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!警告!壊れキャラ有り

「心眼は眠らない その43(GS)」

hanlucky (2005-02-12 05:35/2005-02-12 05:35)
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「三人ともがんばってね!」

B組の生徒は対抗戦に出るおキヌ、弓、一文字にエールを送る。その三人はいつでも戦
えるように各々の最も戦いやすい服に着替えていた。おキヌは普段どおりに巫女装束、
弓は僧のような服装、一文字は特攻服といった感じである。

「ね、ね、弓〜。」
「何かしら? 試合前だから手短にして欲しいわ。」

口調こそいつも通りの弓であったが数日前とは大分印象が違うように感じる。その理由は
もちろん、

「あの彼とは何処までいったの?」
「―――!?」

その女生徒の質問にクラスの皆は弓に注目する。二日前から放課後に雪之丞と、つまり男
と二人きりで特訓していたのだ。といっても影からこそこそと二人の特訓風景を眺めてい
た者のいるため、二人に何もなかったのはわかりきっているのだが、そこをあえて聞く。

「べべっ別に何もありませんわ! あの男が押し付けがましく付き合ってやると言ってい
 るからそばに置いてるだけであって……」

弓は早口で言うが、そんなに慌てていては照れている事が丸分かりである。しかも弓が
頼んだのに雪之丞が頼んだような形になっていた。

ピッ

『―――それまで放課後、練習に付き合ってくれないかしら?』
「なっ!?」
「これは何かな〜。」

アレだけ校舎を走り回っていたら他のクラスの生徒にバレるのも当然であのシーンも隠れ
て録画されていたらしい。ビデオを再生させて女生徒はしてやったりといった感じであ
る。弓は見事にあのシーンが皆に知られている事を知り顔を真っ赤にする。

「うっうるさいわね!! 氷室さん、一文字さん、行きますわよ!!」
「おいおい、そんなに急ぐなって。」
「待ってください〜。」

1年B組、緊張感のかけらもないまま出陣。


――心眼は眠らない その43――


土曜日〜Saturday〜―――


クラス対抗戦は六道女学院のテニスコートで行われ、ルールは三体三の六人タッグマッチ
、5秒フォール勝ち、時間無制限の一本勝負である。

「お? 美神さん、おキヌちゃんが出てきましたよ!」
「あら、おキヌちゃん、がんばれ!!」
(……やはりこういう時は俺も応援しなくちゃいけねえのか?)

審査員席には美神と横島そして雪之丞が招かれていた。間もなくB組の試合が始まるだけ
あって美神と横島は声を上げて応援する。雪之丞は弓に向けて応援するのに戸惑っている
ようであった。

「……先鋒は私が行きます!!」
「えらく気合入っているじゃねえか……ってそりゃ彼氏が見てるんだから当然か。」
「なっ!?」

ずばりやる気の源を当てられた弓が顔を赤くする。つい先日まで一文字と弓は決して仲
が良いとはいえない関係であったか、どうやら雪之丞の存在は弓に余裕を与えてくれた
らしい。そのおかげもあってか、二人の仲は悪くは無い。弓は一文字に返事を返さず結界
に入る準備を行う。

「くくく…今のお前って、前より大分いい感じだよ。」

一文字は弓の背中に向けて言う。そしてそれと同時にゴングが鳴る。

カーン

「全く、これだから男性に縁がない人は―――」

弓は対戦相手へと一気に距離を詰める。この程度の相手に小細工は必要ないと判断したら
しい。対戦相手はファントムの仮面を被っていて力が増幅させるタイプらしい。しかし、

「―――困りますわ!!」
「きゃぁぁ!!」

今の弓の敵ではない。持っている薙刀で相手の足を刈り転がしてそのまま押さえつける。

「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、勝者B組!」

審判がカウントする間、相手は抵抗するも全く動けず、そのまま弓の圧勝で終わった。

(う〜ん、今の娘は仮面を被っていたから、悶え顔がよくわからんかったな……)

横島にとって試合の内容はどうでもいいようだ。美神は横島が何を考えているかお見通
しであったが、

(いいわね〜。真剣な顔して試合を見ているなんて。)

六道女史はまだまだのようだ。そして雪之丞は弓が勝利を収めてホッとしている。

(さて……俺の心眼を舐めるなよ!!)

