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「繋がりの年代記 八話(GS+終わりのクロニクル)」

伏兵 (2005-02-20 17:29)
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「横島・忠夫。二十二歳。美神除霊事務所所属のゴーストスイーパー……見習い。霊波刀使い。文珠使い。人外のものに好かれる体質。無類の女好き。非幼女趣味。五年前のアシュタロス大戦ではキーマンとして活躍し、神魔との交流も厚い。……立派な経歴ねえ」
「何か微妙な単語があったけど気のせいっスか?」
「書いてあるのを読み上げただけよ。オカルトGメンのデータにあったのを」

 苦笑する老女を前に横島は渋面をつくる。

「まあ、間違ってはおらんなあ」
「Tes.」

 横で、カオスとマリアが頷く。
 書いたのは西条だな、と胸中で結論づけ、後で魔鈴にでも適当な噂を吹き込んでおこうと思う。
 UCAT、とマリアは言った。
 マリアに手を引かれてやってきたIAI。その裏の顔だというUCATの開発室。
 そこで待っていたのは顔なじみのカオスと、初対面の月読という名の老女であり、二人から十の異世界と概念の話を聞かされた。
 月読が更に書類を読み上げる。

「高校卒業後、両親に拉致されてナルニアへ。そこで二年間を過ごした後、帰国。帰国後すぐに妙神山へ修行へ行き、正式に事務所に復帰したのは半年前、か」
「そのせいでいまだに見習いっスけどね」

 答え、軽く肩を竦める。

「それで、――俺に何を期待してるんスか?」
「各Gと戦後交渉をする上で、確実に武力衝突が起こる。そのための戦力が必要なんじゃ」
「UCATはオカルト関係には少しうとくてねえ。そこの痴呆老人に協力してもらってるのもそのためさ」
「――雪之丞に頼めよ。あいつならそーゆーの好きだろうし」
「伊達・雪之丞とは連絡が付かん。あの戦闘狂はしょっちゅう世界中を放浪しておるようでな」
「それで俺か……」

 概念。十の異世界。全竜交渉。
 引き受けても構わない、とは思う。だが、

 ……なんだかなあ。

 積極的にやりたいという気がおきない。
 何故だろう、と考えるが、結論は出ない。

 ……なんだかなあ。

 再度思ったところで、カオスが頷いた。

「決心が着かぬようなので、一つ面白い話をしようかの。――横島、お主、アシュタロスの件を覚えておるじゃろう?」
「……そりゃ、忘れられねえって」

 五年前の一件を思い出し、横島は軽く頭を振った。

「――それで?」
「エネルギー結晶。あの戦いにおけるキーアイテムを、お主はどうした?」
「……壊した」
「何で?」
「文珠で、だ。……カオス、回りくどい質問はやめてくれ。つまり何が言いたいんだ?」

 こちらの言葉に、ふむ、とカオスは頷きを一つ。

「ならば結論から言おうか。――ルシオラの蘇生が可能じゃ」
「――――」

 横島は目の前の老人が言った言葉を反芻した。
 理解するのにたっぷり五秒、

「――ホントか!?」
「技術的には可能じゃ。コスモプロセッサの残骸を解析し、概念技術を用いて複製した。あとは相応のエネルギーさえあれば限定的ながら起動できる」
「……相応のエネルギー?」
「そう。あれの仕組み自体は結構簡単じゃった。あとは起動に必要なだけの、莫大な霊的エネルギーさえあれば起動可能じゃ」
「じゃあ文珠で――」
「文珠では無理じゃよ。文珠はあくまで変化と誘導……幾千幾万の魂を加工圧縮したエネルギー結晶の代わりは務められん」

 横島はカオスを半眼で睨み、

「……つまり、机上の空論か?」
「そこで最初の話に戻るんじゃな。……お主がエネルギー結晶を壊した時、何の文珠を使った?」

 問われ、横島は思い出す。
 あの時の選択の結果、彼女の未来を奪ったのは、

「……“砕”……」
「そう。“砕”、じゃな」

 言って、カオスは拳を握り、

「あの時、エネルギー結晶は微塵に“砕”かれた。――砕かれただけじゃった!」

 そして砕け散った結晶を表現する動きで、握った拳を大きく広げる。

「元は魂。砕かれれば天に還り地に還り、輪廻転生の連なりに戻った事じゃろう。――しかし。しかし、じゃ」

 こちらの瞳を見据えてカオスは言い、

「既に“エネルギー結晶”として加工されていた魂は、微塵に砕かれ四方八方世界中に飛び散った後、また“エネルギー結晶”として集まり、元に戻ろうとする!」

 広げた手を握りこんだ。
 ごくり、と喉が鳴る。身体を襲う震えを気にせず、横島は目で続きを問うた。
 問いに答えた動きがあった。
 月読だ。老女は幾重にも封をした小箱を取り出し、中から魂の輝きと濃密な霊気を放つ、結晶片をつまみ出す。

