第3話 「卒業式の夜」
「イヤァァァァァァァァァァ!!!」
絶叫とともに跳ね起きる少女を魔鈴は優しく抱きとめ、その頭を撫で続けた。
次第に落ち着きを取り戻す少女。
その目に意志の光が戻る。
魔鈴はそっと体を離し少女の顔を覗き込んだ。
「落ち着きました?」
自分の置かれた状況が把握できず、落ち着きの無い視線を周囲に巡らす。
その視線が傍らで心配そうに自分を見ている摩耶に止まった。
「ま、摩耶ちゃん…私…ごめんなさい…」
「あ、いいよ。それより茜ちゃん大丈夫?どこか痛いとかない?」
「うん…」
言葉少なに頷く茜の前にティーカップが差し出される。
「え…?」
「このお店自慢のハーブティです。落ち着きますよ。」
慈母のごとき笑みとともに差し出されるハーブティの香りが鼻腔をくすぐる。
誘われるように一口、口をつけて茜はその顔にかすかな笑みを浮かべた。
全てを飲み終わる頃になってやっと落ち着いたのかあたりを見回す茜。
「ここは…」
「ここは私の店です。」
「え…」
アンティークな店の佇まいに驚く茜。
目の前の女性が自分より年上というのはわかるが、それでもそんなに離れていないだろう。なのにこのような店のオーナーと紹介されれば驚きもする。
しかも…自分は吸血鬼と呼ばれた少年に切りかかりそのまま意識を失ったのだ。
それが何故、この女性の店にいるのか?
さっきの吸血鬼はどうなったのか?
彼女は再び混乱し始めた。
彼女の表情からそれを察したのだろう。魔鈴は穏やかに説明しだす。
「私はGSでもあります。たまたまあの店の前を通りかかったら知り合いのGSに抱かれた貴方がいたので、何かのお力になれないかしらと思ってここにお連れしました。」
「そ…そうですか…」
空になったカップの覗き込みながら項垂れる茜だったがハッと顔を上げて摩耶を見た。
「摩耶ちゃん!そういえばさっきの吸血鬼は!!何もされなかった?!」
「う…うん…あのね茜ちゃん。さっきの人はピート君って言って私の学校のお友達なの…」
摩耶の言葉に茜の顔に再び鬼相が浮かぶ。
「何言っているのっ!!化け物なのよ!人殺しなのよ!!あなたも殺されるわ!!」
「茜さんでしたか?落ち着いて…」
宥めにかかる魔鈴の腕を掴んで必死に訴える茜。
「あ、あなたGSなんでしょ!!早くあの化け物を退治してよっ!!」
「あら、でも彼もGSですよ。」
「え…」
魔鈴の言葉に信じられないという表情を浮かべる茜。
そんな彼女に魔鈴は黒猫に命じて一冊の雑誌を持ってこさせた。
「ほら」
彼女が見せたのは、かっての大戦のときピートを表紙にした海外の雑誌。
血走った目でそれを見つめる茜にそっと話しかける。
「あの核ジャック事件はご存知ですよね。」
コクリと頷く茜。
「彼はその時、人間の側に立って活躍した優秀なGSでもあります。決してあなたが考えるような化け物ではありませんよ。」
「え…でも吸血鬼…」
「半分だけですけどね。それに…私も『魔女』ですが怖いですか?」
魔鈴の話に驚愕の眼差しを向ける茜だったが、やがておずおずと首を横に振った。
そんな茜の様子に魔鈴は微笑を浮かべて彼女の横に座ると、まだかすかに震える手を握りそっと耳元で囁く。
「お力になれるかも知れません。何があったか話してくださいますね?」
しばしの逡巡の後、茜は話し出す。
あの悪夢の夜の事を…。
「あれは…私が中学を卒業した卒業式の夜でした。その日は私のお祝いということもあって久々に家族で外食をしようと言う話になっていました。」
俯きつつ語り始める茜。
「母は体が弱い人でした…。でも、とっても優しくて…。あの晩も体調が悪いのに私のために無理をしてくれて…」
「お母さんはどこが悪かったんですか?」
魔鈴の問いにますます顔を下げながらか細い声で答える。
「貧血…と本人は言ってました。けど…私は心の病気だと思ってました。」
「心…?」
