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▽レス始

「彼が選んだ道−8−(GS)」

リキミ・スキッド (2005-01-12 22:18)
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「あいつを人間界に?」
「そうじゃワルキューレ。御主も今日のリムルと奴の戦いの話は聞いたであろう。」
「はっ。それは伺いましたが、それとあいつが人間界に行くのとどういう関係が?」
「三界唯一の文珠使いが魔族に現れたのじゃ。強くせねばなるまいて。」

そう言って微笑むギルミアにワルキューレは胡散臭さを感じたが決して表に出さずに意見を口にする。

「私は反対します。文珠を使えたところであいつはまだ魔族として生まれて二日しかたっていません。」
「ワルキューレ。御主の言い分もわかる。そしてなればこその人間界行きじゃ。」
「――意味が理解できませんが、説明はしてくださるのですか?」
「当たり前じゃ。奴は、そうだワルキューレ。奴だのあいつだの言うのはジョーカーに失礼というものじゃ。」
「ジョーカー?」
「奴の名前じゃ。」
「ギルミア様が御付けになったのですか?」
「冗談を言うでないワルキューレ。何故私がジョーカーの名付け親になどならねばならぬ。この名前はジョーカー自身が考えた名前じゃ。」
「・・・・・・あいつの名前がジョーカーになったということはわかりました。で、説明のほうは?」
「そう焦るでないワルキューレ。我としては御主と世間話の一つもしたいと思っただけのことよ。」

ワルキューレはギルミアの物言いにますます胡散臭いものを感じた。
上級魔族であるギルミアが生まれたばかりの魔族を此処まで気にかけるのは異様であるからである。
ギルミアにはなにか思惑がある、それをワルキューレは確信した。
まったく表情を変えないワルキューレをしばらく見ていたギルミアは顔に貼り付けた微笑を消し、短く告げた。

「人に封じられた妖怪の心臓をジョーカーに食わしてやりたいと思ってな。」
「心臓を、ですか?」
「そうじゃ。死津喪比女という奴でな。妖怪の中でも力のある奴じゃ。魔族には劣るが、ジョーカーが最初に食す相手としては相応しかろうて。手っ取り早く強くなる為には強い魔に属するものの心臓を食べるのが一番じゃ。」

そう言って再び笑うギルミアにワルキューレは単刀直入に疑念をぶつけた。

「あいつを強くして、どうしようというのですか?」
「どうしよう、とは? 我はただ単に魔界軍の中に優秀なものを少しでも増やそうとしているだけじゃ。」
「それはわかります。しかし、私にはギルミア様が急いているように見えて仕方がありません。」
「ふっ。いつから上官に口答えをするようになったのじゃワルキューレ。これは我の命令じゃ。・・・・・・異存はないな。」
「はっ。申し訳ありません。」

ワルキューレはそう言って敬礼し、今回聞きだせるのはここまでだなと早々にギルミアの部屋を後にした。

「相変わらず食えぬよな。ワルキューレ。」

ギルミアはワルキューレの出て行った扉をしばらく眺めた後、苛々しげに机を叩いたのであった。


―雪乃丞―

雪乃丞は今回の仕事先である人骨温泉に向けて大量の荷物を背負って山を登っていた。
ちゃんと舗装された道路などで車で行けば一番早いのだが、景色も綺麗だから歩いていこうという美神の命令の為にぜーぜーと荒い息を吐きながら山頂を目指す。

「さっ酸素。酸素がたりねぇ。」
「頑張ってね。伊達君。山頂までは後少しよ。」
「あっあんたなぁ、頑張ってとか言う前に荷物を少しでも持ちやがれ。」
「あんたは私の丁稚でしょ。口答えするんじゃないの。それじゃあね〜。」

荷物を一つも持たない美神は身軽な様子で山の斜面を登っていく。
雪乃丞はその様子を眺めながら、師事する人間を間違えたと涙するのであった。
そしてそんな二人を眺める人物がいた。
袴姿の女幽霊である。
そっと覗うようにして見ていた幽霊は何かを決意したように身を走らせる。
その際に生きている者に触れるために霊気を発する。

