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▽レス始

「横島の町〜第1話〜(GS) 」

とみぃ (2005-01-12 01:13/2005-01-12 01:30)
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久しぶりに全員揃った除霊は
「古い祠に最近なにか憑いているらしい」というものだった。


もう何年も人の手が入ることなく放置された祠で、小動物のようなモノが目撃された。目撃者の話によると、イヌに似てこそいるが、明らかに違うらしい。
そこで不安になった住民が村役場に訴え、村はオカルトGメンに依頼しようとしたが現実の被害も出ていない上、相手が「イヌらしいモノ」程度ではオカGも動きようがなかった。で、GS協会に依頼が回ったのだが・・・・


いつもの月曜会議で美神さんは思いっきり嫌そうな顔で言った。

「協会から私に直接依頼という時点で怪しいのよ」

「?なんでです?美神さん」

「協会が私に回すってことは相当ヤバイ相手か、依頼人に何かある時だけだから」

「でもイヌでしょ?うちにもバカ犬がいるからじゃないの」

「拙者は犬ではござらん!」

「あら?誰があんたの事だって言った?」

「うう・・ひどいでござる・・」

「はいはい、それは後でな」

いつものようにケンカになりそうな2匹を、俺は首根っこをつかまえてひょいと引き離した。
なにやらシロもタマモも顔を赤くしているし、おキヌちゃんも「じぃっ」とこっちをにらんでいる。なんかわからんけど何だか少しヤバイ様な気がする・・・・


「だから今回は全員出動するわよ。日程は明後日8時出発ね。フル装備の準備お願い」

「でも報酬安いんでしょ?フル装備出して大丈夫なんですか?」

美神事務所でフル装備という場合、歯ブラシから1億円の御札まで揃えられる。

「イヤな予感がするのよ・・・それに経費分はしっかり請求するわよ」

「はーさすがは美神さんですねぇ。でもそれなら最初から断れなかったんですか?」

「あのね、おキヌちゃん?協会の仕事を断ってイイ事あると思う?」


アシュタロス戦は結果的にオカルトGメンへの予算を倍増させ、またうまく立ち回ったので協会にも補助金が相当入るようになっていた。法律も整備され、イザという時、オカルトGメンへ与えられる権限・・・それには協会も深くかかわっている・・・も強化された。

つまり、今の協会は金と権力に満ちているわけだ。
そして美神のポリシーは今でも

「長い物には巻かれてから全部頂きます」
「寄らば大樹を切り落とし売り払え」

・・・いくら変わったとはいえ本音はこんなもんである・・・・


さて。
今回は5人全員なので、事務所のキーボックスからワゴン車の鍵を取り出す。当然ながら今日の運転は俺。

鍵には純銀十字架付キーホルダーが付いているのだが、十字架は先日大地震救援募金を唐巣神父が行った際、協力したお礼に貰ったものだ。なんでも相当アンティークなもので、聖なる力が少しあるらしい。唐巣神父自身貧乏なのに何かあるたび募金を行い、ボランティアにも参加して被災者のメンタル面のケアや犠牲者の鎮魂を行っているのは本当に尊敬する。


あ、もちろん免許は夏休みに取得済みだけど、免許を取った後、美神さんから直々に受けさせられた「ドライビングテクニック養成講座」は最初死ぬかと思った!車って横にも進めるんだね(泣)美神さんが言うには、「100%車の能力を使いきれなければ命に関わる場面がきっとある」そうだ。

実際、霊団に襲われてコブラで逃げた時もあったな〜と思ってたら、別にそんな場合だけではなく、普通の事故から身を守るためにも覚えておいて損はない・・・らしい。


高速を降り、カーナビの指示通り山の方に向かう。
念のため雪道用のスタッドレスタイヤをはめて来たが
今年は雪があまり降っていないせいか、相当上のほうにいかなければ大丈夫のようだ。目的地が近くなったので、後ろで寝ていたシロとタマモをおキヌちゃんが起こす。


「じゃ、最終確認するわね。まず私は村役場にあいさつしに行くから、その間におキヌちゃんは道具の準備」
「横島君は目撃者のところに聞き込みお願い。詳細までもう一度聞き出しといて」
「シロとタマモは軽く体をほぐしておきなさい」
「30分後に車のとこで集合、すぐ現地へ向かうわよ」

矢継ぎ早に指示が出される。さすがは当代一の指揮官、美智恵さんの娘というところか。


指示通り俺は目撃した老人の話を聞いたが、「いやイヌそっくりだけど何か違うのは間違いない」としかわからなかった。しかも祠は相当以前から朽ち果てており、今となっては何を祭ってあったかすらわからない。しかしそこは昔、村の入り口だったということだけはわかった。


「となると道祖神・・塞の神(さいのかみ)でしょうね」

「え?普通は道祖神って道の途中にあるものじゃないんですか?」

「違うんですよ・・・・・横島さん。すごーくたくさんの種類があるんですよ」

おキヌちゃんは
「学校で習ったんですけど」
と前置きしてから話はじめた。

「日本書紀って知ってますよね?イザナギがイザナミの死を悲しんで、黄泉の国へ会いに行き、でも奥さんの変わり果てた姿を見て逃げ出しちゃうんですけど、追いかけられたイザナギは黄泉比良坂(よもつひらさか)で大きな岩で道を塞ぎ、持っていた杖を立てて「ここを過ぎる事勿れと」宣言したんです」


死んだ女を追ってあの世まで追いかけた愚かな男の話。
だが、俺にはイザナギの気持ちが痛いほどにわかる気がする。


「この時の磐石が塞の神の始まりと言われている千人所引の盤石(ちびきのいわ)です。また、その時持っていた杖が岐神(ふなとのかみ)なんです・・・そして古代中国の『道祖乃神』が日本に伝わってそれらと結びつき、道祖神となっていきました・・・」


