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「道程 その1(GS)」

みどりのたぬき (2005-02-03 23:14)
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妙神山での修行を終え、パワーアップを果たした令子が唐巣の元へ
報告をしに行っている頃、横島は・・・


ガテン系の兄ちゃんと化していた。

「ところであなたは帰らないんですか?」

「・・・生活苦しいんでしばらくここで、バイトして行きます」

小竜姫に答えながらつるはしを振り下ろす横島、ランニングシャツにニッカズボンが
妙に似合っていたりする。
その傍では彼のシャドウがちっこい一輪車を押し横島の手伝いをしていた。

二人を見ながら小竜姫は考える。
自分の剣を避ける横島、超加速に追い付くシャドウ。
どちらも並の人間に出来ることではない。
美神令子や唐巣神父も才能があったが、この少年はそれを上回るかもしれない。

「あの、小竜姫さま?」

なにやら考え込んでしまった小竜姫に声をかけると

「そうだ! 横島さんもここで修業していきませんか?」

「へ?」

予想だにしない答えが返ってきた。
呆けた顔で返事をする横島、当然の反応といえば当然だった。
自分は平凡なバイトに過ぎないし、シャドウを見ても何の才能もない事が分かる。
なんで小竜姫さまはそんなことを言うのだろうか・・・?

