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「心眼は眠らない その32(GS)」

hanlucky (2005-01-29 22:05/2005-01-30 01:53)
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ウォォォォォォォォッ

外では一万を超える軍勢が自分たちを殺そうと殺気立っていた。

「信長様!!光秀様が、光秀様がご謀反!!」
「・・・是非も無し。」

信長の付き人である森蘭丸は信長に光秀の謀反を伝えるが信長は慌てた気配もなく
酒を飲み続ける。蘭丸はそんな信長に逃げるように進めるが、

「お蘭よ、近こうよれ。」
「はっ!!」

主君である信長の言葉は絶対と信長の傍に近寄る蘭丸。この蘭丸、一見美少女にしか
みえない容姿と声だが立派な男である(ちなみに年齢は横島と同じ)。その容姿は十分
横島としては合格ラインに突破している。そんな蘭丸を信長は自分の傍に来させ、

ザシュッ

がっ!?・・・なっ何を?」
「お蘭よ、この信長のため、その命存分に使え!!」

見るものが見れば一目で妖刀の一種だとわかるもので蘭丸の腹を突き刺す信長。
蘭丸は刺された痛み以上に自分の体に起こり始めて異変に悲鳴を上げる。

「ぐっぐぁ、ぐ・ぐ・・ぐぐ」
「光秀よ、うぬごときが我が覇道――ー」


剣を抜き取り鞘に収める信長。
その後、外を見つめると夜だというのに何処からも灯りが見える。
余程の軍勢のようであった。そこまで信長の首が欲しいらしい。


「―――止められると思うか。」


――心眼は眠らない その32――


シュンッ

「っと、やっと帰って来れたわね。」

美神たちの目の前に鬼門が佇んでいた。突然現れた美神に驚く右の門、左の門。
そんな事はお構い無しに美神は小竜姫を呼び寄せる。

「何か知らんが、ちょっと待っておれ。」

右の門が小竜姫を呼び寄せ始めてしばらくすると小竜姫と何故か猿神まで出てきた。
特に猿神はいつもの冷静状態ではない。

「美神さん?そちらの方―――」
「悠闇!!」

大声で悠闇の名前を叫ぶ猿神。そのまま歩いていき悠闇の目の前で立ち止まる。

「何故じゃ!?何故封印がここまで解けかけているのだ!?」
「落ち着け、斉天大聖。わけは中で話す。」

興奮気味の猿神を落ち着かせ一同は中に入っていく。この二人のやり取りを見ていた
美神とメフィストは猿神と悠闇が知り合いであることに驚き、小竜姫は、

(・・・もしかしてとんでもない事してしまったんじゃ・・・)

罪人である悠闇を解き放った片棒を担いだ形になっているので内心ではかなりテンパッ
ていた。頭を抱えながら美神たちの後ろをついていく。メフィストについては流石に
神さまという事もあるので驚くに値しなかったようである。メフィストとしては注目
されなくてよかったのだが何だかな〜といった感じであった。


一同はとりあえず皆が座れるところに移動する。小竜姫は内心ではパニック状態であっ
たが皆に茶を配る。

「・・・ワケをきかせてもらおうぞ。」
「相変わらずせっかちな爺さんだな。」
「!!!・・・ワシをまだ爺さんと呼んでくれるのか?」

昔は悠闇の父を通じて様々な事を教わったものである。悠闇からすれば自分の祖父、
猿神からすれば悠闇は孫といっても過言ではなかった。だからこそ何一つ自分に相談
せず封印刑を受けた猿神は悠闇を許せなかったのだ。

悠闇と美神は平安京で起こった出来事について語り始める。道真のことやアシュタロス
の事、そして横島が何処かに時間移動した事。

「横島さんが!?道理でいないと思ったら・・・」

横島が居なかった事には気付いていたが悠闇の存在によって横島の事を尋ねる余裕が
なかった小竜姫。いくら猿神でもその状況では横島が何処に飛んだか流石に分かるわけ
もなかったが方法がないわけではなかった。

