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「道程 その4(GS)」

みどりのたぬき (2005-02-07 21:51)
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厄珍堂へのお使いの帰り道、おキヌと二人のんびり歩く。

『今日もえっちなテレビ見てましたねー』

『あの店主、こやつの同類だな』

「う、うるせーな、俺は健全な青少年だからいいんだよ!」

『健全な青少年なら、学業にも励め』

「いいの、学校行くよりも生活費を稼ぐほうが先だ」

『生活費と言うがな、おぬしの場合無駄遣いが問題だと思うぞ』

「お袋みたいなこと言うなよ」

普段の生活態度を指摘する心眼に、うんざりした表情で返す横島。
他愛の無い雑談をしながらマンションに到着する。


階段を上って事務所のドアを開けようと手をかけた、

ガンッ!

「ぎゃあぁぁああぁ! 角が!? 角がぁ!!」

急に開いたドアの角に頭を強打され、のた打ち回る。

「おキヌちゃんお帰りー」

『あ、え? ただいま帰りました・・・』

ドアを開けたのは美神だった。
何事も無かったかのようにおキヌに声をかける。

「無視かよ!? 俺に何か言うことがあるでしょう!」

痛みを訴える横島に、心配したそぶりも見せず言い放つ。

「そんなもん唾でも付けときゃ直るわよ」

「さいですか・・・で、何でわざわざ出迎えなんて珍しい事してるんですか?」

実にタイミングよく開いたドアに、わざとか?と疑いを持つ。

「依頼があってね、あんたたちが帰ってくるの待ってたのよ」

やはりわざとか、疑いを確信に変える横島

『お仕事ですか? 随分急なんですね』

「大した仕事じゃないのよ。
 廃工場に住み着いた霊を退治してくれっていうだけだし」

依頼料も雀の涙だしね、とこぼす。

「そんな小さい仕事請けるなんて、美神さんらしくないっスね?」

「あんたの実力を確かめるには、丁度いいのよ」

「え、もしかして俺のために?」

「ん〜って言うか・・・使えるものは使わないと勿体無いじゃない?」

さらっと言い放つ美神

「そういう事ね・・・」

『だが経験を積むにはいい機会だ、やって損は無いだろう』

『そうですよ、お仕事任されるなんて凄いじゃないですか』

「そ、そうかなぁ」

フォローを入れるおキヌ、そのまじりっ気の無い純粋な言葉に照れる横島。

しかし、面白くない人がそこに居た。
妙神山から帰ってからこっち、やたらと横島に引っ付くおキヌが気になる。
離れて募る恋心という訳ではないだろうが妙に気になる。
横島が気になるのか、おキヌが気になるのか分からないが、とにかく気になる。

(仕事探してやったのはこの私なのよ?)

実はわざわざ協会に掛け合って、横島でも出来そうな仕事を探していた美神だったのだが、
意地っ張りのせいか、照れ臭かったせいか、素直にそうとは言えなかったのだ。


何にせよ自分そっちのけで、話している2人を見ているのは面白くない。
しかしいまさら本当の事を言うのも、負けるようで嫌だ。
・・・何に負けるのかよく分からないが。

プライドの高い美神はおキヌほどには素直になれない。
そこで物(金)で釣る事にした。

「横島君、ちゃんと出来たらお給料上げてあげる」

『そんな・・・! 美神さんがそんな事言うなんて・・・!?』

「う、嘘だ! そんな事言う美神さんなんて、美神さんじゃない!
 はっ! さては偽者だな?」

有り得ない出来事に取り乱す2人。

「・・・そう、給料上げて欲しくないわけね?」

思い切って切り出したのに、そのあんまりな反応に、
額にバッテンマークを貼り付け、怒りでふるふる震える美神。

「ああ! 嘘ですごめんなさいどこまでも着いて行きます! 美神さ〜ん!」

慌てて美神の腰にすがりつき、すりすりと頭をこすり付ける。

「やめんか! 気色悪い!」

ぞわっと鳥肌を立てて、頭めがけて拳骨を振り下ろす。

「ほら、さっさと行くわよ!」

ぷすぷすと煙を上げ沈黙する横島の襟首を掴み、ガレージに下りていく。


そこは小さな町工場だった。
彼はその建物を見つめながら、回想にふけっていた。


不景気ながらも自分を支えてくれる妻や、僅かな従業員達と仕事を頑張ってきた。
けして裕福とはいえない日々、だが幸せだった。

ところがある日、それは現れた。

工場に入り込んだそれは、目に付くものを手当たり次第破壊していった。
見るも無残にその姿を変えていく慣れ親しんだ職場。
怪我人が出なかった事が唯一の幸いだった。

だが、工場の方はもう駄目だった。
保険も降りず、建て直そうにもお金が無い。
従業員達に僅かばかりの退職金を渡すと、貯金もほとんど無くなった。

居座ってしまった幽霊に彼は警察に通報した、が警察は取り合ってくれなかった。
オカルト関係は警察には手が出せない、頼むなら民間GSに頼めという事だった。

ゴーストスイーパーというのは、報酬次第で幽霊退治をしてくれる連中らしい。
それは分かった、だが誰に頼めばいいのかが問題だった。
彼には知り合いにゴーストスイーパーなんていない、
そこで電話帳を調べ、GS協会に依頼したのだ。

これからどうするか悩んでいると、農業を営んでいる妻の両親が、
自分達の所に来い、とありがたい言葉をかけてくれたのだった。

そして今日、美神令子と名乗る人物から電話が掛かってきた。
若い女性のようだった、だが今は藁にも縋る思いでこの電話の主に頼るしかなかったのだ。
しかしそれでも不安は感じる、そこで協会に人物照会を頼むと、
とんでもない答えが返ってきた。

年は若いが腕は一流、値段も一流。
一千万円以上の依頼しか受け付けない事で、有名な女性だったらしい。

何故そんな女性が、あれっぽっちのお金で自分の依頼を受けてくれたのだろうか?