非常に悠闇に失礼な言い方だが横島はC組とD組の選手を片っ端からチェックしていく。
その眼力は、コンマ二桁まで狂いがなく女としての戦闘力を見極めていく。

(……C組にあんな娘がいたなんて……俺もまだまだだな。)

横島はC組とD組の試合を観戦する。といっても注目している部分が限られているが。

「よし!! そのまま押し倒せ!!」
「あらあら、熱心ね〜。」

横島、すでに考えている事が口に出ているがどうやら好意的に受け取ってもらえたらし
い。結局戦いはD組のキョンシーを使用していた女子が横島がC組である意味注目して
いた女子を押し切って勝利する。

だが、

(……あんなプルルンやったというのにこれでも反応してくれんのか?)

横島は一人落ち込んでいたようだ。

期待してたんやぞーーー!!!


「よう、調子よかったじゃねえか。」
「あ、雪之丞……」

雪之丞はいつの間にか席を立ち、弓を探していたようで、弓が手洗い場にいるところで
ようやく発見する。そして二人は先ほどの戦いについて語る。

「下手な戦いしたら後であなたに何言われるかわかりませんからね。」
「その何だ……無茶するんじゃねえぞ。」

いつの間にか結構な仲になっている二人。弓としては周りに知られている事もあり肝が据
わったようである。対して雪之丞は未だに照れが残っている。

「まぁ……がんばれよ。」
「それだったら少しは応援してほしいわね。」
「おっ俺は審査員だからそっそんな個人的な応援……わかったよ。決勝戦だけ応援してや
 る。」

弓に微妙に睨まれて応援する事を約束する雪之丞であった。このままでは間違いなく将来
尻にしかれるだろう。雪之丞はそのまま会場に戻っていく。と同時に、

「熱いね〜。」
「なっ!? いつからそこにいましたの、一文字さんと氷室さん。」
「すっすみません、ちょっと遅かったから心配して見に来たんですけど……お邪魔でし
 たよね。」

こっそり雪之丞と弓のやり取りを除いていた二人。平謝りするおキヌとニヤニヤしなが
ら弓を見つめる一文字。

「ふ〜少しは慎みというものを知ったほうがいいわよ。」
「んだと、コラ。」

一文字も口が悪いが弓の顔を見ていると強がりだと分かっているのでおキヌがまぁまぁと
言う必要はなかったようだ。

(弓さんも一文字さんも……ふふふ、私もがんばらなくっちゃ。)

そしてD組との戦いが始まる。


「ねえ、雪之丞。横島クンが何処いったか知らない?」
「はぁ? 俺が知るわけねえじゃねえか。」

審査員席に雪之丞が戻った時には横島の姿はなかった。トイレに行くと言っていたが、
時間が経ちすぎている。

「あの馬鹿、心眼がついているから変な事はしないと思うけど……」

ちなみに悠闇は覗き程度なら横島に許可をしている。

「う〜ん……あ! おキヌちゃん、がんばりなさいよ!!」
「が…が(んばれよ、弓!!)」

雪之丞はまだまだのようである。


そして消えた横島であるが、現在最後の賭けに出ていた。

(俺の煩悩が呪い何かに負けるわけがねーーー!!!)

横島は呪いを受けてからまず、第一段階、全ての気力を失う。これが日曜から火曜までの
状態であった。そして第二段階、自発的に煩悩を、誇りを取り戻そうとする。これは横島
が女生徒の水着姿などを見て奮い立たせていたことでおわかりになるように、水曜から金
曜までの段階である。そして第三段階、行動がエスカレートする。つまり必死になってい
る。

(確か、右には女子更衣室が、左は……ぐふふふ、シャワー室か!!)

