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▽レス始

「彼が選んだ道−9−(GS)」

リキミ・スキッド (2005-01-16 23:18/2005-01-16 23:26)
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それはもはや消えかかっている人としての最後のときの記憶。
誰もが彼を見守っていた。
思えばこのとき既に彼以外の人物たちは知っていたのではないだろうか、魔族因子を我が子に授けることで命を永らえさせるということがいかに愚かな行いであるかということを。
彼の意思で変わるか、彼の死後に変わるか、どちらにしても彼が人を捨てなければならなくなるということを彼らはこのとき既に知っていたのではないだろうか。
だからこそ、彼が傷つくとわかっていても本当のことを隠し、外道の方法を彼に授けたのではないだろうか。
全てのオカルトアイテムに精通している彼女の頭脳がその可能性に行き着かないということはまずありえない。
だが、彼女はそれから目をそらせることしか出来なかったのかもしれない。

―――――子供を作ればそれは
     彼女の生まれ変わりである可能性が高い――――――

確かにその言葉は実現できる確かな言葉だ。
だが補足説明が抜けている。
生まれ変わったとしてもその子供に幸せなど存在しない。
生まれ出た瞬間に虚弱な人間因子は魔族因子に書き換えられ、そしてその書き換えに絶えれるほどの強度は人間の赤子は持ち合わせてなどいない。
待っているのは横島の代わりに死ぬという結果だけだ。
一時凌ぎに出した提案は彼を絶望の底へと叩き落す最高の案でもあるのだ。
彼を失うことを恐れた彼女の悲しき提案を聞き、それらの事情に詳しいはずの神魔両者もそのことについての真相を明らかにはしなかった。
そんな彼女達にとって彼が魔族となることを選んだのは、彼を絶望させない方法であり、彼を絶望の道へと踏み出させる事となる安心でき、そして嘆き悲しむ道であった。
そしてそれは最後まで彼に告げられることもなく、彼は地獄の門をくぐりぬけた。
二度と帰れないとわかっていても、彼は彼女たちの悲しみに満ちた顔を見つづけることなど出来なかったのだ。


―雪乃丞―

「聞いてくれ。美神・・・さん。女幽霊が俺に攻撃してきやがったんだ!!」

雪乃丞は美神のことを旦那と呼びそうになった瞬間に発せられた美神の殺気に慌てて言い直すと、自分が先ほど女幽霊に攻撃されたということを早口で言い切った。
旅館で出された鍋をつつきながら、美神は旅館の主人に視線を向ける。

「温泉に出るのと同じのかしら?」
「うんにゃー、ウチに来るのはむさ苦しい男だけですわ。そんな女の子でした逆に客寄せになるで。」
「袴姿だったってことは、案外ここの土地神だったりしてね。」
「いや、絶対アレがここの怨霊だ。突然攻撃してきやがったんだ間違いねぇ。」
「はいはい。いちいちそうやって先入観を持ってたら、伊達君GSやっても早死にするわよ。」
「はぁ? なんでだよ。美神・・・さん。」
「アレが黒幕だって決め付けて倒した後に別の本当の黒幕が出てきたら油断しきってる常態を攻撃されてサヨナラってことよ。」
「油断するな、ってことか。」
「ん〜意味合いが違うんだけど、伊達君の頭じゃ理解するのはまだまだ先ね。さて、と。」

やれやれという風に肩をすくめた美神はその場で立ち上がるとあらかじめ出しておいた妖怪の居場所を探る見鬼君というオカルトアイテムを手にとる。
その動作でこれから妖怪退治に行くということを理解した雪乃丞はやる気十分と立ち上がる。

「こちらの方はお下げしてよろしいでしょうか?」

美神が食べていた鍋をかたずけようとしている旅館の店員の言葉が戦闘意欲に満ちた雪乃丞の耳に届いた。

「除霊し終わった後に俺も食うから新しいのを用意しといてくれ。」

美神に師事して雪乃丞がモノにした最初の精神的な物は、その大きすぎるずうずうしさであった。
店員のわかりましたという言葉を聞いた雪乃丞は意気揚揚と先に行って姿のない美神の後を追いかける。
二人は見鬼君が指し示す方向に歩いていき、最終的に旅館の売りでもある露天風呂へとたどり着いた。

「反応はあるんだけど、姿は見えないわね。」
「炙り出したりする道具はないのか? 美神さん。」
「あるにはあるんだけど、高いのよ。それに、もしかしたら炙り出す前に燃やして消滅さしちゃうかもしれないし・・・。」

