「う〜ん」
畳に敷かれている布団で寝ている横島。窓から漏れる光を浴び眩しさを感じ意識が覚醒しだす。
「ふぁ〜あ、もう朝か〜」
横島は目をこすりながら身体を起こした。すると“何か”違和感を感じた。
「ん、何だ?」
横島は違和感を感じる場所に目をやった。すると、何故か布団の中にもう一つの膨らみがあった。疑問に思った横島は布団をめくった。そこには・・・。
「きゅ〜ん♪」
気持ちよさそうに寝るタマモの姿があった。
「・・・・(汗)」
何も見なかったと心で思いながら布団を元に戻そうとする。しかしその手をいきなりタマモに掴まれた。横島は恐る恐るタマモの方を見ると
「責任取ってって・・・言ったよね♥」
タマモが笑顔を浮かべながら横島を布団の中に引き込んだ。そしてその後、部屋にはしばらく唾液を啜る音が響いていた。
「ふ〜、若いモンは元気があるな〜」
押入れで寝ていたきたろうはハァとため息をつきながら
(頑張れ・・・横島)
心で応援しながらまた眠りに入った。
エピソード九 風を纏う者
「ったく、俺のファーストキスどうしてくれんだよ」
タマモに腕を組まれながら横島はため息をついた。あの後布団の中でずっとタマモにディープキスをされっぱなしだったのだ。高校の級友が聞いたら死刑ものである。
「私・・・下手だった?」
目を潤ませながら横島を見るタマモ。それを聞いて横島は
「な!?・・・よくわかんねえけど、良かったと・・・思うぞ」
顔を赤くしながらそっぽを向いて答える。それを聞いて笑顔になるタマモ。
「イチャイチャすんのは構わねえが、どこに行くんだ?」
後ろから付いてきたきたろうが二人に尋ねた。
「俺の上司の美神さんの所。一応昨日の事を詳しく言わなければいけないし、アンタの事も説明しておいた方がいいしな」
「なるほど」
「あ、でも美神さんの前で言霊の事は言わない方がいいぞ」
「ん?なんでだ?」
きたろうが疑問の声を上げる。すると横島に変わってタマモが答える。
「美神は恐ろしい程の守銭奴なのよ。非合法な額で除霊してるし、なにより金の恨みは洒落になんないわ。利用出来そうなものは何でも利用するし」
タマモの言葉を聞いてゾッとするきたろう。そうしている内に事務所の前に着いた。横島たちが事務所のドアを開ける。するとそこには・・・。
「いやなのよっ!子供のキンキン声聞きたくない!!寝かしつけるのもご飯食べさせるのも遊んでやるのも全部イヤ!!ママーーーーーー!!早く迎えに来てよーーーーーーー!!」
なにやらヒステリックになっている美神の姿があった(笑)
「で、そいつは?」
ヒステリックから立ち直った美神が横島に尋ねる。
「こいつは昨日の依頼であるワニです。除霊しようとしたんですが何か気に入られてしまって俺の家に居候させる事にしました」
「鰐橋きたろうだ。よろしく頼むわ」
そう言って頭を下げるきたろう。
「別にそいつを除霊する気は無いけど、いいの横島君?タマモもいるんだしやりくり大変じゃない?」
「今の所は大丈夫だと思います」
「ならいいわ。あ、横島君。この娘を紹介しておくわ。おキヌちゃん」
「はい」
おキヌに連れられ一人の少女が出てきた。その姿は、まるで美神を小さくしたようだった。
「み、美神さん!?この娘は!?」
「その娘は過去の私よ。れーこって呼んであげて」
そう言われ横島はれーこの方を向くと
「こんにちは、れーこちゃん」
笑顔でそう言った。
≪ポッ≫
れーこは横島の笑顔を受け頬を赤くする。すると美神も同じく頬を赤く染める。
(な、何で私が顔を赤くしてんのよ!!・・・もしかしてれーこの状態が今の私と共鳴しているっていうの!?)
