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「心眼は眠らない その42(GS)」

hanlucky (2005-02-11 06:48/2005-02-11 13:02)
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少年の戦いは熾烈を極めた。それはその勢いによってある者は卒倒し、ある者は泣き崩れ
るほどであった。少年の肝心な部分がいつもと違う。それは周りの人間達を恐怖に陥れる
には十分過ぎるものであったのだろう。結果、劇○デのパクリをする者が現れるほどであ
ったのだから。

では戦いはどうなったのか。

一言で言えば、少年は負けた。いや、これでは過去形になるので負けていると言った方
が正しいだろう。何故なら期日まで時間はあるのだから。

少年の戦いは今、後半戦へ。

横島忠夫、それが少年の名である。


――心眼は眠らない その42――


木曜日〜Thursday〜―――


「ちーす、冥子ちゃん。今日もよろしく。」
「よろしくね〜。……あら〜? 確か〜何処かで会ったことがある人よね〜?」
「伊達雪之丞だ。前は香港の時に会って、今は横島の所に居候している身だ。」

六道女学院に着いた横島、雪之丞だが何故雪之丞がここにいるかというと、昨日傷心し
ながら帰宅した横島から女子校で講師をしていた事を知った雪之丞は無理やり着いて来
たというわけである。硬派なふりをしてもやはり雪之丞も年頃の男だということがよく
わかる。

「俺もGS資格持ってるんだから問題ねえだろ?」
「多分ね〜。」

冥子が何も考えずに了承したため、雪之丞は門前払いを受けずにすんだようだ。そうい
うわけで今日も一同は実技指導を行うために体育館に向かう。そこではD組の生徒と六
道女史が待っていた。

「横島くん、今日もよろしく頼むわね〜。……確か、伊達クンでよかったわよね〜?」
「おう、横島が講師をしてるって聞いてな。俺も手伝ってやろうって思ったわけだ。」

流石は六道女史、のほほんとしたおばさんだが、情報収集は欠かさないようだ。しっかり
雪之丞についても知っているようである。

(う〜ん、これじゃあ横島クンと冥子の協同作業ができないわね〜。かといって理由も
 なく追い返すのも何だし〜。)

予定外の人物の登場に六道女史は計画を練り直し始めるが中々いい案が浮かばない。

(……仕方ないわね〜。とりあえずこの授業中に考えようかしら〜。)

とりあえず授業を進めることに決めて自己紹介から始める。生徒たちの方は、昨日、学年
最強と呼び声も高い弓を倒した横島には尊敬の眼差しを、今日新しく来た雪之丞には興味
津々の眼差しを送っていた。

その後、三人は六道女史が式神ケント紙で作った式神三体を難なく倒す事に成功する。
難なく倒せたのは雪之丞がいた事と、そのために冥子と横島が協力して倒す必要がなかっ
たからだろう。それに何故か雪之丞がその戦闘でいつもより燃えていたのだが、理由が女
生徒が関係しているかどうかはわからない。

「相変わらずの強さね〜。それじゃ〜何か質問ある人〜。」

六道女史は横島と雪之丞の強さに呆れながら質問を受け付ける。始めの方は戦闘と関係
ない質問ばかりであったが、流石に将来GSを目指す者たちだけあって後半は今の戦闘
について聞いてくる。

