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▽レス始

「心眼は眠らない その30(GS)」

hanlucky (2005-01-22 17:51/2005-01-23 12:05)
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「悠闇だと?」

アシュタロスは思わぬ人物の名前が挙がり困惑する。

「どういうことだ、その者は封印刑を受けているはずなのだが?」

だからありえない。唯でさえ黒竜将という地位にいたよな大物が人間界にいるなんて
滅多に無い事なのだ。しかも相手は永久封印刑という罪状を受けた罪人。

しかし目の前には確かに人間ではありえない竜気と霊気を纏った存在がこちらを睨んで
いる。アシュタロスは相手と目が合って思わず舌打ちをしてしまう。
これならば相手が偽者とかは関係ない。間違いなく相手は強敵の部類に入る。
そのような相手が自分の敵になるのだ。そんな時に相手の正体を確かめている暇はない。

「まぁ、よい。相手が誰であの程度では所詮は私の敵でない。しかし本物なら少しは
 楽しめそうだ。なぁ―――」


アシュタロスも臨戦態勢をとる。
相手が黒竜将の地位にいた者であるならば何をしてくるかはわからない。
何よりこのまま相手を逃せば自分の計画が神魔界にバレる恐れがある。
そのため確実に処理しなければならなかった。


「―――邪眼竜よ。」


――心眼は眠らない その30――


「アレって・・・まさか心眼なの?」
「!!!」

美神が何気なく呟いた一言に横島が動揺する。

今まで相棒として一緒にいた心眼。
そして初めて見たときから自分が捜し求めていた女性。
その二つの存在が同じということに、

(え〜と、大丈夫だよな?アレの時とかバンダナ外していたし。それよりも心眼に
 あの姉ちゃんの事いろいろ話しちまったじゃねえか。ちきしょーーーーーー!!
 詐欺やーーーーーーーー!!)

ちょっと場違いな事を考えていた。

横島は悠闇の方を見ていると向こうもこちらを見つめてきた。

(なっ!?そんな顔見せんじゃねえっての!!)

悠闇は横島に微笑みかけた後アシュタロスの方に向き、己の力を解放する。
そして自己暗示のつもりもあるのかアシュタロスに向けて言葉を放つと同時に自分にも
語りかけているように見えた。

「これはすごいの〜。」
「桁が違いすぎる!!」
「なんなんや、アレは!?」

悠闇の登場によって辺りの重苦しかった空気が緩和されるようになって陰陽師たちも
なんとか口が利けるようなるぐらいには回復した。六道当主達も目の前にいる二人の
上級神魔族を見て震えながら感心する。

ヒャクメはいつでも時間移動を扱えるようにこっそりと美神の傍らに近づく事に成功
する。

「とりあえず結晶は後にする事にしてあの者を如何にかするか。」
「・・・参る!!」


(ヒャクメ!!タイミングを誤るなよ!!)
(わっわかったのねーーー!!)

サッ

悠闇の姿がその場から消える。
だが同時にアシュタロスの姿も上空から消えていた。

皆は消えた二人を探そうとするが横島とヒャクメ以外は見つけることが出来ない。


「ほう、そのような体でそこまで動けるのか?」

二人がいつの間にか地上に現れる。
アシュタロスが上空から消えたように見えたのは純粋に早かったわけである。
対する悠闇は所詮は人間の体を借りただけでありアシュタロスのスピードについて
いけるわけはなく別の部分で勝負をする。

「流石は竜神界の闇というわけか。ここまで闇に紛れる事ができるとはな。」

速度がない分は気配を遮断して相手に自分の居場所を悟らせないようにする。
元々、黒竜という部隊には奇襲、暗殺といった戦法も取り入れられていた。
その頭であった悠闇の気配の殺し方や抜き足は仮初めの体を使用した所で落ちる事は
無い。何より今は夜、魔族と同じく最も自分の力が発揮できる時間帯であった。

「しかしいいのか?私が貴様と争った事を上層部に報告すればこの冷戦状態は一気に
 崩れるぞ?」
「何を下らぬことを!!貴様は報告したくてもできんだろう。それを行えば何を
 しているか未だに確証はないが貴様が行おうとしている事も上層部にバレるのだぞ。」

アシュタロスは下らぬ挑発を繰り出すがそのようなものに引っかかる悠闇ではない。
まぁアシュタロスも期待していたわけではなかった。元々アシュタロスは悠闇の実力を
見極めるために時間を稼いだに過ぎない。

「まぁ予想はつくがな・・・魔王になりこの世を支配するといったところか?」
「やれやれだな。やはり貴様はここで消えてもらおう。その程度の実力では復活する事
 もないだろう。」
「アシュタロス様!!」