何気に建物をチェックは欠かさない横島であった。横島曰くそれが覗きの成功の第一歩ら
しい。そして横島は今まで覗きで決してしていなかった事があったが今日、その禁を破る
事にしたらしい。

「心眼……」
『何だ、随分真剣なようだが?』

悠闇は許可していたが、横島は今までこれだけはしていなかった。それは自分の覗きのテ
クを汚すモノであったから……

「俺は―――」

右手に意識を集中させる。

「―――今日、初めて《覗》を使う!!」
『……………………好きにすればいいだろ。そんな事にワレを起こすな、ばか者。』

そう、横島は今まで《覗》を使用して覗きをしていなかった。それは自分の覗きに関する
卓越した技術に対して冒涜だと思っていたらしい。体育の時間も日々強化されていく覗き
撲滅部隊に正々堂々勝った後に見れる光景に意味があったのだ。だが横島今、その誇りを
捨てる。何故なら―――

「俺が俺を取り戻すためだ!!」

―――自分の魂を取り戻すため。

(右よし、左よし、周りに気配は無し。いざ!!)


今、少年は一つの誇りを捨てる。


《覗》


全ては奪われた魂を取り戻すため。


(見えてきた見えてきた見えてき……)


壁は透けて、シャワー室の中が見え始める。


(…………………………)


シャワー室には誰もいなかった。

「―――」

呆然とする横島。

「ははは。」

しばらくして不気味に笑い始める。周りから見たら実に気味が悪い。

「ははは。」

段々とボリュームが上がっていく。周りに生徒がいれば即通報だろう。

「はははははははは!!」

壊れてしまったようだ。


横島が心底落ち込んでいる間に、B組とD組の戦いは佳境に入っていた。始めはおキヌと
キョンシー使いの戦いでおキヌがネクロマンサーの笛を使用してキョンシーを奪ったまで
はよかったが、次の正攻法の相手に押し返されるも一文字がそれをさらに押し返し、現在
はD組の最後の選手が一文字の戦闘力を封印している最中であった。

「一文字さん!! 後は任せなさい!!」
「……わりーけど、おめえにばっか活躍させられねえんだよ!!」

一文字は相手の非武装結界という敵の霊力を吸う能力によってさらしと下着だけになって
いた。おかげで現在、雪之丞は鼻血の海に沈んでいる。横島と違ってこの試合の間に復活
は出来ないだろう。

「おぉぉ!!」

一文字は右手にほとんどの霊力を集中させる。

「あきらめさない!! 私の結界はその程度で―――」

すると結界である紙が一文字の右手に集まり左手が自由になる。

「残念だが、戦いってのは―――根性があるヤツが勝つんだよ!!」

一文字は左手に極小の霊力を籠めて相手を殴り倒す。相手は結界に頼りすぎていたため打た
れ弱かったらしい。そのままノックダウンする。

「勝者、B組!!」
「弓さん、一文字さんが勝ちましたよ!!」
「わかってるわよ……よくやったわ、一文字さん。」
「お、珍しいじゃんか。……サンキュ。」

一文字の勝利をちょっと捻くれながらも祝福する弓と、同じくちょっと捻くれながらも
礼を言う一文字であった。そんな二人にニッコリ微笑むおキヌであった。

「決勝戦まで時間あるみたいね。一回、シャワーでも浴びましょうか。」

三人は先ほどの疲れを少しでも癒すためにシャワー室に向かう。そしてそこでは、

「アレ? 横島さん、どうしたんですか?」
「……おキヌちゃんか。……いや別に……」

何処か、仕事帰りの疲れきったサラリーマンのような横島であった。目が充血しているの
はずっと泣いていたからなのだろうか。

「……そうだ。……何処か怪我でもしているんなら見てあげようか?……一応、俺ヒーリング使えるし……」
「アンタって本当に多才なヤツだな。じゃあ少し頼むよ。」

あまりにも暗い横島に少し怪しむも折角治療してもらえるならそれに越した事は無い。
一文字が治療を受けて、その次に弓も受けた。

(なんだ、てっきり横島さんの事だから覗きでもするじゃないかと……疑ってごめんなさ
 い。横島さん。)

