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「素晴らしい日々へ 第二十話(GS)」

ほんだら参世 (2005-02-07 00:58)
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妙神山の中で、小竜姫様達が住んでいる居住空間の一室。
私は今、ヒャクメさんの案内によってそこに来ている。
美神さんの修行が終わったので、ここで小竜姫様を待っていて欲しいと言われたのだ。

「ふう、 ・・・・・忠夫さんの過去か。」

はっきり言って、滅茶苦茶気になる事である。
でも、忠夫さん本人の口からでなく、恋人の一人という小竜姫様からそれを聞いていいのだろうか?
そうして少し悩んでいるとやがて、戸の向こうからお盆を持った小竜姫様が入ってきた。

「すいませんね、唯さん。 お待たせしてしまって。」

「あ、いえ。 さっきヒャクメさんに案内されてきたばかりですから、気にしないで下さい。」

私のその返事を聞くと、小竜姫様はにっこりと笑って、持ってきた湯のみの一つにお茶を入れて渡してくれた。
あのヒャクメさんとは違った意味で、この人は神様に見えないなー。
ヒャクメさんはフレンドリー過ぎる感じで、小竜姫様はなんか物腰が丁寧なお姉さんって感じで。

「では、横島さんの話をしましょうか。」

そんな事を考えていたら、小竜姫様はそのまま会話を始めようとした。

「あ、ち、ちょっと待ってください!」

「はい、何ですか?」

「いえ、忠夫さんの過去の事を本人以外の人から聞くのって、良いのかなって思ったんですけど。」

私がそう言うと、小竜姫様はくすっと言う感じの微笑を浮かべた。

「確かに、普通はそう思うでしょうね。 でもまあ、あの人は良い意味でも悪い意味でも普通じゃない人生を送ってる人ですし、自分が一番自分の事を理解していない人ですから、必要最低限の事は私が語った方が良いんですよ。 本人の許可も、一応貰ってますし。」

神様に良い意味でも悪い意味でも普通じゃないって言われるなんて、どういう人生を送ってきたんだろう、忠夫さんは(汗)
私達と一緒に居るようになってからは、・・・(回想中)・・・あー、結構普通じゃないかも。

「さて、それではまずは、あの人がこの世界に入った経緯から話しましょうか。」

私が少し悩んでいる間に、小竜姫様は話を先に進め出した。
もしかして、この人結構マイペース?

「横島さんがこの世界に入った理由は、はっきり言うと・・・・・・・


色香に迷ってですね。」

「ハイ?」

えっと、・・・今、とんでもない事が耳に入った気が。

「す、すいません。 もう一度言ってもらえますか?」

「ええ、何度でも構いませんよ。 とある女の人の色香に迷ったのがこの世界に入る切っ掛けだったんですよ、あの人は。」

完全に聞き違いとか言えないそのお言葉に、私は勢いよくずっこけてしまった。
ええ、ずっこけたんですよ、と言うかずっこけて当たり前でしょうが!
どこの世界に、色香に迷ってこんな危険が伴う世界に足を踏み入れるような人がいるんですか!

「唯さんの考えてる事は大体わかりますが、これは事実ですよ。 まあ、あなたは今の横島さんしか知らないですから、無理も無いでしょうね。 常識的に考えても有り得ない事ですし。」

「今のって事は、昔の忠夫さんなら納得できる行動なんですか、それ?」

「そうですね、昔のあの人は簡単に言うと、


馬鹿で貧乏でドスケベな、無能力者などこにでもいるような青年って所ですね。 あ、でも、スケベさと頑丈さは人並み外れて、いえ、神族や魔族すら比較にならないレベルでしたね。」

それを聞いて、再度ずっこけましたよ。
い、良い所が全然無いじゃないですか、それ。

「そんな人だったんですが、才能は凄まじいものがあり、どんどん霊能力を開花させていきました。」

「へー、凄いですね。」

そこは納得できるかな。
あそこまでの力をあの若さで手に入れてるんだから、才能も無くちゃ無理だろうから。

「それが、あの人の不幸だったのかもしれませんね。」

「え?」

突然顔を曇らせながら小竜姫様が言ったその言葉に、私は呆然としてしまった。
不幸って、何故?
才能があって、どんどん霊能を開花させるのが、何で不幸に?