「はい、そこのあなた〜。」
「今の戦闘とは関係ないんですけど、今までで最も恐ろしかった相手や戦い、出来事に
 ついて教えて欲しいんですが。」

前髪で目が隠れている女生徒が中々おもしろ質問をする。そのような出来事に遭遇して
どういう風に切り抜けてきたか、これは参考になる話だろう。

「(最も恐ろしい出来事だ?……んなもん、今のこの状況以上に恐ろしいことなんかあるかーーー!!!)……ん〜お前はどうなんだ、雪之丞?」

横島は何とか叫びたいのを我慢して、雪之丞に先に答えさせようとする。

「(最も恐怖を感じたことか……やっぱりアレか? 勘九朗か?)……とある敵がとんで
 もないセリフを言った時が一番恐ろしかったな……」

どうやら雪之丞、あの勘九朗の一言がトラウマになっているらしい。その時の事を思い出
して少し鳥肌が立っている。

「それをどう克服したんですか?」
「あぁ、もし負ければ(男として)終わってたからな、とにかく何も考えず相手が死ぬま
 で攻撃し続けたな。」

勘九朗、もしかしたら死んでいるかもしれないようだ。

その後、横島は無難にフェンリル戦の時を語ることにしたようだ。当たり前だが今の自分
の状況をしゃべる勇者ではなかったようだ。

「そろそろ、時間みたいね〜。それでは今日の実技指導を行ってくれた講師の皆様にお礼
 を〜。」
「「「「ありがとうございましたー。」」」」

六道女史がそう言ってようやく5時間目の授業が終了する。


「何で俺だけ違うクラスで実演しなくちゃいけねえんだ?」

雪之丞は先ほど六道女史から一人運動場に行けと言われたばかりであった。そのため現在
、雪之丞は運動場に向かっているのであったのだが、

「そこのあなた! この学園に何の用なの!!」
「ん?……(ママに似て―――)じゃなくて運動場に行けと言われて今、向かっている
 所なんだよ。」

目が特徴的な女生徒は昨日、横島が負かした相手、弓かおりであった。弓が雪之丞に声
をかけたのは学園に男が一人歩いていたのだから当然である。それにしても雪之丞、
GS試験でも美神をママに似ていると言っていたが、美人なら誰でもそうなのだろうか。

「(本当かしら?)…まぁいいわ。私が連れて行ってあげるからついていらっしゃい。」
「おう、悪りいな。」

雪之丞はちょうど運動場を探す手間が省けたと弓についていく事にする。運動場に到着
するとそこにはブルマー姿の女子だらけ。思わず5時間目同様に雪之丞が前かがみにな
ったのは仕方ないだろう。余談だが横島はその時”ダメか”と呟きながら何故か涙を流
していた。

「あぁ、あなたが伊達さんですね。私がこの除霊実習を担当している者です。」
「おう、こちらこそよろしくな。」

雪之丞が女性教員と挨拶していると一人の女生徒が雪之丞に気付く。

「あっ!? 今日は雪之丞さんも来ているんですか?」
「おキヌちゃんじゃねえか。今日は頼むぜ。」

おキヌの表情が明るいのは実は午前に行われた実習で式神を巧み倒す事に成功したから
であった。その結果、おキヌはクラス対抗戦のメンバーにも選ばれたらしい。何故おキヌ
が昨日、ボロ負けした式神を巧みに倒せるようになったかというと、昨日の帰り道に悠闇
に、

”おキヌどのは誰よりも霊体の事を知っている。”

等と言ったアドバイスを貰っていた。元幽霊という普通の人間では絶対味わえない経験は
、おキヌに霊波の流れを見切る素質を与えていたのだ。その事に自覚していればそこらの
式神に負けるおキヌではなかった。結果、対戦していた式神をうまくコントロールして無
傷で勝利を収めるのであった。

「最近おキヌちゃんの知り合いばかりだな。」
「え、雪之丞さんは横島さんのお友達だから、その繋がりでね。」

美神、横島の次は雪之丞、多くの現役GSと知り合いのおキヌに嫉妬しない人間がいない
わけではなかった。

(また氷室さんですか。……こうなったら今度こそは!!)

