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▽レス始

「心眼は眠らない その47(GS)」

hanlucky (2005-02-19 19:06)
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(コイツは今、なんて言った?)

久方ぶりに顔を合わせたと思えばなんだというのだ。
第一、封印されていたお前と違った、私はずっと時を重ねてきたんだといいたいだろう。

(よし、少し落ち着け……あの馬鹿が言ったセリフ……………………老けたな?)

メドーサは悠闇が最後に口走った言葉を吟味する。

(老けた……ははは、そうかい、そうかい。)

間違いなくメドーサの血管は何本が切れているだろう。
だがそれでも超加速が途切れないのは多分……

(アンタの方が年上だってのに、そんな事言うかい!?)

怒りを通り越して何とやらというやつなのかもしれない。

(いろいろ聞きたい事があったけどね……もうどうでもいいよ!!)

やはり、知り合いに言われるのは流石に堪えたようだった。
それはメドーサの目元が微妙に濡れていたのが何よりの証拠だろう。


――心眼は眠らない その47――


「む?……如何したというのだ?」
『わかんねえのか?……(天然かよ。……つーかアレ泣いてるんじゃ?)』

沈黙を保ったメドーサを見つめる悠闇と横島。
メドーサは考えが纏まったのか、こちらを睨みつける。
その目が微妙に赤いのが、実に同情を誘う。

「……もうわかったよ。どうやら私がアンタに送る言葉は一つのようだ。」
「ほう、何だ?」

本当にわからないから教えてくれといった感じの悠闇。

「……死ね。」
「淡々と言われるとかえって迫力があるな。」
『はえ!? できる限り、体に優しくな、な!!』

メドーサは距離を詰めて刺又を突き出す。
その速さは、悠闇の予想を上回っているようで、完全にかわせない。
悠闇の肩から鮮血がほとばしる。

『おいおい!? 俺の体なんだぞ!! マジで頼むぞ!!』
「ふむ、やはりストレートに言い過ぎたか……もっと柔らかく包み込んだ言い方の方が良かったと思うか?」
『んなもん知るか!!』

メドーサは一撃目は放ったと同時に、すぐに悠闇の背後に回る。

「やれやれ、再開の挨拶にしてはあまり頂けぬな。」
『誰でも、あんな事言われたらキレるだろ?』
「……なるほど、今度から気をつけよう。」

メドーサは悠闇の背後を取る一瞬、悠闇を視界から外してしまう。
そして悠闇にはそれだけで十分であった。
悠闇の姿がメドーサから消える。

「―――!?(相変わらず、ふざけたヤツだね!!)」

存在はしている。
だが見つけられない。
遮蔽物など全くないというのに見つけられない。

(ちょっといいか? どうやったらこんなに相手に見つからないようになれるんだ?)
(珍しいな? おぬしから戦い方を教えて欲しいように願うとはな。)

あの横島が今の悠闇の戦い方を知ろうとしている。これで驚かないやつはいないだろう。

(いや、だってな。これがアレば、やばくなったらすぐ逃げられんじゃん。何て俺に合った戦法なんだ!!)
(……まぁ、志はどうあれ、覚えようとしているならとやかく言わぬ。)

ちょっとガックリしながら悠闇は説明を始める。

「何処を見ている、白蛇!! ワレはここだ!!」
「ちっ!! いつの間にそんなところに!!」

先ほどまで、メドーサの近くにいたはずの悠闇はいつの間にか、メドーサからかなり離れた位置に移動していた。

(気配遮断の基本は、己の霊力を完全に消した後に、己の気配を隠す事から始まる。)


ゴォォォォォォ!!


メドーサは竜魔砲を悠闇に放つ。

(ここで隠すというのは消すという意味ではない。)
(へ? 単純に気配を消したらいいんじゃねえの? まぁそんな事できねえけど。)

悠闇はメドーサが放った竜魔砲を、最小限の力で弾く。
かわしてもいいが、それでは態勢が崩れるため、追撃を凌ぎきれない恐れがある。
メドーサはその間に再び距離を詰めて、刺又を横に振るう。

ドシッ

「くっ!? 相変わらずの馬鹿力が!!」
「失礼な言い方じゃないか!! 姑息な事しか出来ない、弱虫さんが!!」

悠闇は回避は間に合わないと判断したのか、腕に霊力を籠めてガードをする。
だが、メドーサの一撃はそのまま悠闇を弾き飛ばす。
メドーサは追撃しようとするが、またもや悠闇を見失う。
そして悠闇は再び気配を消す。

(擬態、己自身を消すのではなく、周りの環境の合わす。気配を消すのも悪くはないが、所詮それでは二流。一流の相手には効かない。)