美神の言う通り、実際にそういう機能を持ったオカルトアイテムは存在する。
だが、それには重大な欠点がある。
炙り出すということは霊がいない場所まで霊的攻撃を空間に与えるということだ。
それはすなわち、霊脈を乱すことに他ならない。
オカルトアイテムの中にある欠陥商品の一つである。雪乃丞は勉強不足でそのことを知らない。
では何故、美神が雪乃丞の提案にのるフリをしたのか・・・

「やっ止めて欲しいであります!」

見鬼君が反応しているという事は幽霊がこの場にいて隠れていることに他ならない。
美神は欠陥アイテムを利用して、本当に幽霊を言葉で炙り出したのである。

「じっ自分は明痔大学ワンダーホーゲル部員であります。寒いであります。助けて欲しいであります!!」
「アンタがここにでてる幽霊?」
「はっ? ・・・そうであります。遭難して、死体は未だ雪の中で助けを求めようとしていたであります。」
「と、いうことは、アンタはその死体を見つけて供養すればいなくなるって事ね。」
「はっそのつもりであります。」
「美神、さん。そういうことしなくても霊気で消滅させりゃあいいじゃねぇか? 俺がやってやるよ。」

そう言って雪乃丞は拳に霊気を纏わせる。だが、次の瞬間美神に頭をどつかれた。

「って。何すんだよっ!!」
「あのね、伊達君。そうやって問答無用で霊を消滅させてたら負の怨念が体に蓄積されていって、最後には誰にも解けない恐ろしい呪いにかかるわよ。だからこそ、GSは皆、吸魔護符を悪霊に対しても使ってるんじゃない。」
「そっそうなのか。問答無用で消滅させりゃあいいってもんじゃねぇのか?」
「場合によるわね。そしてそうやって霊を消滅させちゃった場合は綺麗に浄化された場所に行って、体に纏わりついた負の力を払わなきゃいけないの。で、その浄化された場所って言うのは今の時代、なにかと険しかったり、めんどくさかったりするのよ。」
「あっあの〜、自分は放置でありますか?」
「わかってるわよ。アンタの死体は伊達君が捜してくれるわ。」

まるで当然のこととばかりにそう言い放った美神の言葉に雪乃丞は遅れて反応した。

「なっなんで俺が!?」
「ここらへんは霊的環境がいいから山なんかには伊達君にとって絶好の戦う相手がいると思ったんだけど・・・。」
「行くぜ!!」

そう意気込んだ雪乃丞を見て、美神は口元をゆがめる。

確実にいるとは言ってないからね。

美神令子、詐欺の才能有りである。


――横島――

「ひっ人の死体だべ〜〜。」
「厳密に言うと死体じゃねぇんだけどな。」

横島、レイドル、早苗の三人は早苗の案内によりおキヌの体が眠っている祠にきていた。
祠に来てすぐに横島が霊波刀で壁を壊し、そして壊れた場所から氷付けのおキヌが現れたときの早苗の反応が冒頭である。
レイドルは深く考え込むようにして顔を伏せて何も喋らない。
普段の横島であるならばレイドルのそんな様子にはすぐに気がつくのだが、今の横島は氷付けのおキヌに目を奪われていた。
最後に会ったのは何百年も前のこと。
意思無き姿であろうとも、よこしまにとってはおキヌとのある種の再会であった。

「おぬしら、何者じゃ!」

突如、祠内に声が響き渡り突然のことに驚いた早苗が横島に抱きついた。レイドルはその声に脅威を感じないのか未だに顔をうつむかせたままである。
横島に至っては擦り切れた記憶の底から声に該当する人物を引っ張りあげていた。

「そういうお前こそ誰だよ?」

結局思い出すことが出来なかったのか、横島が疑問に疑問で返す。

「私は、ここを見守るもの、過去において道士という役職にいたものよ。」
「俺たちはここに潜む妖怪を退治しにきたモノだ。」
「んっあっ。」
「退治? 御主らがか?」
「俺の霊気が桁違いって事はわかるだろ。」
「むっ。それは確かに。」

人間界に出て来た魔族の力が衰えるといっても人間界で上位のこれまた上位に位置する。

「お主、そしてその隣の布を纏ったもの。人間ではないな?」
「俺たちのことはいい。俺たちはここに潜む妖怪を退治したい。アンタの返事は?」
「はっあっ・・・。」
「退治してくれるのであればありがたい。というか、お主。いい加減女子の尻をまさぐるのを止めよ。」
「やめっこっ馬鹿・・・っ!!」

早苗は横島に抱きついてからずっと尻をまさぐられていた。
昔の横島であるならば触れた瞬間に殴り飛ばされていたが、今の横島は霊気の操り方を本能的に理解した、そして女性経験のある横島だ。微力な霊気によって早苗の感度をあげて感じさせていたのである。

