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▽レス始

「彼が選んだ道−18−(GS)」

リキミ・スキッド (2005-02-17 23:54/2005-02-18 16:07)
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「目覚めおったか。」

ファーブニルの目にはジークがグラムを握り締め自分のほうへと突進してくる姿が見えていた。
無様だと評したジークフリードは其処には無く、戦士としてのジークフリードがそこにはいた。
それと同時に別方向から近づいてきている小竜姫にもファーブニルは視線を向ける。
ファーブニルは自分を睨みつけている三人の魔族に視線を戻す。
レイドルと珠姫に守られるようにして抱きしめられている横島に視線を向けるとファーブニルはふっと表情を緩めた。

「そやつを育てるのには超えなければならない相手が多いようだな。」

そして、ファーブニルは斬りかかってきたジークの剣を体をずらすだけで避けて見せた。
ジークにあわせたように超加速にはいった小竜姫がファーブニルの首めがけて剣を振るうがファーブニルはそれを指二本で受け止める。
ジークは振り下ろした剣を一旦手元にまで引かせるとファーニブルに向けて渾身の突きを放った。
ファーブニルはそれもまた余裕の表情で避ける。

「弱った竜神と先ほど私が痛めつけた英雄。話にならんな。」

掌に霊気で作った剣を具現するとそれを持ち、ファーブニルは2人に向かって笑みを見せた。

「剣の使い手ならば、斬り伏してみよ。」
「はぁっ!」
「やぁっ!」

小竜姫とジークは目配せをすると2人同時に左右から攻撃を仕掛けた。
ファーブニルは2人の剣を後方に下がることによって避けると手にした剣を小竜姫に向かって振り下ろした。
小竜姫は慌てず振り下ろした剣を上げると同時に身を屈めファーブニルの剣を受け止める。
そこでファーブニルの笑みが深くなったのを小竜姫は見た。
ファーブニルの口から炎が放たれ、小竜姫を燃やそうとその体を包み込む。
ファーブニルの意識が小竜姫に向いた瞬間に斬りかかったジークには何発もの霊波砲をたたきつけられた。

「おらぁっ!!」
「やめろ珠姫!!」

ワルキューレの静止を無視して珠姫はファーブニルへと霊波刀で斬りかかった。
だが珠姫は実際剣では素人に位置するので、ファーブニルは余裕で珠姫の攻撃を避けるとその体を蹴り飛ばした。
グラムを使えるようになったジークと超加速を使用している小竜姫の二人を余裕で相手にしているファーニブルを見て、レイドルは化け物と知らずのうちに呟いていた。
吹き飛ばされた珠姫は空中で体勢を立て直すと地面に着地すると同時にサイキックソーサーを出現させ、ファーニブルに投げつける。

「下らん。」

その珠姫のサイキックソーサーをファーニブルは剣で破壊する。
力の差は歴然としていて、誰もが少しずつ絶望の影が近づいてきているのを感じた。
ジークは剣を構える。
小竜姫は魔界での超加速の連続使用によって力がなくなってきている。
今ここで一番マシに戦えるのはジークだけだ。それを理解していたジークは呼吸を整え、そして駆けた。
グラムは竜殺しの剣。
ならば、それがいかなる竜であろうとも例外は無い。
そしてグラムによる大振りの一撃を振り下ろす。ファーブニルはその攻撃を避けようとしてぞくりと悪寒が走るのを感じた。
ファーブニルの直感が告げている。この剣は、避けてもさして意味をなさないと。
大地にグラムが触れた瞬間、大地は爆発した。
ジークはグラムを無理やり振り上げる。するとそれに沿って大地に亀裂が走り、ファーブニルへと抉れた大地が飛び掛る。

「ふっ。」

だがそんなものファーブニルに傷一つ負わすことなどできない。
そんなことはジークにもわかっていた。
そしてその大地を利用した攻撃はそのことがわかっていて行った攻撃であった。
少しでいい。
ファーブニルの僅かな虚をつければそれで十分だった。
グラムはジークの意思に呼応するように大きく脈動するとその力を発動した。
ジークフリードによって与えられた竜殺しという神秘が具現する。

