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▽レス始

「陰界第三話 (GS+??)」

ルナ (2005-02-21 10:33)
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「キヌ姉ちゃん、この荷物何処に置こうか」
『事務所の隅に置いておくようにって美神さんは言ってましたよ』
 美神除霊事務所は従業員にキヌを加え、今日も繁盛していた。
 今までは電話に美神自身が出、いきなり料金話へと向かっていた。
 だが電話の受付をキヌにした所……丁寧な口調と雰囲気に安心し、客が増える様になった。
 最も……安心して訪ねたら料金のあまりの高さに客の半分が驚いたのだが。

 それはそれだ。

「んじゃあ……ここかな?キヌ姉ちゃんが居てくれて助かったよ、有難う」
 荷物を隅に寄せ、横島はニッコリと笑う。
 その笑顔にキヌは『いいえぇ〜』と笑って照れる。

 横島は温泉から戻り、とても仲が良くなった。
 まるで子犬の様にキヌに懐き、姉と呼ぶようになった。
 見た目はそんなに変わりは無いのだが、実際は三百年前の娘。
 三百年前の娘+年上=お姉ちゃんだ!! そんな方程式が作られたらしい。
 ちなみに、美神と赤髪の方は「おキヌちゃん」と呼んでいる。

『美神さーん、そろそろお仕事の時間ですよー?』
 事務所の整理も終え、後は美神を待つだけになった二人。
「そういえば、美神さんは?」
 今日事務所に来てからまだ顔を見ていない雇い主に首を傾げる。
『美神さんなら今はお風呂ですよ、美神さ〜ん』
 横島の問いに答え、キヌは壁を抜けて行く。
「へぇーそうなんだぁ……(きらりん!)」


 部屋に残された横島の髪の色は……真っ赤だった。


『美神さーん』
 キヌが壁から上半身を生やし、風呂場の美神を呼ぶ。
「そろそろ?じゃ横島君に用意させておい……」
 湯船の中で本を読んでいた美神はそこで言葉を切った。
『?どうしたんですか?』
 美神は湯船から上がり、その身にタオルを巻きつける。
 目の前のキヌでは無く視線は壁に下げられている時計へと向かっていた。

 がらっ!

「わぁ!!?」
 風呂場の窓を開けると、そこには赤髪の横島が居た。
『あれ?横島さん、どうしたんですか?そんな所で』
 さっきまで部屋に居た筈の横島、だが今は瞬間移動でもしたのか……
 五階の窓に張り付いていた。
「だから言ったでしょう?この時間になったら基本的にこっちの横島君になるって。
 こーなったら煩悩丸出し男なのよ」
 説明しつつ服を着替えようとする美神。
 窓に張り付いている横島は……美神に驚いて窓に片手でぶら下がっていた。
『けど、こんな所で何してるんですかぁ?』
「そんなの良いから、助けてー!!!」

「横島君、今日の時給は十円にしとくわ」

 その言葉を聞き、横島は『ひゅるるるる・・・』と落下して行った。

『あぁ!!!横島さんがぁー!!!』
「髪が真っ赤な時は心配いらないわよ、サッサと仕事の準備するわよ」
 その頃……血の色なのか髪の色なのか分からない位……横島は真っ赤に染まっていた。


「今日の仕事は企業ビルの社長室、ギャラは大した事無いから手早く済ませましょう」
「……また記憶が飛んでるんですけどぉ」
 仕事場に来た瞬間黒髪に戻った為、横島は不安げに美神を見つめていた。
 ただ場所が移動しているだけならばまだしも……身体に包帯を巻いているので、不安は大きい。
「平気よ、中の奴は大人しかったからv」
『というより……大人しくさせた。が正しいですけどね』
 苦笑いを浮かべるキヌに横島は「そうなんですかぁ!」と笑う。
 多分、セクハラを働こうとしたのを止めた。と思っているのだろう。


 中で働いていた者達は全員が怪我をし、現在は入院している。
 送られてきた書類によると、既に何人もの同業者達がやられていた。
 共に来た助手と共に……その全てが酷い死に方をしていた。
 美神はそれを知っているが、敢えて横島には何も教えなかった。(怯えるから)
「悪霊は三十二階を占拠しているわ……だから着いた瞬間から戦いは始まってるから。気を付けて」
「『はい!』」
 二人に注意をし、美神はエレベーターへと乗り込んだ。
 少し遅れて二人も中へと入る。

 リィン……

 鈴は高らかに鳴り響き、エレベーターは動き出す。


 目的の階に辿り着き、ドアが開く。
 社長室は見るも無残な状況で、壁も床……天井も壊されている。
 窓はガラスが粉々になり、今にもこの階は壊れそうな雰囲気を持っていた。
 中で大きな力を持った存在が容赦無く力いっぱい大暴れした姿がすぐに理解出来た。
「ふぅん……かなり強い悪霊みたいじゃない。神通棍を!」
「はい!」
 始めて除霊をした時に使用して以来、愛用し続けている神通棍。
 それを横島から受け取り、本体を伸ばす。

「聞こえてる!?悪さするのもいい加減にしなさい!
 大人しく成仏するも良し!さも無くば力ずくで片付けるわよ!!」

 美神の言葉に答えたのは鈴だった。

 リィン!!!!

