「この辺りかなぁ?」
赤髪を揺らしつつ、横島葉辺りを見回した。
『あそこじゃないですか?『やくちんどー』って』
キヌの指差した店を見、横島は「みたいだな」と返事を返す。
本日は美神が風邪でダウンし、横島とキヌは仕事で使う道具を受け取りに出掛けていた。
これを事務所に持っていけば今日の仕事は終わりなのだ。
二人が辿り着いた店、そこは古めかしい雰囲気を持っている『厄珍堂』
「ちわーすっ」
『ごめんくださーい』
一言言い、二人は中へと。
中に入ると……そこには幼稚園児程度の身長しかない男が居た。
サングラスをかけ、髭を生やしている。
「おぉ!!」
その男は現在……テレビドラマに熱中していた。
『怖がる事無いのよ、タカシ君。ぶらを外して頂戴』
そう言って女性が高校生男子を誑かしているシーンに男は燃え上がっていた。
「一気に行くよろし!!」
『けど……僕……やっぱり駄目です!!』
『タカシ君?!』
続く・・・
「ぎゃぼー!!!舐めてんのかこらー!!!」
「てめぇそれでも男か!!シナリオ書いた奴出て来いやー!!」
男は何処からかバッドを出し、見ていたテレビを撲殺。
横島は受付のテーブルを思いっきり叩く。
「「……ん?」」
自分以外の声を聞き、二人は同時に顔を見合わせた。
目が合い、男は驚きの声を上げた。
「ぬっ!?坊主、一体いつの間に!?この厄珍に気が付かせないとは只者では無いあるね?!」
「おいおい……おっさん。俺らは入り口から入ったんだよ」
厄珍と名乗った男の様子に横島はどう突っ込みを入れれば良いか迷った。
『私達、美神さんの道具を貰いに来ました』
「あぁ……あのえぇ乳と尻の娘じゃな、話は聞いてるあるよ」
軽く溜め息をつく、美神が来ないのが残念。と顔に書いてある。
「今日も良い乳してるか?良い尻しとるか?」
「何だか……アンタとは他人に思えねぇなぁ……」
奥へ入っていく厄珍を見ながら横島は呟いた。
黒髪時ならば赤の他人なのだが、赤髪時は近い他人に感じてしまう。
「これ注文の吸魔護符と霊体ボウガンの矢あるよ、全部で十億以上するから落とすよくない」
そう言って無造作に風呂敷を渡す厄珍。
「じゅ……十?」
桁が大きすぎ、横島は一瞬口と指で単位を数えてしまった。
だが……『一・十・百・千・万……』で止まった。
別に思い出せない訳では無い。
ただ、赤の時間が終わっただけだ。
「坊主とは趣味が合うし、お近づきの印で少し分けてあげても良いよ」
「ほえ?なぁに??」
隣で風呂敷袋を確かめているキヌに厄珍の事を聞きつつ、横島は笑う。
丁度横島から顔を逸らしていたのでその笑顔を真正面から見る事は無かった。
「私、魔導の世界広く通じてるね。色んなルートで超強力アイテム入手するね。
これはどんな馬鹿にでもサイキックパワーが宿る薬!一つ粒で三百秒効くよ」
そう言って一つの箱を取り出す。
そこには大きく『カタストロフーA』『薬事法違反品』と書かれていた。
「へぇ~凄いねぇ!」
「おわ?坊主、髪の毛さっき色違って無かたか??」
無邪気な横島の髪の色に首を傾げつつも厄珍は箱から薬を一粒取り出した。
「とにかくこれ、飲むよろし」
「あみゅ」
口の中に薬を投げ込まれ、横島は素直に飲み込んだ。
『平気ですか?』
「私この道のプロね、信用するね」
「むぐぅ……?」
不思議そうにしていると、瞳に縦に線が入り、猫の目の様になる。
次の瞬間、髪の毛が風も無いのにふわりと揺れる。
「……何?……変な感じ、前に感じた事ある……」
軽く顔を覆い、横島は虚空を見つめる。
その目には本来見えない筈の光景が見えていた。
「近い……手を伸ばせば届きそう……っ!」
軽く身体を痙攣させ、横島の姿は消えてしまった。
『横島さん!?』
「瞬間移動あるね」
驚くキヌに厄珍は冷静に教えた、だがキヌは驚きすぎて耳に入っていないらしく……