「才能があり、それをどんどん開花させていった為に、あの人は過酷な戦場に出る羽目になりました。 その才能の所為で、彼の中身は普通の青年でしかない事を忘れさせ、周りは彼を優秀な戦士として見るようになりました。」

そのまま小竜姫様は、何かを思い出すように話を続ける。
その姿が、私には何かを悔いるような姿に見えた。

「そしてある戦いで、彼は敵地に潜入することになり、その中で敵の魔族の一人と恋仲になりました。 普通なら芽生えなかったはずの恋、彼が優しすぎる人だったが故に始まった悲恋の始まりです。」


*  *  *  *  *  *


「はーーーーーーーー。」

美神さん達との待ち合わせの場所である脱衣場の前で座り込みながら、私は大きなため息を吐いた。

「世界か恋人か、・・・・かー。」

小竜姫様に聞いた話は、かなりショッキングなものだった。
ある魔族との戦いの中で出会い、ひょんな事から恋仲となった魔族―ルシオラさんの事。
そのルシオラさんは、戦いの中で深く傷ついた忠夫さんの命を救う為にその命を捧げた事。
ルシオラさんを救う手段はあったけど、それは同時に敵の魔族が世界を滅ぼす手段でもあった事。
忠夫さんはルシオラさんか世界か、という選択を迫られ、苦渋の末に世界を選んだ事。
そして、その後も続いた苦しみの事。

「あ、唯ちゃん。 もう来てたの。」

「え、ああ、はい。 美神さん達も用事は終わったんですか?」

ぼうっとしながら忠夫さんの事について考えていると、美神さんとおキヌちゃんが近くまで来ていた。

「ん、終わったわよ。 ・・・・・その様子だと、唯ちゃんの方も全部聞き終わってるみたいね。」

「・・・・・はい。」

「なら、どうすべきかは決めてるの?」

美神さんのその質問に、私はさっき小竜姫様に同じ事を聞かれた時の事を思い返した。
真剣な目で聞いてきた小竜姫様に対して即答した答えを、今度は美神さんに答える。

「決まってます。 忠夫さんと一緒に居ます。」

小竜姫様は、

『横島さんは確かに人間ですが、魔族の霊基構造を宿しているのには違いありません。 今は押さえれていてもこの先の未来、絶対に押さえきれる保証は無いです。 それを知ったからには、一緒にいるだけでも覚悟がいります。 加えて、あの人の過去を知ってそれに向き合う覚悟が無い状態で一緒にいたら、互いに傷つくだけ。 だから、今なら全部無かった事に出来ます、全部忘れて、何もかも無かったことに。』

と言っていた。
だけど、もう私にとっては『今なら』じゃない、『今更』だ!
あの人の笑う顔も、私の料理を美味しいと言って笑う顔も、ちょっとした事で慌てて苦笑いする顔も、全部見てしまった。
繋いだ手の温もりも、後から見る背中の大きさも、抱きついた胸から聞こえた鼓動も、全部知ってしまった。
今更・・

「離れられるわけありませんよ。」

確かに、今の私は忠夫さんを支えられるほど強くないけど、

『惚れた男が自分の手におえない男なら、手におえるぐらい強くなってモノにしなさい!』

とお母さんが言ったように、忠夫さんの隣りで支えられるくらいに強くなって見せる!