「はい…私の本当の父は私が小学生の頃に亡くなりました。それから母と二人で暮らしてきた私たちだったのに…中学のときに今の父が家にやってきて…それからでした…母が奇妙な妄想に取り付かれ始めたのは…」
「妄想ですか?」
「はい…死んだ父が吸血鬼になって自分を迎えに来る…そんな妄想でした。」
魔鈴は彼女のカップにお茶を注ぎながら先を促す。
「その妄想はだんだん酷くなってきました…。義理の父も何度もそれは妄想だ…と言ってい病院にも連れていこうとしましたが…結局、母は行きませんでした…」
「酷くとはどのように?」
「夜になると自分の部屋に閉じこもり、窓もドアも鍵をかけて閉じこもってしまうんです。そして…朝になれば出てきて…昼間は普通だったんです!でも…」
「でも?」
「夜が近づくと怯えだして…そのうち部屋にニンニクとか、吸血鬼の本とか、大きな鏡とか置きだして…そ、それに…き、き、き、木の杭まで…」
ガタガタと震えだす茜の肩を抱き寄せる魔鈴は震える茜の手からそっとカップを受け取り、熱い茶で赤くなった彼女の手をやさしく撫ぜた。
「わ…私も怖くなって…何度も病院に行こうと勧めたんですけど…そんなある朝……私たちは母の悲鳴で目を覚ましました。慌てて母の部屋に駆けつけてみたら…ドアに鍵がかかっていて…義父が合鍵で開けて…」
「それで?」
「中に母が…倒れていました…慌てて救急車を呼んだんです…。で、でも…私…その時、見たんです!!」
「何を…ですか?」
「母の首に…二つの赤い跡があるのを…。病院の人は何か鋭いもので刺したんだろうと言ってました…義父が言うには妄想が高じて自分で傷つけたんだろう…とのことでした。」
「血は流れてました?」
「いえ…私が見たときは止まってました…。」
「そうですか…続けてください。」
「はい…それから母の妄想はどんどん酷くなっていきました…部屋も鍵だけでなく中から閂までして…。」
「それが卒業式の夜に?」
「はい…私の卒業がよほど嬉しかったんだと思います…。あれほど夜に部屋から出なかった母がその晩に限って私たちと外出するって言ってくれました…。私も嬉しくて、部屋に着替えに行った母を居間で待ってました。…そうしたら…突然、二階の母の部屋からドスンと大きな物が倒れるような音が聞こえて…」
「倒れる音…」
「私と父が慌てて部屋に行って母を呼んでも…へ、返事が無くて…変わりに…こ、こ、怖い声が聞こえて…」
震えだす茜の肩を強く抱き寄せる。なんとか語り続ける彼女の目から涙があふれ出る。
「父がドアを壊して…私…み、見ちゃって…母が…母が…うつ伏せに倒れていて……血が一杯出てて…どんどん広がっていて…は、母の、せ、背中から木の杭の先が突き出ていてぇぇぇぇ!!!」
「大丈夫!大丈夫ですよ!」
魔鈴は再び錯乱する茜を押さえつけその耳元で呪文を唱えた。
すーっと茜の顔から感情が消える。どうやら鎮静効果のある呪文のようだ。
呪文の効果か機械のように抑揚の無い口調で話し出す茜を痛ましい目で見つめる摩耶。
その目にも涙がある。
「警察が来て調べていきました…。母は自殺と断定されました。杭を自分の胸に当てて倒れこんだんだろうって話でした…」
「なぜそんなことを…」
「母は自分が吸血鬼になるのが怖かったんだと思います…。あの首の一件以来、私が近づくと凄く怒るようになりました…。「あなたも吸血鬼になりたいの!」って凄く怒られました…。」
「それであなたはお母さんが本当に吸血鬼に襲われたと信じているの?」
「いいえ…信じていませんでした…。でも…」
「でも?」
「この間の夜…電話がかかってきました…出てみると聞いたことも無いような男の声で…「母親は失敗したが次はお前だ」と言って切れました…」
「吸血鬼が電話で?」
「はい…でも、それから不思議なことが私の身の回りでおき始めました…」
「それはどのような?」
「朝起きたら…窓に血のついた手形みたいなものがあったり…布団がぐっしょり濡れていたり…」