「・・・悠闇よ、今回の出来事で天界の上層部にはおぬしの復活が知れ渡った事は間違
 いなかろう。」
「そのような事わかっている。それが今何に関係しているのだ。」

焦らす猿神に悠闇もイライラが募る。猿神は溜息を吐きながら、

「いや、何でもない。(ただワシはあの小僧よりお前を取るというだけだ。)」

猿神は重い腰を上げて何処かに行こうとする。悠闇が何処に行くのか尋ねると、

「ワシじゃ小僧が何処にいったのかわからん。天界に行きボダナートの管理人に
 会ってくるとしよう。」

ボダナートとは別名”全てを見渡す目”と呼ばれ人間界なら時空を越えて特定の人物
を探索できる事が可能な建物であった。以前起きたフェンリルの出来事もここで記録
されていた。言わばヒャクメの遠視をより強化したモノと考えられる。もちろん
ボダナートの能力を超える強力な結界が張られている場所は観察する事は不可能で当然
そうなると魔界の上級魔族の棲家は大抵覗く事はできない。

ちなみに人間界にもネパールにチベット仏教の最大で最古の寺院の事をボダナートと
呼ばれているが、この寺院が天界のものに似ているのは参考に作られたからなのかも
しれない。


シュンッ


猿神はその場でテレポートをして天界に移動する。美神たちはその間することがない
ので悠闇と横島の関係について追求するがそれをうまくかわす悠闇。まぁ封印が解除
されたばかりなので何もないに決まっているのだが。その後は小竜姫に神通力を分けて
もらいとりあえず消滅の危機は去ったがやはり高島の体と違いこのままではいずれ式神
の方が朽ちていく恐れがあるようであった。


ビュンッ

猿神がテレポートで転移した先は神聖な空気が漂う宮殿であった。その一室に入ると、
中には大勢の神々、そして中には主神クラスの神もいた。その中で空いている席に座る
猿神。その後どうやら時間が来たのか司会役の神が会議を進行させる。

「それでは斉天大聖、竜神王、説明してもらいましょう。何故先代黒竜将が現在妙神山
 にているのかを。」

どうやら議題の内容は悠闇のことの様で悠闇が妙神山に現れた瞬間にボダナートに発見
され、今回の議会の開催が決定されたらしい。そして竜神王もやはり息子の天龍がした
事に気付いていたらしい。

まずは竜神王が宝物庫から悠闇の精神体が持ち出せれた経緯を話す。本来なら厳重に
管理されていた宝物庫であったが相手が次期竜神王、何より天界最強の結界破りを
持っていたことが悠闇を封じていた結界すら破壊できたのであった。
その後小竜姫を通じて横島のサポート役として心眼として過ごす悠闇。その詳細は
ボダナートを使用して過去の映像が流れ始める。

「・・・なるほど、しかしこれでは先代黒竜将が竜神の姿を、まぁ式神を媒体にして
 いるようですが納得できません。第一封印が完全に解除されたわけではなくもしろ
 これは一時的に弱まっていると解釈できるようですが?」

流石は神というか、映像を見ただけで現在の悠闇の状態を見極める。悠闇はあくまでも
一時的に《封》《印》《解》《除》で擬似的に封印を解除したに過ぎなかった。そのた
め神通力や横島の霊力は正に人間にとっての空気代わりとでも言える状態になっていた。

猿神は先ほど美神と悠闇に聞いた平安京で出来事を伝える。

「アシュタロスだと!?」
「また魔族か・・・」
「やれやれ・・・」

アシュタロスの事が出てくると途端に部屋は騒がしくなる。やはりその名は天界でも
かなり名が通っているようであった。しかし今は悠闇の処置をどうするかであって
アシュタロスのことは後回しにされた。