 その音の大きさに皆の身体が強張る。
「来た!!」
「ど、何処からですか?!」
 美神の言葉に驚く横島、反射的に辺りを見回す。
『上です!!』
「「っ!!」」
 キヌの言葉に動かされ、二人は天井へと視線を向けた。
 だが、霊の姿よりも先に目に飛び込んできたのは……瓦礫。

「わー!!?」
「危ない!!」
 美神に襟を捕まれ、強引に引っ張られる。
 その場から足が離れた瞬間……今まで居た場所は天井によって潰されてしまった。
 エレベーターの中にはまだ荷物が置かれたままになっている。
 美神は愛用の神通棍以外の武器を無くしてしまった。
「ちっ!まずったわねぇ……」

『うけけけけけ!!!』

 目の前に煙が集結し、髑髏顔が笑う。
「うわっ!?」
 髑髏顔は横島の悲鳴に嬉しそうな笑い声を上げる。
『うけけけけ!!!うけ?うけけけー!!!』
 笑ったかと思うと、すぐに首を傾げ……その後頭部を壁に思いっきり打ち着けた。
 壁は丁度頭の形に壊れた。
「げっ……人格が崩壊してるわ、一番厄介な……」
 人格が崩壊、それは理性が無いも同然。
 理性は本来の力を封じる力を持っており、行動を抑制している。
 だが、理性が無いという事は何も抑制する物が無い事。
 限界を超え、身体がボロボロになるかも?と考える必要が無い。
 だから……

『うけけけ!!!』
 神通棍に体当たりしてくる悪霊。
 反射的に神通棍で受けるのだが……腕に思った以上の力が来る。
「うっわ!?つ……強い?!パワーが足りない!!」
 その力の強力さに驚き、首から下げている聖霊石を引きちぎる。
 常日頃からネックレスとイヤリングにしている聖霊石。
 それはどんな悪霊にでも効く力を持っている。
 だが、相手の力が強すぎると目くらましにしか使えない。
「今のうちに!」
『うけ??』
 目を押さえ、悪霊は辺りをウロウロとしている。
 一同は一時的に悪霊の前から姿を消した。
 人格が崩壊しており、記憶力も無いのですぐに美神達の事を忘れた。
『うけ〜』
 そのまま目の前の瓦礫に体当たりを始める。


 その姿を見つつ、美神は深く深呼吸する。
「はぁー……やばかったぁ……神通棍だけじゃ歯が立たないわ、まずいわねぇ」
 物影に隠れ、一同は悪霊の様子を見つつ相談を始めた。
『まずいですか?』
「そうね、このままじゃ私も横島君も死ぬわ」
 直球。
 隠しても仕方が無い事とはいえ、直球すぎた。
「ふえぇ……?」
 美神の言葉をすぐには理解出来ず、瞳を潤ませる。

 死ぬ。

 命が無くなる事。

「しぬんですかぁ?」
 震える横島、その手は自然とポケットへ伸ばされる。
 もう片方の手は美神の服の袖を掴んでいた。
「うぅん……このまま何もしなきゃね」
 目は悪霊を見つつ、答える。
 このまま何もしなければ死ぬ、だが何かすれば助かる可能性もある。
「あんな安いギャラの仕事で死ぬなんて、絶対に嫌だし……って」
『あれ?横島さん??』
 振り向くと、そこには横島の姿は無かった。
 キヌも悪霊を見ていたので気が付かなかったらしい。
「一体何処に?!幾ら鈴があっても、あんな強い奴じゃ祓い切れない!」
 黒髪ならば美神の傍を離れる事は無い、だが……赤髪ならば何をしでかすか分からない。
 美神は腕時計に目を向けるが、まだ変化する時刻ではない(筈)。
『私、探して来ましょうか?』
「お願い!」
 あれから全く銀髪の存在は出て来て居ない、だから今回も出て来ないかもしれない。
「私はここに結界を作るから、横島君を見つけたら連れて来て!」
『はい!』
 悪霊の視覚に入らない様に天井近くを飛ぶキヌ、美神は素早く床にペンで結界陣を描く。
「頼んだわよ……おキヌちゃん……」


