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▽レス始

「横島日誌5(GS)」

マッキー (2005-02-22 19:14/2005-02-24 22:11)
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店から出た横島は、混乱しきった思考をまとめるために、自分の住むアパートへと向かって歩いていた。
アパートまでの距離からいって電車を使うほうが早いのだが、今は少しでも一人で居たかったため、徒歩を選んだ。思いつめたような顔で何事かつぶやきながら歩く彼の姿は人目を引いたが、近寄り難いものを感じたのだろう、警察官でさえ彼を避けて通っていた。
そんな周りの人間もまったく気にかけずに、横島は歩き続ける。
その頭の中には、さまざまな思いが渦を巻いていた。
一日に色々なことが起こりすぎて、思考がどうしてもまとまらない。泣きながらルシオラの転生のことを訴えるタマモ、ルシオラとの思い出、ビルで見た夕焼けなどさまざまな映像が、浮かんでは消えてゆく。

三十分ほども歩いたであろうか、いつの間にか、彼はアパートの前に辿り着いていた。自分でも、どこを通ってきたのか記憶にない。体が勝手に普段使っている道をたどってきたのだろう。そのことにも大した関心を持てず、彼はポケットから鍵を取り出した。
部屋に入ると、彼はすぐに鍵をかけ、電話線も抜いてしまう。さらに、隣の部屋の小鳩が訪ねてくることの無いよう、部屋の電気も消してしまう。

完全に一人っきりとなり、落ち着いて考えられる状況になると、彼は再び思考の海へと沈んでいった。


まず考えるのは、ルシオラのことだ。タマモには悪いが、今はルシオラのことしか考えられそうもない。
もちろん、タマモに告白されたことがどうでもいいというわけでは決してない。女にまともに告白されたのは人生で二度目であり、自分の子供を生んでもいいとまでで言ってくれた彼女の言葉は、強烈に心に残っている。

しかし、ルシオラのことは特別であった。彼は、たとえ自分自身の子供という形であっても、再びルシオラに回り逢えるという美神によって、心の平静を保ってきたのだ。それがほぼ間違いなくかなわぬ希望だと思い知らされて、彼はまるで天地がひっくり返ったような衝撃を受けた。

しばらく考えて、結局彼は自分の娘への転生によるルシオラ復活をあきらめた。タマモの言った通り、転生によって生まれるのは、同じ魂を持っているだけの、まったくの別人格だ。今こうしている自分は横島忠夫という一人の人間であり、高島とはまったくの別人なのだ。
あの美神も、前世はルシオラと同じようにアシュタロスに作られた魔族であったが、今の彼女にはメフィストであったときの記憶は残っていない。ルシオラが転生したとしても、記憶は残っていないだろう。
転生するのを待っていては、自分との思い出を持ったルシオラと再会することはできない


そう悟っても、彼の心にはあきらめるという発想は微塵も浮かばなかった。
命を捨てて自分を守ってくれた人を忘れて幸せに暮らす、なんてことができるほど、彼は器用な人間ではなかった。
それに、もしそうしてタマモと結婚して子供が生まれ、その子にルシオラが転生したとしたら・・・美神の例からして、おそらくルシオラそっくりの子供になるだろう。
その子供に、果たして自分はルシオラを意識しないで接することはできるだろうか?
少なくとも、今のように彼女を引きずっていては無理だろう。そんなことでは、自分を好きだと言ってくれたタマモに申し訳がたない。


転生に見切りをつけた横島は、ルシオラをよみがえらせる方法を考えることにした。
ここで彼はいったん明かりをつけると、押入れの中から、彼女の霊気で出来た蛍を取り出した。ちゃぶ台の上にそれをそっと置き、また部屋を暗くした。

ルシオラの唯一の遺品といってもいいその蛍は、暗闇の中でぼうっと淡い光を放っている。

それを見て決意を固めた彼は、知恵を振り絞って考え始めた。
一心不乱にしばらく考えて、なにかアイディアが浮かぶたびにその可能性を検証する。
一時間、二時間と時は過ぎていくが、彼の決意と集中力はまったく衰えなかった。


