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▽レス始

「道程 その2(GS)」

みどりのたぬき (2005-02-05 00:15/2005-02-05 08:26)
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「・・・という訳なんですけど、修業が終わるまでここに居るわけにはいきませんか?」

「そーいわれても、美神さんには工事が終わる迄としか言ってませんし・・・」

『しかし、神が直接稽古をつけてくれる機会など滅多にないのだぞ?』

「いや、でも、ほら学校とかも行かなきゃだし」

『学校なんぞろくに行っとりゃせんではないか』

「何故それを・・・!?」

『何故も何も、私をいつも身につけておるではないか』

「そ、それじゃ俺の秘密のあんなことやこんなことも・・・!?」

『無論、知っておる』

生暖かい眼差しで横島を見下ろす心眼

「ノォー! そんな目で見んといて〜!?
 仕方ないんや〜! ワイも健全な男の子なんやぁ〜!!」

「あ・・・あの・・・」

話が逸れまくりの二人(?)に声をかける。

「老師もやる気になっているみたいですし・・・それとも矢張り、修業は嫌ですか?」

懇願するような眼差しに見つめられ、女子供には甘い横島とて何とかしたいと思う、

「別に嫌って言うわけじゃないんですよ、ただですね、
 俺携帯持ってないんで、連絡の取りようがないんです。
 無断で休んだりしたら時給下げられそうだし・・・」

時給がわずかに5円上がっただけの横島に、そんな贅沢な物が持てる訳が無かった。
それに帰りが遅くなる事を雇い主が認めないかもしれない。
彼には荷物持ちという大事な仕事(美神主観)があるのだ。

とにかく美神に連絡を取らないことにはどうにもならないらしい。
しかし、ここにも電話なんて俗なものは置いて無い。

「困りましたねぇ・・・」

「そーっすねぇ・・・」

悩む二人。

「話はついたか?」

「老師様、それが・・・」

追いかけてきた猿神に事情を説明する小竜姫、

「電話ならあっちにいる人間に借りればよいじゃろう」

工事現場の方を顎で指しながらあっさりと問題を解決する。

「あ、その手があったか。
 でも、美神さんには何て言えば・・・?」

「工事が予定よりも延びたとでも言っておけ」

「そんな嘘ついて、ばれたらどーすんだよ」

「その時はその時じゃ、つべこべ言ってないでさっさとしてこい」

「はぁ〜、嘘ついたのがばれたら今度は首かも・・・」

以前エミに引き抜かれた時は、おキヌの取り成しのお陰で事なきを得たが、
嘘をついてまで仕事を休んだとあっては、流石に許してはもらえないだろう。
肩を落とし哀愁を漂わせながら、電話を借りに行く横島だった。


<はい、こちら美神除霊事務所です>

「あ、おキヌちゃんか。美神さんいる? 変わってくんない?」

<分かりました、ちょっと待ってて下さいね>

「・・・・・・」

<なによ?>

「あ、あのですね、工事が思ったよりも時間掛かるらしくてですね、
 ・・・もうしばらくこっちでバイトしていきたいなぁ、なんて・・・」

<あら、いいわよ>

「へ?」

<ほら、私パワーアップしたじゃない?
 調子も良いし、フル装備が必要な仕事も入ってないからね、
 ゆっくりしてらっしゃい>

「へ?」

<あ、もちろん休んでる間は給料出ないから、そっちでしっかり働く事ね。
 ガチャッ、プー・プー・プー・・・>

「へ?」


「どうでした?」

帰って来た横島に結果を聞く、

「ゆっくりしてこいって、言ってました」

「そうですか、それでは存分に修行に励めますね」

「あはははは、そうですね」
(あぁ・・・生活費が・・・)

