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「心眼は眠らない その29(GS)」

hanlucky (2005-01-21 01:12/2005-01-21 01:13)
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「俺と契約しに来たっていうのか?」
「そうよ、そういうことで付いてきてくれない?」

突然現れたメフィストとメフィストの言葉に動揺する高島。
そんな二人を見つめる横島は、

(チチ、シリ、フトモモやーーーーー!!!)

何も考えていなかった。


――心眼は眠らない その29――


今の爆発音で外が大分騒がしくなってきているようだ。

『横島、なんとなく分かっていると思うがアレは美神どのの前世のようだ。』
「(うぉぉぉぉ、フトモモ最高ーーー!!)ってそっそうなのか!?」

心眼の意外な一言でなんとかかえってきた横島であった。
メフィストも横島の存在に気付いたようで不思議そうな顔をする。

「え〜と、何で高島どのが二人も・・・どっちが高島どの?」
「俺に「僕です、お嬢さん!!」って待てコラ!!」

高島を差し置いて名乗り出る横島。
美神の前世とかと無視してこの際なんとしてでも美女にお近づきになろうとする。
揉める横島と高島であったが鬼道が本当の事を言ってなんとか収拾がつく。

「まぁいいわ、この際二人とも付いてきてくれない?」
「「おう!!」」

とりあえずここから逃げる事が先決な高島と美女についていこうとする横島。
横島はとりあえず少しでもメフィストの美神と同等の体を見物する事にしたようだ。
心眼は特に横島に危機が迫っているわけではないので何も言わない。

「じゃっ振り落とされないでよ!!」
「あ〜美神さんと違って反撃がない!!この感触がたまらん!!」
「・・・落とすわよ。」
(・・・そうしてくれ。)

そのまま何処かに飛んでいくメフィストと両脇に抱えられた横島と高島。
もちろん横島はスキンシップを欠かさない。落とされそうになるまで触りまくる。

その場に残されたのは鬼道と現在気絶中の西郷であった。

「行ってしもたな。」
「うっう〜ん。はっ・・・鬼道くん、高島は何処にいったんだ!?」

三人の姿が見えなくなってしまって初めて目を覚ました西郷。
すぐに鬼道に向かった方角を聞き西郷は追いかけて行った。

「ちょっと待ってや!!僕も行きますわ!!」


メフィストに連れ去れた横島たちは高台にある廃墟と化したお寺にいた。

「・・・あんたら二人、本当に聞いてるの?」
「この際どさがイカス!!」
「流石は来世、よくわかってるじゃねえか!!」

横島と高島、現在二人そろってメフィストの際どいカッコを直視している最中であった。
流石は前世と来世といった所であろうか。

メフィストが高島と契約したかったのは高島の魂を欲しがっていたためであった。
すぐに高島を殺しても魂は手に入るがそれでは不十分であるためある取引を行う
必要があった。

取引の内容とはメフィストは高島にどんな願いでも三つだけかなえる代わりに魂を
頂くというものである。それを行うことによってメフィストは欲望に満ちた魂を入手
する事が可能になるのであった。

(この魔族、どうやら生まれて間もないようだな。感性が幼すぎる。しかし・・・
 この魔族を作ったのはまさかあの男なのか?霊波の質がやけに似ているが・・・)

心眼が何かを考えている間も、横島、高島コンビの暴走は止まらない。

「おい、横島!!どうしたらこの姉ちゃんをうまく利用できるか一緒に考えるんだ!!」
「わかっとるわ!!・・・よし、これでどうや!!うまくいったらおこぼれの方頼むぞ!!」

『おっおのれらというヤツは・・・』

横島、すでに当初の目的を忘れ高島のセコンドに付くことを決めたようであった。
しかしこのコンビ実に息の合ったプレイを見せてくれる。
流石の心眼も横島の情けなさにぷっつんしそうな勢いである。

