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「道程 その3(GS)」

みどりのたぬき (2005-02-05 13:17)
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深夜の妙神山を一つの黒い影が動く。

それは息を殺し、音も立てず、辺りの闇に同化する様に溶け込んでいた。

周囲を窺いながら、慎重に目的の場所まで近づいていく。

「中々見事な穏行の術じゃな」

背後からかけられる声、影の動きが止まる。

「どこへ行くつもりじゃ、横島」

横島と呼ばれた影は、ビクッと身体を身を竦ませると。
ゆっくりと猿神に向き直った。

「えーと・・・その、トイレ?」

「そっちには小竜姫の部屋しかないが?」

とぼける横島に即座に突っ込む猿神。

「夜這いにでも行くつもりか?」

「ギクッ」

「口で言うな・・・まったく、分かりやすい男じゃ」

「うぅ、すんまへーん」

「まったく、無駄な事にばかり才能を発揮しおって、
 それだけのやる気を修業でもみせてみんか」

「いやぁ、それほどでも」

「誰も褒めとらんわ!
 ・・・今日で3日目か、よく飽きずに続けられるな」

「・・・なんのことでせう?」

視線をそらす横島、実はすでに二度小竜姫への夜這いに挑戦していた。
・・・二回ともばれて制裁を喰らったが。

「あれだけ騒がしくしていて、気付かんと思っとったのか?」

「仕方ないんやぁ〜、夜這いは男の夢なんや〜」

『おぬしだけの夢だろうに』

「あ、てめぇ、どっちの味方だよ?」

『毎度毎度、つき合わさせられるこっちの身にもなってみろ・・・』

「いいじゃねぇか、お前だって見たいだろ?」

『おぬしと一緒にしないでくれ、私にそのような願望は無い』

ぎゃーぎゃー言い争っていると、五月蝿かったのか寝ぼけ眼を擦りながら
小竜姫が起きてきた。

「こんな夜中に、何をやっているんですか?」

「ほら見ろー! お前のせいで起きちゃったじゃないか!」

『人のせいにするな! もともとおぬしが夜這いなどするからいけないのだ!』

心眼の夜這いという単語に、ぴくりと反応する。

「横島さん? まだ懲りてなかったんですね・・・」

「ろ、老師・・・助けて・・・っていねぇ!」

猿神に助けを求める横島だったが、心眼と口論を始めた辺りから、
すでに自分の部屋に戻っていた。

「覚悟は出来ていますね?」

「・・・やさしくしてね?」

関西人の血か、ボケを忘れない横島だったが、小竜姫の一撃で意識を刈り取られた。


そんなこんなで3週間が経過した。

基礎修業はいまだに続けられていたが、期待以上の成果は上がっていなかった。

「思ったより伸びんのう」

「私の見立て違いでしょうか?」

「いや、そういう訳ではなさそうだ・・・」

大の字になって伸びている横島の頭上でそんなことを話す二人。

初めの頃よりは確実に力をつけてきてはいる。
だが、超加速に追い付いた時や、霊力に目覚めた時に発揮された力に比べると、
どうしても見劣りしてしまう。

『小竜姫様、こやつの力の源は煩悩です。
 煩悩の刺激が少ないここの環境では、これが精一杯かと・・・』

「ふむ・・・やはり小竜姫に何とかしてもらうか」

ぴく
横島の耳が動いた。

「あの、何かとっても嫌な予感がするんですが・・・」

「察しがいいのう、小僧に何かサービスしてやれ」

ぴくぴく
さらに動く。

「サービスって何ですか」

「サービスはサービスじゃ、そうじゃのキスしてやるとか」

ぴくぴくぴく
身体も反応しだしたようだ、霊力も上がっている。

「い、嫌ですよそんな事!」

「小僧と添い寝するとかはどうじゃ?」

ぴくぴくぴくぴく
身体が小刻みに震える、霊力もさらに上昇。

「もっと嫌です!!」

「我侭じゃのう、では、一緒に風呂に入ってやるのはどうじゃ?」

ぶしっ ←鼻血が出た音
実はとっくに気が付いていた横島、霊力も限界近くまで上がる。

「私が我侭なんですか!? ってどんどん過激になってるじゃないですか!!」

「そうでもせんと小僧の力が発揮されんのだ、仕方ない、裸で同衾・・・」

ついに限界を突破した。

「修業でなんでそこまでしなくちゃいけな「小竜姫さまぁ〜!!!」いやー!!!!」

バネのように飛び起き、そのまま小竜姫に抱きつく横島。
反応しきれなかったのか、それとも横島の動きが常軌を逸していたのか、
がっちりと拘束されてしまった小竜姫。

「風呂でも布団でも、どこまでもご一緒させていただきます!!」

「いやぁー!! 助けてー!!!」

「・・・・・・」

あっさりと限界を超えた横島に、ここ3週間の修業は一体なんだったのか
馬鹿らしくなって、もうどうでもよくなってしまった猿神。


そのまま異界空間を抜けて、外に飛び出て行く。
小竜姫の貞操の危機か! と思われたが、次の瞬間。

「あんたは、何をやっとるかー!!」

美神の神痛恨の一撃が炸裂した。