弓は選抜メンバーにおキヌが選ばれた事が気に障ったらしく、イライラしていた。そして
今の雪之丞の事だ。昨日の事もあって弓は再び勝負を挑む。それは半分憂さ晴らしに近い
ものがあったのだろう。

「と言っているんですが、伊達さんは構いませんか?」
「ようは手加減して倒せばいいんだろ。楽勝じゃねえか。」
「なっ!? 言いましたわね!! だったら本気でいかせてもらいますわ!!」

昨日と同じように宝珠付きのネックレスを女生徒に取りに行かせる。しばらくして女生徒
が帰ってきて弓にネックレスと渡す。

「それじゃ、とっとと始めようぜ。」
「ふん、舐めないで貰いたいわね!」

結界の中に入り開始の合図を待つ二人。

「始め!!」
「水晶観音!!」
「おっ? 少しは面白そうじゃねえか!!」

よっぽど雪之丞の言動が気に入らなかったらしく、弓はいきなり奥義を繰り出す。体は
強化服に包まれ腕が六本になる。しかし雪之丞はそんな弓を少しはやりがいが出てきたと
しか思っていないようだ。

「はぁぁぁぁぁ!!」
「は! 鬼道や横島に比べたら―――」

雪之丞は魔装術も使わずに弓の相手をするらしい。つまりそれは、それほどまでに雪之丞
と弓の実力が開いているということである。

「―――遅すぎるぜ!!」
「そんな!?」

雪之丞は右にステップしたと同時に弓の左腕三本全てを殴り飛ばす。その拍子に弓は
後ろに後退してしまう。

「くっ!? これほどまでに差があるというの!?」

弓は決して弱くはない。下手なGSより優れている実力者であった。ただ横島といい、雪
之丞という、単純な戦闘能力なら二人とも美神を越えているのだ。だがそんな事を弓が知
るよしもない。勘違いとはいえ現役GSと自分との実力の違いに、自分の幼い時からの修
行は何だったのかと思ってしまう。

「おらよ!!」
「は!? しま―――」

ほんの少しの油断で雪之丞は一気に勝負を決めてしまう。弓を蹴り倒してそのまま顔面
に当たる寸前で拳を止める。

「ま……参りました。」
「当然じゃねえ……かって何で泣いてんだよ!?」

今まで父親以外負けた事がなかったというのに昨日、今日と負け続けて溜まっていた何
かが溢れてきたのだろう。泣き言すら言わずに修行を重ねてきた自分は何なんだと思っ
たのかもしれない。

「っ!?―――失礼します。」
「おっおい、おいおい!?」

弓は起き上がると雪之丞の制止も聞かず何処かに行ってしまう。そうなると居たたまれな
くなるのが雪之丞である。自分が何もしていなくても周りの女子から白い目で見られてし
まう。仕方なく雪之丞は弓を追いかける。