ヒーリングするにも霊力を使うので第三者のこういう治療は本当に大助かりであった。
ちなみに女性にヒーリングしているのにいつのより出力が弱かったのはそれほど横島が
へこんでいたという事である。

「……それじゃ、がんばってな。応援してるから……」

肩をガックリと落としながら横島は審査員席に帰っていった。


「これより決勝戦を行います!!」

アナウンスが流れ会場は一気にヒートアップする。

「ちょっと……こら、試合始まるわよ。いつまで何があったか知らないけど落ち込んで
 んのよ!」
「わからんのやーー!! 女にはこの空しさは分からへんのやーー!!。」
(よし、今度こそ、言えばいいんだな。)

美神が怒り、横島が泣く、雪之丞は応援する事に緊張していた。

「ほら、おキヌちゃんが出てきたわよ。」
「……そうっすね。おキヌちゃんには頑張ってもらいたいっすから。頑張れーー!!」

横島、少しは復活しておキヌを応援し始める。そしていよいよ試合開始が近づいてきた。

「(まだ、応援しないつもり!!)……ちょっと頼みがあるんだけどいいかしら?」
「あん、何だ?」

弓は未だに声を上げて応援しない雪之丞にイラだっていた。そんな雪之丞に意地でも応援
させようとある頼みをおキヌと一文字にする。

「は〜がんばるね〜。ま、いいじゃねえか、なぁおキヌちゃん。」
「そうですね、でも無理はしないでください。」
「君たち、試合始めるよ。……先鋒前へ。」

審判がおキヌたちを急かす。どうやら先鋒は弓で相手はレスリングの格好した女生徒のよ
うだ。両者が結界の中に入った瞬間、ゴングがなる。

「かかって来なさい!!」
「雷獣変化!!」

相手は獣化能力の持ち主のようで雷獣に変身して弓に迫る。

「力押しで私に勝てると思って!!」

弓は薙刀で雷獣の一撃を受け流す。すぐさまは雷獣は態勢を立て直し、弓に迫ろうとする
が、

「甘い!!」
「グガァ!?」

弓の敵ではない。そのまま薙刀で弾き飛ばす。雷獣は傷を負ったのか、引き下がりチーム
メイトを交代する。代わって出てきたのは巫女衣装を纏った生徒。

「こうもあっさり雷獣を倒すとはね!! でもこれはどう!!」

相手は弓に幻術をかける。その瞬間、弓には辺りがリゾート地に見えるようになる。

「……下らないわね。」

弓に腹に入れて吼える。

「喝!!―――この程度の幻術で私を騙せると思って!!」
「えっえっええ!?」

雪之丞は弓と稽古していただけではなかった。自分が経験してきた戦いを語り、あの時
もっともああしていたらと弓に成功談や失敗談も語った。そしてその中にはタマモの幻術
にやられた時の事も含まれていた。

”幻術を打ち破る一番の方法……あ〜確か何だったけな? まずは自分が幻術にかかって
 いると自覚する事が肝心らしいぞ……確かな?”

(本当に……曖昧な言い方でしたけどこの程度の幻術ならそれで十分でしたわね。)

弓は相手の幻術を一気に打ち破る。相手は切り札の幻術を破られてしまい最後の選手に交
代する。

「流石は弓かおりといったところかしら!!」
「速い!?」

最後の選手は忍び装束姿の生徒で、入試の実技成績は弓と同点首位な実力者であった。
弓は最初の相手といい、先ほどの幻術を強引に破ったためすでに疲労が見え始めている。

(まだよ、まだ!!)

