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▽レス始

「彼が選んだ道−12−(GS)」

リキミ・スキッド (2005-01-25 21:43)
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それは幼い頃の記憶。
忘れたくても忘れられない己の罪の象徴。
壊れたように笑い続ける父と目から理性の光を失い涎をたらしながらぶつぶつと何かを呟いている母。
何がおきているかなど彼女にはわからなかった。
いつもと同じように起きて、いつもと同じように挨拶しただけだ。
どうしてこんなことになったのか彼女には見当もつかない。

「おねえたま。おとうたまとおかあたまどうしたの?」

舌足らずな喋り方で何の邪気も無く問い掛けてくる妹に彼女は何も言うことは出来なかった。
彼女にだって理解できていないのだ。
だが、いつまでもこうしたままでいるわけにもいかず彼女は思い切って話し掛けてみた。

「お父様。お母様。どうしたのですか?」

――――ブツン。
音で現すのならそれが一番しっくりくるだろう。
彼女の声を聞いた瞬間、彼女の父と母は死んだ。
肉体的外傷はどこにも無く、ただなにか大切なものが抜けてしまったようにあっさりと死んだ。
ますます持って彼女には何がおきているのかわからない。
妹はお腹がすいたと泣き出し、彼女は混乱の極みの中で漠然と理解していた。
殺したのは、自分だと。


―横島―

横島とワルキューレは基本的には仲がいい。
師匠と弟子という間柄でもあるので、必然的に二人で過ごす時間は毎日必ず存在し、二人は互いの修練を積んだ後には取り留めの無い世間話をするぐらいにはなっている。
ワルキューレもレイドルとの仲を壊してまで横島のことを調べたのでギルミアに対する懸念はあっても、横島に対する疑念は薄らいでいた。

「リムル少尉とですか?」
「そうだ。次の任務はリムルと共にやってほしい。」

今日もまた二人は訓練を終えた後に世間話のように任務についての話をしていた。

「構いませんが、リムル少尉は・・・・・・。」
「あの姉ちゃんが俺らと組むなんてありえねぇよ。」

もぐもぐと傍らでレイドルの作ってくれた食事を食べていた珠姫が二人の間に口をはさむ。
珠姫の口調にワルキューレは眉をしかめるが、横島が何度注意しても聞かないので放置されている。

「リムルには私の口から言う。任務であるのだから、嫌とは言わないだろう。」
「嫌って言えないだけだって! 心の中では何を考えているか・・・。」

珠姫はそう言うと余程凄いことを考えたのか、嫌じゃーーと叫んで横島の影の中へと非難した。

「相変わらず騒がしい奴だな。」
「すいません。」
「まぁいい。お前とリムルとの仲が不仲なのは知っている。今回の任務で改善しろ。」

視線をそらして言うワルキューレに横島は思わず笑いそうになった。
どれだけ冷たい軍人を装うとしても必ず何処かが抜けている。
いや、甘さと言ったほうがいいのだろうか。
ワルキューレは横島の笑みに気づくと

「私はもう行く。」

とだけ残して足早に去っていった。
その姿を見ながら横島は先ほどから感じている視線のほうに目線を向けた。
遠くから横島とワルキューレを覗っていたリムルと目が合う。
リムルはフンッと顔を背けるとその場を去っていく。
こうして横島の魔界での初任務はリムルがパートナーとなることが決定するのだった。


「どうして私が貴方なんかと・・・・・・。」
「運がないからじゃねぇの。」

案の定リムルは機嫌が悪くなっていた。
ワルキューレの前ではニコニコと快く命令を受けたのだが、任務先に向かうということで二人っきり(?)になった瞬間、不満が口から零れだしている。
ここで横島が何かいっても逆効果なので、横島は珠姫似リムルの相手をさせていた。
珠姫はリムルが嫌いなようで棘のある言葉で適当にあしらっている。
横島達は魔界軍の存在する魔界第二界層の東に位置する山脈へと向かっていた。
そこで幾人かの魔族がなにかしているとの情報が入ったのだ。
だが山脈に位置すると言うことなので幾つかのチームが手分けして探すことになっている。
ワルキューレもレイドルと他の魔族を連れて任務にあたっている。
横島とリムルには珠姫がいるということで一つのチームとして成立している。

「使い魔の分際で。」
「その分際に愚痴るなよ姉ちゃん。」

二人の口論は徐々に激しくなってきている。
ここで止めにはいるべきなのだが横島は別のものに目をとられていた。

「・・・・・・アレは?」

横島の呟きに反応したリムルが横島の視線の先に目線を向ける。
竜がいた。
いや、それが竜なのかは定かではないが竜のような黒い物体が暗雲を引き連れて空を飛んでいた。
横島と珠姫とリムルも飛んでいたのでこのままですれ違うか、ぶつかることになる。

