インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「彼が選んだ道−17−(GS)」

リキミ・スキッド (2005-02-10 23:23)
BACK< >NEXT

ずっと後悔していた。
殺してしまったことに対しても、その責任からのがれることばかり考えていた自分に対しても、リムルはずっと後悔していた。
だからこそ、後悔などと言う言葉と程遠いワルキューレに惹かれた。
ワルキューレのように己の行動に自信を持つものの傍にいればいつか自分もそうなれるのではないかとずっと思っていた。
けど今は後悔する理由がない。
ライムはアンデットとなって蘇った。ならば父も母もアンデットとして蘇り、昔の、そう昔に戻れるはずだと必死にリムルは自分に言い聞かせた。
心の冷静な部分が必死にそれは違うと否定するが、リムルはそれを無視する。
すがりついていたかったのだ。
例えそれが間違いだとしても、それはあまりにも甘美であり、輝かしいのだから。

「絶望の淵で眠りなさい!!」
「魔眼など私には通じません!!」

小竜姫は魔眼の効力を無効化するために目を瞑った。
リムルとライムの霊気にピントを合わせ、親友であるヒャクメに教わった内なる心眼を発動させる。
リムルの霊気が目に集中しているのと、アンデットであるライムを支えているものが心臓にあるということを確認する。
超加速に入り、ライムの心臓を破壊すればそれで勝負はつく。
だが、小竜姫は動けずにいた。
リムルの瞳に宿る悲しみが気になって、ライムを攻撃できないのだ。
ライムの救いがその命を奪うことであるならば、リムルの救いはなんだろうかと小竜姫は必死に考える。
与えられている情報は少ない。
ライムがリムルの妹であると言うことと、既に死んだ存在ということだけだ。

「目を覚ましなさい!! 貴方が妹と呼ぶものは既に死んだ存在なのですよ!!」
「そんなことはわかっているわ!!」

リムルが魔眼が効かないとわかるとすぐに攻撃方法を螺旋の風へと変更した。
小竜姫はそれを完全に見切った動作で受け流すとライムのことを警戒しながらもリムルに話し掛ける。

「貴方が死んだ妹さんを認めれば、貴方まで死んだ世界を生きることになるんですよ!!」
「うるさいっ!!」
「貴方は生きているのです! 亡者の戯言に耳を貸してはいけません!!」
「竜神などに、説教される必要はないわ!!」

神族にとって力が抑制される魔界においてここまでリムルを余裕でいなすのはそれだけ小竜姫とリムルの間には力の差があるということだった。
本来であるならば直接的な戦闘には向いていない淫魔のリムルと竜神という戦闘に適した種族である小竜姫なのだから仕方ないことである。
リムルには小竜気が手加減してくれていることなどわかっていた。

「お姉さま! 私も手伝います!!」

ライムが霊波砲を放ってリムルを援護する。
その際にリムルとライムの視線が合い、リムルの中に渦巻き始めていた疑問を魅了の魔眼が消し去っていく。
リムルは徐々に自分の心が蝕まれていくのを感じながら、小竜姫に攻撃を仕掛ける。

「くぅっ!!」

小竜姫は二人の攻撃を受け流しながらもはやこの二人を救うにはこの方法しかないと覚悟を決めた。
姉が死んだ妹に固執するのならば、妹が生きている姉にすがるならば、二人同時に倒すしかない。
それが救いだとは思わないが、それでも悪ではないだろう。

「いきますっ!!」

小竜姫は超加速を発動した。
まわりの時の流れが遅くなり。小竜姫は簡単にライムの懐へともぐりこむ。

「これで・・・終わりです!!」

勝利を確信し、ライムの胸を貫こうとしたとき小竜姫は横からの衝撃で吹き飛んだ。

「なっ!!」
「ライムは・・・・・・殺させない。」
「一瞬とはいえ、超加速に入ったというのですか!?」

小竜姫は受身を取ってすぐに立ち上がると剣を構え、竜気を高まらせていく。
リムルもそれに呼応するように己の霊気を高めていった。

「お姉さま。あの人に教えて差し上げてください。私はここにいるということを。今を認めないのではないということを。」

優しく語り掛けてくるライムにリムルは頷こうとして、その動きを止めた。
唐突に、まったくの唐突に昨日の晩に行った珠姫との会話が蘇る。
それはリムルが霊気を高めたことによって、魅了の魔眼に対抗することの出来た心から零れでた言葉である。


『この世界にいるんだけどいない人。そしてその人が笑っている光景。それがジョーカーが見た絶望。』


どくんとリムルの心臓が高鳴った。
頭に激痛が走り、リムルはその場に跪く。

「アッアッアアアアアアアアァァァァアアアアア!!」
「魅了による精神破壊が始まったようですね。完全に心が壊れる前に私が・・・・・・。」
「くっ。魅了が今になって真価を発揮するなんて!? 仕方ありません。お姉さま。あいつを殺して。」
「アッアア。」