悠闇はそのまま気配を消したまま、メドーサの後ろを取る。
メドーサは辺りを見渡しているが、悠闇の動きに全く気付いていない。

(後は、一瞬でも敵の視界から外れる事だな。一度、視界から外れる事に成功すれば―――)

ドォォォォンッ

「―――!? ぐっ!?」

悠闇はメドーサの真後ろから霊波砲を放つ。
メドーサは悠闇が放つ際に出た殺気で気付くが、回避することは間々ならない。
何とか、防御に全身全霊を注ぐ。

(―――このように幾らでも奇襲は可能。)

悠闇は再び、姿を消す。

(……心眼、地球に帰ったからすぐに、このコツを教えてくれ。)
(ほう、やる気十分ではないか。……で、その使い道は?)

大体わかったいるが、あえて横島の答えを待つ悠闇。
そして横島も、期待を裏切るつもりはない。


(決まってる!! これがあれば覗き撲滅部隊など敵ではない!!)


やはり撲滅部隊、再結成されていたらしい。

(…せめてその頑張りを他のところにつぎ込んでもらえれば、ワレも苦労せずにすむ……いや、言っても無駄か。)

長い付き合いで悟ってしまった悠闇であった。

(はぁ〜……まぁいい、この戦いで感覚を掴め。)

今度はメドーサの真正面から接近する悠闇。
だがメドーサは気付けない。メドーサは目の前には誰もいないと認識してしまっているから気をとめないようだ。

ドスッ

「ガハッ!? ギッ、キサマ!!」

悠闇の右蹴りが、メドーサの脇腹を直撃する。
霊波砲の時と違い、気付いてから、攻撃がくるまでのタイムラグがあまりにも短すぎたようだ。

「弱くなったな……白蛇。」
「それはお互い様だろ!!」

メドーサの刺又が悠闇を貫こうとすれば、
悠闇はその切っ先に衝撃を加えて、方向を逸らす。

「やれやれ、年は取りたくないものだな。なぁ、白蛇。」
「絶対コロス!!」

メドーサの超加速が解けていないのは、悠闇の言動が天然と分かっているからかもしれない。
それでも、腹が立つのは抑えられないようだが。

「何度も同じ手を使わせないよ!!」

メドーサは今度こそ、悠闇に気配遮断を使わせないため、常に接近戦を仕掛ける。
悠闇が気配遮断を使用するには、一度相手の視界から外れないといけないのだから。

「そうそう、この技は横島のモノなのだが、受け取ってくれ。」
「何!?」

パァァァァン

「なっ!?」
「ネーミングセンスはゼロだが、効果はその通りだ。」
『サイキック猫だましの何が悪いってんだよ!!』

メドーサは接近戦を仕掛けて、悠闇を押していたが、悠闇が横島の十八番であるサイキック猫だましを巧みに使う。
見事、メドーサは引っかかり悠闇を見失う。
その間に、再び気配を消して、メドーサの死角に入り込む。

(喰らえ。)

気配遮断は、優れた技法ではあるが弱点も存在する。
それは、いくら移動している時は敵に気付かれなくても、攻撃に移る時には必ず殺気や霊波を放出してしまう。
そうなると、自分の居場所が発覚してしまうので、タメの大きい攻撃は気配遮断の特性を殺してしまうという事だ。

「動くな。」

だが悠闇だからこそ、気配遮断を使用しながら全力の一撃を放つことが可能になる。


邪眼・開闢


何故なら彼女は、呪われし邪法を取得しているのだから。

「グッ!?」

アシュタロスはこの程度の邪眼と言い捨てたが、同レベルの相手なら、十分に拘束する事が可能な邪眼である。
気配遮断で相手の死角に入る。
次に邪眼で相手の動きを止める。
相手が動けない内に、最大の一撃を放つ。
これが悠闇が得意とする戦法の一つであった。

(失敗だな。両腕が動かなくなるとは……)
(ギャンブルじゃねえか……)

たまには失敗する事もあるようだ。
横島が悠闇のこの戦法を運任せだとツッコミを入れているが、
失敗したところであまり危険はないので、左程気にするモノでもなかった。

「解」

すぐに邪眼を解除して、己の両腕を解放する。

「やってくれたじゃないか!!……でももう力は残ってないだろう?」

メドーサは悠闇がもう限界に近い事を見切ったようである。

「ご明察……と言いたいところだが、我らの勝ちのようだ。」
「何?……まさか!?」

メドーサはある方向を振り向く。


ドグワァァァァァァァァン


メドーサが振り向いたと同時に、アンテナがたった今、崩壊した。

「ば…か……な。」

メドーサから戦意が消えていく。
と同時に超加速も解除されてそのまま月面に降りて、座り込む。
悠闇も無理やり持たせていたが、メドーサの状態を見て、もう終わりだろうと判断したのか、横島と入れ替わる。

