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「心眼は眠らない その27(GS)」

hanlucky (2005-01-16 12:28/2005-01-17 17:56)
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「てめえ!!オキヌちゃんに何しやがった!!」
『待て、横島。分が悪い!!』

聞き捨てならない一言を吐いた死津喪比女に突撃を開始した横島。
心眼が何か言っているが目の前の敵は自分の大切な仲間に何かしたようなのだ。
それなのに黙って逃げるわけにはいかない。

「ふん、どちらかというとわしがされたんじゃがな。まぁよい、今度こそ―――」


大量の死津喪比女が横島を中心に取り囲もうとする。
横島はいくら頭に血が上ったとはいえ状況だけは判断したようで、
背後だけは取られないように動く。


「―――殺してやるかえ。」


――心眼は眠らない その27――


「・・・あ〜心眼。ちょっとこれはやばいか?」
『ちょっと?これのどこがちょっとと言うのだ!!』

先ほどは頭に血が上ってここまで突っ走ってしまったが少し冷静になると今、自分の
状況がどれほどやばい事になっているのかがよくわかる。
右向きゃ死津喪比女、左向きゃ死津喪比女、んでもって目の前にも死津喪比女。

「今更遅い!!死ねーーー!!」
「ぎゃーーーーー!!!気色わりーーー!!」

一斉に突撃して来る死津喪比女。
そして何処か叫ぶ内容が間違っている横島。

叫んで少しはすっきりしたのかすぐに文珠を取り出し、


《炎》


念を籠めた後、右手の栄光の手に埋め込む。

途端、栄光の手から猛々しい炎が舞い上がる。


「これぞ必殺、火炎剣だ!!」
『わかったからとっとと攻撃に移れ!!』

横島がノリがわりいな〜と愚痴りながら火炎剣で一文字斬りを行う。


ボォォォォォォォォォッ


「なっなにぞ!?」


振るった先からは炎が発生し、それは死津喪比女を喰らおうとする。
元々木に属する死津喪比女、火にはめっぽう弱く抵抗できずに防戦一方に
なる。横島はすかさず追撃し右に左に火炎剣を振るう。その都度、炎が死津喪比女を
襲う。最早状況は横島の攻勢一方であった。

「ぐっ人間ごときにわしがこんな・・・」

(早く引きやがれ!!文珠の効果が切れちまうじゃねえか!!)


《爆》《炎》が一回限りの殆どの属性の敵に通用する強力な広範囲攻撃ならば、
《炎》を使用した火炎剣は、複数回に分けて文珠の力を発揮する小攻撃である。
火炎剣は死津喪比女のように木属性ならば大きなダメージを期待できるが、
それ以外ではあまり効果は否めない。

そして数回振るっただけで《炎》の効果は切れ始めていた。

死津喪比女が撤退するか、文珠が切れるのが先か、それが勝敗を左右する。


シュゥゥゥゥン


「げっ!!切れちまったか!?」
「ほ〜という事はわしの勝ちかえ?」
『バカモノ!!わざわざ口に出す必要があるか!!』

何故か、自分の状況を口に出してしまう横島。言わなければ撤退したかもしれないと
いうのに。

「ふふふ・・・」
「??何かえ?」

横島は意味深な笑い声を出した後――


「戦略的撤退!!」


――逃げた。


思わず、呆然としてしまう死津喪比女。
気付いた時には、すでに横島の姿は遠く向こう。
死津喪比女の体が震え、

「絶対、殺してやるかえ!!」

バカにされ続けとうとうキレた。


「ちきしょうーー!!だいたいあんなヤツどうやって倒せっちゅーねん!!」
『横島、まだ敵は諦めていないみたいだぞ、気配が近づいてきている。』

全力疾走で逃げ続けているつもりであるが、戦闘したばかりなので流石にスピードが
鈍っていた。対する死津喪比女はキレっちゃたので勢いが増している。両者の距離が
詰まるのは仕方ない事であろう。

