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「歩む道(第一話――横島)(GS)」

テイル (2005-02-08 18:29/2005-03-02 13:06)
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 深夜。住宅街は閑散としていた。住人は寝静まり、生活の灯は既に無い。光源といえば淡く光る街灯ぐらいで、それも無いよりかはましといった程度。月や星の光のほうがまだ明るい。もっとも今夜は空を雲が流れ、時折月を隠す。そんなときはまるで闇の帳が下りたかのように、世界は暗くなってしまう。
 月光の下、夜道を急ぐ影が一つあった。仕事が終わり家路に急ぐ横島である。
GSという職業は、悪霊や霊的怪異を取り除くことが仕事だ。そしてその悪霊や霊的怪異はよほど強力でない限り、太陽が輝く日中には現れないし起こらない。この世ならざるモノ共は強い光を得てして嫌うからだ。自然仕事は夜に多く行われるようになる。
「あぁ、腹減った。……寒い」
 夜風に吹かれ、横島は身を震わせた。
「なんか温かいもんでも食うかな」
 彼が高校を卒業してから、早半年が経とうとしている。GS見習いという肩書きは依然そのままだが、給料は格段に上がった。請け負った依頼の報酬、その十パーセントが彼の取り分だ。美神除霊事務所が請け負う依頼は、そのどれもが数百万から数千万級の大きなものばかり。彼の経済状況は、並みのGSよりも遥かによかった。
「コンビニでおでんでも買うか。おお、贅沢だ」
 ……それでも彼の貧乏根性は根強いが。
 熱々のおでんをはふはふと食べる自分を想像しつつ、横島は家路を急ぐ。明日は休みだ。さらに贅沢にも酒でも飲んで、思いっきり寝るのもいいかもしれない。そんなことも考えた。
 不意に視界がかげった。空を見上げると、うっすらとした光が見える。雲に覆い隠されてしまった月だ。その月の光の加減から、雲がゆっくりと流れている事がうかがえた。すぐにでも月は再び顔を出すだろう。
 横島は夜空に向けていた視線を前方に戻した。
「!?」
 横島の足が止まった。彼の目が前方のあるものを捉えたからだった。
彼の行く手をふさぐようにして、いつの間にか人影が立っていた。先ほどまで誰もいなかった事ははっきりと覚えている。横島が空を見上げている僅かな間に、そいつはそこに現れたらしい。
その存在に思わず横島は身構えた。プロとして時には命のやり取りすら経験した彼の戦士としての部分が、目の前の存在が危険だと警報を発したからだ。
横島はそいつを観察しようとした。月は隠れてしまったが、その姿を確認するには街灯の光で十分だ。その筈だ。
 しかし……何故かはっきりとそいつを見ることが出来ない。初めに感じた人影……そう、人の形をした黒い影。そうとしかそいつを理解できないのだ。しかも見れば見るほど、その影が存在感を感じさせないことに気づく。まるで今にも夜の闇に融け消えるかのような、存在の希薄さ。
影は未だ横島に殺気や敵意の類をぶつけてはいない。しかしこいつは自分を殺すだろう。なぜだかわからないが、わかるのだ。それは確信にも近い、予感。
(やばいやばいやばいやばいっ!)
 横島の額を冷や汗が流れる。相手の実力を推し量ることはおろか、姿かたちすら確認できない。そんな相手とは戦いにもならないだろう。目の前の影と自分と、どれほどの力量の差があるのか考えたくもない。
 こんなときにとる最善の策は、逃走だ。どれほど彼我の力に差があろうと、戦わなければ負けないのだ。問題は逃げ切れるかだが、幸いにも彼にはそれを可能とする特殊能力があった。
横島は右手に意識を集中させようとした。彼の切り札の文珠を生み出すため……。
その時、黒い影がゆらりと揺れた。その瞬間彼の心に起こる、漣。魂の奥底から、何かが湧き出ようと蠢く感じ。
(な、なんだ?)
 いきなりのことに戸惑い、ついそれが何なのか把握しようと己の中に意識を向ける。まるでそれを待っていたかのように、影が動いた。闇よりも暗い刃が、その影の腕の部分からのびたのだ。
 漆黒の霊波刀。そう横島が理解した瞬間、影は横島に向かってすさまじい勢いで、流れた。
……。
 一瞬の沈黙の後、どすんと何か重たいものが倒れた。同時にびしゃっと、何か液体がぶちまけられたかのような音。そしてさらに、ごろごろと何かが転がる音……。
その転がる何かに、影がゆらりと近寄る。伸ばされた手が、その何かを掴み、持ち上げた。
 月光が空から降り注いだ。隠れていた月が雲から顔を出したのだ。その明るい月光は、閑静な住宅街の一角を、鮮やかに照らし出した。
 赤に染められた路面。そして虚ろな目を空へと向ける、かつて横島忠夫と呼ばれていた……物体を。


「という夢を見たんですよ」
「食事時にんなグロい話するんじゃないバカタレ!」
 スプーン片手に昨夜の夢の話を語っていた横島は、こめかみに血管浮かべた雇い主が放ったスクリューブローをその顔面に受けて、錐揉みに宙を舞った。
 ある昼下がり、美神除霊事務所にて。
 二人きりで昼食をとっていた時の出来事であった。


 あとがき
 この程度で指定入れる必要、無いのかもしれませんけど一応。

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