「あなたはそれが吸血鬼の仕業と考えてますか?」
「わかりません…」
「そうですか…」
魔鈴は軽く頷くと茜の耳元でパチンと指を鳴らした。
途端に茜の顔に感情が戻る。と、同時に彼女は激しく震えだした。思わず駆け寄る摩耶も彼女を抱きしめる。
「つらい事を思い出させてしまいましたね…」
労わるような魔鈴の言葉に静かに首を振る茜。
魔鈴は再び彼女の前に立つと、その手にポケットから取り出した小さな指輪を乗せた。
手の中の指輪を怪訝な顔で見つめる茜の手を指輪ごと包み込む。
「これは魔女の指輪です。これに今から魔法をかけます。これで吸血鬼はあなたに害を及ぼすことが出来なくなります。」
驚く茜の手の中の指輪が魔鈴の呪文とともに淡く光った。
やがて光のおさまったそれを茜の指にはめてやる。
まじまじと指輪を見つめる茜を優しく立たせる魔鈴は摩耶に目配せした。
「さあ、これで大丈夫です。あなたのこと、それからお母さんのこと、私と私の信頼する友人のGSたちが調べてさしあげます…かまいませんか?」
「え…ええ…でもまだバイトしたばかりでお金が溜まってなくて…」
「費用のことでしたら心配しないで下さい。学生さんからそんなに頂けませんし、それにこれは私たちの仕事とは別になりそうですし…」
「え?」
魔鈴の言葉に不審の表情を浮かべる茜を玄関のドアまで送ると後をついてくる摩耶に振り返る。
「今、車を呼びますから…摩耶さんでしたね。彼女を送って差し上げてください。」
「はい…あの…茜ちゃんのこと…」
「わかってます。」
魔鈴の笑顔に安心したのか摩耶は茜の手をとると外へと歩み出た。
すぐに一台のタクシーが見つかり、それに乗り込む少女達を笑顔のまま見送る魔鈴だったが、車が離れるにつれその顔から笑顔が消えていった。
真剣な表情のまま魔鈴が店に戻ると隣の部屋にいた横島たちが戻ってきていた。
ピートが頭を下げる。
「すみませんでした…」
「いえ、別にピートさんが悪いわけじゃないですし。」
「でも…」
まだ言い募るピートを軽く制する。
「それにこれは吸血鬼の起こした事件とは思えません…」
「「「え?」」」
驚く少年達。加藤が口を開く。
「貴殿はあの少女の言葉から何かを掴まれたのですな。」
「ええ…まだ確証は無いんですけど…当時の検視報告とか見てみないとなんとも言えませんが…」
「警察なら唯ちゃんのコネでなんとかなるかもしんないっすね。」
「ああ、そうでしたね。では、私も少し調べてみます。明日、お店が終わったらまたここで話し合いませんか?」
魔鈴の提案に頷く一同。再び加藤が意気込んで聞く。
「して貴殿はこの事件はどのような物の怪の仕業と…」
「物の怪?違います…私の予想が正しいなら…」
「「「正しいなら…?」」」
「これは殺人です。」
魔鈴の店から出て一同と別れアパートへの道を歩いていた横島は奇妙な光景に遭遇していた。
彼の前、アパートの入り口近くの電信柱の下におかれたダンボールがもきょもきょと動いている。
警戒しつつ近づいてみれば…そこから聞こえるエグエグとどこかで聞いたような泣き声。
脱力しつつ声をかける。
「アリエスちゃん…何してんの?」
途端にガバッと跳ね上がるダンボール。中から出てきたのは新聞紙に包まったカッパの女王だった。
涙に汚れた顔で彼を見つめたアリエスはウワーンと泣きながら横島にすがりついた。
その変わり果てた様子に慌てる横島。
「忠夫様…忠夫様ぁ〜!」
「ど、どうしたの…」
「お腹空いたぁ〜えぐえぐ…」
「は、話が見えんのだが…」
「んとね…あのね…書類の決裁が終わるまで部屋から出しませんって言われて…」
「で…」
「ご飯も…一日一食…しかもわたくしの嫌いなひじきばっかりで…」
「好き嫌いは…」
「そんでね…書類に判子押せ〜って鞭でビシビシって…」
「そりゃやりすぎだなぁ…」
「でしょでしょ!だから…逃げてきましたの〜えぐえぐ…」
