脳内に浮かんでくる小竜姫と斉天大聖が言った言葉。そして先ほどまで身体が動いていたことを思い出す。横島は怒りに満ちた、怒りが全身を支配した。次の瞬間体が動かなくなり闇の中を落ちていた。
Legend of Devil Vol.6 Counter Attack その4
「うおぉおおぉおおぉぉぉぉ!!!」
ブチ!
雄叫びと共に横島の何かが切れた。
そのまま横島の意識は暗い闇に覆われた深い穴に落ちていく。横島忠夫個人としての意識は穴に落ちている間も薄れることなくハッキリとしている。しかし四肢が何かに捕まれているように動かすことが出来なくなっていた。
「な、なんだ!?」
横島の声は虚しく周りの深い闇へと吸い込まれていく。闇は深く、なんの光もない。しかし横島の体(意識体)だけはハッキリと見えている(横島視点)。次第に落ちるスピードが遅くなってくる。
突然闇の中から大きな黒い手が出現し横島を掴みとる。
「な、なんだこりゃ!!?」
体全体を大きな手1つに捕まれ身動きがとれない横島はそのまま闇の中へと引きずり込まれていく。腕、脚、腰の順に闇の壁に埋まっていく横島。胸までが闇の壁に埋まったところで闇の動きが止まった。
「く! 何処だ此処は?」
言葉は響くこともなく闇の中へと吸い込まれていく。と、次の瞬間目の前に光の点が現れ、次第に大きくなり巨大なスクリーンが横島の目の前に出現し、メドーサとデミアンそしてメドーサによって宙吊りにされたタマモが映し出された。
「なっ!!?」
横島は驚愕した。それもその筈である、先ほどまで自分が目にしていた景色がそのまま目の前のスクリーンに現れたのだから。次の瞬間スクリーンに変化が起こった。メドーサとデミアンがスクリーンに近づいてきた。いや、スクリーンが2人に近づいていったと言う方が正しい。
スクリーンが近づいたことで僅かに反応するメドーサとデミアン。しかしやけに反応が遅いように感じる。まるでメドーサ達のところだけスローモーションになっているようだ。そしてスクリーンがメドーサとデミアンの2人の間を通り過ぎるときスクリーンの端にあるモノが映った。
「お、俺の手?」
それは横島の手であった。すれ違いざまにデミアンの左胸に触れ霊空波を放つ横島の手。そしてすれ違い、スクリーンが反転しまたメドーサとデミアンを映し出す。ゆっくりとスローモーションのように振り返る2人。
ボン!
『な、なに!!?』
『そんな莫迦な!!?』
デミアンの左上半身が消滅し驚きの声を上げるメドーサとデミアンの2人。スクリーンから流れる音声はステレオだ。今までテレビはモノラルしか持っていなかった横島は多少の違和感を感じた。
『く! クソ!』
スクリーンがデミアンに近づいていくと体を変形させて襲いかかってくる。しかしその攻撃はもの凄く遅く感じらた。瞬間スクリーンがデミアンを至近距離で映し出すとまた横島の手が映し出され大出力の霊空波が放たれた。
『ぐああぁぁぁああぁぁぁぁ!!!』
凄まじい断末魔の叫びと共にデミアンの体は霊空波と対消滅を起こし消え去った。
「どうなってるんだ!? なんで俺が動けないのに俺が戦ってんだよ!? ・・・・・・・・・ま、まさか!」
「怒りで精神を乱してはいけません! 状態を悪化させるだけです!」
「よいか? 御主らが知っているように、魔族の本質は殺戮と破壊じゃ。 怒りは魔族の意識を覚醒する働きがある。 どんなときでも平静を保ち動じない精神を磨き上げろ」
脳内に浮かんでくる小竜姫と斉天大聖が言った言葉。そして先ほどまで身体が動いていたことを思い出す。横島は怒りに満ちた、怒りが全身を支配した。次の瞬間体が動かなくなり闇の中を落ちていた。
魔族化に伴って現れる魔族の意識の活性化、そのことが横島の頭をよぎる。しかしそうであれば全てに合点がいく。体を動かすことのできない事、目の前のスクリーンで行われている惨劇全てに。
「負けちまったのか俺は・・・・・・・・・ルシオラ、ごめん」
横島の頬を一筋の涙が流れる。頬を流れ顎から落ちた涙は深い闇の中を音もなく落ちていった。
続く
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