「やはり先代のアレだけは野放しにするわけにはいかんだろう?再封印を施す必要が
 あるのではないか?」

誰かの一言で辺りの空気は再封印を施すの一色であった。しかし猿神は、

「もったいないの〜。先代黒竜将を使えば高確立でアシュタロスを滅ぼす事ができる
 というのに・・・」
「・・・どういうことでしょうか、斉天大聖?」

猿神はうまく自分のペースに乗せてから自分が考えた策について語る。そして猿神の
言葉に一同は大いに納得する。

「なるほど、確かにそれならば成功する可能性は高いようです。失敗したところで私
 たちに何ら危険はないですし、いいでしょう。先代黒竜将の処遇については斉天大聖
 に一任します。」
「では、条件である横島忠夫の居場所を聞かせて欲しいのだが。」
「いいでしょう・・・わかっていると思いますが、いざとなればその少年は―――」

こうして猿神は横島が現在いる時代を聞き出すことに成功する。この後、アシュタロス
対策の会議が始められるが猿神は後で結果を教えてもらうことにして妙神山に戻ろうと
する。だがその前に、

「すまなかったな、斉天大聖よ。」
「お前が気にする必要なかろう、竜神王。わしが勝手にやっただけじゃ。」

竜神王として悠闇の封印刑は納得できたものではなかった。しかしそうしなければ
ならない立場でもあったので結局は執行したのであったが。そのため今回の天龍が
行った行為については全く咎めなかったのである。猿神は美神たちを待たせている
こともあるので積もる話は今度ということでテレポートを開始する。

シュンッ

(悠闇か・・・我らが同胞に祝福あれ。)

残された竜神王はそう思わずにはいられなかった。


(ちくしょう、なんか納得いかねー。)

横島は光秀と別れて大分経つ。その間横島はわけもわからず苛立っていた。
いや、違う。苛立つ理由はわかっている。このまま行っても歴史通りに進むなら
光秀は信長を倒すだろう。

しかしその後は?

秀吉に追いやられ最後は落ち武者狩りにやられ絶命する。光秀自信、自分の命運を悟っ
ていた節があった。つまりこの後どうなるか分かっていたのに、ただ世のために魔族に
信長に天下を取らすわけにはいかないという思いで自ら汚名を受けようとしているのだ。

(あ〜〜〜ムシャクシャする!!)

まだ出会って二週間ほどしか経っていないが光秀がどのような人物かよくわかった。


数日前―――


「横島よ、未来とはどうようになっているのだ?」
「てめえ、全然信じていないくせに言うじゃねえか。」

先ほどまで霊波刀の修行を行っていたのだが現在は休憩中で、光秀は冗談半分で横島の
居た所がどのようなところだったのか聞いてくる。

「何、私の行いによってこの先、世は平和になるのか知りたくなっただけだ。」
「なんじゃそら?」

冗談半分でありながらその言葉には何故か重みがあった。光秀は未だに横島が未来から
来たというのを本当に信じているわけではなかったが、横島の口から聞きたかったのだ
ろう。

「・・・少なくても平和だったと思うぞ。」
「そうか・・・よかった。私はその言葉が聞きたかったのだ。ならば私は正しいと思え
 る事が、自分を信念を貫けることが出来る!!・・・感謝するぞ、横島。」

”平和”という言葉を・・・

しんみりとした雰囲気になりかけたところで霊波刀の修行を再開する。

「それにしても私は今まで幾人も退魔師を見てきたが横島ほど優れた人物はいなかった
 ぞ。お前の師匠も余程優れているのであろうな。」
「俺の師匠か?つーことだとやっぱ心眼だよな。」

横島は心眼に今まで教わってきた事を思い出す。思い返せば始めの方は基礎ばかりやら
されていたような気がする。

「心眼とは奇怪な、心の目というわけか。」

光秀が何か言っている時、横島は平安時代の事を思い出していた。アシュタロスと相打ち
を考えていた心眼。元が竜神と聞いていたがあんな姿とは想像もしていなかった。って
いうより女だったという事に騙された。

(ちきしょうーー。今度会ったらぜってー押し倒す。)

妙の誓いを立てる横島であった。

「それにしても残念だ、我が娘は全員すで嫁がせているからな。まだいたならぜひ横島
 にと思ったのだが。」
ぶーーーー!?・・・そういえばお前って今年で何歳だ?」

いきなり自分の娘を上げたかったという発言で飲んでいた水を噴出す横島。光秀は外見
だけ見れば30そこそこに見えるのだが、

「54だが、それがどうかしたのか?」
「若すぎるわーーーー!!!」

見た目と全然違う容姿や運動力にツッコまずにはいられない横島。まぁそこらへんは
霊力を秘めた者の特権という所なのかもしれない。

「・・・もう少し早くお前と出会い、お前を私の部下にする事ができればこのような事
 にならなかっただろうな。」
「いやそれなら、やっぱ俺が君主だろ?」
ふっ、はっはっはーーーそれはそれでおもしろいかもな。その時はぜひともお手柔らかにして欲しいものだ。」

気兼ねなく会話を楽しめるという事を光秀はいつの間にか忘れていた。横島の裏のない
性格に妙に自分を高ぶらせる。従って会話が弾むのも当然であろう。そして横島が自分
の君主であったなら・・・思わずその事を想像してしまう。

「私にはお前のような存在が必要だったという事にようやく気付けたものだ。」
「よくそんな恥ずかしいこと面と向かって言えるな。」

そう言いながらも横島も自分をここまで認めてくれる光秀に友情というものが浮かんで
いた。このまま行けば光秀がどうなるか横島は知っている。だが止めていいものかわか
らない。もしここで信長を倒さなければ魔族に世を支配されるのだから。

(なんか妙案がないもんか?)

残された時間は少なかった・・・


―――回想終了


横島は思う。これまで自分を必要としてくれた人はいたであろうかと。少なくてもあそこまで好意的に示してくれた相手はいなかった。そのような人物が今、命を捨てようとする。そう、このままでは光秀は死ぬ。それは逃れられない運命なのか?

それは違う。何故なら、

(ンな事納得できないに決まってるだろうが!!)


ここに不確定要素がいるのだから。


「感謝しろよ、野郎を助けるなんて滅多にないんやからな!!」


横島出陣。


「皆の者!!決して信長を逃すな!!」

光秀は白馬に乗りながら全体に指揮を執る。まずは本能寺を囲み一人たりとも逃がす事
を阻止する。包囲網が完成した後は自ら信長の元に向かい始める。信長を倒せるのは
霊波刀を覚えている自分しかいないのだから。

「光秀様!!」
「どうした、何があった!?」

前方から尖兵が逃げ帰ってくる。もしや信長が自ら出てきたのかと思ったが、あの信長
がそう簡単に動くわけがないと尖兵の言葉を待つ。

「斥候部隊、全滅しました。それも・・・たった一人相手に!!」
「何だと!?」

今、信長の元にそこまで実力を持った武将はいなかったはず。いきなり計算が崩れは
じめ動揺するが、それを周りに知らせるわけにはいかない。光秀は相手の特徴を聞き
出すが、

「敵は森、森蘭丸です!!」
「蘭丸だと!?」

以外な人物の登場で最早驚愕を隠せない光秀。確かに蘭丸は信長の付き人になるほどの
優秀な剣士であったが自分の選りすぐりの斥候部隊を全滅させれるほどになっていたと
は。光秀は蘭丸は自分が倒すと部下にいい残して馬を走らせる。

「蘭丸、私の邪魔をするというのなら・・・」

光秀は馬を走らせ本能寺に向かう。途中で矢の嵐に巻き込まれそうになったが、その
程度でやられる自分ではない。もちろん返り討ちにして戦場を横断する。

「見えた!!蘭丸!!」
「・・・やはり来ましたか、光秀様。」

ギィィィィン

ここは戦場、会話をするためにはまず相手の戦力を奪っておく必要がある。馬から飛び降
りてすかさず光秀は蘭丸にみね打ちを繰り出すが、蘭丸はうまく刀で防御する。

「光秀様?この期に及んでみね打ちとは甘い―――」


ザンッ


「―――ですよ!!」
「くっ!?(いつの間にここまで!?)」

その早すぎる一太刀を何とか回避する光秀。今の攻撃を刀の腹で受ければ折られていた
だろう。それほどまでの一撃に光秀は戦慄する。

「蘭丸、退け!!私の目的は信長の首のみ!!」
「自分の主君が襲われそうになっているのに退く馬鹿がいますか?」

光秀は何度も説得を試みるが蘭丸は当然そのような戯言を聞くつもりはなく光秀に幾度
となく斬りかかる。

「・・・そうか、ならば蘭丸。私がお前に引導を渡してやろう!!」
「本気になるのが遅いですよ、光秀様。」

説得は無理と判断した光秀は今までの劣勢が嘘の様に蘭丸を押し返す。途端に蘭丸の顔
からは余裕の笑みが消え焦りが生じる。

光秀は蘭丸にはない経験を持って巧みに追い詰める。
右に左にと揺さぶりをかけていき徐々にであるが蘭丸の構えが甘くなる。
その動きは54という年を感じさせず、蘭丸を超える動きを続けていく。
蘭丸からすれば予想外であっただろう。光秀の強さは知っていたが流石に年というもの
があるのだ。しかし光秀は息すら乱れず蘭丸を追い詰めていくのだ。これは正に経験
の賜物という一言で終わらせるわけにはいかない。生まれ持った才能を余すことなく
鍛え続け今、光秀はその集大成をこの本能寺で蘭丸にそして信長に叩きつけようとして
いたのだ。

(くっ、しまった!?)

蘭丸は光秀の猛攻に耐え切れず、刀を落としてしまう。光秀はもちろんその隙を逃がさ
ず一気に決めようとする。

ザシュッ

「ぐはっ!?」
「さらばだ、蘭丸・・・」

光秀の一太刀は蘭丸の左肩から右の腰あたりまで一気に斬り付けた。蘭丸はそのまま
崩れ落ちる。光秀は崩れ落ちた蘭丸をしばらく見つめた後、信長を探そうと背を向けて
本能寺の中に入ろうとした時、

「!!!」

ザシュッ

「だから甘いといったのです、光秀様。」
「がはっ何故?何故・・今の一太刀・・を受けて?」

腹を見れば蘭丸の刀が突き刺さっていた。どうやら刀を投げつけられたらしい。光秀は
急いで蘭丸の方を見ると蘭丸からは禍々しい瘴気を解き放っていた。横島との修行によっ
て今の光秀にはその蘭丸が纏っている瘴気を見ることが出来たのだ。蘭丸の体を見てみ
れば人として明らかにおかしい部分が見える。その筆頭が短丸の爪であろう。小刀ほど
までに伸びた爪は人を殺傷するには十分すぎる凶器を化していた。

「実は先ほど、信長様から力を頂きまして・・・魔族というものはいいですね。これほ
 どまでに愉快な気分は初めてです。」
「そうか・・・やはり信長か・・・・信長!!!

傷口に響くも叫ばずにはいられなかった。幸い腹の傷は致命傷ではない。すぐに刺さっ
ている刀を抜いて蘭丸に対して構えを取る。血が足りなくなる前に蘭丸を、そして全て
の元凶である信長を倒さなければならなかった。

「光秀様も強情ですね、僕が信長様に頼めば一緒に魔族になれるかもしれませんよ。」
「黙れ、最早貴様は蘭丸ではない!!ならば私の手で蘭丸を解き放とう!!」

小さいころから知り合いであった蘭丸は自分にとって弟分であった。その蘭丸を魔族
に堕とした信長を許すわけにはいかない。そしてなによりこのままでは蘭丸が哀れで
しかなかった。

「そうですか、じゃあ死んでください。」

今や完全に本性を表した蘭丸の動きに腹に穴を開けられた光秀が付いていける訳もなく
そのまま中庭まで吹き飛ばされる。それでも光秀はなんとか受身を取る事に成功し再び
構えを取るが、蘭丸の凶爪が襲い掛かってくる。

(まだだ、チャンスは一度。それを待つのだ。)

この絶体絶命のピンチでも光秀の目が死んでいないのはまだ一つだけ打開策があるから
であった。蘭丸が、信長が全く想定外である術を今の自分は持っているのだ。

「僕との戦いの最中に考え事とは流石光秀様です。」

蘭丸は挑発しながら爪を使用して光秀を切り裂こうとするが光秀はそれを刀で防ぐ。

カァァァァン

「ちっ、まずいか!?」

しかし今度は光秀の刀が手元から弾かれ、蘭丸は狂喜して光秀に止めを刺そうとするが、

「これで終わりです!!」
「・・・そうだな、蘭丸。」


ザシュッ


「お前がな。」
「・・・え?」

光秀は蘭丸の爪を肩で受け止めながら霊波刀を放出し、刀がないので完全に油断していた
蘭丸の腹を貫いた。そこは奇しくも信長に貫かれた場所でちょうど魔族の核の部分でも
あった。魔族の核を壊された蘭丸は力を急速に失いそのまま崩れ落ちた。

「蘭丸・・・安らかに眠れ。」

光秀は今度こそ終わったかと蘭丸を確認した後、今度こそ信長がいると思われる間に痛み
を堪えて向かう。

(信長、これ以上の悪行。この光秀が許さん!!)


「はぁ、はぁ、くそ。何だよ、何なんだよ!?」

亀山城から馬を走らせ横島はようやく本能寺周辺までたどり着く事が出来た。
ついて早々横島はある感情が頭をかすめた。


       


辺りは正にこの一文字が充満していた。今まで人間の死体を見なかったわけではなか
ったが、人と人の殺し合いを見るなんて初めてであった。全ての人間が狂気にかられ
同胞を殺していく。血が、嘆きの声が、怨念がこの戦場には全ての負の感情が内包さ
れていた。そしてその全ては今宵、一人の魔王の誕生を祝うのであろう。

うっ・・・くそっやっぱ来るんじゃなかった。」

目も前の凄惨な光景に思わず吐きそうになる。一人の侍は首から上が存在せず、また
一人の侍は数本の刀を突き刺され絶命していた。ここが戦場であるという事は改めて
自覚した横島。霊視を開始してさっさと光秀を探そうとしていると、辺りの異変に気
付く。

「これは?・・・げっ、ゾンビかよ!?」

死人は怨念、邪念に取り付かれ辺りを彷徨い始める。複数のゾンビたちが横島に襲い掛
かってくるが動きも遅く、攻撃も直線的。横島は少しは慣れた馬術を披露して回避する。
そのまま霊視を続け、最も霊的におかしなポイントを見つける。

「いた・・・あの霊波、やっぱりあのアシュタロスっていう魔族に似てやがる。」

横島は現在、信長と光秀がいる場所を見つめながらそう呟く。一度信長を安土城で霊視
した時感じた違和感は信長の纏った霊波にアシュタロスの力を感じ取っていたのだ。

「はぁ〜、まためんどくさい事に巻き込まれたな〜ってっつ!?」

横島の額から血が滲み出てくる。そこは前世の高島がアシュタロスに打ち抜かれた場所
であった。アシュタロスが出てくる雰囲気はないが何か裏でしたことは間違いないであ
ろう。この額からの血はまるで殺された高島の思いがアシュタロスの策を止めなければ
という思いが感じられた。横島は《魂》の文珠を睨みつけて人の人生に介入するなと怒る。

「・・・お前に言われなくても助けにいくっての。」

再び馬を走らせ本能寺の中央まで一気に駆け抜けようとする。しかしそう簡単に進める
わけもなく途中でゾンビの大群に襲われる。辺りを見渡すと侍たちはうまく逃げたか
そのままゾンビにさせられたのかで一人もいなかった。横島は相手にしている暇もない
ので馬から降りると同時に足に霊波を纏い屋根にジャンプする。ゾンビたちはそんな横島
についていけるわけもなく別の標的を探し始め、横島は再び光秀がいる場所に向かった。

「よし、やっと見えてきた!!」

屋根の上を走り続けようやく本能寺にたどり着く。横島は下にゾンビがいないか確認し
てから飛び降りて門を潜る。

「結構近いな、っておお〜戦場に咲く一輪の花発見!!」

中庭の方で倒れている人間を発見する。霊視ではまだ死んでいない事を確認しているの
で横島はすかさず駆け寄り一番重傷と思われる腹にヒーリングを開始する。

「お嬢さん、大丈夫ですか?(う〜ん、胸が全然ないのは残念だがこの中性的な容姿が
 なんとも・・・)」
「う・・う〜ん。」

横島が抱きかかえている少女?がヒーリングの効果もあってか目覚めようとする。横島
はドサクサに紛れてセクハラを試みようとしたが、

(ぐっ!?なんでや、体が拒否反応を!?)

どうやら横島センサーが働いたらしくギリギリで踏みとどまる。横島が自分に起きた
異変に悩んでいるとその少女?は完全に目を覚ます。

「あっあなたは?」
「お目覚めですか、僕、横島忠夫。あなたのお名前は?」
「えっはっはい、森蘭丸と言います。」

蘭丸とは変わった名前だな〜と思う横島。歴史に疎い横島は蘭丸の事を知らないよう
であった。そんな事よりも横島は蘭丸に染み付いた魔力の残骸を気にしていた。その事
を尋ねると蘭丸は突然慌て始め、

「そうだ、僕は信長様に魔族にされて・・・はっ!!、大変だ!!早く光秀様にお知
 らせしなければこのままでは光秀様が殺される!!」

蘭丸が人間として未だに生きているのは魔族化して時間が短かった、光秀に魔族の核
のみを壊されていたため人間を構成の部分がほとんど無事であったことが上げられる
であろう。最初光秀に止めを刺されてた時は魔族の部分が死んだのみで人間として部分
は仮死状態を続けていたのだ。そのため光秀は蘭丸が生きている事に気付けず信長の元
に向かってのだ。

「なっ!!光秀は今どうなってるんだ!?」

横島としては折角ここまで来て光秀を助けられないなんて笑い話にもならない。すぐに
光秀がどのような状況か蘭丸に尋ねる。横島は蘭丸に光秀の居場所を聞いた後、

「一回しか使えないけど、いざとなったらこれに念を籠めてみて!!」

勘違い王横島は文珠を一つ蘭丸に渡してから光秀と信長の場所に向かう。もし蘭丸の正体
に気付いていたなら決して渡さなかっただろう。


「・・・来たか。」
「信長ーーーー!!!」

本能寺にて相対する両雄、
一人は今、正に下克上を起こそうとする知将、明智光秀。
一人は人の身でありながら魔王と名乗る乱世の英雄、織田信長。

信長は漆黒の鎧に身を包み光秀を余裕の笑みを浮かべ見下す。
対する光秀はすでに全身が悲鳴を上げているがそれでも思いは一つ。信長を倒すという
思いは砕けていない。

(最初の一太刀に全てをかける。)

光秀は蘭丸を倒したときのようにわざと信長に刀を弾かれて向こうが止めを刺しに来た
時を狙う。

「第六天魔王信長の覇道、止められるというのなら―――止めて見せい!!!」
「我が名は明智光秀、参ろうぞ!!!」

今、両雄はここに激突する。


――心眼は眠らない その32・完――


あとがき

劇場版を期待された方はごめんなさい。実はコミックとアニメの再放送しか見たこと
ないんでしたくてもできなかったんですよね。はじめはMr.ジパングとクロスしよ
うかなと思ったんですが、それも何だしと思い結局オリジナルになってしまいました。
だから劇場版とちがうじゃねえかというツッコミは勘弁してください。

あと史実では蘭丸と光秀ってあんま関係ないらしいんですが、この蘭丸と光秀は
戦○無双を参考にしているのでご了承ください。

ボダナートについてはですが、検索すればどんなのか出てくるので興味がある人は検索してみてください。もちろんですが時空を超えて見れるというのは
オリジナルの解釈ですので・・・

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