強くなる魅了の魔眼の強制力にリムルは苦しみながらも必死にライムの命令を聞こうと戦う構えを取る。
だが壊れそうな脳裏に優しくその言葉は響いた。


『幸せだからこそ、選べなかったんだ。』


リムルの中で何かが砕け散った。
苦しみが無くなり、リムルは何の迷いも無く螺旋の風を発動する。
小竜姫の先手を取ったことにリムルは成功していた。

「――――どうして?」
「ごめんなさいライム。」
「また、私を殺すの?」
「――――またじゃないわ。だって、ライム。貴方は最初から死んでいたんですもの。」

小竜姫の反応できない素早さで、リムルはライムの心臓を貫いていた。

「そんな・・・・・・私はここに・・・・・・。」
「いるけどいない人。それが貴方。」

ライムの体が崩壊した。
瞳からは意思が失われ、ライムだったものはただの砂へとその姿を変える。
腐りきり、粉となったライムは魔界に流れる風に乗って空へと散った。

「よく正気に戻りましたね。」
「・・・・・・。」

リムルは小竜姫の言葉に微笑みで返し、その直後その場に仰向けに倒れた。
小竜姫が慌ててリムルを受け止める。
リムルは手で目元を覆った。

「馬鹿みたい。他人の眷属の言葉で自我を取り戻すなんて。ほんと・・・・・・馬鹿みたい。」

口では文句を言いながらもその声は優しげで、リムルは無意識のうちに涙を流した。
小竜姫は何も言わず、そっとリムルを大地に横たえる。
リムルは一人でいたいだろうし、小竜姫にもファーブニル討伐という任務がある。

「世話を、かけました。」
「いえ、気にしないで下さい。」

面識の無い、ただ偶然にも戦うこととなった二人にとって互いにかける言葉はそれだけで十分だった。
小竜姫はファーブニルの方へと向かい、リムルは涙を流しながら魔界の空を見上げた。

「――――ごめんなさいライム。それにお父様。お母様。ごめんなさい。」

それで三人が許してくれるとはリムルは思っていない。
だが、三人が死んで数百年経った今、ようやく謝ることが出来た。
逃げずにリムルはようやく三人の死を受け入れたのだった。


―ジーク―

ワルキューレは呆然と上空での横島と暗黒竜の戦いを見ているジークの傍らに降り立った。
ワルキューレの目から見ても明らかで、ジークは完全に諦めきった瞳をしている。
横島の奮戦を無駄なことのように見つめているジークの瞳。
ワルキューレは無様な弟に声をかけようとして止めた。
声をかけたところでこの甘さしか知らない弟には何の意味も無いだろう。

「・・・・・・。」
「あっ姉上。」

語りかける言葉も、立ち上がらせる怒声もワルキューレからジークにかけられることは無かった。
ワルキューレはジークに視線を合わせずに上空を見上げる。
横島が一匹目の竜を消去していた。ふとジークの愛剣であるグラムに視線を向ける。
そっとグラムに手を触れさせるとワルキューレは呟いた。

「世話をかけた。」

それだけ言うとワルキューレは歩き出す。
上空での戦いは後少しもすれば片がつくだろう。
後は援軍としてくる魔界軍に上空から山脈を攻略してもらえばいい。
立ち去るワルキューレの背中にジークは声をかけようとして、言うべき言葉が無いことに気がついた。
勝利することを諦めたものに勝利など訪れはしない。
ワルキューレから聞かされたこの言葉はジークにとって戦うという気持ちを奮起させる言葉であった。
だがそれも今は、下らない戯言のように思えてしまう。

「勝てるわけが無い。勝てるわけなどっ!! グラム!! お前が、お前さえ私の思いに答えていれば!!」

勝てないのは自分のせいではない。
勝てる力を持ったグラムが抜けなかったせいだとジークは吼えた。
嘲笑うかのように脈動を続けるグラムをジークは握り締めると大きく振り上げて大地に叩きつけた。
グラムには傷一つつくことは無い。

「くそっくそっくそぉぉぉぉぉおおお!!」

涙が次から次へと溢れ出す。
何度もグラムを振り上げては大地に叩きつけ、そしてジークは叫んだ。

「貴様など、砕けてしまえばいい!!」

そうすれば言い訳が出来る。
大地に叩きつけたぐらいで砕ける剣で竜など倒せるはずが無かったのだと。
そう言うことができれば自分はきっと楽になれる。


――――――でもそれは、大切な物を失った上での言葉ではないのか?