『うけけけけけけ〜♪』
 悪霊は近くにあった植木鉢を粉々にしつつ、笑っていた。
「……」

 リン……

『うけ?……うけけ!!!!!!!』
 聞こえてきた音に反応し、顔を上げる。
 しばし考える素振りを見せた後、思いっきり飛躍する。
 天井を腕で抉りつつ、音の聞こえた方へと向かった。
『がう!!!』
『うけ!?』
 天井の一部を崩しつつ進む悪霊の身体へと一匹の虎が向かっていく。
 虎は悪霊の喉元へと真っ直ぐ向かう。

「査」

 鈴の音と共に静かに聞こえる声、悪霊は喉元を虎に噛まれつつそちらを見ようとする。
 だが……その前に、自分のまわりに白い線が走り出す。
『うけけけ!!!』
 白い線が繋がる直前、悪霊は虎の頭部を力いっぱい叩く。
『がぁ!!』
 理性の無い相手の打撃を喰らえばひとたまりも無い、虎はすぐに喉元から離れた。
 白い線から飛び出し、悪霊はそのまま逃げてしまう。
「っ……逃がしたか」
 追いかけようと足を動かすが、その前に虎が前を遮った。
 まるで追うなと言いたそうに。
「……我の時間は……短すぎる……確かに、このまま追えば別の者になり……やられるだけか」
『がう』
 虎は頷き、そのまま消えて行った。
「……分かっている……分かっているさ……」
 そう呟き、持っていた小太刀を握り締めた。
 鈴の音が聞こえる。


『横島さん!!』
 名を呼ばれ、横島は顔を上げた。
 そこにはキヌが嬉しそうに笑っている。
『良かった!無事だったんですね!心配したんですよ!?』
「……すまなかった」
 そう答え、ゆっくりと前髪の色は黒へと変色して行った。

「……?あれ??キヌ姉ちゃん、ここ……あれ?美神さんは?」
 不安げな表情を浮かべ、横島はキヌを見上げる。
 横島の上目遣いに頬を赤らめつつ、美神の事を思い出す。
『あっ!早く横島さん!美神さんが結界を作って…「バチバチ!!」…!?』
 キヌの言葉を遮り、何かがぶつかり合う音が聞こえた。


「くっ!!!」
 結界の中、美神は神通棍を握り締める事しか出来なかった。
『うけけっけ!!!!』
 楽しげに結界の壁に爪を立てたり、体当たりをする悪霊。
 横島を結界の中に入れ、美神が悪霊の気を引き……その間にエレベーター内の札をキヌに持ってきて貰うつもりだった。
 ちなみに……赤髪だった場合は横島を囮にするつもりだった。(酷っ)


 だが……それよりも早く、悪霊がこちらに来てしまったのだ。


 横島を入れる筈の結界に自分が入る事に。
 相手の力が強すぎる為、美神は身動きが取れなくなってしまった。
「まずっ……このままじゃ……」

「美神さん!!!」
『大丈夫ですか!?』

 動く事が出来ずに居る美神の耳に届く声。
 驚いて顔を上げると、走ってくる横島とキヌの姿が飛び込んで来た。
「!?来ちゃ駄目!!!」
『うけ?』
 結界に爪を立てるのを止め、悪霊は顔を上げる。
 その瞳が一瞬輝いた気がした。

 悪霊の次なる標的が決まった様子。

「え?」
 ゆっくりと身体を揺らしつつ、悪霊は笑う。
『うけけけけけ!!!』
「横島君!!早く逃げて!!」
 結界内で立ち上がり、美神は叫んだ。
 たとえ中に強い人格が居ようとも……横島は一般人、ゴーストスイーパーでは無い。
 突然立ち上がったので少し立ちくらみになりつつ美神は逃げるように命じた。
『横島さん!!』
 隣に浮いていたキヌが横島の服を強引に引っ張る。
 だが、横島は動こうとしない。
 真っ直ぐ。

 悪霊を見つめるだけ。


『ウォォォォォン!!!!』


 悪霊が横島の目と鼻の先まで近寄った瞬間、何処からか獣の声が轟く。
『うけぇ!!?』
 獣の声に注意を取られ、悪霊は身体を止める。
『こ、この声……何処から?』
 横島の服を握り締めつつ、キヌは周囲に顔を向けた。
 結界の中で神通棍を杖代わりにしていた美神も周囲に注意を向ける。
 近く、そして何処までも遠い場所から声は聞こえて来ていた。
「声自体に力が込められてるわ……上手く行けば、このままあいつを消せるかも……」
 一体誰が何処から……疑問は尽きないが、現在の装備ではどうしようも無い相手。
 このまま声で消えてくれれば助かる。
 しかも、こっちは札一枚使う事無く除霊が出来る!!
 今回の装備の中で最強の八千万の札も使わずに済む!!!
 そんな事を考えていたりする。
 何気に、後半の方が考えの中心だったりする。