道真はその主への忠誠心からアシュタロスへ助太刀に向かう。

(時間が無いというのに!!・・・後20秒というところか。)

刻々と残り時間が減っていく。
今は道真に構っている暇など無い。
自分の相手は最も魔王に近いといわれている上級魔族アシュタロス。

そしてもう一人はあの道真。援軍の期待は出来ない。
あの六道当主でも分が悪いだろう。
肝心の横島は自分があえて動けないようにさせた。

(アヤツの動きはワレには計算できぬからな・・・)

道真の下半身が帯状になり悠闇に迫る。

「ちっ!!」
「アシュタロス様から離れよ!!」

すぐに回避に移るが帯は悠闇の足首に絡みつく。
そのまま道真の元に引っ張られてしまう。


「雑魚は―――」


地上に降り立ったアシュタロスは悠闇に向けて高島に放った以上の魔力をぶつけよう
とする。だが悠闇はあくまで冷静に急いで道真の体を霊視する。


「雑魚は―――」


その結果、先ほどメフィストに攻撃を受けたところの傷が完全に塞がっていない事に
気付く。


「雑魚は引っ込んでおれ!!」


ドォォォォォンッ


「ぬぉぉぉぉぉぉっ!!」


悠闇が放った竜霊砲は道真の体を再び両断しながらそのまま遠くに吹き飛ばした。
アレでは自力で再生するまで相当な月日を必要とするだろう。

それと同時にアシュタロスから魔力の塊が迫る。
すでに道真の帯は足首から消えている。
何とか回避行動を取りかわそうとするが、加速力が足りず腹を貫かれる。

(ぐっ!?・・・しかしこれで後はアヤツのみ。残り15秒!!)

この程度の痛みそれこそ昔は日常茶飯事であった。
痛覚を意図的に失わせて再びアシュタロスと一対一の状況を作る。

「どういうことだ。貴様が本当に黒竜将であったとしても今使っているのは人間の体だ。
 何故、あれほどの力が出せるのだ。」

アシュタロスの問い掛けに答えるつもりなど毛頭無い。
最早こちらが限界に近い事など悟らせるわけにはいかないのだ。
今は言葉を吐くだけで自分の状態が気付かれかねない。

悠闇は気配を殺して再びアシュタロスに迫る。
アシュタロスはこれで決着を付けるつもりなのか待ち構える。
ここで悠闇は最後の策に出る。


「動くな」


邪眼・開闢<カイビャク>


世の中は基本的に等価交換で成り立っている事はご存知であろう。
そしてこの邪眼にも同じ事が言える。相手を呪う、ならばその代償は?

「むっ?なるほど・・・ヤツの能力か。」

アシュタロスの体の動きが僅かに鈍る。いくら邪眼といえど相手は魔王に匹敵する
実力者。単なる呪いで動きを完全に止める事など不可能である。
アシュタロスは未だに余裕の態度を崩さないが悠闇からすればそれだけで十分であった。

(ついているな、今回は右腕が動かなくなっただけか。)

代償は邪眼を使用した当人が支払わなければならない。
そして悠闇は賭けに勝ったのだ。もしここで足が動かなくなったなら悠闇の目論みは
失敗に終わっていたであろう。

「解せんな、この程度の邪眼でヤツは黒竜将まで上り詰めたというのか?いやそれより
 この程度の実力でヤツは魔界軍の大佐と少将を倒したというのか?」

悠闇は天魔戦争の際、二柱の魔神を殺す事に成功していた。
その魔神の実力は天使の階級で言うと第二階級、第二階級の実力を持っていたのだ。
ちなみに第一階級にはミカエル、ガブリエルといった有名すぎる天使がいる。

アシュタロスがおかしく思うのも当然であろう。仮に”死ね”と呪われたところで
この程度の邪眼で死ぬ事はない。せいぜいしばらく体を動かせなくなる程度であろう。
そして使用者には代償として死が訪れていてもおかしくないのだ。そのような能力で
魔界で名の知れた魔神を二柱も倒したのだ。不思議に思うのは当然である。


