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▽レス始

「横島の町〜第2話〜(GS+熊本民話) 」

とみぃ (2005-01-24 01:20)
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気が付いたら俺は砂浜に打ち上げられていた


「くうっ・・・」

体はほとんど濡れていないが、寒い。

「・・大丈夫ですか・・横島さん」

オキヌちゃんが起き上がりながら俺に声をかけてきた。

「・・・多分大丈夫・・・しかし今のは・・・」


大丈夫とは言ったものの、なんとか半身を起こしながら
「ダメージを受けた場合でも自分の状態を常に把握しておく」
ことは基本中の基本だわ、と美神さんに教えられた通り体をチェック。


手・足は大丈夫。
スリ傷程度はあちこちにあるようだが折れた様子はない。


胴体にはほとんど傷もない。
呼吸も苦しくないし、変な傷みは無いから内蔵も問題なさそうだ。


頭は正常、目や耳も大丈夫。

見渡せば周りもよく見える。


目の前にある真っ赤に焼けた鉄の馬もはっきり見える。


・・・・


・・・


・・


真っ赤に焼けた鉄の馬デスカ?
耳・鼻・口からうっすら煙があがっていますけど。

・・・・・・・・・・・こりゃ目か頭はダメだな。


しかもこっちに走ってくる武士まで見えちまったよ。
なんか叫んでるけど言ってる事わけわかんないし。


「ヌシャドゲンシタツカ」って?
耳もアウトか・・・


と思ったら武士はいきなり俺達の襟を捕まえて砂浜を引きずりやがった。
さすがに


「まてー!なにしやがんだー!」
「きゃぁぁぁぁ」


と飛びおきようとしたが、武士の腕力は凄いし引きずられている体勢では抵抗できない。


そのまま海岸線からあっという間に引き離され、50mほど先の土手まで持っていかれたところでようやく武士は手を離してくれた。


武士はまだ立ちあがれない俺達の方にかがみこむと


「あたどま、どけからきたっか?なしあぎゃんとけおったっか?」

と聞いてきた。さっきより言葉は聞き取れるが、意味がよくわからない。
ていうか日本語なのかコレ?


しかし、ここ何処なんだろう?
俺はなんでこんな所にいるんだろう?
あの鉄の馬はなんなんだろう?


混乱する俺を、さらに5〜6人の武士と粗末な着物を着た
大勢の男達が取り囲んでいる。口々に何か言っているが、
早口なので「ばってん」「どぎゃん」という単語と語尾に
「・・・たい」がついていることくらいしか聞き取れない。


「横島さん、ひょっとして私達・・・・・・・・」
「ああ、過去に飛ばされたようだな・・・・・・」
「言葉からすると、九州のどこかのようですね」
「ああ、それはわかるんだが・・・・・しかし・・・」


覚えのある感覚と、男達のいでたちからまた過去に飛ばされたんだろうけど
今度はいつの時代に来ちまったんだろう。


しかも美神さんがいない。
これはヤバイ。
ヒャクメがいたときもあるし、マリアがいたときもある。
そして過去に飛ばされた時はいつでも必ず美神さんがいた。
だからなんとかいつも元の時代に帰れた。


これはまずいな。


美神家に伝わる時間跳躍能力だが、
そもそもアシュタロス戦後、2人とも封印されていたはずだ。
それが発動した。

しかも本人ではなく近くにいた俺達にー


と考えていた時
突然木の上から子供の悲鳴が聞こえてきた。


「来たーーーー!」


一斉に皆が海岸を向いたのでつられて俺も視線を追うと、
そこにはさっきの赤く焼けた鉄の馬によって来た大きな大きな


「タコ」


・・・ヌル?
地獄炉を作ったヤツを思い出したが、アレとは違う。
普通のタコが巨大化した感じで、霊力もヌルよりは低そうだ。
しかし、大きい!全長20m以上ありそうだ。


