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「除霊部員と死を呼ぶ魔鏡 第4話(GS+オリキャラ)」

犬雀 (2005-02-14 16:35)
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第4話    「美智恵の敗北」


最近、慣れてきた朝の散歩と買出しから帰った横島。
小鳩たちが用意した食事をもふもふと食いながら、何となく疲れた表情の愛子に聞いてみる。

「なあ、愛子。唯ちゃんは?」

「唯ちゃんねぇ…早朝特訓とかで出かけたわ…」

「え゛…起きれたのか?」

驚く横島。今日は雨か?と外を見れば雲ひとつ無い日本晴れ。
そういえば早朝散歩も気持ちよかった。

「起きた…?…そうね…起きたわ…ふふふふふふふ…」

不気味に笑う愛子。その手元にあるのは途中で切れた何かの電気コード…。
それが微妙に焦げていたり…。
関わらないほうが賢明だと味噌汁を飲み込む。

「そういえばアリエスちゃんは?」

「それが…今朝から見ないんです。」

小鳩も困惑顔だ。

「そっか…やっぱりカワ太郎に連れ戻されたかな?昨日は愛子のところで寝たんだろ?」

「うん…洗面器かぶせて上から重石しておいたんだけど…朝見たら居なくなってたわ。」

「そ…そっか…」

監禁されて判子押し続けていた方が楽だったんじゃなかろうか?とちょっとだけ同情する。
やれやれと思いつつ時計を見ればそろそろ出かける時間だ。
後片付けはやっておくと言う小鳩の母の厚意に甘えて登校準備。
いつものように登校する皆に手を振る貧。


平穏な一日の始まりである。


「よ。ピートおはよう。」

教室に集うクラスメートの中にピートの姿を認めて声をかける。
流石に昨日のことがあってかいつもの快活さは無いがピートも挨拶を返してきた。
軽く肩を叩いて席に向かえば、先に登校していた唯がクラスメートの天田と話をしている。
横島たちに気づいて笑顔で手を振る唯と笑いながら頭を下げる天田にも「おっす」と挨拶をして席に着くと浦木が近づいてきた。

「よう。横島君、愛子君おはよう!」

「おっす。」

「おはよう。浦木君」

「おはようですっ」

「あ、天野君もおはよう。今日の特訓はどうだった?」

「へう〜。疲れましたぁ…」

唯の答えには確かに疲れの色がある。それを察して浦木は天田を軽く睨む。

「おいおい。やりすぎたんじゃないか?天田」

「いや…基本的な戦術パターンだけだし…それに最後は僕が撃墜されたし…」

「え?もう天田を撃墜したの?こりゃ僕もうかうかしてられないなぁ〜」

「へうぅぅ。まぐれですぅ。」

「まぐれかどうかは浦木君とやればわかるさ。彼の高速機動戦法は安室さんも褒めていたし…」

「でもぉ安室さんには何年かかっても勝てる気がしませんですぅ…」

「ああ、あの人は別格だしなぁ。そうだろ?天田」

「そうだな。桑戸さんとか神指君なんかは僕も勝てる気がしないなぁ…」

「ですねぇ…後ろに目があるんじゃないかと…」

溜め息交じりの唯の声にウンウンと頷く浦木と天田。

「ま、とにかく今日の放課後は僕の番だな。みっちりしごいてやるぞ。」

「あ、すいません。今日の放課後はダメになっちゃいましたぁ…ですよねタダオくん。」

浦木にペコリと頭を下げて横島の方を見る唯に、やっと話に加われると横島も頷く。

「あ、ああ、ちょっと警察に…それはそれとして…一体さっきから何の話してるんだ?」

「何って天野君の特訓の話だよ。」

「神指ってのは?」

「神指 弾。安室さんの後継者とも言われる保安部の次期エースだな。」

天田と浦木が交互に答える。

「じゃあ…特訓って何やっているの?」

愛子の問いに三人は声を合わせて答えた。

「「「それは秘密です」」」


HRも終わり一時間目の数学の授業は教師の必殺技である抜き打ちテスト。
だが普段から勉強してない横島なんぞはすでに悟りの境地に居る。
対テスト用のサイコロ鉛筆を出そうとカバンをあさる横島の手に触れる生暖かい感触。
嫌な予感とともに引き上げてみれば…案の定、アリエスだった。
横島は小声で囁く。