バキバキバキッ


「何をっ!?」


少し思考に入りすぎていたのかアシュタロスは悠闇に後ろを取られ悠闇の竜気と霊気の
結界に囲まれてしまい動けなくなってしまう。


「はぁ、はぁ、はぁ、捕まえたぞ。」
「舐めるなよ、この程度の結界一瞬で破壊してやろう。」


グォォォォォォォ


アシュタロスは力を込め始めて結界の破壊に全力を注ごうとするが、
悠闇はさらにアシュタロスに近づき残った左手でアシュタロスの背中を抑えて
結界の強度を高める。

「ヒャクメ、今だ!!(あと10!!)」
「了解したのね!!」

ヒャクメはすぐに美神の時間移動能力を開始し始める。

その瞬間、アシュタロスと悠闇を中心に時空の歪が発生する。

「時空震だと!?・・・そうか貴様未来からきたのか!?」
「もう遅い、ワレと共に行こうではないか。」
「おのれ!!ふざけるな!!」

アシュタロスはさらに力を入れるが結界は中々崩壊しない。
すくなくとも後10秒は必要とするだろう。

「バカな、何故砕けない!?」
「残念であったな。」

何故高島の体を媒介にした悠闇がここまで戦えたのか?

本来神魔は人間界で全力を出すことはできない。これは人間界では神通力、魔力等の
効果が弱まる事が大きな原因と思われる。そして強い魔力を持つものほどその制約を
受けてしまう。そのため神魔が争った所で同じハンデを持つことになるのだ。

しかし悠闇は違う。

それは心眼として横島の霊気を浴び続けたので心眼は横島の霊気を扱うことが造作も
なくなっていた。そうすると同じ魂を持つ高島の霊気も同等に扱える事にもなる。
魂こそないが高島は死んだばかりであったので霊気の残骸は残っていたので悠闇は
それを利用したのだ。そして《封》《印》《解》《除》によって封印解除と同時に
横島の霊力もごっそりと頂いておいた。

自分が扱える竜気は弱まっているが、人間界で得た霊気は違う。
そして悠闇は人間では決して出せない出力で霊力を放出する事が可能である。
結果、高島の体をタンク代わりにして霊力を貯蔵するが絶対量があまりにも少ないので
全力を出せる時間は短いがその間であれば自分より格上の魔族とも互角に渡り合えるを
可能にしたのであった。

「ヒャクメ、もしかして心眼ごと飛ばす気なの!?」
「しかたないのね、なによりこれは悠闇様の作戦だから。」
「!!!」

ヒャクメは高速でキーボードを打ち続ける。
アシュタロスは足掻き続けるがヒャクメの方が早い。

「ヤツのエネルギーが大きすぎて四、五百年飛ばすのが精一杯だけど―――」


カチ


「―――とりあえず十分!!」


ヒャクメが決定キーを押した瞬間、空間の歪みが最大限まで広がる。


「貴様らーーーこのままでは許さんぞ!!必ず―――」
(さよならだ・・・横島)


徐々にだが亜空間に吸い込まれていく二人。


このまま終わるというのか?


否。


このまま終わるわけにはいかない。


ズァァァァァァァン


そこに現れたのは一陣の風―――


先ほど悠闇が道真を吹き飛ばした時であった。

(くそっ!!動けよ!!)

必死に己の体を動かそうとする横島。
しかし悠闇に何の準備もなしに文珠を4文字同時制御されたのはあまりにも横島の霊力
を奪っていた。

(・・・お別れだと?)

最後に心眼が呟いたセリフは別れの言葉であった。

(ふ・・・ふざけんな!!)

心眼の言葉によって怒りに染まる横島。
勝手に現れて勝手に消えるなんてそんな自己中な事横島が許すはずは無い。

心眼が何をしようとしているかなんて横島にはわからない。
ただこのまま見ていては心眼が消えてしまう。その予感だけが頭を占めた。

ズキッ

(なん・でこん・な時・頭痛が!?)

意識を失いそうになるほどの頭痛に犯される横島。
まるで頭に何かが入ってくるような感触に襲われる。

ズキッ

(より・・にも・よって・・・アレ?)

何かがおかしい。
今度は自分の体が自分のじゃないみたいな感覚に襲われる。

ズキッ

(・・・そうか、そういえばあるじゃねえか。)

頭痛はさらに酷くなっていく一方であったが横島はある人物を見つめる。
何かが響いている。まるで頭の中に自分じゃない誰かがいるように。

ズキッ

(・・・あれを使えば動けるはず。)

横島が見つめている人物、それはメフィストであった。
いや、正確にいうとメフィストが所持している高島の魂であった。

ズキッ

今のお前の霊力じゃ無理だ・・・えっ!?はぁ!?・・・だから俺のを使わせてやる。

急に意識が途切れたり再び繋がったりと不安定な状態が続く。

ズキッ

吸収だけはするんじゃねえぞ、それでは前世という俺が消えちまって来世のお前に影響を及ぼしかれねえからな。

今、横島は前世の記憶との交錯というおかしな現象に遭遇していた。

ズキッ

誰かを助けるヒーローなんて、俺たちには似合わねえよな。俺たちに似合う役柄なんて決まってんだろ?