『横島さぁーん!!?何処ですかぁ!!?』
オロオロしつつキヌはとりあえず表に飛び出した。
一人残された厄珍はにやりと笑いつつ。
「まぁ……問題は副作用ね、あの坊主が無事なら店で売るね」
そんな事を呟いていた。
この後、風邪が治り……黒髪の方を実験台にした事を知った美神が店に殴りこみに来るが……
それはまた別の話。
「むぎゅ!?」
横島が現れたのは自分が住んでいるアパートの前だった。
「みゅ~……お尻打った」
痛そうに摩りつつ、横島は立ち上がる。
丁度下がゴミ袋の山だったので、怪我は無いが……痛みが無い訳では無い。
少しよろめきながら立ち上がると、小鳥達が頭を傾げつつ近寄ってきた。
どうやら落ちた時に袋から飛び出してしまった半分腐ったパンを突きに来た様子。
「ちゅんちゅん」
「ふにゃあ……力抜けるぅ」
三百秒経ったのか……飲まされた薬が切れ、横島は再びその場に座り込んでしまった。
座り込んだ瞬間、一体いつポケットに入れられたのか……強引に飲まされた薬が地面に転がった。
足元の小鳥達はパンを突く。
「うぅ?」
視線を落ちた薬へ向けると、一羽の鳥がくちばしで粒を突き……
そのまま食べた。
「あっ!!食べちゃった?!」
「ピィ?!」
驚く横島の目の前で……小鳥の身体は急激に変化していく。
最初に変化があったのは胴体、次に足。
まるで植物の成長を早回しで見ている様。
「ぁぁぁぁぁぁ!!!」
小鳥はメスだったのか、両手が翼の女へと変化して行った。
鳥の大きさは瞬きをする間に変化し……普通の人間と同じ位の大きさにまでなっていた。
かなり前に図書館で見た妖怪辞典に載っていた姿と酷似していた……
「えっとえっと……ハッピーだっけ?」
懸命に思い出そうとする横島の目の前で、翼持つ乙女は目をパチクリさせた。
「……一体何が……?」
自分の姿が普通の鳥とは違う姿に変化してしまったのを見、かなり困惑している様子。
仲間の鳥達は既に飛びたってしまった。
呆気に取られる乙女の隣で、横島の方は一生懸命思い出そうとしている。
しかし、思い出せず……
「もう良いや、忘れちゃったし」
プンッ!と頬を膨らませていた。
「そんな事より!私に何があったのかを教えるじゃん!!!」
翼を器用に使い、横島の襟を掴み上下に揺らそうとする。
だが……至近距離に近づいたせいで……まともに見てしまった。
「ほえ?」
今までどれ位の人間の頬を染めてきた、黒髪の笑顔を。
しかも首を軽く傾けるおまけ付き。
「…………」
翼で顔を押さえ、赤い頬を見えないようにする。
一体自分に何が起きているのかを考えながら。
「あっ……もしかして、さっき食べちゃった薬が原因かな??」
「何!?あれが原因か!?教えるじゃん!!あれは何だ!!」
先程よりも少し距離を作り、問いかける。
横島は思い出せる部分だけ教えた。
「んと……怪しい親父さんがくれた薬だよ。三百秒位経てば切れるんだって」
ニッコリ笑う横島に……翼持つ乙女は……
「きゅう」
距離を保っていても……撃沈した。
「ふえ!?どうしたの!!」
その場に顔を真っ赤にして倒れ、そのまま気を失って行った。
「ん……?」
『あっ!気が付きました?』
顔に冷たい物が乗せられ、ゆっくりと目を覚ます。
「れ……私、一体どうしたんじゃん?」
翼で額に乗せられたタオルを取り、辺りを見回す。
そこはアパートの一室だった。
少し古臭いが、それなりに広い部屋には……可愛らしいぬいぐるみと男性向け雑誌。
そして不思議な機械の山が無造作に放置されていた。
この部屋に数人の人物が共同生活をしている、そんな雰囲気があった。
「幸、気が付いた?」
『はい、丁度今目を覚ましました』
横島とキヌの会話を聞きながら、翼持つ乙女は首を傾げる。
その姿に横島が説明をする。