ニコニコしている小竜姫に、顔で笑って心で泣く横島だった。


横島のバイトも終わり本格的に修行を始める事になった一行は、
令子の修業に使った異界空間に来ていた。

「あれ、ここって壊れたんじゃなかったっけ?」

「入り口が破壊された程度なら簡単に修復できる」

「へぇ〜」

「・・・さて! これから修業に入りますが力の使い方は身に付きましたか?」

雑談を続ける横島の意識をこちらに向けさせる。

「ええ、まぁなんとか」

心眼による霊力の使い方講座は、バイトの合間や終わった後に行われ、
自分の意思で力を引き出せる程度にはなっていた。

「よろしい、では・・・・・・・・・何をしましょうか」

「え?」

「あのですね、実力の無い人は鬼門に追い返されるじゃないですか、
 だから、私も何から始めたらいいのか分からなくて」

てへ、と舌を出して誤魔化す小竜姫、そんな小竜姫さまもかわいいなぁとか考えてる横島、
そこへ老師が指示を出す。

「小竜姫、小僧とやり合え。
 どの程度出来るのか見ておきたい」

「わかりました」

「わかりましたって、ちょっと!?
 小竜姫さまの相手なんかしたら死んじゃうじゃないですか!?」

「安心してください、ちゃんと手加減はしますから」

おたおたしている横島に間合いを詰めると、顔面めがけて拳を放つ。
間一髪かわす横島、次々に繰り出される攻撃を避ける、逃げる、避ける、逃げる。

天賦の才か回避行動は見事だが、一向に手を出す気配が無い、

「逃げてばかりでは修行になりません! 反撃して来なさい!!」

「そんな事言うても、女の人を殴れるわけ無いでしょう!?」

「これは修業です! 男も女も関係ありません!!」

「いや、しかし・・・」

「・・・わかりました、貴方がその気になるまで徹底的にやらせてもらいます!」

横島の一言が琴線に触れたのか、先程より素早い攻撃を繰り出す。
何とか回避を続ける横島だったが、次第に避けきれ無くなり、腹に一撃喰らい悶絶する。

『愚か者め!!甘いことを言ってるからこうなるのだ!!』

「ぐ・・・でもよ・・・」

『・・・小竜姫様、少々時間を頂けますか』

「ええ、かまいませんよ」

厳しい顔つきのまま後ろに下がる。


『何故反撃しない、このままただ殴られ続けるつもりか?』

「そんな事言ってもよ、女の子殴るなんて出来ねぇって」

『安心しろ、おぬしが何百発殴りかかろうとも、小竜姫様には当たりはせん』

「でも・・・」

『・・・おぬし如き未熟者に、そんな配慮をされたとあっては
 小竜姫様は傷つくだろうな、怒って口を聞いてもらえなくなるかもしれん』

横島の女好きを理由にやり込めようとする心眼

「・・・わかったよ」

『それでいい。
 後は当たって砕けるのみだ』

心眼の口車に乗せられた気がしないでもないが、このままでは埒が明かない。
それに心眼にも言われたが、素人の自分の攻撃など当たらないだろう。
気持ちに決着をつけて小竜姫に向き直る。


「やる気になったようですね、それでは仕切り直しです」

顔つきの変わった横島、右拳に霊力を集中し突撃する。
玉砕覚悟の一撃を左手でいなされ、体が流れる。
隙だらけの側面に、右ストレートを打ち込む小竜姫。
しかし、驚異的な反射神経でそれを掻い潜る。
避けられるはずが無いと思っていた一撃をかわされ、小竜姫の動きが一瞬止まる。
その隙を見逃さず、無防備な腹部に霊力を込めた左手を突き出す───