   ピキッ

ボキッ

   ボキボキボキッ

「う!?……心眼……腕が…足が…ピキッって、ボキッって」
『……まぁ、なんだ。その程度ですんだのだから……すまぬ。』

骨が確実に折れていると思われるのだが、竜気のおかげでなんとか動ける横島。
これで竜気が切れれば、絶叫は間違いないだろう。

「お…覚えてろよ。この借りは必ず体で返してもらうからな。」
『……さて、とりあえずはメドーサが気になるな。』

覚える気ゼロの悠闇であった。


「ははは……これで私も終わったね。」

横島は悠闇に頼まれて、メドーサの傍に寄る。

『白蛇、聞きたい事がある。おぬしの上にいるのはアシュタロスで間違いないな。』
「!?……全く、何処まで知ってんだい。まぁ、いいさ。……その通りだよ。」
「あっさり言うな。どうしたんだよ?」

メドーサがこうも簡単に自白するとは思わなかったのか、横島はメドーサを怪訝そうに見つめる。

「……この任務が失敗すれば私は間違いなくお払い箱。いや、連中に抹殺されたって文句はいえないからね。……まぁ、簡単に言えば……もうどうでもいいのさ。最後の腹いせで横島を殺すのも悪くはないが……アンタと再開したらそんな事もどうでもよくなったよ。」

メドーサの失敗は自分は気付いていなかったが、悠闇との戦闘を楽しんだ事だろう。

「で、どうするんだい? どうせ死ぬなら、同胞の手にかかって死にたいね。」
『……いいだろう。横島、式神の準備をしてくれ。』
「あ、あぁ…わかった。」

横島は言われたとおりに、悠闇の式神を作成する。
それと同時にバンダナから結晶が現れて、式神に乗り移る。

「……なるほど。以前より確実にうまくなってるぞ、横島。」

横島は悠闇に褒められているのに、何も答えない。
これからメドーサに起こる事を考えれば、はしゃぐ気も失せるのだろう。

「すまないが、横島は先に美神どののもとに戻ってくれぬか? 最後に二人きりで話をさせてくれ。」
「おぉ、わかった。……大丈夫なのか?」
「馬鹿が気遣いをするな。とっとと行け。」

横島はあまり納得していなかったが、美神たちが居るアンテナの方に向かっていった。
ただ横島の動きが非常に怪しかったが。

「……さて、何から話せばいいのやら。……そうだな、とりあえず、何故おぬしは堕天したというのだ?」
「いきなりそれかい?……本当に下らない理由だよ。」

戦争終結後、悠闇はすぐに封印刑を受けたので、その後何が起こったのか全く知らなかった。

「簡単さ。戦争が終結すれば、戦争屋はいらないってことさ。」
「軍縮か?」
「酷いもんさ。アンタの封印刑をきっかけに多くのものが封印されていったよ。連中が復活するとすれば、それはもう一度戦争が起こる時だろうね。」

何故このような事が起きたかといえば、戦争末期に悠闇達によって魔界軍の少将を滅ぼしたのが大きかっただろう。
そのため力のバランスが天界に大きく傾いたまま戦争が終結したので、力の均衡を保つためにも、多くの者を封印刑に処さねばならなかったようだ。
そして、その中にはメドーサの部下も多くいた。

「まさか!? 自分の部下の封印を解除するために、再び戦争を起こそうと……」
「はっ!! 馬鹿言わないで欲しいね。ただ、あのままじゃ私も封印刑にされそうだったから。……それが嫌だっただけさ。」

話は終わったと、メドーサは目を瞑る。

「……抵抗すれば、ワレを倒す事など造作もないのだぞ?」
「黙れ。ここで生き延びた所で、地球に戻れば、殺されるだけさ。流石の私も魔神に勝てるとは思ってないさ。さっさとやってくれ……これ以上、生き恥を晒すつもりはない。」

生き恥、それは堕天した事をいっているのだろうか?

