコーチ?」
首を傾げる唯とアリエスを並べて魔鈴は激を飛ばす。
「よろしいですか?唯さんアリエスさん。いつも通りでいいんですよ。」
「う?」、「はい?」
「あなたたちは…一人一人は単なるボケキャラですが二人合わさればマヌケになります。マヌケとなったあなたたちは無敵です!!」
「「「「なんやそりゃぁぁぁ!!」」」」
ずっこけまくる横島たちとは対照的に生気が漲るボケキャラコンビ。
「わかりましたわ!」、「へうっ!了解であります!!」
(((良いのか…本当にマヌケで良いんかっ!!)))
コケながらも心の中で突っ込んじゃう除霊部員たち。すでに運命の歯車は音を立てて回り始めていた。
「よ~し!行っくぞ~!!」
どんな精神回路を経てなのかは知らないが気合が入りまくる唯。
バシッと学校指定のジャージを脱ぐと、その下から現れるはいつぞやの体操着。
ただし胸の名札は「2ねん あまのゆい」に変わっている。
「学年下がっとる!!」
「でも二年生には違いないですケン…」
頭を抱える横島たちを不思議そうな目で見ながら弓が中央に進み出る。
唯も弓の前に立ち鬼道からルールに関して注意を受け、やがて両雄はそれぞれ自陣の方に戻ってきた。
やる気満々、闘志を漲らせ首をコキコキと鳴らす唯にアリエスが背後から声援を送る。
「唯様、唯様!」
「う?なんですか?アリエスちゃん」
「対戦相手をごらんなさい…なかなか良い乳をしてらっしゃると思いませんか?」
「へあ!確かに!!」
「あの人はきっとこう思っているに違いありませんわ…「こんなおっぱいの小さい女に負けるわけなんかない」…って」
「何ですとっ!!」
「このままで宜しいのですか?」
「うぬれ~。成敗してあげますぅ…」
唯の体を包む闘気がますます燃え盛る様を満足げに見守るアリエスとぽかんと顎を落とす他の部員たち。
何か気づいたか「はっ!」と声をあげる魔鈴に横島は疑問の視線を向ける。
「魔鈴さん。何か?」
「あの…横島さん。そういえば唯さんって…無茶苦茶暗示にかかりやすいんじゃなかったかしら…。」
「言われて見れば…つーことは今のも」
「はい…とことん効いてますねぇ…」
相手陣営でそんなマヌケな会話が成されていると知る由もない弓は短く瞑想しながら開始のときを待つ。
つい最近出来たという除霊部なぞに自分が負けるはずはない…それが彼女の誇り。
鬼道が結界から出て高まる場内の緊張…そしてついに開始の合図がなされた!
「行きますわ!」
錫杖を突き出しながら突進しようとした弓は黒い闘気をまとう唯に一瞬戸惑って立ち止まる。
ユラリ…伏せた顔をあげた唯の口から漏れ出る低い声。
「くくく…虐げられた貧乳の怒りと悲しみ…今、ここに晴らさんですぅ!!」
「はあ?」
何をこの人言っているの?と常識の枠内で考えちゃった弓さん。立ち止まる彼女に暗い視線を投げかけつつ唯が叫ぶ!
「アイッチー!唯ちゃんパーツ・シュートですっ!!」
「アイッチー?」
突然聞きなれない言葉にとまどう除霊部員の中から顔を真っ赤に染めた愛子が進み出ると、半べそかきながらも「了解…」と力ない返事とともに自分の本体を高々と持ち上げやけくそ気味に叫んだ。
「ぐすっ…唯ちゃんパーツ・シュート!!!」
そんな愛子の本体から次々に射出される家電製品たち。
あまりの理不尽な展開に呆気に取られる弓の前で唯がその霊力を開放しつつ叫ぶ。
「ビルド・アァァァップ!!」
その声に応えるかのごとく家電製品はガッキョンガッキョンと人型に組みあがっていった。
すべてのパーツが組みあがり、昼だと言うのに輝く太陽背に受けて鉄の巨人は叫び声をあげる。
「ま゛っ!」
「進め!唯ちゃんとロボ!!」
「なんじゃそりゃぁぁぁぁ!!!」
会場に居る皆さん総突込み。無理も無い…どうみても霊能とは思えないし…でも出来ちゃったものは仕方ない。
一番不運なのは言うまでもなく闘場の中央で固まっている弓である。
そんな弓におかまいなく唯は左手に装着した腕時計に指示を出した。
「ロボ!メガトンパンチですっ!」
「ま゛っ!」
風を切って襲い掛かる豪腕をすんでで回避する弓。
確かに彼女も並みではない。
コロコロと転がって唯ちゃんロボから距離をとると当然の抗議。
「そ…それは何ですのっ!」
「唯ちゃんとロボですっ!」
「は、反則じゃございませんこと!」
「いいえ。それは唯ちゃんの霊力で動くロボ…言ってみればゴーレムよ。」
弓の抗議に別なところから答えが返る。
横島たちも振り返ってみればそこにすっくと立つのは科学部部長、唯ちゃんロボの設計者赤城であった。
「それともゴーレム使いとは戦えないかしら?」
なんか無理矢理な赤城の言葉に弓も沈黙する。
「あの…赤城さん…あれって本当に…」