「――霊気!?」

だが雪乃丞とてGSを目指すものの一人、向かってくる霊気に対して瞬時に荷物を投げ捨てファイティングポーズをとる。
そして女の幽霊が目を瞑りながら雪乃丞を突き飛ばそうとした瞬間、ビュッと雪乃丞の拳が女幽霊の頬を掠めた。

「俺に攻撃してくるなんざいい度胸じゃねぇか。素晴らしい師匠のせいで少しばかしストレス溜まってんだ。発散させてもらうぜ。」
「えっ、そんなっ! 待ってください!!」
「問答無用!!」

雪乃丞の目に映る女幽霊は既に自分に攻撃を仕掛けてきた敵として映されており、逃げる女幽霊に向けて拳を何度も放つ。

「ひ〜ん。話を聞いてください〜!!」
「うるせぇ。いきなり攻撃してきて話を聞けも何もねぇだろうが!」
「あぅぅ。一時撤退です〜!!」

そう叫びながら女幽霊は山の中へと姿を消した。それを見ながら雪乃丞は文句を言い放つ。

「けっ。向かってきたんなら最後まで戦いやがれ。」

だがそう言った直後に雪乃丞はぐらりとその場に倒れこむ。

「酸素薄いのに・・・戦ったせいで・・・・・・ますます酸素がたりねぇ。」

結局雪乃丞はその数分後に何とか回復し、女幽霊のことを美神に報告すべく人骨温泉を目指すのだった。
酸欠で倒れていても美神が心配して見に来ることはないだろうということを雪乃丞はたった三日の付き合いで理解していたのである。


―横島―

氷室早苗は先輩であり、最近ちょくちょく一緒に遊びに行っている一歳年上の山田先輩に校舎裏で迫られていた。
早苗とて一人の女の子、山田先輩に校舎裏に来て欲しいと言われた時には告白されるということぐらいは察しがついていた。

「さっ早苗ちゃん。」
「やっ山田先輩。まだ私達には、そういうのは早いと思う。」
「早苗ちゃんも僕のこと、好きだべ。」
「それとこれとでは、問題は別です山田先輩。こういうのはもっと時間をかけて・・・。」
「そうか。そうだよな。ごめん早苗ちゃん。僕・・・・・・ぷげっ。」

早苗に迫ることを諦めようとした山田先輩の真上に何かが突如現れ、山田先輩を踏んづけた。
その踏んづけた人物はどうやら一人ではないようで早苗は軽くパニックに陥りながらも落ちてきた二人を見る。
それは外套を纏ったレイドルとワルキューレに人間臭いといわれたお馴染みの服を着た横島である。

「ジョッ、ジョーカー。誰か踏んじゃってるよ。」
「あっほんとだ。文珠で回復さしてやるか。」

レイドルが心配そうに山田先輩を見る中、横島は特に罪悪感がわいたふうもなく山田先輩に『治』の文字が刻まれた文珠を使用する。
山田先輩の損傷はみるみるうちに回復するが、覚醒までにはいかなかった。
横島が山田先輩に罪悪感を抱かないのにはワケがある。
横島の周りには人間だった頃からタフな奴らばかりが終結していたので、山田先輩の傷など軽傷にしか見えないのである。
吹き出る血を精神で止めていた男である。
そこらへんの常識は人とずれている。

「おっおめえら何者だ? 突然空から現れて・・・・・・。」

気が動転してか早苗の喋りが訛りの入ったものになる。

「あっレイドル! この子、もらった資料に書いてあった!!」
「あっほんとだ! ここら辺を管理している神社の一人娘!!」
「なっわたすの事を知ってるべか!?」
「おぅ。俺たちは君にちょっと協力して欲しいことがあってきたんだ。まぁ来る途中の手違いでちょっとばかしハプニングが起きたけどな。」
「ハプニングがおきたじゃないよジョーカー。文珠で転移すれば早いとかいっときながら、失敗して。人間なんかに文珠を使用するし。」
「そう言うなよレイドル。で、早苗ちゃんだっけ? 協力してくれる?」