「ちきしょう!! 何でこんな目にあわなきゃいけねえんだよ!!」

文句を言いながらも雪之丞は走る。別に飛べば早く追いつけるのだが、そんな事思いつ
かない状況であった。

「くそ、何処行きや―――いた!!」

早めに追いかけたのがよかったのか何とか完全に見失う前に弓を発見する。

「待ちやがれ、そこ動くんじゃねえぞ!!」
「―――!! 何で追いかけて来るのよ!?」
「てめえが逃げるからじゃねえか!!」
「来ないでよ!!」

これが後に”伝説の追いかけっこ”と呼ばれるものであった。授業中だというのに校舎
や外を追いかけあう二人。地の利が弓にあるため中々雪之丞は捕まえられない。

「待ちやがれって言ってんだよ!!」
「いい加減、そっちが諦めなさいよ!!」

すでに10分経過といったところか。ここまで来ると二人とも意地になって雪之丞は必
ず捕まえてやる、弓は必ず逃げ切ってやるといった気持ちになっていた。

「はぁ、はぁ、本当にしつこいわね。」

さらに10分経過。流石に疲れが見え始めたようだ。対する雪之丞はまだまだ元気であ
る。

「だけど、ここまで来たら―――キャッ!?」
「危ねえーー!!」

階段を上がっていた弓が疲れから足を踏み外してしまう。雪之丞はこのままでは間に合わ
ないと判断して魔装術を使う。

「(何とか受身を!!)―――ってアレ?」
「ふ〜、無茶するんじゃねえよ!!」

弓はいきなり見た事のない姿のモノにお姫様抱っこの状態にされて戸惑うが、今の声から
雪之丞だと判断する。

「あ……とりあえず、下ろしていただける!!」

顔を真っ赤にしながら弓はそう言う。雪之丞の今の自分たちの除隊に気付いたのか、すぐ
に弓を下ろす。その後に魔装術を解く雪之丞。

「「…………」」

思わず沈黙する二人。しかしそのままでいるわけにもいかないので弓が話を切り出す。

「今の事は感謝しますわ。……それにしても本当に手加減していたようね。」
「まっまあな……おめえも強かったぞ。」

その一言に弓は激情する。弓からすればそんな言葉、同情にしか聞こえないのだから。

「おいおい、大体おめえは授業だけで実戦とか経験した事ねえんだろが。まぁーなんつっ
 たらいいかわかんねえけど……あせったって仕方ねえんじゃねえか?」

雪之丞がひ弱だった昔を思い出しながら弓に下手だが自分の言いたいことを伝えようと
する。弓も雪之丞が同情で言っているんじゃない事だけはわかったようだ。その後も雪
之丞は口下手ながらもがんばって弓を元気付けようとする。

「……私も少しあせり過ぎていたようね。あなたや他の男に負け続けて自信を無くして
 いたから……」
「……まぁ、なんだ。とりあえずわかってくれてよかったぜ。」

雪之丞は弓がようやく落ち着いてくれてホッとする。

「ありがとう。そう言えばあなた、名前は伊達……雪之丞でよかったわよね?」
「あぁ、おめえは?」
「弓、弓かおりよ。男に名乗るなんて初めてなんだから光栄に思いなさいよ。」

今更になって自己紹介を済ませる事に二人を笑ってしまう。

「じゃ、戻ろうぜ。」
「えぇ、そうね。……一ついいかしら?」

雪之丞は場の雰囲気に恥ずかしくなって急いで戻ろうとするが、それを弓が止める。

「なんだよ?」

弓は少し雪之丞の性格が読めたようである。ぶっきらぼうであるが、アレは照れている
証拠なのだと。

「土曜日にクラス対抗戦があるんだけど……それまで放課後、練習に付き合ってくれな
 いかしら?」

顔を真っ赤にしながら恥ずかしがりながら弓のような女性に頼まれたら、断れるわけがな
かった。


金曜日〜Friday〜―――


「おい、雪之丞。何でそんなに機嫌がいいんだよ!!」
「お、そう見えるか?」

結局、昨日も呪いを解く事が出来なかった横島は機嫌がいい雪之丞を睨みつける。雪之丞
としては放課後が待ちきれないのだろう。もちろん雪之丞は、弓の事を話せば邪魔され
る事間違いないので横島には話していない。

「それじゃ〜今日の実技はこれでおしまいね〜。」

冥子の号令で今日の実技の終了する。結局、横島は授業で活躍するも復活を果たす事は
なかった。そんなわけで機嫌のいい雪之丞に八つ当たりをするのであった。

「なんか知らんが、八つ当たりするんじゃねえよ。それじゃあ、俺は行くところがある
 んでじゃあな!!」
「何か知らんが、ムカつくぞ、めちゃくちゃムカつくぞ。」

笑顔とスキップで去っていく雪之丞に不愉快満点な横島であった。

「本当にありがとうね〜横島クン。冥子、本当に助かったわ〜。」
「いや、大したことじゃないっすよ。こんなんでよかったらまた呼んでください。(そう
 、俺が元に戻った時こそ……)」

横島の活躍があったのか、冥子はこの三日間一度も暴走をする事はなかった。そのお礼も
兼ねているのだろうか。横島はまた来たがっているが、普段の状態では一時間も持たず
強制送還をくらうだろう。

「それじゃ〜明日の試合も見に来てね〜。」
「ぜひ、行かせてもらいます。(そうだ、それが最後のチャンスなんや!!)」

拳を強く握り締め横島はラストチャンスに賭けようとする。いい加減ここまで来たら素直
に日曜まで待てばいいと思うのだが、そこは流石というべきだろう。

『それにしても、ずいぶん評判がよかったではないか。』
「くっ、何笑いながら言ってんだよ!!」

悠闇は結局、横島が復活できなかったのが面白くて仕方ないようだ。授業中、横島が泣き
そうになる度に笑いを堪えていたらしい。

『まぁ、残すところ後一日ではないか。我慢せよ。』
(こいつ!!……ゼッテー直ったら押し倒す!!)

