横島は高校生である。
今まで学生っぽい描写が特に無かったが、とにかく高校生だ。
「おはよー横島」
「ふにゃあ……おはよう」
朝は眠く、まだ半分夢の世界に居る横島は目を擦りながら登校していた。
その姿に数人の生徒や先生が頬を染めていた。
学校に居る間も横島は赤と黒を行ったり来たりしている。
黒髪の愛らしさに胸ときめかせる生徒は何人も居るのだが……恋愛感情を持つ者は少ない。
なんせ……近寄った瞬間に赤髪になり、セクハラを働かれては困るからだ。
それでも赤髪はセクハラ以上の事はせず、ちゃんと嫌がれば止まってくれる。(場合にもよるが)
もしも悪い事をし、自分に非があれば不貞腐れつつも謝罪する事が出来る。
黒髪とは違う次元だが素直だった。
なので、ムードメーカーとしては好かれていた。
教室につくと、生徒達は横島へ挨拶をした。
その挨拶に手を振りながら自分の席へ向かう。
だが……何か違和感を感じる。
「あれ?何でオレの机……こんな古いの?」
土曜日までは他の生徒と同じ机だった筈なのに、自分の机だけが古めかしい物に変わっていた。
まるで戦争時の学校に置いてある様な机。
「本当だ、俺らのは変わってないのに」
「これって苛めじゃないの?」
笑う女子に横島は涙目になってしまう。
「いじめ……?オレ苛められてる??」
「そんな命知らず、このクラスに居ると思うか?」
横島に何か嫌がらせをすれば……様々な報復がやって来る。
恋愛感情無くとも、可愛い者好きの女子からの箒攻撃。
横島(赤)からの力と言葉の暴力。
そして……横島(黒)の涙の訴え。
特に一番最後のが効く。
「にしても、これ……何処から持って来たんだろ~?」
机を摩りながら、首を傾げる。
これ程古い品を見つけてくる事は大変だろう。
何気なく机の中を覗きこむ横島だが……
そこには血走った眼球が浮かんでいた。
「ふえ!?」
驚いて身体を離そうとするが、向こうの方が早く……
血管が浮き出た二本の腕が飛び出し、横島の身体を強引に引っ張る。
「にゃー!?」
「きゃー!!?横島君が机に食べられたー!!!!!!」
「横島がー!!!!」
「って言うか、今の腕何ぃー?!」
その現場を見てしまったクラスメイト達は悲鳴を上げ、机から離れて行った。
「全く……小僧め、わしに手間をかけさせるとは……」
黒いマントに身を包み、白髪の青年がブツクサ言いつつ校舎を歩く。
その隣にはセクハラ横島同様赤い髪の女性が歩いている。
「ドクター・カオス、次の角・職員室・です」
「うむ、そうか」
青年、カオスは持っていた袋を揺らしながら角を曲がろうとする……が。
「ん?誰ですか?貴方は」
そこには学校の教師が立っていた。
「わしか?わしは大天才錬金術師のドクター・カオスじゃ!そしてこいつはわしの発明でマリア……」
「すみません・横島さん・何処ですか?」
高らかに笑うカオスの前に出、マリアと呼ばれた女性は教師へ話し掛けた。
「ん?横島の関係者か?」
「イエス・横島さん・お弁当・忘れました」
今から少し前……美神がゴーストスイーパーの免許を取得した時。
異国へ出張に出る両親に付いて行く筈だった横島は『治療』の為に日本へ残った。
人格を取り除くには普通の方法では無理だから……と説得し。
毎月の仕送りの中にはその『治療費』も少ないが入っており、横島はそれをいつも貯金していた。
なんせ本当は治療らしい治療をして貰っていないのだから……
そんな時、横島は道に倒れている青年と女性を拾った。
青年の名はカオス、女性はマリア。
拾ったのは一部では結構名が通っている錬金術師と、機械人形だった。
見た目は青年のカオスだが、今年で千五十一歳の不死の錬金術師と呼ばれている。
身体の衰えはかなり緩やかにする事が出来、まだ青年のままだが……脳は確実に衰えていた。
人の脳神経細胞の寿命は平均で百二十歳程度。
生まれてから死ぬまでの記憶が脳には刻まれており、どう頑張っても脳容量には限界がある。
脳神経に刻み込まれる膨大の記憶。
それを新しい事を覚えれば古い記憶を削除する、トコロテン状態にする事で解決した。
最も……ただのボケ老人化しただけとも言えるが。
丁度一人で寂しい思いをしていた横島は、二人をアパートに同居させている。
赤髪の時は何度も『マリアを置いて出ていけー!男はいらーん!』と蹴られてもしたが……
「実は……さっきまで居たんですが……」
少し言いにくそうにしている教師にカオスは怪訝な表情を浮かべた。
「どうしたんじゃ?」
「あの……横島、机に食べられちゃいました」
「……は?」
聞かされた言葉に……カオスは一瞬言葉を失った。
「うぅん……」
机の中に引っ張り込まれた横島は教室内で気を失っていた。
教室内には誰も居らず、長年放置された雰囲気を宿している。
窓の外は砂漠が広がっていた。
「これって……異界空間って奴??」