「しょうがねぇだろ。早苗ちゃん可愛いんだから。」
「そんなっあっ可愛いだなんて、あっあたす・・・・・・っっっ! いい加減にしてけろ!!」

早苗は快楽に流されそうになる自分を繋ぎとめ、力を振り絞って横島から離れた。
顔が上気していて、その様子はなんとも艶やかだ。

「ごほんっ。まぁそういうことであるならば、私も協力しよう。しばし待て、今からこの体の霊体を・・・。」
「待て。今すぐにやるってワケじゃない。今日はこの場所を確認したかっただけだ。明日、その霊体を呼び出してくれ。」
「ふむ。まぁ今は奴も眠っておる。お主の言い分承知した。」
「それじゃあ、ひとまずここをでるか。早苗ちゃん。今日、君の家に止めてね?」
「むっ無理だべ。あっあたすのうちにあがりこんで何する気だベか!!」
「何って・・・・・・何もしないよ。一晩泊めてくれるだけで言いから。」
「ほっ本当に何もしないだベか?」
「神に誓う。」
「本当に本当だベか?」
「本当に本当だって。」
「む〜。イマイチ信用できねぇけんど、そっちのマントの人を野宿させるわけにもいかねぇべ。一晩だけ、そしてわたすには何もしないが絶対条件だべね!」
「了解。レイドルもそれでいいよな?」

ここに来て始めて横島がレイドルの様子に気がついた。

「どうした? レイドル。」
「どうして? どうして無理をするのジョーカー? ラインを通して流れてくるこの感情はジョーカーの何?」

横島の浮かべていた笑顔が消えた。

「あっ。」
「すまない。レイドル。俺の感情がもれてたせいで嫌なことを感じさせた。」
「そっそんな、僕は別に。僕こそ勝手にジョーカーの感情を・・・!」
「気にしなくていい。・・・・・・さて、早速早苗ちゃんの家に出発!!」

レイドルがラインを通して横島の情報を読み取っていることが発覚したときの横島の顔は、レイドルの能力を知ったときの数多くの魔族がしてきた嫌悪の顔とは違い、横島のそれは心の底から申し訳なさそうな顔だった。
トクンッとレイドルの胸が横島と握手したときのように高鳴り、そしてレイドルは切望した。
横島が人間界に来て抱いていた感情がなんなのか、どうしてそんな感情を抱くのか知りたい、と。
生まれて初めてレイドルは他人の情報を欲しいと願った。


あとがき
またまた独自解釈を一つ。ども、前回から少し間があいての投稿、リキミ・スキッドです。美神の負の力の説明ですが、美神や横島は原作において吸魔護符なしで霊を退治して負の力を帯びています。ではどこで浄化しているのか? 妙神山です。と勝手に解釈した結果の設定です。というか、魔族を消滅させれるのに霊には吸魔護符で封印する。金のかかる吸魔護符で、あの美神がですよ? 理由がなけりゃ護符は使いませんて美神は。と、こうなると妙神山に行くまではどこで? ってでてきそうなのですが負の力は溜まってこそ力を発揮するので、なんとか力を発揮する前に妙神山で払えたということにしといてください。

>D,様  嫉妬と指導の両方でしょう。

>星之白金様  そのネタもらったぁぁぁぁ!! というのは冗談で。一つの案として参考にさせてもらいます。

>Dr.J様  ワルキューレあたりはもう調べ始めてるでしょう。

>隆行様  なんとかなるでしょう。横島君が、おキヌちゃんをほっとくわけありませんしね。

>九尾様  やりやすい上に横島君は死津喪比女より強い強敵と戦ってますので、横島君は今回の任務を簡単なものとして捉えているでしょう。こうやってまた、横島君の常識が人とずれていく。

>kuni様  そう簡単に昔には戻れませんよ横島君は。昔のようになった原因は次回明らかに。

>Dan様  ワンダホとの絡みは次回です。お楽しみに

>無貌の仮面様  レイドルを頑張って人気者にします。そしてだれか絵を書いてくれ! ギルミアでもオッケーですが。僕は絵が下手すぎてかけない。イメージはあるのに・・・チクショオォォォォ。

>MAGIふぁ様  魔界というのは力が全てですからね。逆らうなら殺す、変な行動しても殺す、が鉄則なのでギルミアのように業となにか思惑があることを部下に匂わせる人はたくさんいます。ばらせないのをわかっていますからね。

>AZC様  レイドルの風呂を・・・・・・。となればギルミアも・・・・・・。次回露天風呂のシーンがあるので、もしかしたら・・・。

>SONE様  心配ありがとうございます。ですが、僕はその心配を無視するように風邪で倒れてました。最近、急に寒くなったのでSONE様も気をつけてください。

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