「どうやら決まった見たいね。最初の願いは何かしら?」

相談を終えたのか高島はメフィストに向かって自信満々の顔を作り、


「俺に惚れろ!!」


親指を立ててグッジョブ。

「・・・」

しかしメフィストの反応がおかしいので高島と横島、タッグを組んで臨戦態勢に入る。


「おいっ!!」
「「来るか、来るか!!俺たちをなめんなよ!!」」
「・・・惚れるって何?」

流石にこの出来事は想定していなかったのか、見事にずっこけるバカコンビ。

「私を抱きたいならいつでもかまわないけど?」
「マジか!!それな―――」


バァァァァァン


「許せ、兄弟。お前の死は無駄にしないぞ。・・・それでは高島に代わって僕、横島が
 お相手を―――」


バァァァァン


『何自分の前世にサイキックソーサーを当てとるのだ、おぬしは!?』

ひさびさに出ました。心眼零距離射撃。
高島を不意打ちでサイキックソーサーを爆発させて気絶に追い込んだ横島であったが、
流石に心眼から攻撃が来るとは予想外で完全に不意打ちで貰ってしまった。しかも心眼
の霊力は主である横島の霊力に比例していくので小鳩の部屋で撃ったのとはレベルが
違う。当然、メフィストを残して両者気絶モードに入ってしまった。

地面にはいつの間にか服を半脱ぎした男二人の屍が転ぶ結果になった・・・


「うっう〜ん。」
『バカな!?もう起きれるのか!?』

一分もしないうちに目覚めようとする横島。
横島に同じ攻撃は通用しなくなるということである。(搦め手は別。
一連の出来事についていけなかったメフィストもようやく我にかえる。
しばらくした後、高島も目覚める。高島と横島の間に流れる空気が微妙に殺気だって
いるの気のせいだろうか?

「・・・とりあえず愛って何なの?惚れるって発情するということじゃないの?」
「そりゃ、愛っていえば・・・横島お前が教えてやれ。」
「俺か!?・・・・愛って・・・・・アレ?」

横島と高島、お互いに何を感じたか察し熱い握手を交わす。
簡単に言えば二人とも明確に愛された事などないわけで愛について語れる技量など
持ち合わせているわけなどなかった。そのままブルーモードに入っているとメフィスト
が何かの気配を察する。

「あれ、この感じ美神さん?」
『どうやらそのようだな。』

メフィストは気配を発している方向を見つめる。
そこからは横島の言うとおり美神が現れた。


「なっ!?まさか、こいつ!!」
「何で私に似ているの!?」
「メフィストがもう一人、どういうことだ横島!!」
「ああ、美神さんか。美神さんとメフィストは俺とお前と同じ関係みたいだな。」

美神の後ろからはさらにヒャクメ、西郷、鬼道が現れる。
実は美神、鬼道の家に向かう途中にメフィストと間違われて検非違使と問題を起こして
いる時に西郷に助けられてそのままヒャクメの能力を活かしてここまで来たのであった。

美神は横島の言葉に動揺するもそのままメフィストと交戦に入る。
ますは神通棍をムチ状にして先手を打つ。

「まさか、そんな事あっていいわけ!?」

自分の前世が魔族という事実に混乱しながらもムチを振るうが―――


《穴》


ドォォォォォン


「なっ何!?・・・まさか、横島ーーーーー!!

いきなり落とし《穴》を発生させて美神を落とす。
発生させる場所を局所化して少しでも美神を深く落としたようなので自力の脱出は
困難であった。美神が叫んでいるのにビクつきながらも横島は行動を続ける。

「すんまへん!!でも俺は―――」


西郷、鬼道に向けてサイキックソーサーを投げる。


バァァァァァン


「「何(や)!?」」


サイキックソーサーは途中で爆発して、砂煙が舞う。
その間にメフィスト、高島、横島は一箇所に集まりこの場から空を飛んで脱出する。


「―――ここでメフィストとウハウハするんやーー!!!」
「後でどうなるか覚えてなさいよーーーーー!!!」

実にふざけた理由で美神と敵対したようであった。
なんとか三つの願いをうまく使ってやろうと欲望丸出しであった。
それほどまでに先ほどのセリフが頭に残ったということであろう。
心眼が何故止めなかったというのは下手に戦闘中で零距離射撃を行うわけもいかなかっ
たのでとりあえず今は横島の愚行を見逃す事にしたようであった。あくまでも今はで
あるが・・・


現在、羅生門の上に二人の人物が佇んでいた。
一方はぶかぶかのローブを被っていて姿はよくわからないがその漂う雰囲気から相当の
手練れと思われる。もう一人の人物は平安京に相応しい格好をしていたが、その纏って
いる邪気が禍々しかった。