「でかいタコだな〜この時代はこんなのがいたんだな〜」
「そういうわけではないと思いますが・・・・」


おキヌちゃんが苦笑いしながら答える。


その巨大タコは鉄馬に巻き付きはじめた。
鉄馬は赤くなるほど焼かれているので当然
「ジュワジュワッ〜!」と足が焼け爛れ、驚いたようにタコは身を離した。


「気づかれたごたっぞ!」

「こんままじゃ逃げられるるばい!」


男達はあわてているようだ。
いや、いくらタコでも熱ければ気が付くだろ。


木の上にいた少年も下りて来て、武士達に
泣き付いている。


「お願い・・・あいつに殺さ・・・の・・仇を・・・」


おキヌちゃんが顔を曇らせて

「・・・きっとあの子の親しい人が殺されたんですね・・・」

とつぶやく。


子供が泣いている。
今、俺はどこにいるのかもわからない。
でも、あの子の大事な誰かが犠牲になった。
その悲しんでいる心だけはすぐに理解できた。


だから俺は立ち上がる。


「あれ・・・何だ?」

「そっがわからんとよ。ばってん随分あやつにやられたったい」

先ほど俺達を引きずった武士が抜刀しながら答える。

「妖怪のごたるばってん、あぎゃん太かつは見た事なか」

「なら俺がやる。下がっててくれ」

「なんてか?」


驚いたような武士を無視して俺は
サイキック・ソーサーを発現させる。


「そ、そっは・・・・・・何かっ!」


俺はサイキック・ソーサーをフリスビーの要領でタコめがけて投げつけた。

ゆっくりと吸い込まれるようにタコの胴体へ。

瞬間


「チュドォォォン!!」


思ったより凄い爆発の中、巨大タコは消滅した。


「一発で・・」

「あん化物ば・・・」


武士達はまだ驚いているが
泣いていた少年は笑顔で


「兄じゃもん、ありがと。アオの仇ばとってくれて」


「ああ、アオの仇はとってやっ・・・・・・・・・・え?」


「あ、あのアオって・・・・」


「アオは家ん馬だったったとよ」


「・・・・・」


「・・・・・」


苦労して皆から聞き取った話では、
どうやら農作業に使った馬をこの砂浜で洗う習慣だと。


吾市というこの少年は、アオという名前の馬を大変にかわいがっていて、
毎日ここに連れてきていたそうだ。


しかしある日、ほんの少し目を離した隙にアオは消えていた。

もちろん必死になって探したのだが、見つからない。
それから村の馬がこの砂浜で消える現象が度々起こるようになった。


馬は大事な労働力。
村人達も原因を探したがわからない。


そこで少年は、毎日松の木の上から浜を見張った。
するとある日、大きなタコが一瞬で馬を引きずり込むのを目撃。

それで退治する手段を色々話し合った結果、
村の鍛冶屋が鉄の馬を作り、中に炭火を入れ罠を張ったそうだ。


「そこにあたどまが倒れとったけん、最初はうんぶくれたて思たったい」

「おいもこら、うっ死んだて思たばい」


どうやらそんな緊迫した現場に
俺達がいきなり現れたから、相当驚いたようだ。


「すごかな〜あたの技は」

「ほんなこつ、すさまじかばい」

「ところで、あたどまどけから来たっかい?」

「それが・・・・良くわからないんです」

「まあ、よかたい」

「そぎゃんたい。とにかくお礼ばせんといかん」

「村長におうてくれんか?あん化け物にはたいぎゃ困っとったったい」

「そっがよか。喜びなさるばい」


俺とおキヌちゃんはタコを倒した後、小さな田畑に囲まれた村の中で一番立派な家に招待された。他の武士達は粗末な着物なのだが、比較的立派な衣装を着た小太りの中年男が玄関先で出迎える。

おそらく村長だろう。


「話は聞きました。あんさんらがあの化け物タコを退治しはったんですな」


意外なことに村長は大阪弁だ。


「よかったー!他の人なに言うてんのかようわかりませんで、難儀しとったんですわー!」

「おや、あんたも上方から来はったんでっか?しかし、今そないな服が流行りでっか?」


やばっ!今いつの時代かよくわからんけど、
おキヌちゃんの巫女服はともかく、
俺の格好・・・いつものGジャンにバンダナ姿・・・は
かなり浮いている。怪しまれたら相当まずいことになりそうだ。


文珠を使えば簡単に逃げられるが、
ただでさえトラブルの最中なのに
これ以上厄介事を増やすメリットは何も無い。

困った。何と説明しようか。


「いえ、これは都の新しい作務衣(さむえ)にございます」

おキヌちゃんが小声で「ここはまかせてください」と耳打ちする。


「ほぉ、都の作務衣か」


「ルソンの生地を元に工夫したものにございます。あいにく職人がこれを作り上げた後すぐに他界してしまい、これ一着残るのみでございますが」


「良う出来てんのに勿体無いのぅ」


村長は納得したようだ。


「ありがとうおキヌちゃん。助かったよ」
「家の作りが私の生まれた時代のに似てましたから」


だから、その当時でもありそうな事を言ってみたんです。
と。


そういえば以前平安時代に飛んだ時は、速攻で現地の衣装を入手した。
まあ入手っていうか、追いはぎというか、アレしてだが。


「さて、立ち話も何ですな。とにかく上がってもらえまへんか?」
笑顔で村長が手招きした。


案内された部屋には海の幸が山盛り。
タイ、伊勢海老、車海老、ハマチ、カキ・・・・そのほか見たことのない貝まである。
俺達は勧められるまま、とにかく頂く事にした。


「うまい!!」

「この貝もおいしいです!」

「そないに喜んでもらえて嬉しいですわ」


魚はどれも新鮮でとにかく旨かった。
伊勢海老はプリプリだし、カキはほのかに甘い。

以前の貧乏だった頃はともかく、
今は美神さんと依頼主の接待に行く事も多い。

当然一流企業の役員や社長クラス相手だから、
最高の店を使うが、そんな店でもこんな旨くは感じなかった。
おキヌちゃんもいつもは小食なのに、今日はよく食べている。


「ご満足頂けましたかな?」

「いや〜こんな旨いモン久しぶりですわ」

「本当に美味しかったです」

山のように用意された食事をほとんど片付け、
お茶を頂いていると村長がいきなり真面目な顔で尋ねる。


「さて、あんさんらがどこのお人で、なぜ天草に来たのか話してもらいまひょか」


その言葉を合図にしていたのか、奥の襖がばっと開き
10人程の武士が槍を構えて俺とおキヌちゃんを取り囲む。


あとがき


とみぃです。
投稿遅れ気味で申し訳ありません。
お読みいただいた方、本当にありがとうございます。


さて。

皆さんの想像通り、過去に飛んじゃいました。
しかもおキヌちゃんと2人。
今後カップリングにまで発展させるのかは未定ですけど。


またタコの話は熊本の天草に伝わる民話です。
伝承では、鉄の馬によりタコは焼け死んだ事になっていますが、
横島君にヤッテ頂きました。
熊本も幽霊や妖怪の伝説が多く、今後もいつくか書こうと思っています。


というところで熊本弁講座。

『あたどまどけから来たっかい』→「あんたたちは何処から来たのかい」
『ぬしゃ』→「お前は」
『あたは』→「あなたは」
『たいぎゃ』→「すごく」

文中で翻訳しようかとも考えたのですが、
テンポ重視ということで読みにくかったらゴメンなさい。


それと熊本弁も天草はちょっと違うし
大阪弁も数年西成区に住んでただけなので
おかしい点があるかとは思いますが
そこは御勘弁を願います。

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