彼には自分が凄い事をやってのけたという意識はなかった。

「アネさん、前にもいーましたが、この男かいかぶりすぎでっせー」

手に持った扇子で、ぺしぺしと横島の頭を叩きながらシャドウが答える。

「いえ、最初会ったときに思ったんです、ひょっとしたら素質があるかもって。
 ですからここで修業をしていけば隠れた素質が目覚めるかもしれません」

「アネさん、なにか勘違いしとりまっせー」

「うるせー! もうちょっと本体に敬意を払わんか!?」

漫才のような掛け合いをする二人を楽しそうに見つめる小竜姫だったが、


「楽しそうじゃのぅ、小竜姫」

彼らの後ろから突如かけられた声に、青くなってガタガタ震える小竜姫。
その様子に訝しがって横島がそちらを見るとそこには・・・猿がいた。

「なんすかこの猿、小竜姫さまの知り合いですか?」

「な、なんて事を言うんですか、この方は猿神です!」

「はぬまん?」

「あぁ、ハヌマンというのはヒンドゥー教の呼び名です。
 斉天大聖と言えば貴方も聞いたことがあるでしょう」

「斉天大聖というと、西遊記の孫悟空ですか?」

「そうです、老師は神界屈指の実力者で、私の上司でお師匠さまでもあります」

「へぇ〜、人は見かけによらないもんなんすねぇ」


「小竜姫よこの惨状は一体なんじゃ、わしが留守の間にだいぶ変わり果てたようだが?」

「えーとですね、それがその・・・」

何とか誤魔化そうとするのだが、

「たわけ! わしが何も知らぬとでも思うたか!
 謝るならまだしも、言い訳なんぞしおって!」

怒られた。

「すみません!」

「まったく、人間相手に後れを取り、さらには竜の姿までさらすとは・・・情けない」

「・・・すみません」

「何か罰を与えねばな・・・まぁよい」

とりあえず小竜姫を叱ると、今度は横島を見る。

「なんすか?」

「見たところ大した力も持っておらんようじゃが・・・」

ちらりと横目で横島のシャドウを見る、

「ふむ、ついてまいれ」

歩いていく猿神に小竜姫が駆け寄る。

「老師! 横島さんは関係ありません、あれは私が・・・」

「なにを勘違いしとるか知らんが、お前が想像しとるような事はせんよ」

「? では何を?」

「修業の一部を見させてもらった。
 あの小僧、超加速に追い付いたな?」

「どうしてそれを? それに見ていたって?」

ヒャクメがちょうど遊びに来ておったんじゃ、と話していると横島が声をかけてきた。

「どこまで行くんすか?」

「修業の前にまず、やっておきたいことがあるからの、
 それが出来る場所じゃよ」

「やっておきたいことってなんすか?」

「おぬしの霊力を目覚めさせる」

それには集中できる場所が必要になるじゃろう、と言われて
辺りに人気が無くなっていることに気が付いた、

「さて」

猿神は無造作にシャドウを掴むと横島に押し付けた。
すると吸い込まれるようにシャドウは横島の中に消えていった。

「うぉ!? いきなり何すんじゃぁ!?」

「力を取り出したままでは、何も出来んじゃろう」

やれやれと首を振る猿神

「では始めよ」

「いや・・・いきなり始めろって言われても、何を?」

「そうですね・・・まずは精神を集中してみてください」

「集中ですか、集中・・・・・・集中・・・・・・むぅ」

目を瞑り集中する横島、だが一分経ち二分経ち・・・と
十分くらい経過したが何の変化も現れない。

「あの・・・本当に集中してますか?」

「してますよ? してるんですけど・・・、
 ・・・やっぱり俺には無理なんじゃないですか?」

「変ですねぇ」

「・・・小僧」

「何すか」

「おぬしシャドウを操れたじゃろう、その時の事を思い出してもう一度やってみよ」

「あの時の事ねぇ・・・あの時は」

何故猿神がそのことを知っているのか不思議に思いながらも、
言われたとおりにその時の事を思い出す。

(あの時は確か小竜姫さまに隙を作ったらキスしてくれるって美神さんが・・・って
 まだキスしてもらってねぇじゃん!?)

変な方へと思考がずれていった。

一向に変化の現れない横島に声をかける小竜姫

「仕方ありません、横島さんこちらへ」

近寄る横島の頭と頬に手を添えて引き寄せる、

「我、竜神の一族小竜姫の竜気を授けます。
 そなたの主の力とならんことを・・・!」

バンダナに口付けをした。

「しょ、しょ、小竜姫さま!?」

「バンダナに神通力を授けました。
 後は貴方次第です」

「小竜姫さまぁぁっ!!」

「落ち着け」

ぐしゃりと猿神に叩き落とされた。


「落ち着きましたか?」

「すんまへん」

「神に飛び掛ろうとするとは、とんでもない奴じゃのぅ」

「反省してます、ごめんなさい」

「もういいですから・・・もう一度やってみてください」

「・・・わかりました」

また目を閉じて集中する。

(キスかぁ、そういや前にも美神さんにキスしてもらったことあったっけな、
 そん時も酷い目にあった気が・・・キスひとつで命を賭けるってどうよ俺?)

さっそく脱線していた。

おかしい、流石に今度は何らかの反応があってもよさそうなのにと、
横島が集中どころか、脱線しまくっている事を知らない小竜姫は悩む。
そんな小竜姫を余所に横島の脱線は続く。

(やっぱこの仕事やめるかなぁ時給255円だし、
 ・・・255円て最低賃金法に引っかかってるよなぁ、あぁでもあんな美人なねーちゃん
 そうそういないだろうし、仕事中のスキンシップはおいしい、
 スキンシップといえば、さっきの小竜姫さまいー匂いだったなー、
 手もやーらかかったし・・・」

うっすらと目を開けて小竜姫のほうを見る、途中から考えていることが声に出ているが
気付いていない。
脱線していた思考が妄想に変わり、さらに妄想は進んでいく。

「よく見ると小竜姫さまって結構いー乳してるよな、腰もこーキュッと引き締まってるし、
 綺麗な肌してたし」

横島のほうが背が高いため、バンダナに竜気を吹き込められるために頭をかがめると、
丁度視線が胸元に行くのだった。
さらに煩悩のなせる業かシャドウの見た映像を自身の記録として取り込んでいた。
今度は始めから声に出ていた、それも結構大きな声で・・・やっぱり気付いてなかったが。

「な、何を言って・・・!」

「待て!」

不埒なことを口走る横島に制裁を加えんとする小竜姫を止める。

「あやつ、急に異常な力を・・・!?」

妄想によって精神が集中されたのか、はたまた煩悩自体が霊力源なのか、
人間にしては異常な力に驚く猿神と、呆気に取られる小竜姫だった。
そんな中、バンダナの中央がピシッという音とともに上下に分かれる、
徐々に開いていき、猫の様な細い瞳孔を持った目がそこに現れる。
だが、額で起きている変化に気が付かない横島の妄想はさらにエスカレートしていた。