「なんでアリエスちゃんがカバンに入っているんだ?」

「えと…ご奉仕しようかと…」

「ご奉仕って…何を…」

「えと…えと…そ、そうですわ!テストのお手伝いを!」

「今思いついただろ…」

「そ、そんなことは無きにしもあらずと言えば遠からず…と言いますか…そ、それはそれとしてっ!わたくし数学は得意ですのよ!」

「そ…そうなの?…」

「はいっ!とりあえず問題を拝見させてくださいませ。」

「それってカンニングだろ…」

「そんなこと些細なことですわ…」

そう言いながらヨジヨジと横島の腕を這い登ってくるアリエスに慌てる横島。
やはりと言うか何と言うか…そんな挙動不審な生徒を教師が見逃すはずも無い。

「横島!!何してる?!」

「え?何もっ!」

「うげっ!」

横島は慌ててアリエスを引っ掴むとズボンのポケットに押し込んだ。
数学教師はしばらく横島を不審気に見ていたが納得したのか視線を外す。
ホッと一息つく間もなく横島に襲い掛かる次なる試練。

「にょほっ!」

奇声を発する彼に再び教師の目が向くが必死に答案を書くフリをして誤魔化す。
股間近くから発せられるアリエスの抗議の声。

「忠夫様!酷いです!!暗いです。狭いですっ!怖いです〜♪」

「怖がってないやん!」

「ああっ!ここはどこですの?暗いし狭いし…何かつっかえ棒があればもう少しスペースが…」

「にょぉぅ!」

股間のキャノン砲に感じられるもぞもぞした感触に思わず声が出る。
ギロリと睨む教師の視線に首をすくめつつ下を見れば、どんどん中心へと移動していくこんもりした物体。

「まあ…だんだんとスペースが…」

「アリエスちゃん…動かないで…」

「でもでも…狭いし…それにだんだん暑くなってきましたし…」

キャノン砲が発熱を開始しはじめたらしい。

「ああああ…動くの止めてっ!!」

「この布が邪魔ですわね…そーれチョキチョキと…」

「あんた解ってやってるだろぉぉぉ」

「なんのことでしょうか?…あら、忠夫様のご子息様。お久しぶりです…」

「にょほっ!ち、直接うっ…」

※横島君脳内第一戦闘艦橋

『艦長!主砲のエネルギーゲージが上がっていきます!!』

『馬鹿者!何とか抑えるんだ!このままでは輝かしい学校生活にとんでもない思い出が加わるぞ!!』

『は、はいっ!』

………

「ああっ…忠夫様の匂い…」

「くうぅぅぅぅぅ」

人形サイズのアリエスに抱きつかれますますヒートアップするキャノン砲。
ぴったりと密着したアリエスが微妙に上下運動を始めることで横島の口からもくぐもった悲鳴が漏れる。