「・・はーーーーー、やっぱそうなるのね、唯ちゃんは。」

美神さんは大きなため息をつきながら、肩を落としてそう言った。
隣りのおキヌちゃんの方は、ニコニコ笑いながらこっちを見ている。
あの様子だと、おキヌちゃんも忠夫さんと一緒に居るって選択したのかな。

「唯ちゃん。」

「はい?」

美神さんの呼びかけが聞こえたから、おキヌちゃんの方に向けた視線を再び美神さんの方に戻すと、美神さんは真剣な眼でこっちを見ていた。

「はっきり言っとくけど、私は横島君と唯ちゃんは一緒に居ない方が良いと思ったわ。」

「そうですか。 でも、離れる気は全くありません。」

「わかってるわよ。 今の言葉とその表情を見たら、引き離す事なんて不可能って事ぐらい。 ・・・・・唯ちゃん、後悔しないわね。」

美神さんの言葉は、全て私の事を案じてくれての事とはわかってる。
だけど、私の答えは変わらない。
例え、どんなに忠夫さんが辛い過去を持ち、これから危険に巻き込まれる事態が起こり得るとしても・・・

「絶対に、後悔なんてしません。」

真っ直ぐ美神さんの目を見ながら、私ははっきりと自分の想いを込めた言葉を口にする。
それを聞いた美神さんは、息を吐きながら肩の力を抜き、私に笑顔を向けてくれた。

「はあっ・・・ ったく、唯ちゃんも、おキヌちゃんも。 人の心配が余計な事って感じに、二人とも同じような答えを言うんだから。」

「やっぱり、おキヌちゃんも忠夫さんと一緒に居るって決めてたんだ。」

私がそうおキヌちゃんに声をかけると、おキヌちゃんは笑顔のままで大きく頷いた。

「はい。 元々私は横島さんに憑りついてる状態なんですから、当たり前です。」

そのまま話しを聞くと、おキヌちゃんはそれを小竜姫様の目の前で言ったらしく、忠夫さんの事をよろしくと言われたのだそうだ。
私は小竜姫様の前でそれを言えなかったから、一歩リードされちゃったみたいでなんか悔しいな。
まあ、それは良いとして。

「じゃあ、目指すは忠夫さんの恋人・六号さんと、七号さんだね。」

「ええっ! ゆ、幽霊の私が恋人なんて変ですよ!! 私は皆さんと一緒に居られたら、それで十分です!」

「大丈夫! 神族の人を恋人にしてる忠夫さんなんだから、幽霊だからなんて気にする訳無いよ。 というか、改まって恋人にして下さいなんて告白するのは何かものすっごく恥ずかしいから、一緒にして!!」

私がそう言っておキヌちゃんの両手をガシっと掴むと、おキヌちゃんは顔を引きつらせるような感じであははっと笑っていた。
隣りを見ると、美神さんも同じような表情で笑っている。

「あー、あんなに色々なアプローチをしてきたのに、今更告白ぐらいで恥ずかしいもんなの?」

美神さんが表情を変えずにそう言ってきたけど、わかってないですね美神さん、乙女心と言うものを。

「むしろ、色々やってきたからこそ、今告白する事が恥ずかしいんですよ! 今まで色々やってきたのに今更そんな初歩的な事を、て感じのこそばゆさがこう・・・・。 わかるよね、おキヌちゃん!!」

「あ、あははーーー・・・」

「とにかく! 一緒に頑張ろうね、おキヌちゃ  ドゴーーーン  な、何?」

「鬼門の方でなんかあったみたいね。」

会話の途中で聞こえてきた轟音に驚いてその音のした方に顔を向けると、妙神山の入口の門の辺りが土煙に覆われているのが見える。
そして、その土煙が収まった所に居たのは、

「せんせーーーーーーー!! 横島先生は何処でござるかーーーー!! 先生のぷりちーな一番弟子のシロが来たでござるよーーーーー!!!」

「落ちつきなさいよ、まったく。 霊波の感じからして、猿じいと一緒にいつもの修行場にいってんでしょ。 大声出しても聞こえないわよ。」

大声で叫ぶ長い銀髪に一房赤が混じった少女と、その少女に冷静な突っ込みを入れる金髪を九房にした髪型の少女だった。
外見から言って、二人とも多分中学生ぐらいだろう。

「え、えーっと、あんた達、何者?」

美神さんがそう言うと、二人は今気がついたようにこっちを振り向いた。

「おお、みか  バシッ  きゅ〜〜〜・・・」

銀髪の女の子が何かを言おうとした瞬間に、隣りの金髪の女の子が何処から出したのかわからないハリセンで殴り倒す。
そしてそのまま相方らしい子が目を回しているのに構わず、金髪の子はこちらに向かって話しかけてきた。