ただ今のメドーサの顔が語っている。

”お前に殺されるなら、それもいい”

メドーサは力が弱りきっている悠闇でも自分を殺せるように、出来る限り力を抜く。この状態なら、悠闇が全力で霊波砲を放てばメドーサは滅ぶだろう。

「……本当にそう思うか?」

悠闇は問いかける。

「本当に勝てないと思うか?」
「何を言ってるんだい?」

悠闇は続ける。

「本当に魔神に勝てないと思うか?」
「……は?」

メドーサはどうかしたんじゃないかと悠闇の目を見る。
その瞳からは一つの言葉が浮かぶ。

「ど、どうかしたんじゃないのか?」

その瞳を見たメドーサは、思わずどもってしまう。

「何故恐れる? 何故勝てない? 何故戦おうとしない?」
「そんな事決まっ―――?」

何か自分の言おうとした言葉に違和感を感じるメドーサ。

「そうだ、何故決まっている。相手が魔神だからなんだというのだ? 前例がないからだとでもいうのか? このまま敗者で終わるつもりか?」

その瞳に籠められた思いは”不屈”。

「聞け、ワレが考えついた策だ。」


悠闇は自分が平安京の事件の後から、考えてきた案を語る。


「……くっくっく、あっはっは!! 無茶苦茶もいいところじゃないか。それで、あの化け物との力の差を覆すっていうのかい?」
「だがこれが最も現実的だ。これでヤツを倒せねば……アレを使えと上から命令が下るだろう。」

アレとは悠闇の切り札であり、魔界軍の大佐と少将を葬ったモノ。
メドーサがその一言で笑うのを止める。

「……使うのか?……いや、使えるのか?」
「使える。だが使うぐらいなら死を選ぶ。」

アレを使うにはいくつかの条件を必要とする。
アシュタロスに発動させるには、正確にはあと一つの条件を満たさなければならなかったが、それは発動時にしか満たせないものであるため、事前の準備はすでに整っていることになっていた。

「使える?……もしかしてアレで?………………ぷはははははは!!! マジかい!? いつの間に!?
「だっ黙れ!!」

何故か笑い転げるメドーサ。
そして顔を真っ赤にして怒る悠闇。
先ほどまでの緊張感はなんだったのだろう。

「いや〜〜〜まさかこんな事でアンタの弱みを握れるとは思ってもなかったよ。まぁ……そんなものかもしれないね。」

メドーサも笑い終わって少しは落ち着いたようだ。

「しかし、本当にいいのか?」
「問題なかろう。……どうやら連れも来たみたいだぞ。」

悠闇が指を指した方向には、タマモが疲れた表情でこちらに向かっていた。

「メドーサ様!? アンテナ、壊されてるじゃないですか!? あ〜〜〜これで私もお払い箱か〜〜〜〜。」

横島をずっと追い続けていたタマモであったが、見事途中で見失い、ずっとさ迷っていたらしい。
仕方ないのでアンテナの方に戻ってみたら壊されているので、慌ててメドーサを探したようだ。

「アンタ誰よ?」
「やめな、タマモ。私の知り合いさ……古いな。」

タマモは悠闇に狐火を放つ準備をするが、それをメドーサが止める。

「……本当に私たちを生かしたおくなんて、許されないとわかっているのか? 私たちは多くの者を殺している。そんな存在を見逃すといっているんだよ。」
「えっ!?」
「戦いとは大局的に見なければ、最終的に勝利は掴めない。そして、ワレはアシュタロスを倒す事が何より優先すべきことだと思っている。」
「えっ!? いつの間に!? アシュタロスって私たちの上司じゃない!!」

予感。
悠闇はアシュタロスは近い将来、必ず横島の前に現れると確信する。
神族や魔族の援護は期待できない。第一、人任せは性に合わない。

「最後に勝つためだ。そのためならば幾らでも汚名を着ようぞ。」
「全ては、我が主のためってか?」
「くっ、うるさいぞ!!」

メドーサは立ち上がり、タマモに一発ゲンコツを喰らわす。

「痛っ!? いきなり何をするんですか!?」
「黙りな。見事にコイツにしてやられたからね、単なる八つ当たりだよ。」
「や、八つ当たり!?」

悠闇は、メドーサが倒れるならそれも仕方ないと考えていたが、もしチャンスが来れば神族たちにバレないように、生かすつもりであった。
もちろんそれは同情といった陳腐なモノからではない。

全ては、いずれ横島に迫るであろう最悪の敵から守るため。


(汚い策を練るのはワレの役目。そう、ワレは影だ。)

確かにメドーサとタマモは今回でも月神族を殺している。
だが、メドーサの協力があればアシュタロスを倒せる可能性が上がるのだ。
ならば、生かす。それで横島の生存率が上がるというなら迷う必要などない。

「そういえば、地球に帰る方法はあるのだろうな?」
「当然だろ。打ち上げに協力させた企業に、明日にまた、帰還用のシャトルを打ち上げてもらう手はずさ。」

メドーサ達は、月に来る時に南部グループのように、オカルトに興味を持つ企業に利益になりそうな事を教える代わりに月旅行船の往復分の製造を依頼した。
もちろん途中で裏切れないように、契約という呪いをかけて。