「ささ…忠夫様。遠慮なさらずに熱いパトスを迸らせてくださいませ…」

「嫌やぁぁぁ!!」

「そして少年は神話になるんですのよ…くすくすくす…」

「神話ちゃうぅぅぅ。悲しい伝説になるんやぁぁ」

※横島君脳内第一戦闘艦橋

『艦長!エネルギー注入率120%!!もう持ちません!!』

『こらえろっ!何としてもこらえんかっ!ここで発射すれば全宇宙の笑い者になるぞ!』

………


「ああ…わたくしもなんだか変な気分に…」

「にゃえぇぇぇぇ」

アリエスの濡れた声音とすっかり敏感になったキャノン砲に感じられる柔らかな膨らみの感触にそろそろ別の次元が見え始める横島。

「我慢は体に悪いですわよ…」

「嫌やぁぁぁ。ガビガビになるうぅぅぅぅ」

「お任せください…すべてこの身で受け止めてみせますわ…ああ…忠夫様ぁ…」

「どうやってぇぇぇぇ」


※横島君脳内第一戦闘艦橋

『艦長!ダメです!臨界を越えます!!』

『くっ!総員退艦せよっ!!』

『艦長はどうなさるおつもりですか!!』

『私は彼と運命を共にする…』

『艦長一人をイかせません!!我々もお供します!』

『お…お前達って奴は…』

『艦長ぉぉぉ!!』

(待ていっ!俺の脳内っ!もう少し気張れっ!!)

………

諦めモードに突入し、今にも発射トリガーを引こうとする脳内艦橋要員を必死に叱咤する横島に神の助けか悪魔の誘惑か教師の声が届いた。


「おい…横島…体調でも悪いのか?」

「へ?…」

「えう?タダオくん大丈夫ですかぁ?」

「顔が真っ赤よ…横島君…」

「あ…愛子ぉ…唯ちゃんんん…うにょうっ!」

「ちょ…ちょっと!本当に大丈夫?」

(ああ…忠夫様…わたくしももう少しで…んんっ!)

キャノン砲に足までからめ、激しく上下動するアリエスの切羽詰った声は横島にしか聞こえない。
何とか意志の力を振り絞り唯たちに助けを求める。


「た…助けて…」

「おい。君達…横島を保健室につれてってやれ…」

「は、はいですぅ!」

「さあ、立って横島君」

「もう…勃ってる…「え?」…何でもない…だが…今は立てんのだ…」

「いいからっ!!」

愛子と唯が両手を持って無理矢理横島を立たせてみれば、どういうわけか机も一緒に持ち上がるとそのまま空中に手を使わずに浮遊する。

「「へ?」」

驚いて横島を見る少女達に彼は悲しく笑って見せた。

「イッツ・ア・イリュージョン」

「え?え?え?」

突然のミラクルに驚く愛子だったが恐る恐る下を見てあっさりと手品の種を見破った。

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

羞恥のあまりに横島の手を振り解いた愛子はバランスを崩し、危うい均衡で空中に静止していた机に倒れこむ。

ポキリ…

「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


結局、横島は保健室送りになった。


放課後、股間の災難に魂飛ばしていた横島が我に帰るとそこは知らない応接室だった。
横を見れば心配そうに彼を見つめる唯の姿がある。

「…ここは…」

「えうぅぅぅ。タダオくんが帰ってきましたぁ〜。」

泣きながらすがり付いてくる唯に当惑するも、とりあえず現状把握。

「あ…ああ…唯ちゃんかぁ…ここは?」

「城南署の署長さんの応接室ですぅ。タダオくん、今まで何を話しかけても上の空でぇ…」

魂飛ばしている間につれて来られたらしい。それでも歩けるあたり我ながら器用なものだと思う。

「そ…そう…そういえばアリエスちゃんは?」

聞いてしまってから唯の顔に浮かぶ暗い笑みを見て後悔する。
背中に冷たい汗を自覚しつつ返事を待つと予想もしない答えが返ってきた。

「イカの沖漬けって知ってますかぁ?…私も今日知ったんですけど…あれって生きたイカをそのままタレに放り込むらしいですねぃ…くくくくく…」

「そ…そっすか…」

含み笑いとともに「明後日ぐらいが食べごろですかねぃ…」と呟く唯に横島がガクガクと震えだした時、ドアが開いてここの署長、坂上が入ってきた。

「よう。唯ちゃんお待たせしちゃったね…それと君は横島君だったね。いつも唯ちゃんがお世話になっているようで」

ペコリと頭を下げる坂上に横島も慌てて立ち上がると返礼する。

坂上もイスに座ると脇に控えていた女性にコーヒーの御代りを頼んだ。
一礼して彼女が出て行くと「用件は?」と聞く。
その口調は警察署長というより久々にあった孫と会話するおじいちゃんと言ったほうがしっくりくる。