「暗黒竜が何故ここに? 彼らは西に生息しているはずなのに・・・・・・。」
「それがここにいるってことは、あれもまた強硬派の一人じゃねぇの?」
「確認するまではわからないわ。ジョーカー。行きますよ。」
「はい。」

リムルが横島と珠姫を先導するように暗黒竜へと近づいていく。
暗黒竜は巨大で、圧倒的な威圧感を放っている。
リムルが暗黒竜の鼻先に姿を現し、それに従う感じに横島と珠姫が位置を取る。

「どうしてここにいるのです暗黒竜?」
「うぬらには関係なきことよ。知る資格も無いし、教える必要もない。」
「いえ、教える必要はあるわ。私たちは軍の任務でここにきている。貴方は魔界の最高指導者に逆らうつもり?」
「ふっ。あのようなふぬけになにができようか。足元も見れぬ愚人などいらぬのだよ。」
「さっ最高指導者を愚弄すると言うのですか!!」
「愚弄ではない。事実だ。して、小娘。我はうぬにかまっていられるほど寛容ではない。去れ。」
「――――答えなさい。」

リムルの魔眼にスイッチが入る。
今回は最初から絶望の魔眼を暗黒竜に向ける。
戦闘力の高いものの多い竜族なのだから当然の処置だった。
暗黒竜はリムルの瞳に驚いたようだが、続いて笑い声を上げ始めた。

「ぐははははっ。そうか! うぬがアヤツが言っていた絶望の使い手か!!」
「私の魔眼が聞いていない!?」
「聞くわけなかろう。対策さえねればうぬの力など赤子同然よ。」
「だが、俺の対策は出来ていないだろう。」

笑い声を上げていた暗黒竜の口の中に『自』『白』と刻まれた文珠を横島は投げ入れた。
だが、暗黒竜はそれを飲み込まず漆黒の炎で焼き払う。
驚きに満ちた珠姫の顔を見ながら暗黒竜は横島を見て笑った。

「知っておるぞ。うぬが使いしは文珠であろう。我には文珠を使いし知り合いがいたでなぁ。」
「竜族は無駄に長生きしてるから、貴方の文珠を知ってる奴が多いのよ。」
「口は悪いが言っていることはその通りよ。・・・・・・さて、遊んでやりたいが我にも時間が無いのでな。」

横島と珠姫は同時に防御結界を張った。
リムルも予測できていたのか、素早い動きで暗黒竜の口元から離れる。
炎が放たれた。
文珠とサイキックソーサーの多重防御壁でなんとか暗黒竜の炎を防いだときには暗黒竜は遠くのほうを飛んでいた。
横島は砕け散る文珠を見ながら、リムルに視線をうつす。
そこには険しい顔をしたリムルがいた。

「どうしたんですか?」
「――!? なんでもないわ。ただ、無駄な考えをしていただけ。」

リムルはそう言うと疲れたと言って地上に向けて進路を変えた。
地上には魔界軍が使う宿泊地が存在している。
本来であるならば、とっとと山脈まで行かなければならないのだが階級が上でそして強さも上であるリムルに逆らうわけにも行かず横島と珠姫もついていく。
宿泊施設の中は満杯で、従業員である魔界でも珍しい商売に闘争を燃やす亀族がせわしなく動いている。
リムルは部屋が決まるなり、すぐさま割り当てられた部屋へと引っ込んでしまった。
珠姫も女なのでリムルと同室ということになっている。
さんざん横島の影の中でいいとごねた後、

「少しは仲良くしろ。」

という保護者ぶった横島の言葉に文句をいいながら従った。
そして、仲の悪いコンビが同室となるという状況が出来上がったのである。
珠姫は部屋に入るなり、難しい顔で何か考え込んでいるリムルをぼけーと見ていた。
顔は美人だけど、性格がなぁーなどと考えている。
しばらくするとリムルは半分寝そうになっている珠姫に話し掛けた。

「ねぇ。」
「んあ?」
「もし、だれかに大切な人を殺されたら・・・・・・」
「・・・・・・?」
「そしてその殺した人が業とじゃなかったら、貴方はその人を許せる? ――復讐したいとか考える?」
「考える。どういう結論を出すかは人それぞれだけど、誰でも一回は考えんじゃねぇの?」
「そう。そうよね。」