「なら、問題はない。……!? どうやら横島たちがこちらに来ている。」
「とりあえず、地球に戻ったら、数日は雲隠れしておくよ。」
「あぁ、戻った途端にやられるなよ。」

メドーサはタマモを連れて、何処かにテレポートする。
後は月旅行船を待つだけなのだろう。

「お〜〜〜〜い。いつまでそこで、のんびりしてんだよ。」

向こうから横島、美神、迦具夜が石舟に乗りながら迎えに来る。

「あぁ、すまない。流石に堪えてな。」
「あ……悪い。」

横島は悪い事をしたなと悠闇に謝る。

「ちょっと、何しんみりしてんのよ。そういえばメドーサを倒したんなら、もう一体の方は?」
「それに関しても問題ない。ワレが責任を持って両方とも処理をした。」
「そっそう、それならいいんだけど。」

美神はタマモまでどうにかした事に驚くが、悠闇としては別に嘘は言っていない。
処理をした、つまり倒したとは一言も言っていないのだ。

「本当に皆様、ご苦労様でした。皆様のお力がなければアンテナを破壊する事はできなかったでしょう。」

迦具夜が石舟から降りて、礼儀正しく礼をする。
横島は全然OKっすよって感じで迦具夜をお茶に誘っているが、丁寧に断られているようであった。

「迦具夜姫、一つ頼みがあるのだが……いいか?」
「はい?……何かわかりませんが私たちに出来る事なら。」
「それなら今度一緒にデートでも―――」
「お前は黙っとれ!!」

横島の暴走を美神が止めている間に、悠闇は迦具夜から高純度の月の石が欲しいと願う。

「月の石ですか……確かにそれには多くの魔力を含まれて居ますけど、人間に扱えるモノではいのですが……それでもかまわないのですか?」
「無論だ。第一、人間が使うわけではないのだからな……」

使用する者は人間ではない。
そして月の魔力。
これで連想される種族はただ一つだろう。

「わかりました。出来る限り高純度の月の石を手配しましよう。」

迦具夜は悠闇の頼みを聞き入れてくれたらしい。
美神もついで、その石をいくつかもらうようだ。

「それじゃ、戻りましょうか。」
「は〜〜、やっと地球に帰れるんすね。」

美神たちはこうして、メドーサが乗り捨てた月旅行船を修復することによって地球に帰還した。

なお、地球に帰還して竜気が切れた横島は、全治三日だったらしい。


月から帰還して、二週間ほど経った日の夜。

「くそ!! くそ!! くそーーーー!!!」

雪之丞は横島のアパートから出て、旅に出ていた。
そして現在は、自殺の名所巡りをして亡霊達を一通り倒し終えたところなのだが、こんな事をしても中々強くなれるわけもなく苛立っていたのだ。

「横島にも、鬼道にも、このままじゃ勝てねえ!! くそ、どうすりゃいいんだよ!!」

八つ当たりとして、自然破壊をしている雪之丞であったが、それで気が収まるわけもなくさらにムシャクシャする。

「―――!? 誰だ!?」

いくら苛立っていようが、ここは多くの亡霊がいるため周りへの警戒は欠かしていない雪之丞。
誰かが、自分に接近しているのを知る。

「まぁ、この距離で気付けるなら何とか合格点だね。」
「て、てめえはメドーサ!? 何故だ、死んだんじゃ!?」

すぐに距離を取って、魔装術を発動させる雪之丞。
そんな雪之丞を見つめて、やれやれとメドーサは落胆する。

「そんな事は後で話してやるよ。……そんな事より、それがお前の限界かい?」
「なっなんだと!!」

メドーサは刺又を取り出し、構えを取る。

「大体ね。邪道から入ったヤツが、中途半端に正道をかじる事自体、間違いなんだよ。」

ドォォォォン

「いきなりか、てめえ!!」

メドーサは雪之丞が何とか、かわせる程度に竜魔砲を放つ。

「教えてやるよ、邪道には邪道の極め方があるって事を。」


――心眼は眠らない その47・完――


おまけ


雪之丞がメドーサと遭遇して数日後、
とある店で一人のオカマが、
とある病院で一人の因縁男が姿を消した。


あとがき

月編はアシュタロス編に向けて、伏線はりまくりました。
メドーサとタマモですが、仲間ではないが協力者という形になります。

物語のキーの一つである悠闇の切り札。
今回で大分、詳細が明らかにされました。

それと雪之丞の強化フラグも立ちました。
んでも持って、おまけであの二人も登場しました。

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