「何故だ・・・メフィストの気が何故二つに増えたのだ?」

ローブを被った男は重々しくメフィストと美神という同じ魂を持った存在を不思議に思
う。何やら二人の会話からはローブの男は魔王に近いの存在のようで、何かの計画を立
てている最中であった。

「ご心配なさいますな、アシュタロス様。この事態は菅原道真におまかせください。」
「いいだろう・・・まかせよう。」


「は〜やっぱり俺って取り返しようのないことしちまったのかな。」
『何回、同じ事を言っているのだ。とりあえず今は美神どの傍で動向を見るしか
 なかろう?最悪でも現世に連れてもらわねばならぬのだぞ。』

昨夜、美神から命知らずの逃亡に成功した横島は肝心な事を忘れていた。もし美神が
怒ってそのまま現世に帰られたりすれば二度と現世に帰れない事に気付いたのだ。
これはあの美神であるため決して有り得ないことではない。
だからといって素直に出て行ったら怖いというのでとりあえず美神の傍でコソコソする
事に決定したのであった。メフィストと高島もヒャクメという存在がいるため下手に
動く事はできない。そのため一同はヒャクメの裏をつくため、あえて遠くに行かずに
ヒャクメのすぐ傍に虫に変身してやり過ごす事にしたのだ。そのため横島と高島は
メフィストの腹の中にいる形になっている。

対する美神たちであったが、西郷に味方と判断されたおかげに現在西郷の家に招かれて
いた。もちろん家を壊された鬼道も一緒である。ヒャクメは現在横島たちを遠視しよう
としているが、間近にいることに気付けなかった。腹にはいっている高島と横島はもち
ろん、メフィストの霊気も美神とごっちゃになっていて気付く事はまず無理であった。

とりあえず横島はメフィストの腹の中から美神の話を盗み聞きする。

「横島めーー!!・・・ヒャクメ!!まだ見つからないの!?」
「ひっ!!今やってるのね〜!!」

予想通りご機嫌斜めな美神であった。流石に落とし穴に落とされるとは思わなかったの
であろう。西郷と鬼道もその様子にビビるしかなかった。ヒャクメは必死に捜索に
専念するがまさかすぐ傍にいるなんて思ってもいないだろう。

「・・・心眼、俺帰れるかな〜?」
『流石のワレも何とも言えんな。せめて命があったらもらい物と思った方がよかろう。』

とりあえず現世に帰るつもりはないようで横島を探すのに必死な美神であった。

「ね〜横島、暇だったら愛って何か教えてくれない?」
「うっ、そうだな。この際やな事は忘れよう、それがいい。」
『忘れてどうするのだ、忘れて。』

現実逃避を始める横島にメフィストは議題を持ってきた。題して、

”愛って何ですか?”

これに先ほどまで平安巨乳絵巻をいう本を読んでいた高島も参加する。
三人に共通する事、それは愛を知らないことらしい。

「とりあえず、愛ってどんな形があるのよ?」
「そりゃ〜やっぱり情熱的な愛っしょ!!」
「淫らな愛というのも捨てがたいんじゃないか?」
『・・・忍ぶ愛。』
「「「えっ!?」」」
『冗談だ。』

意外なキャラの参加で議論は白熱していった。


ヒャクメはすでに今日の捜索は打ち切り、横島も議論が終了して腹をすかしている時で
あった。


ゾクゾクゾクッ

「心眼!!」
『この怨念、あまりにも危険だが行くぞ!!』
「ちょっと待ちなさい!!」

横島と心眼が悪寒を感じてからすぐに美神たちも何かの存在に感づく。
だが美神たちはその存在が何処から来るか分かっていない。早くしなければ気付いたら
死んでいるというオチになってしまうので、


パンッ


メフィストの制止を無視して虫の中から飛び出す横島。

「この波動!!って横島クン!?」

突然現れた横島に一同は驚くが今はそれどころではないのであまり気に留めてる余裕が
ない。それほどまでの邪気が怨念が漂い始めた。


――サイキックモード発動――


心眼はあまりに危険な気配であるためすぐに全力を出すことを指示する。
何より危険と感じたのがこれほどの気配が今まで感じられなかったのだ。
いつ不意打ちを受けてもおかしくなかった。


「・・・見つけた!!美神さん伏せて!!」
「えっ!?」


美神の方向に気配の発信源を見つけたのかすぐに栄光の手を伸ばして横に斬る。
美神も横島が何をするのか察して邪魔にならないようにその場に伏せる。
ここら当たりは息の合ったコンビネーションである。


