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「除霊部員と秘密の部屋  第3話 前編 (GS+色々)」

犬雀 (2005-02-25 12:11)
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第3話     「恐怖?機動 天野唯」(前編)


対抗戦当日、前もって言い含めておいたシロもタマモが朝の散歩は涙ながらに遠慮してくれたせいで充分な休養を取れた横島。
鼻をくすぐる味噌汁の香りに柔らかい目覚めを迎える。
身支度を済ませ唯は起きたか?と外に出た彼の目に、いつぞや見た奇妙なダンボールがアパートの前でヨジヨジと動いているのが見えた。

「アリエスちゃん何してんの?」

頭をかきつつ近寄って声をかけると、ガバっとダンボールを跳ね除けて飛び出すは予想通りカッパの姫さん。

「忠夫様伏せて!!」

「へ?」

飛び出すなり横島を押し倒しその上に馬乗りになると、懐から拳銃のようなものを取り出してあたりを見回す。

「何事!!」

「しっ!…そこっ!!」

短く横島を制すると近くの電信柱に向けて拳銃を発射した。
銃口からプシッと空気の漏れる音ともに飛び出した矢は電柱にブスリと突き刺さる。
矢を受けグラリと傾くなりポテっと軽い音を立てて倒れる電柱…どうやらハリボテだったらしい。

その様子を警戒の目で見つめていたアリエスは電柱がグーグーといびきをかき始めたことを確認すると、かいてもいない額の汗を拭う。

「ふう…危ないところでしたわ…こんなところにも追っ手がかかるとは…」

「状況がつかめんのだが…と言うか…追っ手って何?」

柔らかいアリエスの太股の感触を股間に感じつつ、いつものごとき不可思議展開に煩悩もおきないのか冷静に突っ込む横島。

「もちろん…わたくしを探していますのよ…。」

「また逃げたんかい…」

「だってぇ…忠夫様の晴れの舞台にわたくしだけ仲間はずれなんてぇ〜えぐえぐ…」

「あああ…泣かんでいいから!それよりその微妙な振動は止めてっ!!」

「まあ!こんな往来でしかも朝っぱらから………お元気ですわね♪」

「違うんやぁぁ!これは漢の生理現象の揺り戻しなんやぁぁ!!」

「くすくす…わたくしならバッチ来いですわ♪「何してますかっ!!」あきょっ!!」

アリエス嬢の朝のご乱心は外の騒動に誘われ出た唯が変身と同時に階段から放った、重力を味方につけたとび蹴りにによって中断された。

「えう〜。まったく油断も隙も…タダオくん何かされませんでしたか?…へう?タダオくん?」

吹っ飛んで気絶したアリエスに文句をたれつつ横島を見れば…自分の下で白目を剥いている彼の姿。
恐る恐る着地点を確認してみれば…自分の足があるのは横島君の股間だったりして…。

「タダオく〜ん!!しっかりぃぃぃ!!」

戦う前に瀕死のダメージを追う横島であった。


微妙に内股で気絶したままのアリエスを担ぐ横島と机を担ぐ愛子、どういうつもりか真っ赤なランドセルを背負った唯といつもの制服の小鳩たちが、途中で合流したピートやタイガーらとともに学校につくとそこには異様な光景が展開していた。

いや異様というのは当たらない。
観光バスが学校前に止まっているなんてのは修学旅行や遠足などでよく見られる光景だろう。
だがその数が尋常じゃなかった。
学校前に並ぶは十数台に及ぶ観光バス。
全校生徒が乗ってもおつりが来る勘定だ。

次々とバスに乗り込んでいく生徒達は呆気に取られている除霊部員たちを見つけると手を振って激励してくる。
わけがわからんまま曖昧な表情で手を振り返す彼らに、ばつの悪そうな表情で相沢が近づいてきた。