「たくっ……うけうけうるせぇんだよ……」

 美神の思考を止めたのは……キヌに服を掴まれている…………横島だった。

「よ、横島くん?」
『どうしたんですか!?』
 何時の間にか下を俯いているので表情は見えないが……髪は黒いまま。
 淡く発光する左手を握り締め、横島は体勢を低くする。


「てめぇは黙って逝きやがれ!!!!」


 普段のどちらの横島とも重ならない姿。
 どちらかと言うと……今の雰囲気は『不良』と言った方がシックリくる。
 淡かった光は強くなり、閃光へと変化し……

『うけぇ〜!!!』

 目の前の悪霊の身体を拳と共に貫いた。
 顔を上げた瞬間、見えたのは……猫の様に金色に染まった瞳。
 拳に霊力が込められていなければ、悪霊は無傷なのだが……
「やっ……やったの?」
 身体を貫かれた悪霊は煙となって消えて行った。
 残されたのは……三人だけ。


『凄いです!!美神さんでもてこずった相手を一撃で!!』
 掴んでいた服を上下左右に揺らしつつ、キヌは興奮していた。
「本当……あの声で動きが封じられていたとはいえ……凄いわ」
 結界内から出、美神は横島へと駆け寄る。
「ほえ?」
 だが、返って来た声はいつもの横島だった。
「あれ?さっきの霊はどうしたんですか?」
「『えっ?』」
 辺りを見回し、横島は首を傾げている。
 その姿は……先程の不良とは全く重ならない。(赤とも重ならないが)
「あっ!もしかして美神さん、除霊終わったんですか?」
「そ、そうだけど……今回は貴方が……」
 返された言葉に半分転びかけつつ、美神は苦笑いを浮かべた。


「やっぱり、美神さんは凄いですねー!
 あんな強い奴をやっつけちゃうなんて!」

 何処までも無邪気に笑う相手、美神は出しかけた言葉を飲み込み。

「ほーほほほほ!!私に不可能は無いわ!」
 とりあえず、自分がやった事にしておいた。
『い……良いんでしょうか?』

 一応、誰にも迷惑はかかってないので……良いのかもしれない。


 その後……どうにか地上へ戻り、美神は雇い主へ値段の交渉をした。
 あれだけ強い霊だったのだ、最初のギャラでは納得出来ない。
『あれを倒すのに……かなりの札を使い、愛用の神通棍は壊れてしまいました。
 これでは赤字になってしまいます……から、ね?』
 そう訴えると、向こうはすぐに報酬の額を上げてくれた。
 その手に何かが握られていたかもしれないが……敢えて考えないで欲しい。


 この日、損失は聖霊石一個でかなりの儲けが出た。

 本人知らぬ所で活躍した横島へは臨時ボーナスが出……その日はちょっと豪華な夕食を食べる事が出来たのだった。
「えへへ〜vカップラーメンに、卵とご飯入れちゃったv」
 ……ちょっと量が豪華です。


 第三話 終


今回、ようやく第四の人格を出す事が出来ました。
出しても違和感が無い瞬間を必死に探し……キャラの性格上で違和感が無い部分をどうにか見つけました。
初登場時に「うけうけうるさい」という言葉が『受け受け』と変換した自分のPCに拍手を贈ります。
確かに……自分の中ではそんな位置付けですが、キャラに言われると一瞬びびります。(気のせい)


奥歯が唐突に欠けたりしても!レスがあれば万事OK!!
本当に有難うございます!!


紫苑様>これからおキヌちゃんと幼横島は天然コンビで事務所の売りになります!
仕送りについては後に出しますが……原作よりは多いです。(変換したら『死贈り』と出ました)
おキヌちゃんはどの横島に惹かれるんでしょうねぇ……?


柳野雫様>無理です!!(キッパリ)鈴はこれからも苦労します。
赤が居なかったら間違い無く……テントの中でピンクな事が行われ……恐ろしい。
そして突っ込みが居ない!これはかなり凄い事かもしれません。
漫才にならへん!!ボケっぱなしやー!って感じで。
雪之丞との戦いはまだ考えていませんが……ピートが壊れたら、こいつも壊れる可能性が高いです。
目指せ!!男女混合ハーレム!?って所ですね。

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