「何を小癪な!!」
「バカな!!道真公だと!?」

暗闇の向こうから現れたのは道真の怨霊であった。道真は横島の栄光の手を手に
持っている扇子で防いでいた。


――サイキックモード解除――


道真は奇襲に失敗しそのきっかけになった横島を忌々しく睨み、その後に美神を睨む。

「メフィストよ、お前には原因不明な不安要素があるのでな。アシュタロス様は今は
 大事な時期、よってここで不良品は処分する。」
『バカな!!アシュタロスだと!?』
「おっおい、どうした心眼!?」

アシュタロスという単語に過剰反応する心眼。

『アシュタロス・・・天魔戦争の際、その技術力で神界を追い詰め限りなく魔王に
 近いと呼ばれた魔族だ!!』
「ほ〜たかが精霊の分際でよくそこまでアシュタロス様を知っているな。・・・貴様らが
 何者か気になるが、まぁここで始末すれば関係なかろう。」


バシュッ


道真は雪之丞の全力以上の霊波砲のような雷を軽く放つ。


「なんじゃそりゃーーー!!」

全員なんとか回避に成功するが後ろの家の壊れ位を見ると今の攻撃の恐ろしさに
ゾッとする。


ぽんっ


「しまった!!術が解ける!!」

今の反動でメフィストの術が解けてしまい姿を現すメフィストと高島。
突然現れた二人に美神とヒャクメが噛み付く。

「人が必死で探してたのにずるいわーーーー!!!」
「お〜中々ええ姉ちゃんやんけーーー!!」
「探したわよ!!このクソ女!!」
「ちょっと今はそんな場合じゃ!!」

道真を前に高島の胸倉を掴むヒャクメ、そしてヒャクメにセクハラをかまそうとする
高島。美神とメフィスト、どっちかというとメフィストが冷静のようであった。
美神が横島に何も言わないのは先ほど助けてもらったばかりなので機会を逃してい
まったようだ。

「なるほど・・・そういうことだったのか。」

メフィストは仲間であり上司であるはずの道真に自分が処分される理由を尋ねるが
道真は不良品と言い切り捨てる。

「消えろゴミども!!貴様の力などわしの10分の1に満たぬだろう!!」


バチバキッ


道真は先ほどよりさらに強力な雷を放つ。
陰陽師である西郷、高島、鬼道はそれに対抗するが、実力の差は歴然のようだ。

「くっ避雷!!」
「雷よ、退け!!」

超一流である西郷、高島の術は少しは効いているようであったが陰陽師に成り立てで
ある鬼道の術はまだまだであった。

「だったら・・・夜叉丸!!」

横島が始めて見た時の夜叉丸を鬼道は道真にぶつける。
横島もすぐに道真を狙撃できる位置に行き右手に意識を高める。

「ふんっ雑魚の式神でこのわしをどうにかできると―――」


《退》《去》


パシュッ


横島は夜叉丸の影からサイキックブレットを放った。
《退》《去》と文字通りこの場から道真の姿が消えそれに伴って雷も消える。

「横島クン!?アイツを何処にやったの!?」
「え〜ととりあえず自分のイメージがこの時代にあるものを浮かべたんすけど、うまく
 いったみたいっすね。まぁ場所なんですけど―――」

横島は道真を確実に倒せる方法が浮かばずとりあえずこの危機から脱出するため道真を
何処か遠くに《退》《去》させる方法を思いついた。それでこの時代にあるものを浮か
べた結果、

「―――四天王寺っす。」
「はぁ〜?」

大阪出身の横島。東京の建物ではいつ建てられたかわからず故郷で自信のあった寺を
思い浮かべた。もし横島が大阪城といった未だ存在していない建物を浮かべたり、
中途半端なイメージを浮かべていては道真は飛んでいかなかっただろう。

「まぁいいわ、とりあえず時間は稼げたけどこれからアンタたちはどうするの?」
「どうせすぐに戻ってくるんでしょ?道真を倒すだけじゃもう私たちは助からないわ。
 ・・・一つ逃げ切るための方法があるから試して見るわ。」
「では我々は今のうちに信頼できる陰陽師たちに知らせよう。・・・高島、今はお前の
 力も必要な時だ。道真公を倒すまではとりあえず捕まえるのは待ってやる。」