「幸、いきなり倒れるからビックリしたんだよ?そのままにはしておけないからさ、オレの部屋に運んだんだ」
丁度そこに横島を探しに駆けつけたキヌが来たので手伝って貰いつつ……
「さ……サンキューじゃん」
「えへへ、どういたしまして~」
少し照れながらも礼を言う、先程自分を気絶させた笑顔を見ないように気を付けつつ。
「……所で、さちって何じゃん?」
先程から横島の口から出てくる言葉。
一体それは何だ?と思い問いかけると、自分を瞬殺した笑顔を浮かべ。
「君の名前~思い出せないからオレが付けちゃったv」
その笑顔にキヌと一緒に頬を赤らめる。
「べ!別に、私の名前なんて付けても意味無いじゃん?どうせ三百秒経ったら……薬は切れ……」
そこまで言い、ある事に気が付く。
「……ちょっと待つじゃん!?何で外がこんなに暗いんだ!?」
慌てて立ち上がり、窓に張り付く。
表は既に暗く……夕方だった。
自分が薬を飲んだのはまだ昼間だった、つまり三百秒はとうの昔に過ぎている筈。
「ま……まさか……薬……切れてない……??」
くらっ……
『あぁ!』
「幸がまた気絶したー!!!」
驚く二人の声を何処か遠くで聞きつつ、そのまま意識を手放した。
何となく……目が覚めた時もこの二人が居てくれる事を期待しつつ。
『カタストロフーA』
その箱の裏側の注意書きにはこんな事が書かれていた。
・一度に大量に服用しないで下さい。
・一定以上の力を放出しないで下さい。
・動物に与えないで下さい。
以上の事を破ると、どんな服作用が起きるか分かりません。
一定以上の力を放出した場合……爆発する可能性があります。
動物に与えた場合……妖怪化する可能性があるのでお止め下さい。
そんな事が米粒程度の大きさで書かれていた。
その後……『幸』は何処にも行くあてが無いので、横島のペットとして部屋に置いて貰う事となるのだった。
それを知った赤髪が『女がペットー!?』と一騒動を起こすのだった。
第六話 終
こんな時期にハーピーがメインキャラに入りました。
命名、幸。
そのまんまです。
原作が数話しか出て無かったので、色々といじりたいと思います!!
・・・どんなキャラになるんでしょうねぇ?
親分「期待に答えて!参上!!」
うえぇ!?何故また親分が!!?
親分「ふっ……甘いな、ルナ公!期待に答えるのが物作り屋さ!!そしてその期待を斜め四十五度に突っ走るのが一番良い!!」
な、何で四十五度?!
親分「語呂が良いだろう?」
……そうかなぁ??
親分「ほれほれ!サッサとレスに感謝の気持ちを込めやがれ!!」
うにゃー!!何で対談になってるんですかー!!!
AC04アタッカー様>一番乗り、おめでとう御座います!
イフリートにネタを有難う御座います!
うぅん……格好良い、格好良すぎる……勿体無い。
イフ兄ちゃんの路線はまだ決めかねているので……もしかしたら戦闘すらしないキャラになるかもしれませんね。(へたれもありですねv)
Dan様>ビリーミリガン……(悶々)
そういえば、彼の中の女性人格は『レ●』でしたね。
その人格が性犯罪をやっちまったという……
冥子が活躍出来るように頑張りたいと思います!!
色々と……
柳野雫様>冥子と黒髪はホノボノと仲良しです。
多分一緒にお茶とかするんでしょうね、姉弟的に。
GSキャラは基本的に男前な女性が多いので……キャラ被ってないか不安になってみたり。
他のキャラの方向性はあまり決定してませんが、横島の設定は決定してるので……楽しんでください。
謎の親分に笑って頂いて嬉しいです。
親分「俺っちも嬉しいぜ!!」
何で出るんですか……?
紫苑様>先にやられた!!!!
まぁ……雪之丞が出てきた時に『こうなったか……』又は『やっぱりな』と呟いてくださいませv
親分召還が癖になったらどうしましょう??
親分「呼んだか!?」
おぉぉ……