「反射神経や身体能力はなかなかのモノだが、動きが雑すぎる」

「無茶、言わんで下さいよ、喧嘩だって、苦手なんすから」

体中を擦りながら、へたり込み息も切れ切れに反論する、

「そうか? その割には中々堂に入っとったではないか」

「そうですよ! 凄いじゃないですか横島さん!」

予想以上の健闘に、小竜姫は少々興奮気味だ。

『集中している時の動きは見事だが・・・おぬしの欠点は集中力が続かない事だな』

「それはこれからの修行で鍛えればよい」

「ま、まだやるんすか・・・」

「当然じゃろう。
 ほれ、さっさと立て」

「へ〜い」


「・・・で、何をやるんすか?」

「霊波を一点に集中する訓練じゃ」

どこから取り出したのか、でかい画鋲のような物を床に置く。

「この上で逆立ちしろ」

「出来るかー!?」

「慌てるな、手本を見せてやる」

人差し指の先に霊力を集中させると、ひょいとその上に載って見せた。

「あれ・・・刺さらない?」

「制御された霊力は、物質に干渉ができるんです」

「そんなこと俺には無理っす」

「霊波のコントロールは出来とるんだから、やれるはずじゃ。
 泣き言を言ってないでやれ」

しり込みする横島を蹴っ飛ばす。
手本を思い出しながら指の先に全霊波を集中し・・・乗っかった。

「おぉ、なんだ出来るじゃん」

多少ふらつてはいたが、

「で、どんくらい続ければいいんすか?」

「そうじゃのぅ・・・、半日くらいでいいじゃろ」

「そんなに出来るか!」

「そうか、では命がけの実戦訓練をするか?」

「うぅ・・・、やりますよ! やればいいんだろ、やれば!」

「わかっとるじゃないか」


 〜五分経過〜

「し、しんどいっす・・・」

「まだ五分しか経っておらんぞ」


 〜十分経過〜

「・・・・・・もおダメだあ!!」

どさっと地面に倒れこむ。

「もうへばりおったのか、情けない」

「そんな事言ったって・・・無理なもんは無理っすよ・・・」

『力の使い方に無駄があり過ぎる、霊波を必要以上に放出しているからすぐにばてるのだ』

「・・・だったら手伝ってくれよ、お前そのためにいるんだろ」

『他力本願だな』

「・・・横島さん、いつまでも心眼に頼っていてはいけません。 
 それに貴方はもう自分の意思で力を引き出せている、後は助言程度しか出来ませんよ」

「そうなのか」

『うむ』

本当は力の強弱などのコントロールも出来るのだが、横島の成長のため
小竜姫の思惑に乗ることにした。

『すまんな』

「謝んなって、アドバイスだけでも有難いしな」

謝る心眼に、前向きな答えを返す。
そんな横島の様子に満足そうな小竜姫と猿神。

「では次の修業じゃ」


「横島、そこに立て」

「ここっすか」

猿神の正面に立たされる、

「これからわしがお前に向けて霊波を放つ、それを防いでみせろ」

「そんだけでいいんすか?」

「うむ、これは霊的攻撃に対する守備を鍛える訓練じゃからの」

「さっきのよりかは、簡単そうだな」

「そうかの? 手加減はするが、気を抜いていると危険じゃぞ?」

そう言って掌を横島に向ける猿神、その手に霊力が集まっていく。
向けられた掌から感じる圧力だけで尻餅を付きそうになる横島。

「い、いかん、こんなん受けたら死ぬ、死ねる」

今まで黙ってみていた小竜姫が慌てて猿神に進言する。

「老師、やはり私がやります」

小竜姫が相手をしてくれるなら死ななくてもすむかもしれない。
期待を抱く横島だったが・・・

「黙って見ていろ」

「しかし!」

「小竜姫、お前はこの小僧を殺す気で攻撃できるか?」

「・・・!」

「無理じゃろう? お前はなんだかんだ言っても甘い」

(小僧もそれが分かっとるようだしの)

期待の表情で小竜姫を見ている横島に気付いていたようだ。

(その根性、叩き直してくれるわ)

「いくぞ、死にたくなかったら見事防いでみせろ!」

殺す気満々の一言に両手を交差させ、霊力を集中させる。

猿神の掌から霊波砲が放たれる。
一瞬も抵抗できずに吹っ飛ばされる横島


「おや?」

おかしいな、と自分の手を見る猿神。
どうやら力の調節を誤ったらしい。

「よ、横島さん・・・!?」

急いで駆け寄る小竜姫。
あれは死んだかも、よぎる不安を頭を振って追い払う。
側まで寄ると、ぴくぴく動いているのが確認できた。

「・・・て、手加減する言うたやないかぁ・・・・・・」

一応、それなりに手加減したとはいっても、そこは神界屈指の実力者。
人間とは差がありすぎるそれは、たやすく横島の防御を突き抜けた。

「少しは踏ん張って見せんか、まったく・・・さっさと立て」

さり気無く責任転嫁する猿神だった。


横島の修行は続く・・・


後書きという名の言い訳

こんばんわ、みどりのたぬきです。
横島の修行が始まりました。

お気づきになられる方もいらっしゃいますでしょうが、
修業風景は亡霊的格闘漫画を参考、というかそのまま使わせてもらいました。

実際の修験者は瞑想や滝行、山駆け等を行うようなのですが、
妙神山のイメージと合わない、というか他に思いつけなかったもので。


それでは、また次回

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