そういって集合場所と時刻を決めた後にメフィストと西郷、鬼道はそれぞれの場所に
向かう。美神たちと高島は少しでも戦況を有利にするため戦場になる場所に仕掛けを
施しにいく。ちなみに美神はいい加減現世に帰ろうとしたが、未だに自分が魔族に
狙われている理由がはっきりしていないので泣く泣く残る事になった。もちろん
道真を退治できたら西郷たちから報酬をきっちりもらうつもりではあったが。


すでに道真を戦ってから二時間を経過したというところであろうか。
決戦の地に選んだ場所は人気のないところにして陰陽術によって気の流れを自分達に
有利に働くように仕込んでいた。

現在この場に残っているのは美神、横島、ヒャクメ、高島、西郷、鬼道、メフィスト
そして、

「いやはや、若い時の血が騒ぐの〜」

六道当主。

西郷は中途半端な陰陽師など無駄に犠牲を出すと判断して、自分の知り合いで最も
能力的には頼りになる六道当主にのみ頼む事にした。鬼道は目の前にいるダンディーな
ひげ親父に大分緊張しているようであった。能力的にといったが別に人格破綻者という
わけではない。ただ自分の一人娘に少しでも手を出そうとした男を十二神将をつかって
半殺しにするぐらいである。問題は声を掛けただけで少しでも手を出したことになる
らしい。娘さえ絡まなければ実にいい人である。よって流石の西郷も六道娘には決して
近づかなかった。

鬼道の恋が実る可能性は限りなく少ない・・・


「来たみたいっすよ。」

いち早く気付いた横島と心眼とヒャクメ。
その言葉に皆が円陣を組みいつでも迎撃できるように備える。

「アレは・・・式神か!!」

周囲から大量の人型の式神が現れる。
その目線からあきらかに自分達を殺すつもりで来る事がわかる。

「ビカラ、アンチラ、シンダラ!!」

六道当主は冥子とは違い確かに戦術というものを知っているのだ。
六道家というのは女の場合のみあの暴走病が発生するのであろうか?
ともあれウサギのアンチラでかき回し、イノシシのビカラで止めを差す。空中はトリの
シンダラに任せる。

「夜叉丸、しっかりせえよ!!」

鬼道は式神を攻撃に専念させている六道当主の守備を中心に戦う。
まだまだ横島が知っている鬼道にはほど遠いがこの程度の式神が相手なら十分であった。

「高島、行くぞ!!」
「指図すんな!!」

互いに女癖がある高島と西郷であるが、その実力は陰陽寮を仕切る陰陽頭に匹敵する。
美神やメフィストと共に確実に数を減らしていく。

横島とヒャクメは現在道真の居場所を探っていた。霊波の流れなら横島。遠視の能力なら
ヒャクメと互いに優れた霊視を行う。

「・・・見つけたのね!!」
「何処!?」

横島がある程度の範囲にしぼりそこからヒャクメが遠視で道真を発見する。
ヒャクメの様子では木の上で式神の操作に集中しているようであった。

「よし!!それじゃ作戦通りに行くわよ!!」

美神の声を号令に道真の方にメフィストを先頭に向かう。
メフィストは集合までの間にアシュタロスのアジトに向かって今まで集めていた
魂エネルギーの結晶を盗むことに成功したのであった。それを飲み込んだメフィストの
力は不意打ちを決めれば道真を倒せるぐらいになっていた。後は如何にその事をバレな
いよう決めるかであった。


「ふんっ、やはり式神程度では体力を削る程度であったか。」

道真は迫り来る美神たちをすでに警戒していた。どうやったかわからないが自分を
見知らぬ土地に飛ばしたのだ。警戒するなというほうが無理であった。
おかげでここまで戻ってくるのにかなりの時間を労した。逃げられたかと思ったが
帰ってきてみれば自分を倒すためにわざわざ待ち構えているようなのでとりあえず
式神を放ってみたが大した効果は見られなかった。

「とにかくあの小僧にだけは注意せねばならぬな。・・・さてこの菅原道真を
 倒せると本当に思っているのか。」

動き出す道真。とりあえずは最初のターゲットであるメフィストを倒す事にしたようで
あった。

「ふんっバカ正直に真正面からとはな・・・その愚行をあの世で後悔せよ!!」

道真はメフィストの背後を取る。
それに反応できていない、いや気付いてさえいないメフィスト。


ザシュッ


道真の爪がメフィストの首を掻っ切る。


「あっけないな・・・何!?