弓は待っている。

「はぁぁぁぁ!!」
「ちっ!!」

相手が弓の薙刀を砕く。弓もこうなった以上最後の切り札を使う。

「弓式除霊術奥義―――」

弓は首にぶら下げている宝珠を掲げて奥義を発動させる。

「―――水晶観音!!」
「かかったわね!!」

相手は弓が強化服に包まれたと同時に頭から二本の霊体の触手を弓に取り付ける。その
触手は相手の自由を奪うものであった。そのため弓は奥義を発動させるも動けなくなって
しまう。

「これであなたは私の操り人形よ!! 勝負あったわね!!」
「まだ……まだ。」
「弓さん!! 交代してください!!」
「そうだ、後は任せろ!!」

しかし弓はおキヌたちに手を伸ばそうとしない。

ただ待っているのだ。

「そのまま5秒間、横におなり!!」
「いい加減……さっさと……」

弓は待っている。

何を?

(もう……本当に……)

「ワン…………ツー……」

カウントが開始される。

それでも待っているのだ。

だったら答えねば―――


「弓ーーー!!! 負けんじゃねえぞ!!」


―――男ではない。


「―――遅いわよ!!」
「とっととぶっ倒しやがれーーー!!!」
「スリー……」

雪之丞の声が弓に届いた瞬間、弓が最後の賭けに出る。

「あああああああああ!!!」
「馬鹿な!?」
「フォー!? カウントやめ!?」

全ての霊力を一本の腕に籠めて触手を振りほどく。そして束縛から解放された弓は驚い
てる対戦相手に一気に詰め寄り、

「喰らいなさい!!」

雪之丞から教わった霊波砲を零距離射撃で撃ち込む。弓を触手で押さえ続けるのはあまり
にも体力を消費したのだろう。弓の動きに対応できずそのまま霊波砲を喰らう。

「がはっ!?」

そのまま後方に弾かれ倒れこむ。

「ワン、ツー……試合終了!! 医療班急げ!!」

どうやら完全に意識を失っているようで審判はドクターストップをかける。

「勝者、B組!!」
「「やったーーー!!!」」

試合が終了しておキヌと一文字は弓に駆け寄る。弓は予定通り雪之丞に応援をさせて満足
気であった。

「よくやったぜ!!」
「本当ですよ、弓さん!!」
「えぇ、ありがとう。……本当に応援するのが遅いったらありゃしないわ。」
「おうおう、早速のろけか〜?」
「うっうるさいわよ!」

勝利を分かち合う三人、確かに決勝は弓の一人舞台であったが一回戦、二回戦と共に戦っ
てきた仲間なのだ。三人はそのまま勝利の涙を流していた。

そして一方の審査員席ではというと、

「……雪之丞、一つ聞きたい事があるんだが?」
「なっなんだよ!?」

横島はじろ〜とした目で雪之丞と弓を交互に見る。

「……とりあえず死ねーーー!!」
「はぁ!? ちょっと待ちやがれ!!」

どうやら場外乱闘が始まるようだ。

「人が不幸のどん底やというのにお前はそれかーーー!!!」
「んなもん知るかよ!!」

理由が横島の八つ当たりというのがえらく情けないと思う悠闇であった。


――心眼は眠らない その43・完――


おまけ


日曜日〜Sunday〜―――


「時は来た!!」
「誰に言っておるのだ?」

長かった。そう、横島にはこの一週間は一年にも感じただろう。そして今、呪いは解かれ
ようとしていた。ちなみに雪之丞は事前に横島が何か言ったらしく後二時間は帰って来
ないらしい。

(とりあえず、解けたら速攻押し倒す!!)
(解けたら迫ってきそうだな……)