少し不思議そうに首を傾げ、横島は制服についた埃を掃った。
「もしかして……妖怪に引っ張り込まれたのかな?」
不安げに辺りを見回しつつ呟く。
「その通りよ」
「っ!!?」
独り言に言葉が返され、横島は驚いて……転んだ。
「……痛い……」
思いっきり足を滑らせ、横島は顔を強打してしまった。
「平気?ここはあの机の腹の中よ、もう外には出れないわ」
先程声をかけて来たのは女子生徒、横島の学校と同じ制服を着ていた。
「うぅ……?もう出れないの?」
女子生徒に起こして貰いつつ、横島は潤んだ瞳で見上げた。
至近距離で潤んだ瞳を見、女子生徒は顔を赤らめながら頷く。
「えっ……えぇ……そう、ここでは時間の概念が無いから……私はもう三十二年も閉じ込められているわ」
説明を聞きつつ、横島は涙を懸命に拭う。
もう出れないという言葉が胸に突き刺さっているのだろう。
「愛子君、新しい子かい?」
「えぇ……そうよ、高松君」
怯える横島の肩に手を乗せ、笑顔を浮かべる男子生徒。
その制服は横島の学校の物だったが……前の時期のデザインだった。
「ひっく……誰?」
「怖がる事は無い、君と同じように閉じめこられた生徒さ」
「そうよ、私達の仲間を紹介しましょう?」
微笑む高松と愛子。
涙する横島を引っ張り起こし、別の教室へと導いて行く。
教室内には多くの生徒達が居り、皆横島を歓迎していた。
その全員の制服は違っていたが……
「あら、新入生?」
「歓迎するぞ!」
その中で一番がたいの良い生徒が横島へ近寄る、だが……
「えぇい!近寄るんじゃない!」
思いっきり下から顎へ向けて拳を上げた。
「げふっ!?」
男子生徒は舞い、そのまま生徒達の上へ覆い被さった。
潰された生徒達は口々に「重い~」「どけー」「何処触ってんのよー!」と騒いでいる。
「なっ……何!?」
愛子が横島へ視線を向けると、そこに居たのは先程までの弱弱しい少年では無く……
少し大きめの制服に身を包んだ、褐色の肌を持つ少女だった。
「いきなり何をす……」
先程飛ばされた生徒が文句を言おうとするが……好みのタイプだったのか、頬を赤らめていた。
「自分はてめぇらと馴れ合うつもりは無い、こっから絶対に出てやる!」
そう言い残し、教室を出ようとするが……ドアが突然閉まり。
「にゃあ?!」
顔面を力強く打ち……そのまま普段の横島へ戻ってしまう。
その場に座り込み、痛みに耐える横島へ愛子は笑顔を浮かべ。
「まぁ……この子もここに来たばかりで興奮してるみたいだもの、ね?」
他の生徒達を説得していた。
「まぁ……委員長がそう言うなら……ねぇ」
「私も……ここに来たばかりの時は不安でいっぱいだったし、気持ちは分かるわ」
「そうだなぁ……」
横島以外の生徒の気持ちが重なったのを見計らい、愛子は黒板へ大きく『HR』と書き。
「さぁ!!これから『第一万千二十五回』ホームルームを始めましょう!!」
「「「「「おう(えぇ)!!」」」」」
「ふえぇ~ん」
一人横島は事態が分からず、痛みに泣いていた。
「ふむ……ではその机に小僧は食われたのじゃな」
「はい、生徒の話では……」
話を聞き、カオスは教室へと向かっていた。
ハッキリ言って横島の善意で二人は部屋に置いて貰っている。
なのでこのままほおっておく事は出来ないのだ。
「ドクター・カオス、ここです」
「うむ!!行くぞい!!」
マリアの言葉に大きくマントを翻し、カオスは教室内へ飛び込み……
ガコッ!!
「あらー!!?」
「っ!」
放置されていた机へ、飲み込まれてしまった。
「せ……先生?今のは……?」
「何しに来たんだ……あの人達は」
来た瞬間居なくなってしまった二人に……生徒と教師は開いた口が塞がらなかった。
ドゴーン!!!!
先程まで横島が倒れていた教室に何か重い物が落下する音が轟く。
「っ……」
一番最初に愛子が立ち上がり、教室へと走って行った。
何処か苦しげに胸を押さえながら。
大急ぎで教室を覗くと……カオスとマリアが倒れていた。
マリアの落ちた部分は壊れ、穴が開いていた。
今よりも若い時期にカオスが作り出した最高傑作のマリアだが……
その体重は二百、古い校舎の床では支えきれなかったのだろう。
「おぉ?一体何じゃ?ここは……」
「座標確認・不可……居空間・です」
穴から這い出ながらマリアが答える。
カオスの方は腰を強打したらしく、立てずに居た。
「っ!!先生?!それに校長先生ですね!?」
教室へ飛び込む愛子にカオスは驚きの声を上げる。
愛子の大声に反応し、他の生徒達も教室へ流れ込んできた。
半分位満員電車状態だったりする。
「先生!先生!先生!!」
「なっなんじゃい!!?」
生徒の流れに埋もれつつ、カオスは悲鳴を上げた。
ちなみに……マリアはまた穴の中へ逆戻りさせられた。
「この学園に幽閉されて以来、私達は生活を充実させようと努めて来ました!