早苗の頭の中ではサスペンスドラマのワンシーンが走り抜けた。

「りっ利用した後に殺す気だべ!! こんなことなら、山田先輩とキスしとけばよかっただーーー!!」
「何? キス?」

横島は早苗の言葉にぴくりと反応すると、素早い動き早苗に近づき片腕を早苗の腰に回し、もう片方の腕の指で早苗の顔を上げさせる。

「キスがしたいんなら、俺がしてやる。さぁ、そのまま目をつむっ―――――かっ体が動かん。」
「ジョーカー。」

横島の体がぞくりと震えた。
横島に軽く抱きしめられている早苗は横島の背後に恐ろしいものを見たのか顔を真っ青にしている。
かろうじて動く首を回して横島は後ろを見る。
――――――鬼がいた。

「そういうのはいけないと思うんだ僕。」
「あっああ。そうだなレイドル。」
「今後一切そういうのはやめてねジョーカー。僕からのお願い。」
「いっイエッサー!!」

横島は完全にレイドルに手綱を握られているのであった。


あとがき
要望をうかがった結果、魔界が5、原作3でしたので、主軸は魔界パートのままです。しかし、原作パートの要望もありましたので少し多くかいてみました。今回、文珠で転移した横島君ですが、何回か行った事もあるしイメージできるだろうと結構アバウトに転移しました。
その際にもらった資料に映っていた早苗ちゃんも一緒にイメージしたんでしょう。山田先輩が哀れ・・・・・・。
強い魔属性のモノの心臓を食べると強くなるという設定は犬夜叉からきています。どういう理論で強くなるかはわかりませんが、横島君をどうやって人間界に送り込もうかと考えた時に浮かんできたのでそのまま使用です。

>SONE様  僅かながらに原作パートを望む声が魔界パートを下回りましたので人骨温泉編は魔界が主軸となります。原作パートの量を増やしますのでそれでご了承ください。

>AZC様  最初は横島君とワルキューレで行かせる予定だったのですがAZC様のレイドルとのほのぼのという要望により、ワルキューレではなくレイドルを横島君の監視役として付けることにしました。大尉であるワルキューレよりもレイドルのほうが立場上しっくりくるのでAZC様には感謝しています。

>D,様  人骨温泉編の魔界パートに副題をつけるとすればレイドルママの奮闘記という感じでしょうか。文珠がばれたことについてですが、ギルミア様がなんか悪いこと考えついたみたいです。裏話ですが、文珠についてはギルミア様がいち早く情報の流出を抑えたのであまり知られてはいません。

>星之白金様  ドリル。―――チェェェェェェンジゲッター2!! とか言って雪乃丞に魔装術してもらいましょうか(笑)
雪乃丞と横島が契約を結ぶ。―――燃えますな。考えさしてもらいます。提案どうもありがとうございます。

>九尾様  参りました。レイドルの介入と軽く書いただけなのに見破られるとは思いませんでした。横島の心情のシーンでの、
――――違う。 と太字で書かれている所がレイドルが介入した瞬間です。心を呼び戻すのは心。その意見には大賛成です。

>隆行様  どうもはじめましてリキミ・スキッドです。僕の作品を楽しみにしてくださってありがとうございます。そう言っていただけると書くスピードが自分でも信じられないくらいにあがります。どうか、これからもヨロシク。

>突発感想人ぴええる様  このまま行くと原作パートのほとんどが脳内補完になりそうです。前にも言いましたが、ほんとに重要な部分しか書いてませんからね。原作パートは。今回は長めにしましたけど。

>今日日様  指摘ありがとうございます。今まで気づかなかった自分が哀れ。

>Dan様  ワンダーホーゲルと雪乃丞の絡みは、雪乃丞を横島の後釜にすると決めた時から書きたいと思っていたシーンの一つなので、
そこらへんはまかしてください。

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