動揺しながら考え込む美神。
「い、いきなりで悪いけど横島君、今から出かけるわよ」
パニックになるのを抑えながらそう横島に言った。
「え?どこに行くんスか?」
「東都大よ。親父の研究室に行かなきゃならないから。それと、おキヌちゃんとタマモはここでれーこのお守をお願い。あときたろうだっけ?アンタもお守頼める?」
「任しといてくれ!!子供をあやすのは得意だ」
「じゃあお願いするわ。行くわよ横島君」
そう言って美神は横島を連れて事務所を出て行った。
「行っちゃいましたね」
残念そうな顔のおキヌ。しかしすぐに表情を切り替え笑顔でれーこと遊んでいた。
「子供って結構可愛いわね。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヨコシマの子供なら欲しいけど」
れーこにテールを掴まれながらタマモが呟いた。幸いおキヌには聞こえていなかった。もしここで聞かれていれば
「わ、私だって横島さんとの子供欲しいです!!」
もしくは
「横島さんの・・・バカーーーーーーーーーー!!」
という本音もしくは誤解を叫んでいたであろう。
「やれやれだぜ」
某オラオラをかます主人公のセリフを吐くきたろうであった。
「そうだったんですか。あのれーこちゃんは過去から来た美神さんのお母さんが連れてきたんですね」
「ええ、おそらくこの手紙に何かあるはずよ」
美神は横島に事情を説明しながら研究室から貰ってきた封筒を開けた。すると中からはボロボロになった封筒が入っており、その中には美神の母からの手紙が入っていた。
(ん?なんか周りの空気が変わった?)
横島は何かを感じ取っていた。そしてふと上にある一本の気を見た。すると
≪バサバサ≫
突如木が揺れだし上に何かが飛び出した。それは、
「ハーピー!!」
気配に気付いた美神の声とともに人面鳥ハーピーが姿を現した。
「死ね!!美神令子!!」
声と共にフェザーブレッドを放つハーピー。美神は避けきれず当た・・・らなかった。
「サイキックソーサー!!」
ソーサーを右手に展開しフェザーブレッドを防ぐ横島。それを見た美神も神通棍を取り出す。
「食らいなさい!!」
美神が神通棍を振り下ろすがハーピーは一気に上空に退避した。
「くそ!!これならどうだ!!」
そう言って横島は下腹部に手を当てるするとそれに作用するように銀色のベルトが現れ、全身を赤い炎が包み、炎の空牙へと変わった。
「ソーサーズブレード!!」
空牙はGCαのグリップである神通棍を引き抜き、ソーサーの霊力を流し込む。そしてそのままハーピー目掛けて斬りかかる。
≪バシュン・バシュン・バシュン≫
しかしハーピーの放つフェザーブレッドを切り払ったため近づけず、跳躍力の足りない空牙は地面に着地する。
「ち!!あんな遠くにいちゃ当てれない!!」
空牙が遠くに当てたいと願った瞬間
空牙の周りを風が覆い
ベルトの中心が緑に変わり
肩当ては右が黒、左が緑
そして全身に深緑の風を纏った
戦士空牙に変わった。
「な!?緑になったのか!?」
空牙は突然の変化に驚愕していた。すると
(なぁ、あの娘可愛くネー)
(今日センコーに説教くらっちまったよ)
(イライラする)
≪ブロロロロロ≫
≪ザワザワ≫
(チュンチュン)
(ニャ〜ン)
(オンドゥルルギッタンディスカーーーーーーーーー!?)
最後は無視して人の声、動物の声、騒音、風のざわめきなどの“音”が空牙の頭の中に流れ込んできた。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
空牙は頭を抱えながら膝をつく。美神が驚きの表情でその光景を見ていた。
「やば・・い。・・・こうなったら」
空牙は纏っていた風を炎に切り替えた。その瞬間先ほどまで聞こえていた音はピタリと止んだ。
「な、なんかヤバそうじゃん。ここは引いて子供の方を殺るじゃん」
そう言ってハーピーは飛び去った。それを確認した空牙は変身を解いた。
「大丈夫横島君!?」
横島に駆け寄る美神。横島は呼吸を整えながら
「行きましょう美神さん。このままじゃれーこちゃんが危ない」
美神に向けてハッキリ言った。横島を心配しながらも肯きながら美神はコブラに乗り込む。横島もふらつきながらGCαに跨る。
「行くわよ横島君!!」
「はい!!」
向かうは美神除霊事務所。空を覆うのは不吉を思わせる黒い雲。
暗雲の中を希望が走り抜ける。
あとがき
最近バトルの表現に困っているweyです。
遂に出ましたペガサスフォーム!!(あまり出番なかったですが)私的にはドラゴンフォームの次ぐらいに好きですね。
読者の方にお願いがあるのですが、二話あたりに出てきた解読者(多分覚えてないかもしれませんが)なんですが、今後出番がありそうなので名前を付けたいのですが、中々いい案が浮かばずにいます。そこで読者の方に名前を提供していただきたいのです(身勝手ですいません)。気に入った名前を今後レギュラーとして出しますので、皆さん出来ればよろしくお願いします。
>法師陰陽師さん・柳野雫さん・MAGIふぁさん・御気さん・Danさん・ATK51さん。読んで下さり本当にありがとうございます!!
皆さんのレスの中に多かったワニですが、以前からいつかはやってみようと思ってましてこの作品に出すことを決めました。言霊使いという設定も前から考えていたものです。
では次回まで、さらばです。