「ええ。唯ちゃんの霊力で動いているのには間違いないわ。」
なんかもー諦めちゃったようなピートの台詞を一蹴し、恍惚の表情を浮かべる赤城さん。
「ああ…科学者ならば誰もが目指す夢…汎用人型決戦兵器…それが今私の目の前に…」
「汎用なんすか…?」
「ええ。パーツの組み合わせによって形態が変わる汎用型。名づけて『レゴ理論』!」
「おほほほほ」といっちゃったような笑い声を上げる赤城さんに怯えた目を向けている場外とは裏腹に闘場では結構緊迫した戦いが続いている。
唯ちゃんロボのパンチをかいくぐりながら弓は自身の奥の手、「水晶観音」を発動させ一気に間合いを詰めると唯ちゃんロボに錫杖の一撃を与える。
だが元は家電製品の分際で唯の霊力の影響なのか、むやみに丈夫なそのボディに跳ね返され再び距離をとって対峙する。
「くっ…ならば…雪之丞直伝の霊波砲で!」
「させません!唯ちゃんとロボ。ミサイルっ!!」
「ま゛っ!」
返事とともに唯ちゃんロボのあちこち…元は電子レンジとか冷蔵庫とか洗濯機の扉がパカパカ開くと中から水飛沫とともに発射されるミサイル…もとい空き缶たち。
それは空き缶であった過去を忘れ、新たな使命感を抱きながら進路を一斉に変えると弓に襲い掛かった。
「誘導弾?!!」
咄嗟に回避しようとするが何分にも数が多すぎて数発被弾する弓。
空き缶自体に何の威力もないがそれに込められた唯の霊力はわずかばかりのダメージを彼女に与える。
「なんで空き缶が追尾をするんやっ?!!」
「それがですね…唯ちゃんて小さいものなら同時に何個もコントロールできるんですよ。」
「凄いんだか凄くないんだか…」
ノーパソ見ながら解説する摩耶に力なく答える横島。
空き缶にさしたる破壊力が無いことを確認した弓は再び霊波砲を放とうとするが…。
ポペン…「あ゛うっ!」
足を止めたところに死角から飛んできた空き缶を顔面に受けて仰け反る。
どうやらスチール缶だったらしい…弓さんほんのり涙目…。
だが唯ちゃんロボも全弾撃ち尽くしたのか、発射装置のふたを閉じると再び弓に向かって殴りかかってきた。
「うーむ…真面目すぎるのが弓さんの欠点だなぁ…」
「どういう意味ですか?横島さん」
「俺ならロボの相手をせんで直接唯ちゃん狙うけどな…」
「固定観念ですね…。目の前の敵を倒さなきゃいけないと思い込んでいる。」
実際に弓とてゴーレム相手なら術者を倒すのがセオリーだとは解っている。
だが、目の前のロボの迫力とかもし出されるマヌケな気配に冷静さを失ってしまっているのだ。
霊能者としてのプライドが「家電製品ごときに負けられるものですか!」との感情を引き出してしまっているから最善手に思い至らないという悪循環。
弓の高いプライドを巧みについた罠と言えよう…意識してやっているならだけど…それは絶対にない。単にマヌケ空間に馴染んだものとそうでない者の差である。
弓は唯ちゃんとロボのパンチをかいくぐって攻撃するも、無駄に頑丈な唯の影響かロボにさしたるダメージはない。
「くっ!次こそは!!」
何度目かの攻撃を跳ね返され、ますます猛る弓に六女側から必死の声援が届いた。
「何やってんだ弓!操っている奴を狙え!!」
「一文字さん!」
振り向かなくてもそれが誰かわかる。親友の声に弓は冷静さを取り戻し、もう一度対戦相手を見直せば、確かにロボの背後で腕時計に指示を出している少女は無防備に見えた。
「礼は言いませんわよ!」
言葉とともに唯に向かって放たれた霊波砲はかろうじて唯ちゃんとロボの手で防がれる。
ならば当たるまでっ!と再び霊波を集中しはじめる弓の耳に赤城の高笑いが届いた。
「おーほっほっほっ。操縦者を狙われるのは想定内。その対策を私が考えてないとでも?!」
「何ですって!!」
「摩耶ちゃん準備は?「出来てます!」、そう…唯ちゃん行きなさい!!」
「へあ!了解ですっ!」
「な、何をなさる気?」
「オープン・ゲット!!」
唯の掛け声とともに唯ちゃんとロボの上半身を構成していた家電品が分離する。
「フェェェェド・イィィィン」
勇ましい言葉とともにロボの背中に開いた穴めがけてヨジヨジとよじ登っていく唯。
その姿がロボの体内に納まると再び家電品が集まって人型を形作り始め、ピカッと閃光を発する。
閃光のおさまった後に立つのは先ほどと比べて刺々しくフォルムが変わり腕組みして立つ人型ロボ。
その腕をゆっくりと開くと胸の中央にニョッキリと突き出した唯の頭があった。
「唯ちゃんとロボ、遠距離戦形態!唯バスター!!」
「あ…あ…あ…」
腰を抜かす寸前の弓…あんぐりと口を開けたまま見守る六女側観客席。
対照的に順応性が異様に高い横島の学校側は大声援!!