「そ…そうか…「待てい!」…って?」
声のするほうを見れば電柱の上、夜だというのに眩い光を背に立つ男の姿。
ふたたび聞こえるギターの音色。
「己に都合の良い情報だけを他者に伝える性根の悪さ。自分の仕事をホッポリ出して逃げまくるその根性!…人それを『無能』と言う…」
「あ〜。一応、お約束だから聞いてやる…何者だ?」
「お前達に名乗る名は無い!」
「わかったから降りて来いやカワ太郎…」
「うむ…しばし待って下さい。」
よじよじと電柱を降りてくるカワ太郎を見つめ続ける横島の顔には疲労の色が深い。
アリエスはといえば再びダンボールをかぶって箱に擬態している…つもりらしい。
電柱を降りたカワ太郎はもぞもぞと逃げようとしているダンボールに近づくと無造作に蹴っ飛ばす。
「くえっ!」
ゴロゴロと転がるダンボールとその中身。さすがに横島も開いた口がふさがらない。
「あの…カワ太郎君?」
「なんですか?横島さん」
「まがりなりにも…君達の女王様だよね…」
「はて?異な事をおっしゃる…私が蹴ったのはもそもそ逃げ回る面妖なダンボールですが?」
ニヤリと笑うカワ太郎に、「コイツも色々とストレス溜まってんだなぁ…」同情しつつも事実は指摘しておかねばなるまい。
「いや…中身…」
汗をかきつつ横島が指差すその場所にはグルグルと目を回しているアリエスがいた。
「おおっ!姫様!いったい誰にこのようなムゴイ仕打ちを!」
「お前やぁぁぁ!!!」
「まあまあ横島さん…このような夜分に往来で騒ぐものではありませんよ。」
「他人事かいっ!」
「ささ…とりあえず横島さんの部屋まで姫様を…」
「あ…ああ…」
二人がかりでアリエスを担ぎ上げ、えっちらおっちら階段を上って自分の部屋の前に立てば、真っ暗の部屋から漂う異様な気配に横島は背中の毛がチリチリとしてくるのを感じる。
見ればカワ太郎も顔のプロテクターを閉めて臨戦態勢だった。
恐る恐るドアを開け、目に入るわ…
食事の並んだちゃぶ台の前で震えながら正座する小鳩一家と唯。
そして玄関で机を振りかぶっている愛子の姿。
「あ、愛子さん…」
「人が折角、頑張っておいしいご飯を作って待っているのに連絡もなく…」
ゴゴゴと地の底から響くかのような音が聞こえる気がする…。
声も無くおののく横島君ととばっちりを食らったカワ太郎の真ん中で目を回したままのアリエス…ある意味、幸せ?
「あげくに…女まで引っ張り込んでぇぇぇぇ!!この浮気者ぉぉぉ!!」
昼間のピートの余計な一言からの妄想を引きずったまま放たれた愛子の一撃は、一人の少年を巻き添えになったカッパたち諸共お空の星にした。
「美味い!こら美味い!」
「こら!横島!!そりゃワイが狙っとったんや!」
「カワ太郎!あなた臣下の分際でわたくしのおかずを!!」
「申し訳ない姫様!今は忠義よりも食欲!!」
「お前に忠誠心があるんかっ!ってアリエスちゃんこそ俺のおかずをっ!!」
「すみません忠夫様!今は性欲より食欲!!」
「性欲って何よっ!」
給仕しながら突っ込む愛子。
いまだ怒り覚めやらぬ様子だが料理を誉められて嬉しそうだ。
圧倒される唯と小鳩とその母は…別な場所に広げた小鳩家のちゃぶ台でもふもふと食事中。さすがにあの中で自分のおかずを死守する自信はないらしい。
やがて食事も終わり一息つく横島の前にずずいと進み出る愛子。
再び怒りがこみ上げてきたらしい。
そんな彼女に苦笑いしながら語られる今日の出来事の経緯に流石のオポンチ娘たちも神剣になった。
「…と言うわけで…唯ちゃん?」
「えう?」
「明日でも警察に行きたいんだけど…いいかな?」
「わかりましたぁ。署長さんに頼んでみます。」
ピシッと敬礼しつつ頷く唯は横島の笑顔にたちまち赤面する。
「んじゃ今日は寝るかぁ…ってアリエスちゃん…何してるの?」
いそいそと布団を敷き、横島の枕の横に胸元から取り出した枕を置くアリエス。