飢えた獣と化している横島であったが、流石に元神族、嘘をつくわけもいかず解呪を始め
る竜神化している悠闇であった。どうやら解くにはこの姿ではないとダメらしい。

「ガルルルルル!!」
「(さてどうするべきか。今解いたら間違いなく襲われるのだが、いやむしろ犯される
 かもしれんな……)まぁ、何とかなるだろう。」

どうやら最終段階は完全に獣になるようであった。悠闇は冷や汗まじりにも解呪を行おう
とするが、その時、

コンコン

ガルルルル―――ってはい!!」

来訪者の訪れによって物凄い目つきで玄関のドアを開ける横島。もういろいろと待ちきれ
ないのだろう。そして外には、

「あっ! 横島さん、実はお渡ししたいものがあったんです。」

魔鈴がいた。どうやら魔鈴は料理を持って来てくれたらしいが、今の横島に魔鈴にしっか
りした対応ができる余裕はほとんどない。しかし、魔鈴は赤い顔をしながら何かを言いた
そうにしている。

「え〜と、え〜とですね。……その今日持ってきた料理なんですけど……あの……ストレ
 ート過ぎるとはわかっているんですよ……その……」

魔鈴はかごに入れていた鍋のふたを開ける。その中には、

「……何すか、コレ?」
「スッポン鍋です。」

スッポン鍋、ベタだが昔から精力がつく食べ物の一つである。どうやら魔鈴が何を言いた
いのか悠闇はわかったらしく腹を抱えて笑うのを必死に堪えている。

「……何で?」
「その……あの……大丈夫ですよ!! 私がしっかり直してあげますからね!! これも
 そこいらの料亭より効き目もバッチリですよ!!」

魔鈴は勇気を振り絞ってはっきり言った。だが肝心の横島はポカンとしている。

「……つかぬ事をお伺いしてもいいっすか?」
「はい?」

魔鈴は可愛らしくきょとんとした感じで横島の次の言葉を待つ。

「……俺が……俺が……ふ…ふ…ふの―――」
「横島さん、大丈夫です。まだ若いんだから必ず直りますよ♪」

今は魔鈴の笑顔がただ眩しかった。そんな事より魔鈴はどうやって知ったのだろうか?
いや、流石は現代の魔女といったところか。

悠闇は横島に近づき、

「解」

と一言呟いてテレビを見始めた。

「あの、横島さん? 大丈夫ですか?」

魔鈴が横島にもしもし〜としているともう一人の来訪者が訪れる。

「お〜魔鈴はんやないか。おっ、横島はんもひさしゅう。……どないしたんや?」

鬼道がようやく帰ってくる。鬼道は横島に挨拶するが、横島は全く動かない。

「放って置いてやれ。それよりも魔鈴どのの料理が冷めるではないか。」
「……誰や?」
「アレ、知らなかったんですか? 悠闇さんですよ、いっつも横島さんのバンダナに
 宿っている人です。」
「ほんまっでか!?」

雪之丞はサバイバルの館でその事を知ったが鬼道はまだ知らなかったようだ。悠闇は見
ながらはぁ〜と感心した目で見ている。

「……師匠と呼んで―――
 「断る。」……即答でっか。」

即拒否に結構へこむ鬼道。悠闇としては助言はするが、手取り足取り教えるのは横島だけ
にしたいという気持ちがあるのかどうかはわからない。

「そう落ち込むな、助言ぐらいはしようぞ。」
「そうでっか! そう言ってもらえると助かりますわ!」
「それじゃ、お鍋にしましょうか……横島さん、早く来てくださいよ♪」

未だに玄関で固まっている横島。悠闇はやれやれといった感じに横島のもとに向かう。

「まぁ、なんだ。泣きたいなら、胸を貸すぞ。」
「う、う……」

悠闇の一言に目元から涙がじわりじわりと出てくる。

「うお〜〜〜〜〜〜ん!!」
「はいはい、よしよし。」

何はともあれ、めでたしめでたしということで。


あとがき

今回は雪之丞、弓が完全に主役かな。やっぱり雪之丞×弓の作者でした。
横島はこの一週間、最後まで哀れでした。

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