空を見上げれば横島が竜を全て倒し終え、力を失って落下を開始しているところだった。
その姿がジークにはとても眩しいものに見えた。
最後まで諦めずに戦いきり、力尽きた者。

「私は、俺は・・・・・・!!」

闘争と殺戮の衝動を理性で今の今まで押さえつけていた。
それはそれを抑えつけなければ自分は殺戮を楽しみ、闘争に酔う最悪な存在になるかもしれないという思いがあったからだ。
だが、抑えることに意味などあったのだろうか。
闘争と殺戮を理性の無い獣として味わうだけの存在であるならばここまで苦悩することは無い。

「俺は・・・・・・何を!!」
「無様よな。ジークフリード。」
「なっ!? 貴様は・・・ファーブニル!」
「ほぅ。まだ私を判別できるだけの力は残っているか。だが、それだけだな。」
「なんだとっ!!」

反応することも出来なかった。
ファーブニルの放った霊波砲にジークは吹き飛ばされ、遥か後方に存在していたはずの岩に激突する。
明確な力の差が底には存在した。

「ぐぅっ。」
「・・・・・・そなたなど私が相手する価値は無い。どれ、私の眷族でも相手にしていろ。」

ファーブニルの足元の地面が地竜へと姿を変えていく。
ジークはファーブニルを見つめながら、己の死を確信した。
地竜といえば暗黒竜をも超える強靭な鱗を持つ竜である。
暗黒竜の鱗をも貫けない自分に勝てるはずがないと、ジークは握り締めていたグラムを手放した。
ファーブニルはそんなジークを下らなそうに眺めた後、横島達のほうへと進路を向けた。

「グゥゥゥゥァァァァアアアア!!」

地竜が咆哮をあげて大地を駆ける。
近づいてくる殺意の塊にジークは抵抗する気など起きなかった。
そして、ジークはいつのまにか自分がずっと泣いていることにようやく気がついた。

「ははっ。最後は恐怖で泣いて死ぬのか。」

そんな、そんな軟弱な涙ではない。
ジークは己の心が口にした言葉に反発しているのを感じた。

「じゃあどんな涙だって言うんだ。どんな・・・・・・。」

ジークの胸を占める惨めな気持ち。
ジークに泣くほどまでに心を痛めつけ、剣を破壊しようとするほどに憤怒を発生させる気持ち。
ジークはその胸を占める思いをゆっくりと口にした。

「悔しいと・・・・・・言うのか?」

カチリと歯車が噛み合った。
ジークは迫り来る地竜の存在も忘れ、己の手を見た。
所々傷を負ってはいるがまだ動けている。
竜の接近によって脈動を強くするグラムが思い出せと吼えた。
ふと視線を上げれば、地竜は既に目前にまで迫っていた。
心を恐怖が覆い尽くした。
そして、その直後にそれを上回るほどの感情がジークから溢れた。

「ウァァァァァァアアアア!!」

悲鳴にも近い怒声を上げてジークは地竜を蹴り飛ばした。
全身が熱く燃え上がり、ジークは恐怖によって箍が外された闘争と殺戮の衝動を味わった。
それは初めての感覚であった。
心の底から感情が戦えと叫んでいる。

「・・・・・・俺は、馬鹿だ。」

ジークフリードという英雄は最初から英雄であったわけではない。
先祖帰りをしたからといってジークが最初から英雄でないのと同じように、最初からグラムを手にしていたわけではないのと同じように。
英雄であったという自尊心とそこから来る敵への慈悲というふざけた甘さがあったことをジークは理解した。
なんということはない。
ジークは自惚れていて、そして自分では対処できない場合に遭遇しこんなはずではないと叫んでいただけなのだ。

「抑えつける必要なんてなかった。抑えつけるんじゃなくて、制御すればいいだけのことだったんだ。」

グラムを拾い、その柄を握り締める。
抜ける、抜けない等という考えは存在しない。
この剣は、グラムは、ジークフリードが手にしているからこそ竜殺しであれるのだ。
ならば、初めから抜けないなどいう事があるはずが無い。

「ガァァァァァアアアア!!」
「はぁっ!!」

剣が走った。
鱗など初めから存在しないかのような切れ味で地竜を引き裂く。


「――――礼を言おうファーブニル。俺は、俺を取り戻した。」


向けた視線の先にはかつての敵であり、今現在の敵である竜が存在している。
溢れ出る力を止める必要などない。
そこに方向性を与え、そして放ってやればいい。
そうすれば、そうすればこの剣に斬れぬ物等存在しない。


あとがき
――――申し訳ございません。後一回だけ続きます。

>D,様  リムルには珠姫フラグが立ちました。それとライムには消えてもらいました。

>星之白金様  横島の能力には決定的なデメリットがつきまといます。力を手にいれたものの宿命ですね。

>Dan様  ジーク復活です。ファーブニルとは彼に戦ってもらいましょう。

>MAGIふぁ様  哀れなジークは今回で救済。次回からは活躍してくれるでしょう。

>猿サブレ様  ジーク頑張りました。原作よりは強くなったことでしょう。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル