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▽レス始

「レギュラ―・イレギュラ―4(GS)」

純吉 (2005-01-28 18:10)
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 どこかで『俺』は戦っていた。
 これが夢であることはすぐに気づいた。
 だがそれでも『俺』は抜け出すことができず『敵』を倒していった。
 やがて『敵』が一人もいなくなった。
 目の前に細い道があった。
 その道の最後に『敵』が一人残っていた。
 その『敵』を倒したあと、『俺』はそいつの顔を見た。


 知らねえぞ、こんなやつ。


「山田・さん、いませんか?」

 ドンドンと部屋のドアをノックする音で目が覚めた。俺が住んでいるのは幸福荘というおばあちゃんが管理人をしている古いアパート。はっきりいって俺の時給ではどこにも住める場所はないが、以前やっていた仕事での金が残っているので結構余裕はあるのだ。

「何のよう、マリア?」

 俺を呼んだのはマリアというアンドロイドだ。最初見たときは人間だとしか思えなかったぐらいに精巧にできている。

「ドクター・カオスがお呼びです」

「あのじいさん、またなんか買ってくれとか言うんじゃないだろうな」

 ドクター・カオスというのはマリアを作った人物である。一部、というかGS界で有名な錬金術師であり、またの名をヨーロッパの魔王ともいう。しかし、同じアパートに住んでいる俺にとってはただのボケジジイだ。


「ジジイ、来てやったぞ」

「おうおうおう、よく来たな。で、ものは相談なんじゃが……」

「買わんぞ」

「……ぬう、そう言うな」

「買わんったら買わん! この前買ったやつ、変な呪いかかってて苦労したんだぞ!!」

 このジジイ、日本に越してきてからはとにかく金運が悪くて俺に得体の知れんものを売りつけてきやがるのだ。金が欲しいならまじめに働きやがれ。

「まあまあ、せめて品物を見てからでも遅くはあるまい」

「仕方ないな、んじゃあ見せてみろよ」

「おう、これじゃ」

 と、カオスが出したのは大量の本だった。
 やけに古い。

「実はの、チリ紙交換用にまとめてあったんじゃが、もしかしたら掘り出し物があるかもしれんのでな。まあ読んでみてくれ」

「ほー」

 千年を生きた天才も、こうなるとみじめだなあ。哀愁を感じてしまうよ。

 俺は適当に一冊の本を取り出し、そして硬直した。

「お前、すげえぞこれ……」


「―それがマリアの設計図だったわけ? よくでてきたわねー」

 ところ変わって美神除霊事務所。本日は珍しくカオス、マリア、厄珍堂の厄珍と三人の客が来ている。なんの用事かは美神さんの言ったとおり、俺がカオスの部屋で見つけた設計図についてである。
 カオスと厄珍が熱心にそれのすばらしさを説いている。どうも二人はマリアの妹を作ろうとしているみたいだが、その資金が全然足りなくて次第に投資してくれという話になってきた。だが、
「担保もなしに貸せるわけないでしょ」

 の一言でお帰りと相成った。


「なーんか疲れちゃったわ。山田君、お茶入れて」

「はーい。て、そういや今日おキヌちゃん見ませんけど、どうしたんですか?」

 ポットのお湯で紅茶を入れながら尋ねた。

「んー、今日はおキヌちゃんのお願いでお休みなのよ」

「お願いって、なんです?」

「おキヌちゃんはお友達の手伝いって言ってたけど、実はね………」

 美神さんが俺の耳に口を寄せて静かにささやいた。

 どーしよ、顔が自然とニヤついてくる。いや、仕方ないってこれは。
 美神さんも顔をニヤーッとさせている。

「それほんとなんっすか? だったら覗きにいきません?」

「だめよ、おキヌちゃんに怒られるでしょ。だいたい、今日の午後はおっきな仕事が入ってんだから」

 あー、そりゃそうか。
 でもやっぱり見にいきてえわ、ちくしょう。


「美神、美神、あけてくれ!」

 仕事までお茶を飲んだりしてごろごろしているとまたカオスのおっさんが訪ねてきた。

「なんのようよ、担保のあてでも見つかったの?」

 うっとうしいのよ、早く帰りなさいよ、こっちは仕事控えてんだからね、言葉にするとこんなイライラ感が言葉に混じっている。もうちょい愛想良くしたらいいのに。カオスもカオスでこの強欲女をイラつかせんといてくれ。ストレスの解消法が俺をなぐ――!

「…ローッすか」

 ……痛い。


「ここがそうね、凶悪なやつだから気をつけていくわよ二人とも」

「あいよ」

「イエス。ミス・美神」


 どうしてマリアがというと、カオスの担保だからである。カオスも最初はマリアが自分が担保になるといったときは乗り気ではなかったらしいが妹が欲しいとマリア自身が頼んだのでしぶしぶ了承したらしい。美神さんはマリアの戦闘力を知っているのであっさりOKした。

 俺たちが来たのはビルの谷間に佇む古い屋敷。住む人も居らず荒れ放題、といった典型的な幽霊屋敷である。重機が破壊されているところからかなりの力を持つことがわかる。
 俺はとりあえず糸を出してあたりを調べてみた。

「美神さん、この周囲にはそれらしいのはいません。マリアはどうだ?」

「……前方三十メートルに霊体反応」

その言葉に美神さんは神通棍をだし、俺もシメサバを抜いた。
 こっちの気配に気づいたか、マリアの言った場所から犬の幽霊が出てくる。
 いくら幽霊になっても獣は獣、こちらを睨んできても負けずに睨み返せば襲い掛かってはこないはずなのだが。

『ガウッ!!』

 犬は突然巨大化して攻撃してきた。

「走って!!」

 美神さんが叫ぶのとほぼ同時に俺たちはその場から飛びのいた。 

「ちょっと、目そらしてどうすんのよ!!」

「ち、ちゃんと睨み返しましたよ。それよりも建物の中に避難しないと」

「く、それしかないみたいね」

 犬のほうは最初の勢いで地面に顔を突っ込んでしまっているためそのぐらいの時間はあるはずだ。俺たちは急いで屋敷に走った。しかし……

『いかん、くるぞ!!』

シメサバの声に後ろを振り向くと大きな口を広げた犬が迫ってきていた。
 速すぎる! いつのまにここまできていたんだ。
 俺は一気に限界までの糸を出して絡みつかせようとした。しかし、犬が思いのほか速いため糸が触れる前に飛び掛ってきた。
 まずい!

「ロケット・突き押し!!」

「グッ!」

 間一髪、とっさにマリアが俺を突き飛ばしてくれたので噛みつきを避けることができた。脇腹が痛いがありがとマリア。とはいってもピンチは変わらない、犬はかわらず俺を標的にしている上にただ一人孤立してしまった。

『お主、なにか怨まれることでもしたのか』

 シメサバがそう聞いてきたが俺は無実。古い知り合いに亜流ムツ○ロウといわれたぐらい動物愛護には力を注いでいるのだ。
 しかし、理由はともかくこいつが俺に狙いを絞っているのは間違いない。何とか美神さんたちのほうへ向かわなければやられてしまう。
 俺は姿勢を低くしてシメサバを構えた。

 …………来る!

 俺はその瞬間に神経を集中させた。

「ハッ!」

 飛び掛ってくる瞬間、俺は懐に飛び込んですれ違いざまにハラを薙いでやった。 
 おし、

「マリア!」

 叫ぶ前にマリアは腕を飛ばしてきておいた。俺はその腕を掴みマリアに引っ張ってもらう。
 痛い痛い痛い!
 強靭な力で握られた腕、ずるずると引きずられていく足、骨がきしむ!


「これで建物の中は安全よ」

 俺が中に収納されたすぐあとに美神さんが結界札を貼った。俺と美神さんは、はーっと、大きなため息をついて床に座り込んだ。
 疲れたぞ。

「…美神さん、これからどうするんですか?」

「そうねえ、まずは山田君が糸であいつの動きをできるだけ封じ込めて。そしたらあたしは一番高い破魔札で攻撃するわ。マリアはあたしのサポートをお願い」

「イエス。ミス・美神」

「ま、任してくんさい」

 俺はできるだけ糸を細くしてゆっくりと絡み付けていく。
 俺の糸は細ければ千切れやすいという欠点があるにはあるが、そのぶんバレにくく、さらに長さにはほとんど制限がないためかなりの長さを巻きつかせれば、たぶん下級魔族の動きも止めることができると思う。
 俺はじっくりと、ワインの熟成を待つように絡みつかせていく。美神さんの準備もとうにできているようだ。
 あとすこしでこいつを封じ込められる、といったところで思わぬ横槍が入った。

「誰か来たみたい!」

 どっへー!
 内心こんな感じだ。だってよう、あともうちょいでなんの被害もなく無事に仕事が終わるというのに、ぐあーもう!

「あれ、社長だわ! 山田君、お願い!」

「お願いじゃねー!!」

 心からの叫びもむなしく囮として叩き出された。外道やでほんま。

「動くな!」

 体中に巻きつけた糸をピンと伸ばして動きを封じる。だがやはり、時間が足らなかったのでかなり暴れまわる。
 ……いや、暴れまわっているんじゃない!!

「美神さんこいつ―――」

「――ええ、少しずつ糸を緩めていってみて」

 俺は言われたとおりにゆっくりとそいつの束縛を解いていった。
 こいつが見つめている先は依頼主であるどっかの会社の社長さん。その眼にあるのは住処を奪うものへの憎しみではなく、懐かしいものと出会えた喜びだ。


「山田・さん、何故・わかりましたか?」

 仕事が終わり、ともにアパートに帰っている最中にマリアが訊いてきた。今日の仕事のことだろう。

 そうだな………

「お前はさ、世話とかしたことある?」

「ノー。マリア、いつもドクター・カオスと一緒でした」

「だったら、今度世話してみな。もしかしたら分かるかもな」

「今度・とはいつですか?」

「妹だよ、おまえの」

 そういったら、マリアは歩みを止めて何かに問いかけるようにつぶやいた。

「ノー。マリア分からない……」

「あー、簡単なことだよ。悪いことしたら叱ったり、善いことをしたらほめたりするだけでいいんだよ」

 俺は軽くそういってやった。マリアはまた歩き始めて隣に並んだ。


 そういや、マリアが姉ということになるとカオスは父親ということになるのか。えらく年食った親だ。んで、その二人と割と仲のいい俺はどうなるのかな? 兄、だったら面白いのだが。

「どうして・笑っているのですか?」

 マリアがそう尋ねてきた。気づかないうちに自然と笑みが浮かんでいたようだ。俺は空を見上げて言った。

「お星様がきれいだなーっておもったの」

 くっさい台詞だ。だけど、うそは言っていない。まばらだが空には星が浮かんでいたのだ。


 ひとつ今日の仕事で気になることがある。
 あの犬、間違いなく俺を狙っていた。


 あとがき

 マリア書きにくいです。

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