「おっなんか向こうの方、やけに明るいし出口か!?」

走り続けて、ようやく森を抜けそうになる横島。
すぐ後ろで追走する死津喪比女。

「よしっ抜けたーーーーって行き止まり!?」

抜けたと思ったら、その先は崖になっていた。
後ろに戻ろうとも死津喪比女がいる。慌ててその場で頭を抱え込んでいると、

「鬼ごっこはお終いかえ?」

私、怒ってますといってるようにこめかみに大きな怒りマークが浮かんでいた。
全く息を切らしていない死津喪比女、それに対して大きく呼吸を繰り返している横島。

「え〜と、そういうことだから今度は俺が鬼な!!ということで、ほら逃げろ!」
「そうかえ、それじゃ・・・・っていい加減舐めるな!!」

横島のボケにご丁寧にノリツッコミをしてくれる死津喪比女。結構いいヤツかも
しれない。

死津喪比女の草のような髪や腕が横島に迫る。

「だぁぁぁぁ!!しつけぇぇぇぇぇ!!」

横島が栄光の手でその迫りくる髪や腕を断ち切る。

「掛かったぞえ!!」


シュゥゥゥゥゥゥゥン


『まずい、横島!!この粉は決して吸うな!!』
「本来なら、こんな所で花粉を使うつもりはなかったがありがたく思って死ね!!」

死津喪比女は腕に大量の花粉を仕込んでおき、わざと横島に腕を切らせて
撒き散らせたのだ。心眼は吸うなといったが、至近距離でそのような出来事が
起きてしまってはどうしようもなく、

「げほっげほ!心眼、何か体がマヒしてきたぞ。」
『くそっ!!この粉には霊的な毒が帯びているのだ!!』

横島は膝をついて喉を押さえているが、その隙を逃す死津喪比女ではない。
なんとしても目の前で八つ裂きにしなければ今までの借りが返せないようであった。

「死ねーーーー!!」


咳き込みながらも必死に回避行動に移る横島、だが


グサッザッ


「いってえええええ!!!」

いくら横島といえどそんな体で完全にかわせるわけもなく、肩や腕などから血が
あふれ出てくる。だが意識を失ったら間違いなく殺される。なみだ目になりながらも
死津喪比女からは目を離さない。文珠を出そうにも花粉が邪魔しているのか、
うまく出せない。

「くっくっく、いいぞ。男の声なぞ普段は聞いても嬉しくないが、おぬしは別だ。
 せいぜい喘いでわしを楽しませてくれぞえ。」
「く〜この変態!!ちきしょうーーいってえじゃねえか!!」

じわりじわりと横島に迫り来る死津喪比女。
それに伴って横島も後ろに下がっていくが、

「いいのかえ?それ以上下がると落ちるぞえ。」

どうせなら自分の手で死んでくれという死津喪比女。
横島からすればどっちもいやだろう。
時間が経つにつれ横島の体は徐々に動きを制限されていく。

(やべー、真剣やばいってヒーリングもうまくできないし、マジで―――)


意識もすでに朦朧としている。
それでも死にたくないという思いでなんとか耐えている。


(―――死ぬ?)

「ん、まだ立てる元気があったかえ?くっくっく、そうでなくてはおもしろくないと
 いうものぞえ。」

ふらつきながらも立ち上がる横島。目はまだ死んでいない。

「――かねえ」
『大丈夫か、横島!?』
「何をいっているか聞こえぬぞえ?」

何かを呟き始める横島。心眼も横島が何を言っているのかよくわかっていない。

「―――わけにはいかねえ。」


「女を知らんのに死ぬわけにはいかねーーーーー!!!」
『この大バカモノが!!!』

横島の爆弾発言にすかさず心眼のツッコミが入る。

横島の言動によりポカンとしてしまう死津喪比女。それでも横島から
立ち上がった霊圧の大きさに一瞬恐怖してしまう。

偶然ではあるが、辺りを漂っていた花粉は霊圧によって横島の周囲からは弾かれる。
その瞬間をねらって文珠を使用する。

《水》

自分に文珠で発生させた水をぶっ掛けて花粉を取り除く。
向こうは唯の花粉ではないが、こちらも唯の水ではない。
なんとか花粉を取り除き、そのままヒーリングを開始する。

「またしても奇怪な術を使いおって!!」
「このくそババアーーー!!いくら俺でも殺させかけて黙ってるほど大人しくねえぞ!!」

始めから大人しくなかったと思うが?
咳き込みながら暴れだす横島。

『残りのストックは一つ。迂闊に使うなよ、ってこらいきなり使うな!!』


《炎》

流石に殺されかけて、ぷっつんしてしまった横島。
心眼の忠告など無視して火炎剣を生成する。

「ちっまたかえ!?」

これ以上はやらせないと地中から大量の死津喪比女が現れ、一気に横島に迫る。


ボォォォォォォォ


火炎剣を振るい押し返そうとするが、数が多い上、向こうも相当必死である。
徐々にだが追い詰められる横島。
一番恐れていた物量攻撃を仕掛けられすでに限界は近い、そして―――