「実は…」

横島が話す『岡崎茜の母の自殺』の一件を黙って聞いている坂上。

「…と言うわけで彼女の事件の調書とか検死報告とか見たいんですけど…」

「署長さんダメですかぁ?」

運ばれてきたコーヒーに口をつけつつ考え込む坂上はカップを置くと横島を見つめた。

「部外者に見せるわけにはいきませんが…唯ちゃんはうちの署員ですからな。彼女が使う分にはかまわんですよ。私が連絡しておきます…ただ…一つお聞かせ願いませんかね?」

「はい何ですか?」

「君は何故この件に関わろうと思うのですか?正義ですか?友情ですか?」

「そうっすね…どっちも少し違うかなぁ…」

「ほう…」

「うまくは言えないんすけど…あの女の子。茜ちゃんですか。ピートに切りかかっていった時、凄く怖い顔だったんすよ…それで、なんつーか…女の子のあんな顔なんてもう見たくないなぁ…とか思っちゃって…」

「それは君のエゴではないですかな?」

坂上の問いかけに「そうかもしんないっす…」と頭をかく横島。
そんな少年に寄り添い、笑顔で彼を見上げる唯の姿に坂上の顔にも笑みが浮かぶ。

「自分でもよくわからないんすけど…関わった人たちが笑ってくれればいいなぁと…。彼女の場合はお母さんの死の真相がわからないと心の底から笑う日が来ない気がして…」

「なるほど…ならば私たちも出来ることは協力しましょう。ですが…私たちはあくまでも法に則って動いているということだけは忘れないで下さいよ。」

「わかりました」と頭を下げる少年たちに坂上の笑みはますます深くなる。

「では鑑識の五郎君のところに行きなさい。彼なら詳しく教えてくれるでしょう。」

「「はい」」と返事して二人が署長室から出て行くと坂上は内線に手を伸ばした。

「あ、有川君かね?例の資料は出来ているかね?…そうか…なら車を準備してくれないかね。…そう…出かけるからね。ああ、そうだ。お土産を用意しなきゃね…うん。じゃあ準備が出来たら呼んでくれ。」

内線を切ると煙草を取り出して、ブラインド越しに窓の外を見やって火をつけた。
紫煙が漂う中、坂上の言葉が部屋にひっそりと流れていく。

「さてと…大人としてやるべきことをやらして貰いますかね…」


美神美智恵が受付から突然の来客を告げられたのは、そろそろ退勤時間も近いという夕暮れのことだった。
託児所の件もあり、不意の来客は断るつもりだったが相手が城南署の警察署長ともなればそうも行かず、通すように言うとコーヒーもついでに頼む。

やがて控えめなノックとともに室内に入ってきた坂上という男は警察署長と言うより田舎の学校の校長と言った方が良く似合う初老の男だった。
制服ではなく着古した茶色の背広といい、その温厚そうな顔にある細い目といい、とても署長の要職にある人物とは思えない。

ソファーを勧めると、何度もペコペコと頭を下げながら、思い出したかのように「お土産です」と手にしていた紙袋を渡す。
目に入った中身は包装紙に「雷おこし」と書いてある。
都内の人間に東京銘菓をお土産にするのも奇妙な話だが、それが一層、彼の人となりを表しているようで美智恵はむしろ好感を覚えた。
彼の前のイスに座って話を向ける。

「で、今日はどのようなご用件ですか?」

「いや〜。うちの唯ちゃんのことで色々とお世話になりましたですから、一度きちんとご挨拶と思ってまして…。突然で本当にすみません。ですが思い立ったが吉日と申しますし…」

