朝、静かな町並みの空気をぶっちぎる影。
ご近所にはお馴染みになった土煙。 早朝から仕事がある家庭では、目覚まし時計代わりになりつつある。
さて、今日も・・・
「でぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! タマモ、急ぐでござる!!」
土煙を巻き上げ、人間では出せない速度で道路を駆け抜ける、赤いメッシュにカットジーンズの少女。
その名も、人狼少女『シロ』
「分かってるわよ! いちいち五月蝿いわね!」
軽やかに屋根から屋根へ飛び移りながら、シロを追いかける九房のポニーテール、コギャルな服装。
その名は、元白面九尾の大妖怪『タマモ』
「先生の如意金箍棒<ニョイキンコボウ>は最強でござる!!」
「だけど、私達二人が命を掛けて望めば、死中に活有り」
朝っぱらから、大声でナニを叫んでいるのでしょうか、この二人は・・・
「やるでござる、今日こそは!」
「シロ! このままでは間に合わない!」
タマモが飛びながら、自分の腕にナイフを突き立て血を流す。
「今こそ欲する我が性技!! 天に十六! 地に八方!
ホォーホォートゥーベーーー ハイィィィィィ!!!!!」
血を媒体に術を発動させるタマモ、縮地の術だ。
「「ハイィィィィィィ」」
二人して風の様に消え去った。
先生(ヨコシマ)に
性技の慈悲は
無用
さて、横島の下宿では、
「(ごぎゅ・・・ まさか此処まで成長しているとは)」
「今日も元気ですね、悟○さん」
「オッス! ひさしぶりだなやぁかーちゃんとねぇちゃん」
すぴょすぴょと大の字で寝ている横島の足元には。
西のグレートマザー 横島百合子(旧姓:赤井)と、
我らが姐さン、花戸小鳩が正座しており、百合子は姐さンの朝の楽しみを横から見ていた。
「この前のねぇちゃんの胸みてから妙に元気で おらぁこんなに動けるんだ」
モーターで動いているかのように、元気に、元気すぎるぐらい“ギュンギュン”と動き。 たまに、腹に“ビタンビタン”と当ったりしているが元気な証拠と小鳩は目を細めていた。
方や実母である百合子は、
「(旦那より大きいわ・・・ 反りも強度もス・テ・キ ♪ 一回ぐらいなら食べちゃっても ♪)」
強烈に加速的に壊れ始めている。
「で、小鳩ちゃん。 これの味見はした? 怒らないから正直に答えて」
「えっ その・・・ まだです。 触ってもらったりは数回あるのですが・・・」
こういった質問に弱い小鳩は、素で答えてしまう。
「こういった事は、やっぱり横島さんからして頂きたいですし。 そのあの、壁も薄いですし、 ?」
小鳩の視線はすっと玄関に向けられる。
「おば様、この幸せもっと味わいたいですか?」
「? そうねぇ、じっくりとたっぷりと息子の成長を確認したいわ」
“じゃぁ”と小鳩は百合子を連れて玄関から外に出た。
外に出ると、階段を昇りきりこちらへ突っ込んでくるけものっ子が二人。
「おば様は玄関を塞いでいてください」
小鳩は百合子にお願いをして、おもむろにスカートのポケットから丸まったティッシュを取り出し、
二階から落とした。
「「ヨコシマ(先生)のにおいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」」
もつれるように二階からダイブ。
見事な車田落ちだった。
「ううううう・・・ 小鳩殿酷いでござる」
頭にできたでっかいこぶを押さえながら訴えるシロ。
「そうね、しっかりと私達の本能利用してるし」
悔しいのか出されたお茶を啜りながら文句を言うタマモ。
「だって、そうしないと横島さん起きちゃいますし、今日はお休みでしょ」
小鳩は回答しながらも、卓袱台を取り出し朝食の準備をしている。
シロの前にはびた○ん。
タマモの前には薄揚げとお稲荷。
小鳩と百合子の前にはご飯とお味噌汁。
「さて。 頂きましょうか」
“いただきます”の後、おもむろに食べだす小鳩とけものっ子。 疑問符を撒き散らし固まる百合子。
「ちょっと小鳩ちゃん、いつもあれ見ながら食べてるの?」
「何時もじゃないですけど、お休みの時は」
小鳩に引き続きシロも応える。
「食が進むでござるよ、拙者としては美味しく頂いて欲しいのでござるが・・・」
「今の所これで我慢するしか無いわ」
タマモも加わる。
“がつがつ”とまではいかないが、勢いのある食べっぷりでかき込んでいく。
「(まぁ、忠夫が手を出さないのは分かってるから、下手にアプローチされるよりかはマシかな) ふぅぅ~ん」
一部を除き、楽しい食卓風景であった。