「もらったぞえ!!」
『横島、右!!』
「まっマジか!?」


―――体当たりを受けて吹き飛ばされる。


「ぐおっ!!」

この先はもうどうなるかお分かりであろう。


「まっまさか!?」


そう、吹き飛ばされた先は崖。


「落ちるのはいやーーーーー!!!」

ドップラー効果を発生させながら消えていく横島であった。


後に残されたのは数体まで減らされた死津喪比女。
勝利の代償はかなりのものであったのが表情からうかがえる。

「ちっ、まぁよい。少しばかり休んでから今度こそあの小娘を殺してやるぞえ。」


「・・・今、何て言ったのよ?」

死津喪比女からは到底信じられない言葉がでてきた。
その言葉に現実味が沸かず思わず美神は死津喪比女に聞き返してしまう。

あの横島が死んだ!?そんなことありえるわけないというのに、しかしいくら《心》の
文珠を使用しても横島とは連絡が取れない。状況から考えれば死津喪比女の言葉の方が
真実味がある。あの心眼がついているのだ。遭遇したというのならみすみすこんなヤツ
を見逃すわけがない。相手の強さに横島が撤退したという事も考えられるが、だったら
連絡がとれないというのはおかしい。どちらにしろ横島に何かあったのは間違いない。

「聞こえなかったかえ?あの男はわしが殺―――」


バシィィィィィィン


死津喪比女が喋り終わる前にムチを振るう美神。

「ぐっ貴様!!」
「勝手に人のモノを奪おうとしてんじゃないわよ!!」

美神の霊圧が今までにないくらい上昇する。

「あのバカは探し出してしばくとして、アンタは速攻潰す!!」
「全く、今日はどいつもこいつもわしを舐めよって!!」

死津喪比女が髪を伸ばして美神を拘束しようとするが、
ムチを振るい、逆にカウンターを決める。

しかし、早苗がいる以上迂闊に攻める事はできず攻勢には出れない。

その間にも葉虫どもがじわりじわり迫りつつある。

美神は巧みにムチを振るって一定の距離まで近づけさせないが、体力にも限界がある。
徐々にだが息が乱れてきていると、突然後ろの早苗の様子が変わる。

「火です、美神さん!!火を使えば追い払えます、早く!!」
「この声って!?」
「やはりそこにいたか!!」

聞き覚えのある声によって動揺するが、早苗の指示通りにするため人骨温泉ホテルに
止めていた人工幽霊一号を搭載した自家用車に念を送る。

死津喪比女は早苗から感じる波動を狙い始める。

「させないわよ!!」

美神は人工幽霊一号に車にこんなこともあろうかと装備させていたミサイルを
発射させる。


ヒュゥゥゥゥゥゥゥ


美神はすぐに早苗を自分と一緒に湯船に伏せる。
ミサイルはすぐ傍まで迫っていた。
死津喪比女は早苗を襲おうとするが、


ドォォォォオォン


ミサイルの爆発によって燃えていく。

「ちっ!!こんなオモチャがあったのかえ。・・・これ以上は限界か。
 ・・・それのこれも昼間のわけのわからぬやからのせいかえ!!」

死津喪比女は悔しさを噛み締めながら燃え尽きていった。

「ぷはっ、オキヌちゃんなのね!?心配していたのよ!!」
「美神さん、ごめんなさい。私、お別れを言いに来たんです。」

早苗からはオキヌの声が聞こえてくる。

オキヌは自分の役目を忘れていた事を言い、思い出した以上死津喪比女をどうにか
するのは自分の役目だと言い放つ。当然、美神はそんな事認めず自分が何とかすると
言ってオキヌの説得をする。