ペコペコと白髪頭を下げてくる坂上に当惑する。

「わたしですね…唯ちゃんを本当の孫のように思っているんですわ。でも何にも出来なくて…学校のこともアパートのこともみんな貴方にお任せしちゃって…本当に心苦しく思っとったんですわ…。」

ハンカチでその細い目を拭きながらペコペコと謝り続ける坂上に美智恵の当惑はどんどん深くなる。

「ですが、私の責任もありますから…そんなお気になさらないで下さいな。」

「いゃ〜そうは言っても…あの子は幸せにならなきゃいかんのです…そうは思いませんか?」

「え…ええ…」

「ところがですっ!!私の可愛い孫娘に悪い虫がつきまして!!」

「え?」

「横島忠夫っちゅう糞ガキですよ!ご存知ないですか?!」

「え…ええ…横島君は知ってますけど…彼は悪い子じゃないですよ?」

「『大戦の英雄』だからですかな?」

「え?」

一警察署長では知るはずも無い言葉に美智恵の困惑は驚愕にとって変わった。
彼女を見つめる坂上の目は細いままだったが、今、その目はカミソリの切れ味を持つかのような光を発している。

「『大戦の英雄』、『救世主』、『伝説の継承者』、様々な言われ方をしてますな。ですがそんな与太話など信じられませんな!!」

「何がおっしゃりたいんですか…」

「何がですと?…彼の生活をご存じないですか?」

「はい?」

「よろしいですか?先の大戦、市民を国民を守るのは我々、警察や自衛隊でなければならんかった!我々はそのために国民から信託され禄を食んでいるのです。それが一介のGS見習いの少年に救ってもらうなど…ましてや世界と恋人とを天秤にかけさせるなどあってはならんのです!!」

「あ…あなた…いったい…」

「何者?」と言う言葉をかろうじて飲み込む。
そんな彼女に眼光鋭く坂上は訴え続けた。

「しかもです。そのようなデマを元に彼は高校生でありながら億単位の年収がある…なのに唯ちゃんたちとの生活ではほとんど金を使ってない!むしろヒモみたいなもんです!あまつさえ税金も払ってないではないですか!!」

「…税金は令子、いえ雇い主がちゃんと…!」

(しまった…)
内心臍を噛む。これで自分は娘の財務内容をある程度知っていると言ったようなもんだ。

「ほほう…では先ほどの話は真実だと…?」

「そ…それは…」

「それが真実だとするなら…彼が億単位の年収を貰っていても不思議ではないでしょうな。いや…むしろ我々は彼に這いつくばってでも我らの無能を謝罪しなくてはならんでしょう…しかし彼の生活を見る限りそのような『英雄』ではないと思われますが?」

「あの…先ほどから億単位の年収とかおっしゃってますが…何のことかしら?」

「ご存じない?彼の雇い主、貴方の娘さんの申告によれば、去年だけで彼に数億の給料を支払っていることになっとりますが?」

(あんの馬鹿娘えぇぇぇぇぇ!!んな見え透いた手をぉぉぉぉ!!)

帰ったら血の小便が出るまで折檻しましょうと心の予定表に書き込む。

「ふむ、では…誰かが嘘をついていることになりますな…」

「それは…」

「つまりあの少年が時給にして数百円の価値しかないまがい物の『英雄』なのか、それとも…」

結果的に彼を追い詰めてしまった美智恵には坂上の言葉を肯定することは出来ない。おそらく彼もそれを知っているだろう。
とにかく反撃の糸口を探す。坂上の主張は分かるし自分も同じ思いだが、やられっぱなしは美神の血が許さない。