「あ〜〜〜、始めまして、かな。 私はタマモ。 あんた達は横島忠夫の同僚よね?」

「え、ええ、私は横島君の雇い主だけど。 あんたは彼とどういう関係なの?」

美神さんが掛けられた声に反応してそう質問し返すと、タマモと名乗った女の子は小首を傾げる様にしながら手を口元に持っていき、少し考えた後に

「そうね、私とあいつの関係は・・・


ペットとご主人様な関係、かな?」

などと言ってポっと顔を赤らめてくれましたよ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お母さん、これから告白しようという人のとんでもない性癖がわかってしまいました。
とりあえず、忠夫さんが戻ってきたらあなたから受け継いだ最終奥義『阿鼻叫喚 悶絶地獄めぐり』を敢行しようと思います。

「ゆ、唯ちゃん! 何、その笑っていない笑顔は、かなり怖いわよ!! お、おキヌちゃん! どっから出したのよ、その包丁は!! だーーーーっ、何でこうなるのよーーー! 横島ーーーー、早く帰って来て何とかしなさいよーーーーー!!!」


*  *  *  *  *  *


小竜姫SIDE

「あらあら、いきなり凄い事になってるわね。」

そう言いつつも、ヒャクメから借りた機材の向こうから聞こえてくる美神さんの悲痛なまでの叫びに、私は思わず微笑を漏らしてしまっていた。

「でも、これが必要にならなくて良かったわね。」

私は手の中で光る三つの文珠を見つめながら、そうつぶやいた。
その文珠に込められた文字は[忘]。
万が一唯さんが横島さんを受け入れる事ができない様なら、私はこれを使って今回話した全ての事を忘れさせるつもりだった。
その為に、ヒャクメから借りた道具で美神さん達の様子を見ていたのだ。
今回の事は、実は私の独断先行で行った事だった。
横島さんの心の傷、そして魔族の霊基構造を宿している事実を知っても、唯さんとこの世界のおキヌちゃんがあの人を受け入れられるかを見たかったから。
最低限それが出来る人でなければあの人を支えられるとは思えないので、二人を試したのだ。
横島さんは文句を言うかもしれないけど、上手くいったのだから良いでしょう。
まあ、唯さん達からの質問(尋問?)で文句なんて言う暇は無いでしょうけどね。

「さて、そろそろシロちゃんとタマモちゃんに会いに行きましょうか。」

そう言いながら、私は二人と美神さん達が勢ぞろいしている場所に向かって足を進める。
頭の中で、横島さんが二人と一緒にここに来た日の事を思い出しながら。
そう、私があの人に全てを捧げた日の事を・・・


後書き

うぃ、週一宣言しときながらA.C.E.とOG2にかまけていた駄目作者、ほんだら参世です。


・・・・・うううううう、ワイが悪いんやないんや。
この二つを週違いで連続で出すバンプレストさんが悪いんや。
ワイはスパロボ好きの被害者なんや、・・・・・あ、嫌、石を投げないで〜〜〜〜〜。


あ〜、こほん。
気を取り直して後書きですが、今までと良い今回と良いシロの扱い悪いんじゃ無いか、もしかしてシロの事嫌いなのか、と思ってる人も居るかと思いますが、それは違います。
自分はシロの事は好きですよ。
でも、ああ言う純粋な娘を見るとこう、苛めたくなりませんか(邪笑)

次回はまた過去の事の話に戻ります。
武神流の設定を少々と、小竜姫とタマモの濡れ場をば出してきますんで、お楽しみに。

で、次なんですけど、実は二月十一日で自分がSS出すようになってから1周年になるんすよね。
つーわけで、なんかリクエストあったら言ってください、出来うる限り応じますんで(十八禁も可、ダーク系は苦手なんで勘弁をば)
〆切は十一日の二十三時五十九分としときます。
御気軽にどうぞ♪

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