もはや隠そうともせずジィッと小竜姫を見つめ、
再び目を閉じると小竜姫の裸をイメージする。
もんもんもんとイメージの中で裸の小竜姫が描かれていく。

「どうも・・・煩悩が霊力源のようだの」

「何か・・・寒気がするんですけど・・・」

鳥肌を立てぶるっと震える小竜姫が、「もうよろしいのでは?」と伺いを立てる。

「そうじゃの、どこまで上がるのか見てみたい気もするが・・・、
 おい、小僧!!」

「!」

声をかけられ気をそらすと、放出されていた霊波が止まった。

「まったく、煩悩で霊力を生み出す人間など始めてじゃわい」

「え? 霊力? 俺が・・・!?」

「何じゃ、気付いておらんかったのか。
 まぁ、詳しくはそやつに聞くといい」

「そやつ?」

『私だ』

「うぉぅ!? だっ、誰だってゆーかどこから!?」

『そなたの上だ』

「バッ、バンダナに目が?バンダナが喋ってるのか!?」

『いかにも、我は心眼』

「つーか口は!? 口もないのにどーやって喋ってる!?」

『どうでもいい事に拘るのおぬし・・・』

「ま、いいや、詳しいことはお前に聞けって言ってたけど?」

『うむ、私は小竜姫さまの命によりそなたに力を与えるために目覚めたのだ。
 おぬしが自在に力を引き出せるまで手助けをしてやろう」

「ふーん、よろしくな」


「それで横島さん?私の胸がどうかしましたか?」

やり取りを黙って見ていた小竜姫が、横島の背後に立っていた。
照れているせいか、その顔は赤い。

「はぅっ!?・・・・・・・・・な・・・なんのことでせう?」

「あら、先程言ってたじゃありませんか、胸がどうとか腰がどうとか」

「ま、まさか」

「声に出していましたよ」

「げ・・・」

「前にも言いましたよね、私に無礼を働くと仏罰が下りますって」

ぽんと横島の肩に手を置くとそのまま力を込めて掴む。

「いだだだだっ!!」

ギリギリと力を込める小竜姫

照れ隠しに怒っているようにしか見えない小竜姫を、からかうように
猿神が横島に問いかける。

「小僧、小竜姫の裸はどんなじゃった?」

「どうって、綺麗でした」

ばっちりっすよと、サムズアップして答える。

「な、え、えぇ!?」

思いがけない言葉に赤面する、

「え、だって、私、綺麗だなんて、そんな、裸なのに・・・!?」

混乱しているのか支離滅裂な事を口走る小竜姫。
頭を抱えて座り込む。

とりあえず肩の痛みからは逃れられたが、
座り込み、なにやらぶつぶつ言ってる小竜姫が
心配になって声をかける。

「あの・・・小竜姫さま?」

「うぅ?」

まだ混乱していたようだ。
上目遣いでこちらを見つめる小竜姫、
そんな彼女の様子を見て

「・・・かわいい」

思わず呟く。
それが聞こえたのか、ますます顔が赤くなっていった。


小竜姫は武神だ、その名は神剣の使い手としても天界に知れ渡っている。
ゆえに名を上げたい、純粋に手合わせしたい、という輩は山ほど訪れてきた。
他にも自らのステータスのために小竜姫を娶ろうとする連中も居た、
ただ、そう言った美辞麗句を並べ立てるだけの連中には、見向きもしなかったが。
だから横島が言ったような、馬鹿正直な本心からの言葉には耐性がなかった。


「まるで見合いじゃの」

見詰め合って動かない二人を見てそう評する猿神。

「・・・もういいです、・・・でも次からは気をつけて下さいね」

「・・・前向きに対処します」

ようやく立ち直った小竜姫と、まるで政治家のような答えを返す横島だった。


「小僧もまだ仕事があるようだし、今日はこの辺でいいじゃろ」

「いけね、そういや作業の途中だった」

それじゃ、と工事現場の方へと駆け戻っていく。

「あの小僧はどのくらいここに居るつもりなんじゃ?」

「お仕事が終わるまでだと、一週間ほどでしょうか」

「ど素人に一から教え込むには時間が足りんのう。
 こちらから修業を勧めたからには、途中で投げ出すわけもいかん。
 ・・・小竜姫よ、小僧に話をつけて来い」

「わかりました」

横島の後を追う小竜姫の後姿を眺めながら

「面白そうな小僧じゃ、退屈せずにすみそうだわい」

と、楽しそうに笑う猿神だった。


はじめまして、みどりのたぬきと申します。
二次創作初挑戦の新米ではございますが、
皆様にご指導、ご指摘がいただけるよう頑張って書きたいと思います。
どうぞよろしく御願いします。

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