しかし学生だけでは学園生活はおくれないのでホームルームばかり続けて来ましたが……
ようやく!!校長と先生が来て下さいました!!」
無駄に瞳を輝かせ、愛子は微笑む。
どうやらカオスの老人喋りは校長に値する様子。
「ドクター・カオス、横島さん・発見・しました」
「おぉ?小僧は何処じゃ?」
早く横島を見つけて帰りたいカオスは必死にマリアを掘り出そうとする。
「爺ちゃん……マリア姉ちゃん!!」
そこへまだ泣いていた横島は知った声に嬉しそうな笑顔を浮かべる。
丁度他の生徒に引っ張られるようにして教室へ入ってきた所だった。
「さぁ……先生?授業を始めましょう?」
「授業」
「授業」
「授業」
愛子の一言で、他の生徒達は一斉にカオスとマリアの手を引っ張り……教室へ連れていこうとする。
「うぬっ……こやつら、何かに取り付かれておるのか?」
「全員の・焦点・合って・ません」
手を引かれつつ、カオスは冷静に状況を把握しようとする。
「爺ちゃん、マリア姉ちゃん……オレ達……ここからちゃんと出れる?」
生徒の波を必死に泳ぎ、横島はカオスの腰へ抱きつく。
本当は腕に捕まりたかったのだが、失敗した様子。
「うぅむ……わしらは机の妖怪に飲み込まれ、ここへ来た……
つまり、ここは腹の中で腹の中じゃ!」
衰えた脳で説明しようとするが、同じ事を繰り返してしまっていた。
「つまり、ここは腹の中で……」
再度繰り返す、横島の髪がまるで怒りに連動するかの如く赤く染まっていく。
思いっきりカオス目掛けて右腕を上げた。
先程舞った生徒の様にカオスは天井へ向けて飛ぶ。
「えぇい!!ボケ老人に期待した俺が馬鹿だった!!」
半分泣きながら横島は教室から飛び出した。
「ちょっ!?もしかして……構内暴力!?」
愛子はマリアの腕を引っ張りつつ、驚きの声を上げた。
「先生!!ここは授業より先に横島君の確保です!!」
「そうです!先生!!」
「行きましょう!!彼を正しい道へ導くには先生の力が必要です!!」
「先生!」
休み無く聞こえてくる声達、マリアは小さく頷き。
「マリア・横島さんを・連れ戻す・先生と・して」
その言葉に歓喜の声が上がった。
後編へ続く
原作と似た動きしかしていないんですが……何処か違う。
愛子、早々と参上!!!
親分「吸血鬼の坊や呪い屋よりも出番が早いなぁ」
まぁ……早めに出してキャラの色を決めて起きたかったんで……
親分「早く吸血鬼の坊を出してやれよ」
うぅ……親分、早く帰って……
親分「所で、ルナ公」
へい!?
親分「恋愛感情を抱く者は『少ない』って事は……居ない訳じゃねーんだな」
ははははは、そこは作者として言えねぇや!
親分「む、生意気な奴だ」
山神アキラ様>更新早いですか?そう言って貰えると嬉しいです。
……毎日更新してびっくりしたり。
これもレスを下さる皆様のお陰です。<(__)>
黒髪は仲良く出来そうなキャラはトコトン落として欲しいです。
冥子の十二神将は別の意味で超える物を『持ってます』んで。
AC04アタッカー様>そのまま使ったら物凄い格好良いイフ兄ちゃんが出来てしまうので……
自分色を出す為、頑張りたいと思います。
その前に……呼ばないと来ないのかな?兄貴は。
人外吸引機能は原作でもかなり高いので、黒髪はその機能を最大限活用してる感じです。
あの薬は一発で終えるにはちょっと勿体無かったので、こうなりました。
ガルちゃんズ……どうなるんでしょうね(ドキドキv)
Dan様>幽霊は……食べれませんから、意味は無いと思いますv
薬は新入荷予定の品だったので、厄珍の所にも一箱しかありません。
十五錠しか入ってなかったんでしたっけ……?
黒髪君はこれからも変な方向で頑張ってもらいたいと思います!
赤と銀……そしてその他の人も!
柳野雫様>厄珍もプロですから、捕まらないかもしれませんね。
美神さんが殴り込みに来ましたし……別の意味で死にました。
美智恵さんは……はてさて。続きをお楽しみに!!!
親分「考えてねぇのかい?」
(ビクッ)
紫苑様>厄珍は美神によって……のされました。
その後、五週間以上は店は閉まったかもしれませんね。
なんせ赤横島で力の加減が分からなくなってると思いますんでv
鬼塚畜三郎はとりあえず、ピート話が終った後で入れる予定です。
原作と違い、キヌや幸を一緒に同行させたいなぁ……と思ってます。
時に……皆さん、擬人化って好きですか?
その反対の、人間が獣になってしまう獣化って好きですか?