決戦は日曜日、そんな誓いを立てる横島であった。悠闇は横島の考えに気付いているの
だろうか。悶々とする横島が帰り道を歩いていると、出会いたくない男、ナンバーワン
の西条に出会ってしまう。

「やぁ、横島クン。最近、おかしいという噂は本当かい?」
「……普通、そういう事を本人の目の前でいうか?」

流石は西条といったところであろうか。

「いやね、君がおかしくなったせいで君の友達の何人かは入院しているんだよ。それで
 心霊的な何かが働いているか、確かめたくてね。」

横島ファーストインパクト、何気に生徒達を病院送りをしていたらしい。西条はその時
に何があったのか聞くが横島はただ覗きに行かないと言っただけなので他に何を言った
らいいかわからなかった。

(しかし、横島クンが覗きをしないだけでこんな惨事になるなんてね……)

西条は苦笑いをしながら、横島から事情聴取をする。西条からすれば現場(教室)を調
べただけで心霊的な事が関係していないのはわかっていたので実は興味本位で横島を調
べていたに過ぎなかった。

(さて、おキヌちゃんから聞いた事では日曜日の除霊中に何かあった事は間違いないよう
 だね。話じゃ、美女に抱きつかれて無反応だったという事だし。)

その優秀な頭脳で今回の事件を解析していく。横島はバレたら問答無用で殺すつもりなの
か、いつでも栄光の手を発動できるようにしていた。

(無反応、覗き止める、そして女子校に行きながら問題一つ起こしていない。)

じっくりと重要そうな単語を抜き出し考えていく。

(待てよ、こう考えたらどうだろうか?……反応できない、つまり性欲がなくなる。)

西条は正解を導き出すが、同時にそれがありえないと決め付けてしまう。あの横島の性欲
がなくなるのどあってはならないのだ。だが他にらしい答えがない以上、西条はもう一度
今の答えを考え直す。

「(わからないな……こうなったら引っ掛けてみるか……)無反応、つまり反応しない
 ってことだよね、横島クン。」
「あぁ、そっそれがどうしたんだよ。」

明らかに横島の表情がおかしくなってきた。西条は徐々に横島を追い詰めようとする。
しかし追い詰められた獣がどうなるか、わかっていないのだろうか。

「反応しない……ではなく反応できないんじゃないのかね?」
「!! なっ何が!?」

必死に誤魔化そうとする横島。しかし西条は全ては読めたといった感じで口元を緩める。

「くくく……あっはっはっは!! そうか、そういう事か!! いや〜大変だな〜横島くんも。どうだい、何ならいい医者でも紹介しようか?」

大笑いする西条。横島に同情する気は全くないらしい。横島はうつむいて、何かを呟いき
始める。

「えっ、どうしたんだ? 紹介して欲しいのかい?」
「そんな必要ねえよ。」

今度は西条に聞こえるように横島は声を大きくする。

「死ねーーー!!! 西条ーーー!!!」
「横島クン!? 気で違ったのかい!?」

横島の栄光の手が西条の首を刎ねようとする。何とか西条は携帯していたジャスティス
でそれを防ぐが、その勢いは凄まじくあと三度も打ち合えば、手が痺れて持てなくなる
だろう。

「うるせーー!! てめえは殺す!! 俺の秘密を知ったからにはゼッテー殺す!!」
「まっ待ちたまえ!? 僕が知っている最高の医療スタッフを紹介するよ。だから待ち
 た―――」