「おう。お前ら来たか。」

「先生…これはいったい何事ですか?」

バスから送られる黄色い声援に戸惑いながらピートが聞くと、相沢は溜め息とともに理由を話し出した。

「んー。なんつーかな…全校応援になっちまってなぁ…」

「んじゃ、このバスは昨日のあの美女が手配したんすか?」

「ん…ああ、佐祐理さん張り切っちゃってなぁ…」

相沢が指差したのは一際豪華なリムジンバス。
その窓から「祐一さ〜ん」とにこやかに手を振るのは確かに昨日の美女だった。

「俺たちはあのバスに乗るんだ。それと…先発隊はそろそろ準備が終わっているはずだ…」

「先発隊?準備?何かしら?」

愛子の疑問に相沢は「行けばわかる…」と遠い目で答えるだけ、ヤレヤレと言わんばかりに頭を振ると横島たち一同を見回して「全員揃ったか?」と聞いてくる。

「一応、加藤さんや矢吹さん以外は全員ですね。」

「ああ、その二人ならもうバスに乗っている。けど横島…その背中の子はいつぞやのドッペルゲンガーもどきか?」

「まあそうですけど…一緒に連れて行ってもいいですかね?」

「かまわんだろ。席は売るほどあるしな…じゃあそろそろ行くぞ。」

「「「「はい」」」」

プオーンとクラクションを鳴らすと、リムジンバスを先頭に真っ赤なスカーフを振りながら声援を送る留守番教師たちを残しての全校大移動が始まった。
こうして後に「六女史上最大のマヌケな日」と呼ばれる一日が始まりを告げたのである。


六道女学院についた横島たちを待っていたのは黒髪の美女と和服の女性。
バスから降りた相沢は和服の女性に丁重に一礼する。

「どうもこの度は私たちの無理をお聞きくださいまして…除霊部顧問の相沢祐一と申します。」

相沢の挨拶に鷹揚に答えるのは六道女学院理事長、六道冥華その人。
直接、面識こそないものの冥子に似たその顔立ちと物腰から横島にも彼女が誰であるかは容易に察しがついたが…彼の興味はとなりの黒髪ナイスバディの美女に集中する。

「一目見た時からっ…「「させません!」」うおっ!!」

バスから降りるなりいつものごとくルパンダイブを決めようとした横島は唯と小鳩にその足を捕まえられて地に落ちて蛙のように平たくなる。

「…祐一…この子が?」

「ああ…俺の教え子だ…」

「…祐一に似ている…」

「どこがだっ!!」


「そんなことより…もしかしてこの美しい人も…」

「はちみつ熊さん…祐一の奥さんの川澄舞…」

ピートの言葉に無表情に答える相沢先生のこっちの奥さん。
その声に地面に突っ伏していた横島がガバっと起き上がる。

「またまたマテやおっさん!」

「だから二十代はおっさんじゃない!」

「んなこと知るかっ!!おのれ〜!貴様の所業、たとえ人は許してもこの『天』が許さぬ!」

「お前に許される謂れはない!!…ん…どうした舞?」

二人のやりとりを無表情に聞いていた舞の様子が変わったことに気がついて声をかける相沢の耳にかすかに震える声が届いた。

「…祐一はおっさん…私は祐一より年上…私はおばさん?」

「滅相も無い!あなたのような美人がおばさんな訳…」

「…斬る…」

慌ててフォローする横島を、どこから取り出したかレイピアのような西洋剣から放たれた神速の斬撃が襲う。

「うおっ!危ねっ!!」

「待てっ!止めろ舞!!」

人間離れした運動能力で舞の斬撃をかわす横島も横島だが、その間に割って入れる相沢も並みではない。

「まったく…美人と見れば見境なく…爛れた青春ねぇ…」

「そうですっ!ちょっとおっぱいの大きい人を見るとっ!!」

「乳ならわたくしだって!!」

「あの方も相沢先生の奥さんなんですか?」

「小鳩ちゃん知らなかったの?相沢先生って結構有名よ。」

「羨ましいノー」

「ふーむ…あの斬撃をいとも容易くかわすとは…」

騒ぐ横島をそれぞれの感想で見つめるメンバーたちには一部を除き早くも疲労の色が現れていて、それは六道理事長に案内されて校庭に作られた特設会場に着いたときに決定的なものとなった。
なぜならそこにあったのは様々な屋台。
タイヤキやらクレープやらアイスやら…あげくに亀すくいや射的もあったりする。