シロは「さすがはおキヌどのでござるな〜」と感心している。


「だから古来からの道祖神にも2系統あるんです。ひとつは岐神(ふなとのかみ)ですが、『岐』とは道の分岐点と言う意味ですから旅の安全の神でもあり、道の辻に祀られています。横島さんが言っていたのがこれです」


タマモも「へぇ、六道ってそんな事まで教えてるんだ」と思う。
この分だと自分の事も教科書に載っていそうだわ。
あまり想像したくないけど・・・


「もうひとつの『塞の神』系の道祖神は、村に襲いかかる悪霊や災難に立ち塞がり守る神で、村落の入り口に祀られたんです」

美神さんもおキヌちゃんの話を黙って聞いていた。
何か間違っていたら訂正するはずだから、正解なのだろう。


「今でもけっこう"さいのかみ"という地名が残ってますけど、そこは元々村落の入り口だった場所なんですよ」

「おキヌちゃん、良く勉強したわね」
美神さんが褒める。

「ついでだから言っておくけど、地名には昔の歴史が影響している事が多いから、色々推察する助けになるわよ。」

「たとえばどういった地名でござるか?」

「そうねぇ『八重洲』は江戸時代にヤン・ヨーステンというオランダ人が住んでた場所だし」

「マジっすか?知らなかった・・」

「ヤン・ヨーステンから耶揚子(ヤヨウス)って日本名に改名して、それがなまって八代洲河岸(ヤヨスガシ)から八重洲(ヤエス)になったのよ」

「へー」

「でも最近は市町村合併なんかで昔の名前が減ってきているのよ。だからお年寄りに聞いておくといいわ」

「まあジィさんやバアさんと話すと聞いてないことまで教えてくれますからね」


依頼を受けた時から感じていた嫌な予感の理由。
美神はおキヌの話を聞いているうちに、その訳が少しずつわかってきた。
確かにおキヌの言うとおり、道祖神には色々ある。
先の2つ以外にも、「仏教系道祖神」やバリエーションの多い「双体道祖神」はたまた男根崇拝(!)すらあるくらいだ。

しかし、どれをとっても絶対に『イヌ』とは結びつかない。
となると、祠とは全く関係のない妖怪が存在する可能性がある。
しかも今のところ、種類を特定できる情報は何もない。


「・・・結局相手してみるしかないってことね」


協会も多分僅かな情報からその可能性を考え、私のところに依頼を回してきたんだろうと当たりをつける。下手をしたらフェンリルや犬神クラスの可能性もあるし、それに対抗できるGSは自分達しかいないという自負はあった。


で、問題の祠から100mほど手前。
美神さんとシロが前衛、俺は文珠を用意して中段に位置。背後ではタマモが狐火を指先で遊ばせている。その横にはおキヌちゃんがネクロマンサーの笛をいつでも吹けるように準備済み。
前衛の攻撃が効かなかったら俺が栄光の手で攻撃、もしくは文殊での対応もできるし、タマモも状況に応じて狐火で援護、または幻術で撹乱する。もちろんおキヌちゃんはネクロマンサーの笛で雑霊を一気に成仏させたりできるバランスのいいフォーメーションだ。


「それじゃいくわよ!」

「シロ・タマモ!何か匂うか?」

俺は素早く問いかける。

「何か感じるんだけど、まだ正確な場所まではわからない」

「拙者の鼻にもかすかに感じる程度でしかござらんが・・・これはなにか焦げ臭くはござらんか?」

「それもあるけど、コピー機のような匂いもするわ」

「焦げ臭いコピー機?なんじゃそりゃ?・・・美神さん、とりあえず進みましょうか?」

「仕方ないわね。このままじゃ埒が明かないし」


俺達は歩き出したが、おキヌちゃんは下を向いて何か真剣な顔をしている。


「?おキヌちゃん?」

「・・・・あ、ごめんなさい。考え事してたもんですから」

「何か気になる?」

「・・・何かひっかかっているんですけど、まだよくわからなくて・・・ごめんなさい!」

「いいさ、おキヌちゃんが気にする必要はないよ。何かわかったら教えてくれるかい?」

ええ、それはもちろん。とおキヌちゃんは微笑む。
そこにシロの鋭い声が響く「来たっ」


・・・そこには確かに「小さめのイヌ」そっくりなものがいた。
色は灰色で、やや長い頭とキツネに似たしっぽだけなら、「あーイヌの一種か」と思いそうだが、猛禽類のように鋭くとがった爪と纏った凄まじい霊力はどう見てもイヌには見えない。


「こ、これはっ・・・・雷獣っ!」

美神さんの息を呑む声が聞こえてきた。

「あっ、コピーの匂いって空気がオゾン化した時の・・化学の先生が雷の時も匂うって言ってた・・」

おキヌちゃんも顔が蒼ざめている。

「まずいっ!皆はなれて」

と切羽詰まった様子に思わず文殊に「防」と刻み込み美神さんの前に出ようとしたが、間に合わず美神さんに雷撃が襲い掛かってきた。


「あああああっ」

美神さんに触れるくらい接近していた俺は、彼女に直撃した雷の衝撃で意識を失った・・・・


あとがき

なぜか途中で切れてましたので修正しました。


感想をお書きくださった皆様ありがとうございます!
返答を書いていたのですが、先ほど全部消えました(泣

意外と硬めの設定でも好評だったので安心しました。
しかし、次からは「あの設定に意味あんのかよぉ!」と
怒られそうな展開になります。

また、今回もそうですが、次回からは更に予備調査に時間がかかるのと
仕事の都合で、どうがんばっても週1回の投稿ペースがやっとになると
思いますが、見捨てないで下さいませ〜!

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