「唯ちゃんビイィィィィィムゥゥ!!」
唯バスターの頭部から放たれる光線が弓を襲う。
「キャッ!」
直撃を受けた弓の体を衝撃が貫いた。
「なんすか!アレはっ!!」
「テレビの電子銃を改造した唯ちゃんビームよ。」
「危ないんじゃないですか?」
「ビームの形態をとっているけどあれは唯ちゃんの霊波よ。彼女、霊波砲出せないでしょ。でもあれは「唯バスターのビーム」だと思い込んでいるから出せるのよねぇ…。」
「な、なるほど…」
「唯ちゃんミサァァィルッ!!」
唯バスターの両手が弓に突き出され、その指先から放たれる小さな小瓶のミサイルたち…よくよく見ればヤク〇トの瓶である。
機関砲のように飛んでくるそれは地面に着弾すると、液体を撒き散らして元の瓶に戻っていく。
その直撃をかわした弓の足が何かにつかまれたかのように動きを止めた。
「こ…これは!!」
「おーほほほほ。その中に入っているのは瞬間接着剤A液とB液よっ!!」
赤城の解説に青ざめる弓、足を固められ動きの止まった彼女に近づいてくる唯バスター。
その胸からマヌケに突き出した唯の顔が弓に話しかけた。
「へう~降参してください…」
「誰がっ!!」
「うー。だったらなるべく痛くないようにしますねぇ…」
ブンと唯バスターの腕が振り上げられ、まさに振り下ろされようとした瞬間、唯の視界から弓が消えた。
「う?」
「これで終わりですわっ!!」
水晶観音を解き、自由になった弓が唯バスターの足元から唯の顔めがけてジャンプ一番、渾身の霊波砲を発射する。
「あきょぉぉ!!」
至近距離から胸、もとい顔面に直撃を受けてよろめく唯バスター。
「くっ…この唯バスター唯一の弱点がこのむき出しの顔だとなぜわかったんですかっ!!」
「誰でもわかりますわよっ!…そんなことよりあなた…あれをくらってピンピンしてるなんて…本当に人間ですの?」
「私のどこが人間以外に見えますかっ!」
「人間以外にしか見えんよなぁ…」
「ロボじゃけんノー…」
「へうぅぅぅ…おのれ~。乳が小さい子は人間じゃないとイウデスネ…」
「誰が乳の話をしてますかっ!」
「あきゃっ!!」
突っ込みまじりに放たれた霊波砲が再び唯の顔面を直撃する。
今度は流石に効いたかズズウウンと倒れる唯バスター。
「何てこったぁぁぁぁ!!」
「ど、どうしました。横島さん!」
「唯ちゃんは突っ込みを避けるようには出来てないっ!!」
「「「「はあ?」」」」
「つ…つまり…突込みなら問答無用に命中しちゃうと言うことですか?」
「ああ…魂のレベルで突っ込まれキャラだからなぁ…」
「か、勝ちましたの?」
半信半疑な弓…もっとも彼女の疑念は当然だろう。
何しろ対戦相手はほとんど人外だし。
「まだですっ!」
鬼道が弓の勝ちを宣言しようと立ち上がった時、唯バスターの胸から飛び出てくる天野唯。
しかしその格好は先ほどの体操服でなく、白いカッターシャツに赤いスカートと赤ランドセルというまんま小学生の姿。どうやら今までの沈黙は唯バスターの中で着替えていたらしい。顔を外に放り出したままシャツをどう着たかは謎だが…。
「ちび○子ちゃん?」
「伏字になっとらん!!」
思わず叫ぶピートに横島の突込みが炸裂する。
その見事なタイミングに弓の注意が場外にそれた一瞬、唯の掛け声が闘場に響き渡った。
「行けっ!ファンネル!!」
唯の背中のランドセルの蓋が跳ね上がり、中から飛び出してくる十数本の台所洗剤のボトル。
それは不規則な軌跡を描きつつ複数の方向から弓を取り囲むとその先端を彼女に向ける。
「ファンネル!オールレンジ攻撃!!」
洗剤のボトルから放たれる水流を必死に回避する弓。
外れた水流は地面に落ちて凄まじい異臭を放った。