「あ…あ…あ…」

声も無いピート。
愛子も震える声でさっきから目をあわそうとしない相沢に聞いてみる。

「あの…先生…もしかして先発隊って…」

「あ…ああ…屋台の設営に…」

「小鳩は金魚すくい上手なんですよ♪」

「そ…そうか…まあがんばれ…」

試合前にすでに色々と疲れきってしまった感のある横島たちに再び舞と六道理事長がその手にメンバー表とおぼしき紙を持って近づいてきた。

「…祐一…これ…」

「ん。サンキュ…って五人?!」

手渡されたメンバー表を見て驚く相沢に舞は無表情のまま頷く。
もっとも相沢には彼女が申し訳なさそうにしているのが見て取れたが。

「…はちみつ熊さん…他校との戦いは希望者が多かった。」

「それにですね〜。色々な子に経験させるのって〜。良いことだと思うんですのよ〜。」

六道理事長も一見、教育者らしい台詞で補足するが、相沢には彼女の言葉の裏に微妙に隠された思惑があるような気がした。

メンバー表を見て作戦会議を始める除霊部員達。

「五人ですか…僕と横島さんとタイガー、それに唯さんしか居ないんじゃ…」

「だよなぁ…愛子は戦い向きじゃないしなぁ…」

「あの…忠夫様、わたくしは?」

「アリエスちゃんはうちの生徒じゃないし…」

「うーむ…」と悩む一同に六道理事長の爆弾発言が炸裂する。

「あ、そうそう。おばさん言い忘れてましたわ〜。ピートさんと横島さんは遠慮してくださいね〜」

「「何ですと!!」」

「だって〜。お二人とも見習いとはいえ現役のスイパーですもの〜。ちょっとずるいと思いませんか〜。お二人には変わりに〜本校の講師さんと戦っていただきます〜。」

「でも…それじゃあこっちの人数が…」

「そのお嬢さんは横島さんの関係者ですよね〜。その方でもかまいませんよ。」

「わたくしですか!はい!ガンバリます!!」

指名され飛び上がって喜ぶアリエス。戦うことが嬉しいというのではなく、横島たちの仲間と思われたのが嬉しいのかも知れない。

「でもあと一人が…加藤さんなら闘えるでしょうけど霊力が…」

「そんな時こそ私の出番ですね♪」

「うおっ!魔鈴さんいつの間に!!」

ピートの言葉とともにヌポッと現れるのは除霊部コーチの魔鈴さん。
相変わらずの神出鬼没ぶりである。

「たまたま出前…じゃなくて先ほどから居ましたけど?」

魔鈴が指差したのは綿アメ屋台のテント。どうやらその陰に潜んでいたらしい。

「なんで隠れてるんすかっ!」

「登場するタイミングを計ってました♪」

「テヘッ♪」と舌を出す彼女を可愛いと思えば良いのか、怪しいと思えばよいのか…。
どっちにしろ今までの年上で落ち着いた美人と言う魔鈴のイメージが揺らぎ始めるのを自覚する。


「で、どうするんですかいノー?」

「はい。加藤さん。その木刀を貸してください。」

「はあ。どうぞ…」

展開についていけていなかったのか、なんとなく呆然とした様子の加藤から木刀を受け取った魔鈴は、口の中で呪文のようなものを唱えると指先で木刀の側面になにやら書き込んだ。