「“エネルギー結晶”という性質上、大きなエネルギーに惹かれるようでね……概念核に惹かれて来たのを、採取したの」
「これだけはまだ起動は出来んがな。最低でも元の大きさの三分の一はないとダメじゃが」

 言い終え、カオスは湯飲みに口をつけた。
 中の茶を飲み、一息。

「――面白い話じゃったかな?」


                 ○


 UCATの本拠、IAIの大型輸送管理棟に偽装された建物を出た横島は、夜のIAI敷地内を正面に向かって歩いていた。
 備え付けの電話を使い、美神のところへ連絡をつける。

 ……怒ってるだろうなあ。

 持っていた携帯電話を、戦闘の検証の為に必要だという事で預けた。その際に見た着信履歴が、美神からの番号で埋まっていたのだ。
 覚えている番号をプッシュして、コール音一つで相手が出た。

「――横島クン!?」

 美神だ。
 声の具合からして、怒っているというよりは、

 ……心配してくれた?

「ああ、はい。俺っス」
「――どこで何やってたのよ! 暗くなっても連絡来ないから何かあったのかと、何回かけても電話繋がらないし――」
「心配かけてすんません。怪我とかじゃなくて、実は」

 そこで言葉が止まった。なんと説明すればいいのか。
 実は除霊の後に妙な空間を見つけて入ってみたら異世界の人狼が少年少女を襲ってて助太刀して何とかその場を凌いだらマリアが現れてカオスの元へ、

「カオスの実験に巻き込まれてました」
「カオス? そういえばあの痴呆症、最近いいパトロン見つけたとか言ってたけど。何企んでたの?」

 問われ、横島は一瞬返答に詰まり、そして答えた。

「コスモプロセッサの複製っス」
「っ、……そう」

 息を呑む音が確かに聞こえた。
 だが横島はそれを無視して続ける。

「その事で明日、話があるんスけど」
「ちょっと待って」

 書類を漁る音の後に、返答。

「――いいわよ。明日は仕事も一件だけだから」

 横島は頷き、言う。

「じゃあ明日。――今日はそのままウチに帰ります」
「そうしなさい。あと、……連絡ぐらい、入れなさいよ。前みたいにいきなりナルニアに消えたりしたら、タダじゃおかないわよ」
「親に拉致られたんだから仕方ねーでしょうが」

 苦笑。

「んじゃ、――また、明日」


              ○


 夜の室内。
 灯りは部屋の中央の天井からぶら下がっている、小型の電鬼一匹のみだ。
 開け放たれた窓から差し込む月光は、魔界の月らしく血のように赤い。
 部屋に居るのは一人の女魔族。
 彼女はクローゼットに収納していた機関銃や、床板の下に隠してあった手榴弾などを一箇所に纏め上げている。

「意外に多いものだな」

 襲撃を警戒しての装備だったが、この部屋、魔界軍の寮に引っ越してきてから百数十年、一度も襲撃などはなかった。
 纏め上げた武装の中から、なるべく持ち運びに手間取らないものをより分けていく。

「……大半は置いていく事になるか」

 渋面をつくる。
 が、隣室のべスパにでも渡せばいいか、と結論づけて作業を続ける。
 より分けた武装を大きなトランクケースに詰め込み、さらに服や雑貨などといった私物を詰め込んだ。
 そして使い古されたトネリコのデスクの上、二つの写真立てを手に取る。
 一つは新しいもので、映りも鮮明だ。多くの人と人でないものが一堂に会した、記念写真。
 写真中央に映るのは額に赤いバンダナを巻いた少年だ。人狼の少女と蝶魔の幼女に抱きつかれて照れている。
 少年の右後ろに、自分が映っている。少年の肩に手を置いていたことで、後で色々と言われたものだ。

 ……懐かしい。

 微笑を浮かべ、もう一つ、かなり古い方の写真立てを手に取る。
 そこに映っているのは四人。今の自分に良く似た容姿の金髪の女性と、弟に良く似た容姿の黒髪の男性。
 その二人に挟まれる形で、幼い自分と弟とが並んで映っている。
 それを見て感じるのは懐古の念ではなく逡巡だ。それを自覚して、自嘲する。

「私も腑抜けたものだ。――まだ迷っているとはな」

 呟いて。
 ワルキューレは、新しい方の写真を握りつぶした。


             ○


打ち切ってませんよ。
まだ1st-G戦、ワルキューレ&ジークvs横島、2nd-G戦、雪之丞vs横島、3rd-G戦、タイガーvs横島、とかそういうのが残ってますから。いやタイガー微妙ですけど。
大幅に遅れて伏兵です。
何か前回投稿が1月の20日辺りなんですが。これはあれですか、MPLSとか奇跡使いとかスタンド使いとかの攻撃ですか?
間が空きまくった事を深くお詫びしつつ遅れた理由を述べればそりゃあ、

戦闘シーンないからですよ。

会話が苦手っていうのは致命的だと思うのですがどうでしょう。

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