そして横島と高島は今現在の状況を覆す唯一の方法を取る事を決める。

俺たちは道化師だ。だったら精々引っ掻き回してやろうじゃねえか!!

それと同時に頭痛が止む。
目に色が戻り目覚める横島。

(・・・おい高島、いっとくがな―――)


「―――あの姉ちゃんは俺のモンやからな。」

何故か、頭の中で高島がコケたような映像が浮かんだがまぁいいだろう。

「ヒャクメ、もしかして心眼ごと飛ばす気なの!?」
「!!!」

美神の一言をヒャクメは肯定する。
もう時間はない、見てみれば二人が結界に包まれていた。
横島はすぐに実行に移す。


(間に合えよ!!)


「高島!?・・・横島?」


横島は高島の魂を操作しこちらに来させる。自分と同じ魂なのだ。操作する事など
造作も無い。メフィストは動き出した魂に驚き、行き着いた先にもう一度驚いた。


(急げ、急げ、急げ、急ぐんやーーー!!)


見れば空間の歪みが最大限まで広がっている。


《補》

《補》助―

手元に来た魂を最後の文珠を使用して自分のサポート役に回す横島。
これならば文珠の効果が切れたと同時に高島の魂は横島から離れる事になる。

そして、この一瞬横島は―――


「俺の逃げ足は宇宙一じゃーーーー!!!」


―――風になる。


――世界の流れが変わる――


サイキックモードが発動したというのか?
いや違う、それでは間に合わないに決まっている。
第一それではこのスローな世界で変わりなく走れる自分がおかしい。

ではなんだ?


答えは簡単だ。


――超加速――


文珠など使わなくとも自分は一度この技を成功させているのだ。
それなのに自分の体に同じ魂が二つある状態で失敗するわけがない。
自分達は互いに波長がシンクロし共鳴した状態でその力は相乗効果によって最早計算で
きるものではない。


目の前では徐々に亜空間に引きずりこまれていく二人。
アシュタロスが何か叫んでいるが自分には聞こえない。第一関係ない。
今の自分の目的は一つ。


「ふっふっふ。」


「後でお仕置きじゃーーーー!!!」

その瞬間、悠闇の背中に悪寒が走ったそうだ。
横島の頭で浮かんだお仕置き内容が知りたいところである。

もう二人の体は亜空間に入りきっている、あとは歪みが元に戻るだけだ。


横島は亜空間に入り、


「このアホ心眼!!」

とりあえず悠闇の頭をしばいてから急いで腰に手を回して回れ右ををする。
悠闇は横島に気付いたようで何か言っているのが聞いている時間は無い。


「間に合えよう!!」


ゲートはすでに大の大人がギリギリ出られるくらいまで縮まっていた。


「間に合え。」


ゲートはさらに勢いを増して閉じていく。このまま担いで行った状態では間に合わない。
横島はとりあえず悠闇をゲートに向かって放り投げた。


「間に合え。」


悠闇はそのまま元に空間に到着して倒れそうになるのを堪え横島を見つめる。
今の自分はサイキックモードと違って全ての感覚が加速しているのだ。悠闇が
何を言っているか聞こえないが何を言おうとしているかは十分に伝わる。
どうやら自分が何故動けたのか不思議でしかたないらしい。悠闇は横島なら
絶対に自分の邪魔をすると予想していたからこそ横島の霊力を根こそぎ奪って
動けなくしていたのに、これではまるで意味が無いと叫んでいるようだ。


間に合ってくれ!!―――あっ・・・・」


ゲートは横島が脱出する前に無常にも今封鎖された。


――心眼は眠らない その30・完――


おまけ

「横島くんも美神さんも何処いったのかしら?」

事務所にてポツンと一人書類整理に励む愛子がそこにいた。

「素敵なオフィス・ラブを決行しようと思ったのに、何故かいつも邪魔が入るのよね〜」

愛子、いろいろ画策していたようだが美神、心眼を筆頭に計画は未だにうまくいってい
なかったようである。

「でも簡単にうまくいったらおもしろくないわ!!そう、これも青春よーーー!!


あとがき

さて横島はこの後どうなるのでしょう。

本当は始め悠闇を飛ばそうかなと考えていたんですけど諸事情により中止したのは秘密
です。(そっちの方を期待した人はいたのかな?

それと心眼のアレ=邪眼・開闢ではありません。(なんとなくツッコまれるまえに。

現黒竜将についてですが、いろいろ理由があって現在空位です。
していえば今は冷戦状態なので軍縮が進んでいるのが主な理由です。

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