メフィストの体はいきなり首の取れた人型の紙へと変化する。
西郷が今朝、美神に対して役人を騙すためにした事と同じことをしたようである。


「今よ!?」
「なっそこかーーーーー!!!」

後ろの声に反応すればそこにメフィストが存在した。
メフィストが構えを取っているがそれより早く道真が雷を放つ。


バキッバキッ


「舐めた真似をしよって!!」


見事雷を直撃させる道真。すぐにメフィストが死んだか確認しようとするが、


「なっ!また式神だと!!」


二人目のメフィストも焼き焦げた人型の紙に戻る。

「バカな!?このわしがこうも式神を見極められぬだと!?」

陰陽師として優れているからこそ信じられない。
考えてみれば普通は一度目で見極められたはずなのだ。
なのに二度も引っかかってしまった。何故?

だが事態は道真に考える暇を与えないようであった。

「またメフィストだと?・・・ふっ・・ふっふざけおって!!

前方から現れたメフィストに怒りのまま我を忘れて雷を放つ道真。


ザァァァァンッ


「なっ何?」


道真の体が閃光によて真っ二つに裂かれたように見える。

「何故だ?何故わしがこのように・・・何故貴様ごときがわしを一太刀で・・・」
「敵にわざわざ教えるバカはいないわよ。」

口惜しそうに道真はそのまま地面に崩れ落ちた。


「美神さん、うまく行きましたね!!」
「ええ、なんとかこれで終わったわね。」

横島たちが立てた作戦は簡単である。
道真に向かった一行はまずメフィストは道真に完全に隙ができるのをうかがう。
横島がメフィストの式神の効果を高めるために《幻》の文珠を使用して道真を惑わす。
始めのメフィストは西郷が美神によって式神の効果を上げてから道真に向ける。
次に最も出来のいいしゃべることさえ出来るメフィストの式神を作れる六道当主が放つ。
最後に鬼道が美神の補助を受けて式神を作ったがすでに逆上している道真は多少出来が
悪くても気付くことができなかった。ヒャクメは常に道真の位置を把握して高島が鳥の
式神を使用して皆に伝達する役目であった。もちろん陰陽師たちは気の流れを操り少し
でも自分達に有利なフィールドを作成し続けた。そしてとどめは背後からのメフィスト
の一撃である。

「それにしてもその結晶すこしは分けて欲しいところだけど・・・とりあえず西郷さん、
 報酬の方よろしくね。」
「美神どのや、それについては我が六道家が保障しようぞ。」

六道当主としては面白い事に出会えて気分が良かったゆえ美神に安請け合いする。
皆もようやく事態が落ち着き談笑を始める。高島については今回の功により六道当主か
ら恩赦を受けさせてくれる話さえ出てくる。しかし高島はメフィストと京かた離れる事
を伝える。

「それじゃ・・・とりあえず戻りますか。じゃあねメフィスト、もう二度と合う事は
 ないけど元気でね。」
「あなたこそね。」

皆が一仕事をやり遂げて解散しようとした時であった。


ズゥゥゥゥン


「なっ何!?」


上空から異常な霊圧が発生する。


「そろそろお遊びはやめようか、私が来たからにはもう茶番は終わらせてもらおう。」
「アッ・・・アシュタロス!!

羅生門の上に道真と一緒にいたローブの男。

次の魔王に最も近いと言われている魔族。

天魔戦争の際、心眼を、神界を苦しめたアシュタロスがそこにいた。

「起きろ、道真!!」
「バカな!?」

アシュタロスが指を動かしただけで先ほど倒したばかりの道真が復活する。
すぐに止めを差し直そうとメフィストが道真に攻撃を加えるが完璧に防がれる。

「無駄だ、あの結晶は私以外誰も扱えん。おまえに使えるのは所詮結晶に含まれる
 不純物にすぎん。」

その威圧感に圧倒される一同。誰も身動きが取れない。

『横島、絶対にアヤツを霊視しようとするな。・・・壊れるぞ。』
「・・・俺もそう思った・・・ありゃ反則すぎんだろ?」

ヒャクメと横島だけがアシュタロスの強さを分かる事が出来た。
フェンリルの時は違い純粋なる強さ、それをアシュタロスには感じられた。
フェンリルから感じられた狂気などがあるわけじゃない。ただ逃げろ、あの存在は
次元が違う。だが足が動かない、下手に動けば殺される。横島はまさしく蛇に睨まれた
蛙であった。