『東京タワーの周辺で“探”の系統の文殊を使って、霊波片を集めるというのはどうだ?』

『いや、霊波片の探索はヒャクメがやったんだ、あいつも一応は神族だ、俺より探査能力が劣るとは思えない。もう残ってはいないだろうな。』


『文殊に“蛍”と入れて、この蛍に流し込んでみたら?』

そう思い、目の前の蛍に文殊“蛍”を使ってみたものの、無駄に終わった。
どうも、横島の霊力の結晶である文殊から他人の霊気構造を作ることは、無理があるようだ。


『グーラーの時みたいに、“蘇”の文殊ならどうだ?』

試してみたが、これも駄目であった。

『それもそうだ。あのときは、元々のグーラーの霊気構造があったからできたんだ。霊気構造の絶対量が足りないこの場合は無理だ。』

試しに自分にも“蘇”を使ってみたが、結果は同じであった。


『ヒャクメに過去に連れて行ってもらって、ルシオラをつれてくる・・・駄目だ!
 そこまで歴史を変えたら、アシュタロスが勝ってしまうかもしれない。それに、それじゃあ意味がない。ちゃんと俺との記憶を持ったあいつじゃないと・・・』


どう考えても、良い方策は浮かばなかった。彼の心に、焦りと絶望が忍び寄って来る。 

「くそ、過去に行っても駄目か。美神さんの時は上手くいったのに・・・ん?」


彼は、自分の言葉に違和感を覚えた。美神さんの時、とはいったい何のことだ?
『俺が過去に行ったのは、ヌルの件と、美神の前世の件の二件だけだ。
そのどちらでも、美神さんを救った覚えはない・・・

というか、この記憶は何なんだ?美神さんを救いに過去に行ったという記憶はあるのに、何をしたかは覚えていない・・・何か不自然だぞ。』

そう、この記憶は、未来の横島が美神を救うために過去にやってきた、あの事件のものであった。先ほど自分に使った“復”の文殊が、美神が使った“忘”の文殊の効力の一部を打ち消したのだ。本来過去に行ったのは未来の彼なのだが、彼はそれも自分であると記憶したため、このような形で思い出されたのだ。


『どうやらこれは、記憶を消されたらしいな。それで、さっきの“蘇”で一部が復活した・・・どうやって美神さんを救ったのかは分からないが、可能性はある。
くそ、もう文殊がない。感触からして、全部思い出すにはあと三個くらいは必要か?』


今の彼は、一日に一個のペースで文殊を作れる。ということは、後三日待てばいいわけだが・・・

『そんな悠長なこと言っていられるか!』


封じられているのがどんな記憶かは判らないが、ルシオラをよみがえらせる可能性があるかも知れないのだ。待ってなどいられなかった。
しかし、今はちょうど美神の文殊のストックもない。

そこで彼は、知り合いで唯一、人の記憶を探ることのできる能力の持ち主を思い出した。
神界の調査官、ヒャクメである。彼女なら、まさにこの状況にうってつけだった。
ヒャクメに会うためには、妙神山に行く必要がある。
横島は、その日のうちに出発することに決めた。

『しかし、美神さんに報告しなきゃいけないから、出発は明日の朝か。タマモともちゃんと話しとかないといけないし、明日は事務所に寄ろう。』


そこまで考えて、彼は過酷なものになるであろう妙神山への登山に備え、眠ることにした。布団を敷いて横になった途端、強い眠気が彼を襲ってくる。除霊での戦いと精神的ショック、長時間の思考によって疲れきっていた彼は、たちまち深い眠りへと落ちていった。


つづく????

読んで頂きありがとうございます。
ふと思ったのですが、未来から横島が来た話では、ルシオラはどうなったのでしょうか?


>D様
来世というか、私は記憶を持っていないと再会とは言えないと思うんですよ。
だから、何とか今生で再会しないと、ハッピーエンドとは言えないと思うのです。

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