「?」

とりあえず開放されたが、状況がよく飲み込めない小竜姫。

げしげしと横島を蹴りまくる美神を見て、我に返る。

「美神さん? 何故ここに?」

『横島さんがいつまでも帰ってこないから、心配になって見に来たんです』

代わりにおキヌが答える。

「ちょっとおキヌちゃん! 人聞きの悪い事言わないでくれる!?
 私はただ、この馬鹿が迷惑かけてないか心配になっただけよ!」

素直じゃない美神にくすりと笑うおキヌ

「だ、だれか・・・たすけて・・・」

『自業自得だ、愚か者』

今にも息絶えそうな横島に救いの手は差し伸べられなかった。


「・・・で、ここで修業してたって訳ね?」

「そ、そうなんです」

美神に迫られて、事情を説明した横島。

「ふーん・・・そう、この私に嘘ついてまでねぇ?」

「う、でもゆっくりして来いって、言ったじゃないですか」

「それとこれとは話が別よ、問題は、あんたが、この私に、嘘をついたって事よ!」

あんたと私を強調して言う美神に怯える横島。

「でも貴女は、お休みを取ることを許可したのでしょう?」

穏便に諌める小竜姫だったが、

「従業員の躾は雇い主の義務ですわ、小竜姫様は黙ってて頂けますか?」

不機嫌な美神はそれに耳を貸さない。

二人の間に陰険な空気が流れる。

『よ、横島さんは何かできるようになったんですか!?』

流れを変えようと横島に話を振るおキヌ

「あ、ああ。
 今んとこはこんくらいかな」

掌に霊波を集中してサイキック・ソーサーを作り出す。

「凄いじゃないですか!」

「あんたにそんな器用なことが?」

横島の成長に驚く、おキヌと美神。
その様子に調子付いた横島は、さらに

「こんなことも出来ますよ」

そういってサイキック・ソーサーを投げる。
一直線に飛んでいったサイキック・ソーサーは、横島の念を受けて大きく弧を描き、
その場を旋回し始めた。

おキヌは感心していたが、美神はその問題点に気付いた。

「確かに一点に力を集中すれば防御力も上がるわ、
 どんな攻撃も防げるくらいに。
 でも、他の場所の防御力は低くなる」

そんな危険な技をど素人に教えたのかと、小竜姫を睨みつける。

『それを補うために、今まで特訓していたのだ』

「・・・それ何?」

「あ、こいつっすか? 心眼です。
 小竜姫さまに貰いました」

「心眼って、そんな高価なアイテムを?」

「ええ、横島さんの才能を引き出すために」

『話を続けるぞ。
 美神殿が察したとおり、今までのこやつは全ての力を使ってあれを作っていた。
 だったら全体の量を増やしてやればよい』

「量を増やすって、そんな簡単に出来る事じゃないわよ」

「ええ、そりゃあ簡単なんて生温いものじゃなかったです」

血の涙を流しながら横島が答える。
毎日毎日、猿神の鬼のような修業が死ぬ直前まで続けられたのだ。
我ながらよく逃げ出さなかったものだと感心する。

実は猿神の策で、猿神が鞭、小竜姫が飴を分担することで
横島を逃がさないようにしていたが、そんな事にはちっとも気付かなかった横島。
その結果、彼の中で小竜姫の高感度は大きく上がっていた。

つらい日々に血涙を流す横島を余所に、心眼が話を進める。

『まぁ、その成果が出たのはつい先程なのだが・・・。
 今のこやつの霊力はまだ余裕がある』

心眼の言葉にさっきの事を思い出し、顔が赤く染める小竜姫。
その様子に美神は眉を顰めるが、横島に意識を向ける。

さっきは横島の成長に動揺していたせいと、小竜姫に意識がいっていて
気が付かなかったが、確かにまだ余裕があるようだ。

「それならそうと早く言いなさいよ」

なんだかんだ言って横島が心配な美神だった。


『それならもう、修行も終わったんですよね?』

「ええ、一応は」

なら帰りましょう? と腕を取るおキヌ

「そうね・・・仕事も溜まってるし、さっさと帰るわよ」

おキヌとは逆の腕を掴む美神

両腕を掴まれずるずる引っ張られていく。

「ちょ、ちょっと、挨拶くらいさせて下さいよ」

「・・・いいわ、待ってるから早く済ませるのよ」

掴んでいる腕を放し、門の方に歩いていく2人


「お世話になりました」

「お礼なら老師に言って下さい、私は大した事はしてませんから」

「そんな事ないですよ。
 小竜姫さまのご飯、美味しかったです」

そう言って笑う横島につられるように、小竜姫も笑みを返す。


「小僧」

「うおっ!? いつの間に」

「・・・お前にはまだまだ延びる余地がある、引き続き精進せよ」

「老師・・・ありがとうございました」

頭を下げる横島に、さっさと行けと手を振る。


門の前で待っていた2人の元に駆けていく。

「遅いわよ!」

「すんません!?」

『まぁまぁ』

美神が怒り横島が謝りおキヌが諌める、いつもの風景が戻ったのだった。


『我等には挨拶もなしか・・・』

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