彼の前に一台の車が止まると、見た目も派手な女性が降り立った。

「貴女が美神令子さんですか?
 わざわざお越しいただいて、ありがとうございます」

そう言って頭を下げる依頼人。

「どうも、問題の霊はこの中に?」

頭を下げる依頼人に軽く挨拶すると、早速本題に入る。

「はい、どこから入ってきたのか、いつの間にか住み着いてしまって・・・
 その上機械も壊されてしまったし、建物自体もぼろぼろに・・・」

経緯を説明する依頼人、

「それだけならいいんです。
 ただ、余所様の所に行って悪さを始めたら申し訳が無くて・・・」

諸外国ではこういった依頼はオカルトGメンに行くのだが、
日本には未だにGメンは設立されていなかった。

「わかりました、後はお任せください」

横島達を引き連れて中に入っていく。


依頼人の言うとおり、中は酷い有様だった。
所々がへこみ横倒しになった工作機械、窓は破れ、天井は落ちている。
ガラスや木片、2階に置いてあったらしい荷物が辺り一面に散乱していた。

その中に問題の霊は居た。
何が楽しいのか奇声をあげ、倒れた機械を鉄パイプでドッカンドッカン叩いている。

「怨霊ね、ぱぱっと片付けちゃいなさい」

いとも簡単に言う美神

「うぅ、僕お腹痛い・・・」

「仮病使ってないでとさっさとやらんか!」

「でもほら、無資格の俺がそんな事しちゃ不味いでしょ!?」

いまさら何を言うのか、以前勝手に5億の仕事を引き受けた事を棚に上げる。

「資格を持っている人間が、監督してれば何の問題も無いのよ!」

しり込みする横島を怨霊の方に蹴り出す。

「ああ! 心の準備がまだ!?」

『少しは落ち着け、あの程度なら敵ではない』

横島に気付いた怨霊。
だが襲い掛かってくる事も無く、突然現れた人間に驚いたのか、
ただこちらを見ているだけだった。

「? よく分からんが隙だらけじゃ、食らえ!」

サイキック・ソーサーを作り出し、投げつける。


『ギャーッ!』


呆気なく命中し、凝縮された霊力は爆発を引き起こす。
霧散していく怨霊。

「あれ、これで終わり?」

30秒とかからず終わってしまった。


(雑魚相手なら問題なさそうね、後は経験か)

「いいわ、約束どおり給料上げてあげる」

「あんな弱っちいの倒しただけで、本当にいいんすか?」

約束していたとはいえ、拍子抜けするほどあっさり倒してしまい戸惑う横島。

「あんた自分を過小評価しすぎよ、霊力だけならそこらのGSにも負けてないわ」

『おぬしに足りないのは自信と経験だ』

「だからって自惚れちゃ駄目よ。
 どんな優秀なGSだって、簡単な除霊で命を落とすなんて事は結構あるんだから」

「・・・肝に銘じます」


入ってから5分も経たないうちに出てきた一行。

「もう終わったんですか?」

「ええ、もう大丈夫よ」

「そうですか、ありがとうございます」

頭を下げる依頼人、美神だけでなく横島やおキヌにも頭を下げる。

「約束のお金です」

「確かにいただきました、それでは」

「本当にありがとうございました」

颯爽と去っていく美神達の背中に、もう一度深々と頭を下げる依頼人だった。


その帰り道、ハンドル片手に美神は封筒から紙幣を数枚抜き出すと横島に渡す。

「はい」

「え?」

「何よ、要らないの?」

「要ります! ・・・でも何で?」

「ああやってお礼を言われるのってさ、中々いいもんでしょ?」

さっきの事を言っているのだと思い当たる。

「そうですね・・・」

今までは、依頼主の感謝の言葉などは美神に対するもので、
自分には何の関係なかった。

だが今日は自分が怨霊を倒したのだ。
依頼主は美神がやったと思っていただろう。
それでも自分に向かって頭を下げてくれる姿を見て、何だか誇らしい気持ちになれた。

「だから、それはあんたの取り分」

「・・・ありがとうございます」

いつも貰っている給料より額は少ないが、手渡されたお金が重く感じる。
自らの手で事を成し遂げたという達成感と、依頼主の感謝の気持ちによるものだろうか。

『よかったですね、横島さん』

まるで我が事のように喜ぶおキヌに、うんと頷く。


美神のように大金を稼ぐのもいいが、あんなふうに誰かに必要にされるのもいいなと、
本気でゴーストスイーパーを目指してみようと思う横島だった。


後書き

霊能力に目覚めた横島の初仕事を書いてみました。
が、あっという間に終わってしまいました。
戦闘シーンを書くのって難しいですね。

次回は愛子登場変を予定しています。

それではまた・・・

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