他の者は”ただ強い”としか感じられなかった。それ以上感じる事を体が拒否したのだ。
感覚が、霊感が麻痺をする。ヤツを感じてはいけないと本能が叫ぶ。

だがその中で唯一メフィストが体を動かそうとした時、

「やれやれ、分からんヤツだな。」


パンッ


「えっ!?」
「高島ーーーーー!!!」


高島の脳が貫かれる。間違いなく即死であろう。
メフィストは高島に近づこうとするがその間に復活した道真が阻む。

そしてここである者は決断する。


(ヒャクメ聞こえるか!?)
(えっえっもしかして!?どうしたのね!?)


あまりの一瞬の出来事に一同はあっけに取られる。
メフィストは道真を倒そうとするが先ほどと違い全く攻撃が通じない。
そのまま道真に返り討ちにあい吹き飛ばされる。


(おぬしは今から美神どのの能力を利用して時間移動の準備をせよ。ワレがアヤツを
 足止めをするのでアヤツを時空の彼方に飛ばすのだ!!)
(そんな事どうやって・・・まさか!?)


吹き飛ばされ倒れこんでいたメフィストの元に高島の体からは魂が抜けて
メフィストの傍に向かう。メフィストはその魂を抱きながら涙を流して悲しみにくれる。

「私は・・・まだ・・いろいろな事を・・こんなもの・・・欲しくなんて・・
 一緒に・旅を・・しようって・・」

泣き崩れるメフィストであるが、事態はさらに加速する。

『横島よ・・・お別れだ。』
「えっ、おい!?しんが―――」
「横島クン!?」

突然横島の体が崩れ落ちる。
美神が駆け寄ろうとするがその前にバンダナが輝き始める。


《封》《印》《解》《除》


――それは天魔戦争の際――


横島のバンダナが輝いた後、次に高島の体が光に包まれる。

「何事だ・・・この霊圧は?」

アシュタロスは先ほど自分の手で殺した男の場所から立ち上がった霊圧に興味を覚える。

(今の我がアヤツから横島を守るにはこれしかあるまい。高島どのには悪いが使わせて
 もらうぞ!!)


――数多の戦場を駆け抜け――


輝くその場所からは高島ではなく全く違う者が現れる。

「あれって・・・何で?あの姉ちゃんが?」

横島は強引に4つの文珠を使用され意識を失いそうになるも、
目の前の展開に呆然としていた。
何度も夢で会い、その度に正体を確かめてやると誓った相手。
それが今、目の前に現れた。


――その全ての戦場から帰還し――


現れたのは貧乏神の試練の際に始めて出会い、横島に猿神の試練の際には発破をかけた
女性。その風格は幻で出会った以上であった。女性は横島を見つめながら微笑む。

(今まで楽しかったぞ、横島。これが最初で最後のワレがおぬしに見せられる戦いだ。)

女性は横島を見つめた後、今度は自分の状態を確認する。

「・・・それにしてこの姿になるのも懐かしいな。」

体は動く、だが霊力は殆ど無い。つまり全力で戦える時間は殆ど無い。

「はぁぁぁぁ!!」

女性はアシュタロスを睨みつけながらさらに霊圧を開放する。

だからといって出し惜しんでいる余裕はない。
ただ自分のする事は一つ。

「ワレは主君、横島忠夫を守護する者―――」


――威風堂々たる先代、黒竜将であった――


「ほぅ。」

アシュタロスはその霊圧に感心するも余裕が崩れない所を見ると己の力に絶対の自信を
持っているようであった。

「―――主に絶対の勝利をもたらし―――」

(・・・持って30秒か・・・だが十分だ!!)

ただ自分は横島を守るだけの存在。
そのためなら如何なる代償も支払おう。


「―――そしておぬしに絶対の敗北をもたらす者―――」


そう、その代償が例え―――


――竜姫がそこにいた――


「―――我が名は悠闇、参る!!」


その代償が例え自分であろうとも。


――心眼は眠らない その29・完――


あとがき

お待たせしました・・・いや〜ここまで長かった。

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