西条が言い切る前に横島の追撃が迫る。どうやら本当に殺す気らしい。

「悠闇クン!! 君も何とか言ってくれ!! このままじゃ本当に殺される!!」
『何とかっといってもな。……そうだ、横島。これならどうだ?』

西条は横島と自分の実力さをよくわかっているらしく必死に悠闇に助けを求める。悠闇も
どうやら横島が本当に西条を殺すつもりという事に気付いたらしく、打開策を教える。

『―――というのは。これならおぬしが脅される事もあるまい。』
「……乗った!! 西条、これで勘弁してやる!!」

横島は悠闇の策が物凄く気に入ったらしく、笑顔で西条に突撃する。西条はその笑顔を
見た瞬間何かを察する。そう、それはある意味男の終着点だと。


《不》《能》

「な…まさか……横島クン…君ってやつは……」
「許せ西条。これで俺とお前は同士だ。(俺はあと一日だけど……)」

トップスピードで西条に迫った横島はタイミングよく西条に二つの文珠を飲ませた。そ
の文珠に刻まれた文字は男として確かに終着点であった。

「馬鹿な!? 僕が…僕がそんなことになるわけがない!!」
「残念だったな、西条。俺のこの状態は後一日だけどお前はどうなるのかな。」

横島は嫌味たらしく西条に言う。西条は肩を震わせて、

バァァァァン

「すぐに元に戻したまえ、横島クン!!」
「そんな事で発砲するんじゃねえよ!!」
「何がそんな事だ!!」

横島に発砲という恐ろしい暴挙にでた。しかし横島は何とか栄光の手でそれを防ぐ。

「しばらくその状態でいるんだなーー!!」
「待ちたまえ!! くっそーーーー!!! この恨みは忘れんからなーーーー!!!」

横島の逃げ足に適うわけもなく西条は取り残されるのであった。

(くっ……どうする、文珠なのだから時間がくれば直るはずだ。)

西条が悩んでいるのには理由があった。

(今夜のデートをキャンセルしなくてはならなくなったじゃないか!!)

実に下らない理由である。


――心眼は眠らない その42・完――


おまけ


「ほんと、いろいろ助かりましたわ。」
「そんなん気にせんでええよ。自分の子孫のためや、当然やないか。」

鬼道は初代鬼道から教わった術を半日をかけてようやくコツを掴んだようである。

「でも後一つについてはちょっと事情により難しいと思いますわ。」
「ん〜残念やな〜。あの術は対道真のために作られたものやからな〜。多分、人間相手やったら無敵やと思うんやけどな〜。絶対横島はんにも勝てるで。」

どうやら鬼道は二つの術を教えてもらっていたらしい。一つはコツを掴んだものだが、
もう一つは何らかの事情によって行うのが難しいらしい。

「でも諦めたらあかんで〜。君はこの術を半日で体得したんや。その君やったらあの術を使えるはずなんやからな。」
「はぁ〜一応、努力はしてみますわ。」

何故かもう一つの術についてはあまり気が進まない鬼道であった。その術の事を考える
と思わず溜息を吐いてしまう。

「それじゃ、達者でな。」
「ご先祖様も……」

鬼道は初代鬼道に別れを告げて、洞窟から出て街に戻り始める。

(……囲まれとるな。)

外はいつの間にか日が落ちていたようで結界の外には死霊が複数存在していた。死霊た
ちの中には理性を持っている悪霊がいるのかやけに連携が取れている。

「折角やしな。試しに使っているか。―――いくで、夜叉丸!!」

鬼道は夜叉丸を出して術の準備に入る。その様子を無防備だと感じたのか一斉に攻めて
来る悪霊。

「……あの世で自慢できるで。この術を使うのは君らが初めてやからな!!」

闇夜の森の中、人知れず鬼道と悪霊の戦いが始まった。


あとがき

雪之丞と弓、何か途中からベタな感じになりましたが、許してください。

最近、鬼道がお気に入りな作者です。(だって横島があんな状態だから…書きづらいった
らありゃしない。まぁ誰のせいかと言われれば自業自得なんすけど。

今回、名前のなかった六女との交流でも書こうかなと思ったんですが、それだとオチが
作れなくて途中で諦めました。

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