「貴方のその主張の根拠は?」

「ああ、これですな。」

言うなり坂上は古びた背広の胸ポケットから茶封筒を取り出す。
促されるままに中を検める美智恵の顔色がどんどん悪くなっていく。

「もちろんそれは正式な令状を伴って得たものではないですから証拠としての価値はないですがね。」

だが令状無しでもここまで調べれるのだ…と言われたも同然だ。

「でしょうね…で、あなたは何がお望みなのかしら?」

「別にたいしたもんじゃないですよ。せめて人並みの時給と彼が高校を卒業した時に独立できるよう確約を頂ければ御の字ですが、前者はともかく後者は彼の意志もあるでしょうからな。」

坂上の言葉にやや拍子抜けする。

「それだけ…ですか?」

「今はそれで充分と考えとります。大人は子供達を見守るのが役割ですからな。彼に限って心配は無いと思いますが、私も古い人間でね。子供が大金を持つのは賛成しかねるんですわ。」

「そうですね…」

「ですから、彼が生活のため学業をおろそかにすることもなく、収入面で唯ちゃんに引け目を感じることもない…その程度ですよ。私の望みは…」

「わかりました…一つお聞きして宜しいかしら?」

「なんですかな?」

「なぜ、この話を直接、令子、いえ娘のところではなく私に?」

「私も甘い人間でね…」

「そうですか…ありがとうと言うべきでしょうね?」

「礼を言われる覚えは無いですな。もともとその書類には何の価値も無いですからね。」

「それでも言わせて頂きますわ。」

「ははは。ならば来週にでもお茶に付き合ってもらいましょうか。」

「ええ…必ず。」

つまり来週までに結果を出せと言われたのだ…と美智恵は坂上の意図を正確に理解した。
その美智恵の様子に坂上の顔に先ほどの好々爺とした表情が戻る。

「そうですか…いや〜横島君のことは私の勘違いだったようですな。どうもお忙しいところお邪魔して申し訳ありませんでした。」

立ち上がり頭を下げると坂上はゆっくりとした動作でドアに近づく。
そしてノブに手をかけると振り返り人の悪い笑顔を浮かべた。

「そうそう…お土産の雷おこしですが…砕いてから食うと美味いですよ。何かに叩きつけたりしてしてね…」


30分後、美智恵は西条に内線をかけた。

「西条君。調べて欲しいことがあるの。城南署の坂上って人物よ。お願いできる?そう。悪いけどなるべく早くね。」

電話を切った美智恵は坂上のお土産を口に含む。

床に叩きつけられたかのように砕けたそれは苦い味がした。


後書き
ども。犬雀です。
今回はほとんど幕間話みたいなもんですね。
犬としては、現在の共同生活を円滑にするために横島君たちの収入を上げてやりたいと思ってました。
それで今回は坂上署長に頑張ってもらいました。

あ〜。それとアリエスですが。小さくなるとエッチぃ行動をとるというお約束。
さすがに見破れられていたようです。
犬、仲間がいて嬉しいです。

次回はそろそろ事件の核心に迫ります。

ではでは…


>法師陰陽師様
アリエス…お約束をかましてくれました。
今頃はおいしく漬けあがっていることかと思われます。

>wata様
最近の横島君は突っ込み専門でしたからねぇ…次回はどうなりますことやら?

>tojack
パタリロと言えばパタリロです。アリエスは彼を意識してますんで。
トリックに関してはあのまま使うわけにもいかんので現代風にアレンジしてます。結末は…秘密です。

>Dan様
正解です。黄色くなりましたぁ〜。

>通りすがり様
今回はアリエス主導でした。ある意味、拷問?

>伏兵様
えーと。ギャグはお近くのダ〇エーで…(マテ
夜勤で仮眠できないときとかぼんやりと考えてます。
思いついたネタはネタ帳に「貧乳」とか「いじめ」とか書き込んでます。
それを家族に見られて優しい目で見られたのは良い思い出です…ぐっすん(泣

>梶木まぐ郎様
今回はライトサスペンス&壊れ&対抗戦の準備って感じで書いてます。
真相は次回かその次で…。

>紫苑様
はい。潜り込んじゃいました。
一緒に潰されましたけど…(w

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