「はい。魔力を付与しました。これで半日ぐらいはこの木刀は霊刀と同じになりますね。」

「へ〜。凄いっすねぇ…。」

「なんと書かれたんですか?やはりルーン文字か何か?」

魔鈴によって魔力を付与された木刀を覗き込む彼らの目に飛び込んだのは、極太明朝体で書かれた『風林火山』と言う光の文字だった。

「思いっきり漢字ですノー…」

「大丈夫なんか…」

「それは心配いりません。…ほ、本当ですよ!」

半信半疑の視線を必死で打ち消そうとする魔鈴さんに六道理事長が声をかける。

「でしたら〜。そちらのメンバーはどうなりますか〜。」

「えーと…小鳩ちゃんは無理だし…摩耶ちゃんもダメってことは…」

「タイガー、加藤さん、アリエスさん、唯さん、それに…」

「え゛…な、なんで…みんなで私を見るのかな?」

「愛子さんしかいないですケン…」

「わ、私だって闘えないわよぉぉぉ!「わかりました。お任せくださいませ!」…え?アリエスちゃん?」

「わたくしに秘策がございますれば…ふふふふふ…」

「秘策って何よ!」

「それは後でのお楽しみですわ♪」

「決まりましたかぁ〜。でしたら〜そちらはこちらのメンバーに合わせて選手を選んでくれてかまいませんよ〜。」

「それはハンデのつもりでしょうか?」

「いいえ〜。こちらが無理を言っているんですから〜。当然です〜。」

六道理事長は相沢の質問をサラリと流すとメンバー表を渡すし、舞とともに貴賓席と思しき場所に帰っていった。

渡されたメンバー表にはそれには対戦相手の写真と簡単なプロフィールが書かれている。

「えーと…先鋒が弓さんですか。彼女の能力は…仏教系の除霊術と水晶観音…って何でしょう?」

「ああ、雪之丞の魔装術みたいなもんだ…。霊波で水晶を鎧にするらしい。」

「それは手強いですね。」

以前、おキヌの応援で見た光景を思い浮かべた横島の言葉にピートの表情も曇る。

「あ、唯ちゃんの新兵器ならちょうどいいんじゃないかな?」

「へう!確かに!!」

「大丈夫か?彼女かなり強いぞ。」

「ま〜か〜せて下さいっ!!」

どんな根拠か知らんが自信満々な唯…。不思議な歯車が動き始めたらしい。

「次鋒は霧島かすみさんですか。能力は…オーソドックスなタイプですね。」

ピートの示すメンバー表の写真には前髪で目が隠れた、ソバカスがチャーミングな少女が写っている。

「オーソドックスとは?」

「破魔札から神通棍まで一般に使えるタイプってことですね。魔法剣士といった感じかしら?」

「ふむ…では、その少女は私が相手をしよう。」

魔鈴の「剣士」と言う言葉に反応した加藤が重々しく宣言した。
「適任だな」と頷く一同。

「次は…神宮寺遙さん…神道系で精神攻撃が得意だそうです。」

「ああ、あのハワイの娘」

確かハワイに行った事が無いって見破られて戦意喪失したんだよなぁ~と苦笑い。

「幻覚使いですか…でしたらわたくしがお相手いたしますわ。」

「大丈夫かアリエスちゃん?」

「大丈夫ですわよ。」


「で、次が一文字さん。彼女はタイガーですね。」

「わかりましたジャー」

すっかり迷いも晴れたのかやる気満々のタイガー。
その足に装備された真新しいリングシューズが真夏の太陽を浴びて黒く輝く。

「へう?タイガー君その靴は?」

「これはプロレスジムで知り合ったお医者さんがプレゼントしてくれたんもんですジャー」

どうやら一緒に習っているうちに意気投合したらしい。
燃え上がるタイガーの闘魂を眩しげに見つめてピートはメンバー表に視線を戻す。

「大将は…神野麗華さん…この人も精神操作系です。」

「うーむ…あの時、おキヌちゃんに勝った娘かぁ…この娘は愛子に頼むか」

「わ、私?!」

「ああ、別に勝たなくていいしさ。それにこの娘の能力なら痛い思いもしないだろ。」

「う、うん…わかった…」

「すまんな…愛子」

「う…ううん…別にいいわよ…部のみんなのためだし…それに…」

「すまん」と頭を下げる横島に顔を真っ赤にした愛子の台詞の後半は聞き取ることが出来なかった。
だが乙女回路標準装備の現役女子高生の皆さん&カッパには愛子の言葉にならない想いはあっさりと理解できる。

パチパチっと素早くアイコンタクトする女子高生の皆さん&カッパ…と大人の女性。

「あの…忠夫様…もし勝てましたらご褒美下さいますか?」

「え?あ、ああ…俺で出来ることなら…でも金は無いよ?」

「くすくす…お金はかかり「待ちなせい!」…唯様ぁ〜」

「私もご褒美下さいですっ!」

「「私たちサポート要員もですよね!!」」

アリエスを押しのけてズズいと進み出る唯、小鳩、摩耶。
そしてその後ろから笑顔ともに歩み出る現代の魔女。

「私もコーチとして当然その権利がありますよね?」

「は…はぁ…俺で出来る範囲なら…」

「ガンバリます!!」と声をそろえてはしゃぐ女性陣と苦笑を浮かべてそれを見守る男性陣。


そんな彼らには、選手控え室にあてがわれた教室から暗い表情で自分達を見つめる少女がいたことに気づけるはずもなかった。


「ところで横島さん?」

「ん?何だ?ピート…」

「女子高に来たのに冷静ですね。」

「今は下半身に血を集めるわけにいかんのだ…」

朝のダメージは思いのほか大きかったらしい…。

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