「これは・・・・・・!!」

ファーブニルは、自分の体から力が急速に抜けていくのを感じた。
ガクリ、と大地に膝をつく。
凶悪なまでの竜族限定のエネルギードレイン。
対象にされていない小竜姫でさえも苦しそうにしている。

「お前は強いファーブニル。」
「ジークフリード。」
「だからも弱くなって・・・・・・死んでくれ。」


―横島―

唇に感じたのは吸い付くように甘い他人の唇だった。
朦朧としている意識をどうにか形にしようとしているときの出来事だ。
頭の上から悲鳴のような叫び声や、誰かの怒声が聞こえてくるが横島には判別できない。
ただ何かが流れ込んでくるということと、それは自分にとって毒であるという人しか理解できない。
吐き出そうとしてもそれは強い力で侵食してくる。
ならばいっそ飲み込んでしまおう。
辛うじて動かせる手で何かを抱きしめる。
逃げることなど許さないように抱きしめた上で逆に流れ込んでくるものを吸い上げる。
そして、そろそろ毒が尽きるかというときに頭部に衝撃が襲った。

「ジョーカーのばかぁ!!」

その声を境にして揺れていた視界のピントが合う。
最初に見えたのは顔を真っ赤にしながら、馬鹿だの、私もするだの、わめいているレイドルとそれを押さえつけている珠姫の姿。
頭を手でおさえながら体を起こす。

「気がついたか。」
「大尉?」
「体に異常は無いか?」
「いえ、特に・・・・・・!!」

横島は突如としてわきあがった激痛に顔をしかめ、何かに許しをこうように地面に顔を擦り付ける。
声にならない悲鳴をあげ、脂汗が大量に噴き出す。
我慢できるような痛みではなかった。体の内側を何かに蹂躙されているように激痛は絶え間無く続く。

「――――っ!! ――っ!!」
「ジョーカー!? しっかりしてジョーカー。」

レイドルの声も横島の耳には届かず、横島は体の中を生えまわる激痛に耐えるために正面にいたワルキューレを抱きしめ、悲鳴を殺すようにワルキューレの肩に噛み付く。
恥も外聞も其処には無かった。

「くっジョーカーの身に何が起こっているというんだ?」
「乗っ取りです。ファーブニルはそのジョーカーという人に・・・・・・接吻をした際に己の竜気と精神体を流し込みました。」

なぜか顔を真っ赤にしながら小竜姫はそう言うと、やがて決意したように顔を引き締めるとワルキューレの肩に噛み付いている横島の顔に触れる。

「なにか打つ手があるのか?」

肩に噛み付かれていることにより生じる痛みに耐えながらワルキューレは聞いた。

「私も竜神です。竜気の操り方には精通していますので、ジョーカーさんの体内に存在する竜気を別のものに転移させます。」
「別のもの?」
「はい。といってもジョーカーさんの身につけている衣服ですが。そうですね、そのバンダナにしましょう。」

喋っていることは至極真面目なことであり、それが激痛に耐えている横島を救う最善だとは思うのだがレイドルは嫌な予感に体をふるわせた。

「まずはバンダナとジョーカーさんにラインを通します。」

そう言うと小竜姫は横島のバンダナに口付ける。
ぴくりとレイドルが反応し、珠姫はむぅと眉間に皺を寄せる。

「これでラインは通りました。次は・・・・・・竜気を移動させます。すいませんが、ジョーカーさんの顔を上げてもらえますか?」
「わかりました。」

小竜姫の言葉にジークは応じ、横島の顔を無理やりワルキューレから引き剥がす。

「そのまま固定していてください。では、失礼して・・・・・・いきます!!」

そして、恐らくそれが小竜姫の初めてだったのだろう。
ぎこちなくゆっくりと唇を横島の唇に触れさせると竜気を操るために深く口付ける。
他人の気を操る際、口を通して気を操るのが最も簡単であり確実なのだがそれを理解していても納得できないものがいた。