ご丁寧に枕元にティッシュの箱まで置いてある。
みなの白い視線にも動じもせずに横島に向けて三つ指ついてご挨拶。
「不束者ですが…くきょ!」
深々と下げた頭をカワ太郎に踏まれて這い蹲るその姿は車に引かれた蛙のよう。
「姫様…まだサボろうと言うのですか…」
「でもでも…今から帰っても…それに…」
「それに?」
「忠夫様のご学友のピンチですわ。こんなときにお役に立てないなんて…カッパとしても悲しいことではありませんか?…えくえく」
嘘泣きを交えたアリエスの言葉にカワ太郎もウームと考え込む。
どうでもいいがそろそろ足はどけてやれ。
「ふむ…仕方ないですな…しかし、この話が終わるまでですよ…」
「あ、ありがとうカワ太郎!!ささ、忠夫様。そうと決まれば早速床に…布団は一つ枕は二つでしっぽりと…くきゅ!」
いつの間にか頭に乗っている足が三本増えていた。
「何か愉快なこといってますねぃ…」
「小鳩だってたまには怒るんですよ…」
「食欲が満たされれば性欲ってわけかしら…」
再びゴゴゴと異音が室内に鳴り響く。怯える貧と横島。ちなみに小鳩母はすでにこの異界から退避していた。
異界の住人と化しつつある少女に無謀にもカワ太郎が話しかける。
「ご心配なく。皆様が心配なさるようなことにはなりません。」
「「「え?」」」
驚く愛子たちに邪な笑顔を向けてカワ太郎はアリエスの襟首を掴んで持ち上げた。
ニャーと素直に吊るされるアリエスを持ったまま愛子に聞くのは洗濯機の場所。
訳がわからぬまま教える愛子に一礼すると、そのままアリエスを洗濯機まで連れて行く。
ここに至ってアリエスはやっとカワ太郎の意図に気がつき、ジタバタと暴れ始めるがもう手遅れだった。
「な、なあカワ太郎…いったい何を…」
ニャーニャー暴れながら助けを求める視線を無視できずに聞く横島に返事もせず、カワ太郎はアリエスを洗濯機に放り込み蓋を無理矢理閉めると脱水のスイッチを押した。
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
激しく回転しながら叫ぶアリエスの悲鳴はだんだん小さくなり…やがて脱水が完了し蓋を開けたカワ太郎が取り出したのは1/10ほどに縮小されて目を回したアリエスだった。
あっけにとられる一同に目を回したままぶら下られてるアリエスを示しながらカワ太郎が説明する。
「姫様は特異体質でして乾燥させると縮むのです。これならばサイズ的に淫猥な真似はできますまい。」
「そ…そうすか…」
「あの…元に戻すにはどうすればいいんですか?」
どう反応していいのか解らない横島の変わりに小鳩が大事なことを聞く。
「ああ、水に漬けておけば戻ります。」
「「「ワカメかっ!!」」」
突っ込む一同にカワ太郎はただ頷くだけであった。
このカワ太郎の処置が、横島にとんでもない悲劇を呼び込むことになるとはその時、誰も気づかなかった。
後書き
ども。犬雀です。
今回も壊れとダーク表記というわけわからん話になりました。
さて、シリアスの場面は魔鈴の言ったとおり…これは妖怪によるものではありません。
壊れの場面は…いつもの通りです。
では次回…「美智恵敗北す」(仮)でお会いしましょう。
>極楽鳥様
はい。濡れ衣でした。杭は自分で刺したようですねぇ。
>梶木まぐ郎様
エグイです。ごめんなさい。
>wata様
>真祖ときたら死徒
なるほど!いただきです。ご教授感謝です。
>法師陰陽師様
ご教授感謝であります。さっそく保存いたしました。
本当の吸血鬼が出るときの参考にさせていただきます。
>紫苑様
魔鈴さん。どうなりますか…犬の中で候補は神父、魔鈴さん、美智恵さん、西条君があがってます。
>義王様
茜の母は吸血鬼に杭を刺してます。ただし自分ですが…
>通りすがり様
魔鈴さんがコーチでもいけると思うんですよ。
定休日だけとか。で、それで行けば西条とかも行けるかと…。
でもまだ考えてません。