「ま、まさか…毒ですの!」
「違うわ…それは私たち科学部が「薔薇の園」と共同開発した液体よ。」
「ま…まさか…漢汁ですか…」
震える声で聞くピートに赤城は自信満々に答える。
「いいえ…漢汁が一ヶ月履き古した靴下の抽出液ならば、これは一ヶ月履き倒したふんどしから作った新しい汁…その名も「ノイエ・汁!!」」
「おおっ!まさに我らの精神が形になったような!!」
「そんなもん毒と一緒ですわよぉぉぉ!!!「貰いましたっ!!」…えっ?!」
場外の赤城と加藤に突っ込んじゃった弓ちゃんの前に出現したファンネルから容赦なく放たれた汁は彼女の顔面を直撃した…。
「はうっ…」
パタリ…
こうして第一戦は横島たちの勝ちで終わったのであった。
後書き
ども。犬雀です。
あああ…すんませんすんません。こんなになっちゃいましたぁ~の第一戦でございます。
流石にインフルエンザは犬の脳に深刻なダメージを…いや元々?
はいです。唯の新兵器は「唯ちゃんとロボ」と「ファンネル」でした。
もちろん「唯ちゃんとロボ」には様々なギミックが仕込んであります。
それはまたの機会に…(ってあるのか?)
さてと…というわけで両方正解に近いのは炎様とわがち~様ということになります。もしご希望とあれば本作後半で登場していただくことになりますが…扱いはめっさ悪いですよ~。それと名前も多少はいじらせて頂きますです。
構わないとおっしゃるならばレスを下さいませ。
次回はあの人が戦いに挑みます。
では…
>初風様
乱舞攻撃は正解でしたぁ。愛子から射出されるのは唯ちゃんパーツでしたけどw
>咆牙紫苑様
はい。川澄さんがおりました。彼女にも闘ってもらおうかなぁ…なんて…。
>wata様
今回の唯の活躍?いかがでございましたでしょうか?
>紫苑様
彼が鈍感なのはある理由があります。
それはいずれ語りたいと思ってます。(当分は無理そう…)
>義王様
うぐぅさんと猫アレルギーさんはちらっと出てます。
でも皆さんが解るように書いてないんですけどね。w
その時は出すかどうかまだ迷っていたもので…。
さて、どうなりますことやら…
>ATS様
こんな新兵器でしたぁ…作られるといえば作られる…っていうか実際に赤城さんが力を入れて作ったものは「ノイエ・汁」でしたけど。
>通りすがり様
今回は愛子ちゃんにババ引いてもらってます。
後半はいい思いができるでしょうかねぇ?
おばさん臭い元女子高生は…かぶっちゃうんですよね。
でもその対比も面白いかも…メモメモと
>伏兵様
ご忠告通り今回から表記を変えました。
カノンキャラがメインに来ることはないはずですが…舞だけは戦いに使う予定です。
愛子ちゃんはビッグシューターの役目…はたまた雷鳥二号?
>法師陰陽師様
内縁ですからねぇ…別に事実婚で当人達が良ければ何人居ても。
相沢は横島に一つの解答を与える役目を担ってもらおうかと…。
>シシン様
いえいえ。今回はマヌケ空間全開で行きます。
そうじゃないと闘えないメンバーばかりですのでw
>ミーティア様
惜しい!合体ロボは正解でございました。
ファンネルはですねぇ…犬の設定が無茶すぎでした。(土下座)
>AC04アタッカー様
犬は貴殿のSSとても好きですよ。
特に人物が格好良いです。
今後も色々と教えてくださいませ。
>炎様
おめでとうございます。合体ロボでした。
さて…どうなさいますか?(悪魔の笑み
>わがち~様
正直、「ファンネル」の方がばれるとは思ってませんでした。
感服であります。ガガガは良く知らないのですがゴミから出来る合体ロボでしょうか?だったら正解ですねw
さて…どうなさいますか?(魔物の笑み