「キスした。僕のジョーカーと。なに? 竜神族はジョーカーとキスしないといけない法律でもあるの?」
「気を操るだけならキスなんかしなくていいだろっ! 離れろっ!! ってか、俺を抑えつけるジーク!!」
「おっ落ち着いて珠姫さん。ジョーカーの治療なんだから・・・・・・ぶっ。殴らないで落ち着いて・・・・・・がはっ。」

暴れる珠姫とあまりのショックと怒りによりパニック状態になっているレイドル。
一見ワルキューレは治療と割り切り冷静にしているように見えるがその拳は強く握り締められている。

「んっ。ふぅっ。これで大丈夫なはずです。」

小竜姫が顔を離し、そう言った直後横島のバンダナが光り始め、そしてその姿を変え始めた。
ファーニブルの竜気に耐え切れずその本質を変えようとしているのだ。
そして、バンダナが光るのを止めた時、ギロリとバンダナに出現した目が周りを見渡す。

「――――まぁこれもよかろう。」

そうバンダナは呟くと瞳を閉じ、バンダナは傍から見ればただのバンダナにしか見えなくなる。
バンダナの目が閉じると同時に横島も意識を失った。
後には・・・・・・・・・・・・

「こうなったら僕もジョーカーとキスするんだから!!」
「なんでそうなるんだよっ! 後は俺が看護するからレイドルは引っ込んでろ!!」
「落ち着いてください二人とも。」

騒ぐ二人と抑える一人。
そして、今頃になって恥ずかしさがきたのか顔を真っ赤にしたままちらちらと横島を見る竜神とその様子にムカツキながらも事が終わったことへの安堵を洩らす悪魔。

「終わったな。」

自分のほうへと向かってくるリムルの姿を見ながらワルキューレは心底疲れたように呟いた。


―???―

ここは違う世界。横島さんが存在しない世界。変わりに伊達さんが横島さんの位置に存在する世界。今のような状況を平行世界に紛れ込んだというのだろう。かつての自分と敬愛すべきマスターが私が生まれたということでささやかなパーティーを開いてくれた。といっても私はアンドロイドで物を食すということはできない。ただ、いろいろ構ってくるかつての自分――マリアとこの世界について語っているドクターカオスの話を聞きつづける。

「元気・ないです。どうし・ました? テレサ。」
「いえ、なんでもありません。――姉さん。」

昔の自分の体では無理だった流暢な会話で受け答えし、テレサはそっと溜息をついた。
最後の時、横島は自分に幾つかの文珠を授けて去っていった。
何を成そうとしていたのかは最後まで教えてもらえなかったが、横島とあいたいと願って自分がココにいる以上、ここが横島が何かを成した後の世界なのだろう。
優秀な脳が横島が何をしたのかという最も確立の高い推測をはじき出す。
すなわち、自己の消滅。もしくは世界改変。

「・・・・・・。」

流れない涙が流れそうになる。
下唇を噛み締め、テレサはうつむいた。
心配そうに見つめるマリアとカオスには悪いがテレサは溢れ出る感情を我慢することなど出来なかった。

「あっあああああ。」

恐らく生まれて始めて感じる感情だろう。
胸が苦しくて、声を上げなくてはやってられなくて、今すぐにでも会いたくて・・・・・・。
そう、これは悲しいという気持ちだ。

「どうしたんじゃテレサ!」
「テレサ。どこか・不具合が?」

二人の言葉に違うと顔を振りながらテレサは願った。


――――――会いたい。どこにいるんですか? 横島さん。


あとがき
随分と間があきましたが、一応区切りです。次回は雪乃丞編。これは比較的短くすむと思います。
ではサイツェン。

>D,様  横島のことですし、五画関係程度では収まらないでしょう。

>猿サブレ様  ジークいい男企画これにて終了。次は・・・燃えを目指します。

>MAGIふぁ様  お褒めの言葉ありがとうございます。

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