リムルはそう言うと弱々しく微笑み、真面目に答えてくれた珠姫に小声でありがとうと告げると寝てしまった。

「なんだかなぁ〜〜。」

なんか厄介ごとに巻き込まれているような気がして珠姫は溜息をついた。


―雪乃丞―

「――なんじゃマリア。その小僧は?」
「ドクター・カオス。帰宅の・途中で・拾いました。」

給料が少ないということを忘れ、普通に生活していた雪乃丞。
美神からもらった初任給を全て家賃につぎ込みはめとなり、食料を買う金がなくなったので道端で倒れていたのである。
マリアと呼ばれたアンドロイドは雪乃丞をソファーの上に寝かせるとカオスの傍に歩み寄った。

「これが・私の・妹ですか?」
「そうじゃ。質のいい魂が手に入ったのでな。念願の二人目を造ることができるわい。」
「ドクター・カオス。マリア・嬉しい。」
「そうじゃろう。お前にもワシ以外にお前を理解するものを作ってやらなくてはと思ってたんじゃ。」

そう言って優しい笑みをカオスは浮かべるとソファーに寝かされている雪乃丞へと視線を向ける。

「この小僧はどうして倒れとった?」
「空腹・だと・思います。」
「ふむ。日本に来て五年。腹を空かして気絶した小僧が運び込まれる日が来るとはおもわんかったの。」
「迷惑・でしたか?」
「いや、お前の魂が優しさを理解しとる証拠じゃ。マリア。飯を作ってやれ。」
「イエス。ドクター・カオス。」

―美神―

「令子ちゃぁ〜ん。今は〜あの目つきの悪い子〜いない?」
「冥子。あんたなんで毎日夜になると遊びに来るのよ。」
「だって、だってぇ〜お昼にきたら〜目つきの悪い子が〜怒るんだもん。」

それはつい先日のことだった。式神使いである六道冥子と共同で除霊にあたった際に、冥子の喋り方と泣き虫なところに雪乃丞が切れたのだ。泣き喚く冥子と怒鳴り散らす雪乃丞。そして暴れる式神達。美神にしてみれば思い出したくない惨劇である。

「はぁ、とっとと帰りなさいよね。」
「はうっ。酷いわ〜令子ちゃん。来たばっかりなのに〜帰れだなんて〜。」
「ああもう、ただでさえ仕事でちょっと疲れてんのにこの間延びした声を聞くのは苦痛だわ。」
「酷い〜。酷いわ〜〜。」

いっのこと何も考えずに伊達君みたいに一度切れようかしら、そうなった時の被害総額を考えながら美神は本気でそう思うのだった。


―レイドル―

拗ねていた。
レイドルはとてつもなく拗ねていた。
理由は簡単だ。
何故自分が横島のパートナーではないのかということである。
横島の世話をずっとしていたのはレイドルであり、レイドルは疑うことなく横島のパートナーは自分に固定されるだろうと思っていた。
そう思っていた矢先に最近ギクシャクしているワルキューレに

「ジョーカーはリムルと組むことになる。これは両者ともに承諾していることだ。」

と言われたのだ。リムルが承諾するのはわかる。
彼女はワルキューレには逆らわないからだ。
だが、横島が承諾したのが気に入らない。
初任務を一緒にこなしたのは自分ではないかと、何度も心の中の横島に文句をレイドルはいった。
そして、弟をよその誰かに取られたようなそんな嫉妬心がレイドルをさらに拗ねさせる。

「ジョーカーの・・・・・・馬鹿。」
「何か言ったかレイドル?」
「いいえなにも。」

そんな嫉妬心を抱きながら、横島達が宿泊することにした宿の上を通り過ぎるレイドルであった。


あとがき
練りに練って、今回の話は長くなることが決定しました。なぜかというと、初任務編・リムル編・ジーク編を一つの話にまとめたからです。その間に原作パートをある程度まで進めてしまおうとか考えています。今回の話が終われば、雪乃丞編が来て、そして両者合流となりそうです。いや、予定では、ですけどね。

>猿サブレ様  目指せレイドル萌えッ子企画実施中です(嘘)

>D,様  横島君と離されたレイドル。はてさて彼女の嫉妬心が爆発したらどうなるんでしょうね。

>コン様  部下が増えるのはもう少し先になりそうです。

>lrsnntk様 しょっかー様 Dan様  萌える女魔族レイドルをこれからもよろしく。

>ファルケ様  食べますね。間違いなく。

>無貌の仮面様  魔界シリアス。原作コメディ。これが基本コンセプト。

>隆行様  ハーピーは後々絡んできます。メドーサーは、雪乃丞編で活躍することでしょう。

>不動様  ――――横島はメドーサーを食べるのだろうか。食べるんだろうなぁ。

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