途中で美神はオキヌがここにいるわけではなく、何処か違う場所で念を送って早苗が
それに感応していることを理解する。

「美神さん・・・あの、横島さんは?」
「えっ!?・・・あのバカったら何か今、連絡取れなくてね・・・」

美神は横島関係のオキヌの鋭さを知っているのでウソなどつかず本当のことを話した。
オキヌはその事に動揺するが、どうやら予想の範疇であったようだ。

「そうですか・・・夕方に死津喪比女の力が大分弱まった時があったんです。
 美神か、横島さんが来てくれたんだなってわかったんですが・・・」

オキヌはさらに泣きそうな顔になる。自分がしっかりしていればこんな事にはなら
なかったのにと。

「でも横島さんのことだから”あ〜死ぬかと思った”って言ってここ一番で登場する
 んですよね。」
「えぇ、そうね。あのバカのしそうなことね。」

横島を信じるというオキヌの言葉に励まされる美神。

ヴィィィン

二人が会話をしていると近くから黒尽くめの何処となく早苗の父に似た男が幽霊の
ような姿で現れる。

「道士様!!」
「オキヌよ、もうあまり時間はない。そろそろもどってくれ。」
「あっ!?もしかしてアンタがオキヌちゃんを人身御供に使った・・・」

美神は道士を蹴り飛ばそうとするが、道士は華麗にかわす。

「さよなら、美神さん。最後に横島さんに会えなかったのは残念ですけど・・・私
 皆に会えて本当にうれしかった。」
「オキヌちゃん!!まだ話は―――」

美神が最後まで言う前にオキヌの波動が早苗から消えた。
大声で勝手なことはさせないと空に向かって叫ぶ美神。

「・・・私、どうしてたんだべ?」
「どうやら早苗ちゃんには霊媒体質が備わっていたみたいね。」

だからこそオキヌの念が早苗に宿る事ができたのであろう。
そして道士も幽霊ではなくただの立体映像に近いものだと判断する。
美神は道士にすべての説明を求めた。

一同は家に戻り、とりあえず早苗を寝かせておいた。早苗の父母は道士の姿に大変
驚いていたが。

道士は美神に300年前に起きた出来事を立体映像のような形で見せる。


―――オキヌと姫の友情―――

―――人身御供に自ら志願したオキヌ―――

―――子守唄を唄うオキヌ―――

―――オキヌが反魂の術で蘇れる事―――

「邪霊を近づけない結界、保存のいい遺体、生命力にあふれた女性の体、地脈の
 巨大なエネルギー、そしてそこにくくられた霊、これだけ条件がそろえば反魂の術
 や間違いなく可能だ!!」

―――人身御供になる寸前で現れた死津喪比女―――

―――親友である姫が殺される直前に池の中に身を投げるオキヌ―――


「なるほね、本来ならもっと万全を尽くして封印するつもりが、死津喪比女の奇襲に
 よってそれもできず、だからオキヌちゃんは記憶をもっていなかったの。」

美神はオキヌの代わりにくくりつけたワンダーホーゲルの男の事を尋ねるが道士は
知らないらしい。最後に美神は顔を引き締め、死津喪比女を退治することを誓う。
そのために西条を筆頭にGSチームを召集するつもりであった。

「死津喪比女は私たちが責任をもって倒すからとっととオキヌちゃんを生き返らして
 ちょうだい!!」

だが道士は首を横に振る。死津喪比女は復活する際にほかの地脈まで伸ばされたので
オキヌを使った退治方法しかなくなってしまったのだ。
美神からすればそんな事は知ったこっちゃないのでとりあえずオキヌに会わせろという。

「よかろう、会うだけなら。」

バタン

突然、美神が居た場所の床下が開き、地下に滑り落ちていく。
降りた先には先ほど立体映像に出てきた地脈堰があった。
道士は地脈堰に呼びかける。すると、地脈堰の中からオキヌが出てきた。

「美神さん、お別れはすませたつもりだったのに・・・」

オキヌは目に涙を浮かべながら美神に微笑む。
美神はひねくれながらもオキヌと別れるつもりないと言う。

だがここで道士はオキヌの霊体を直接武器に使うことを告げる。
美神はその事に怒るが、オキヌが皆を守りたいといって実行するつもりであった。

「他に方法があるというのか?もう時間はないぞ!!」
「例えばだけど・・・核兵器って知ってる?」


死津喪比女に襲われてから半日経過していた。

「あ〜やっと来たわね。」

場所は人骨温泉ホテルの駐車場。そこで美神は早苗と一緒に待ち続けていた。
未だに横島からは連絡がなかったが、昨夜西条たちにあるモノを頼んでおいたが、
彼らを乗せたヘリがようやく到着した。

「令子ちゃん、待たせて悪かったね。いや〜横島クンが行方不明そうじゃないか。」

何故か、笑顔全開の西条。横島が絶対大丈夫との確信があるのか、それともよっぽど
うれしいのかどちらなのだろう。

「それで細菌兵器の準備は?」
「それについてはライフル弾一発だけ間に合ったわけ。」

ヘリからは続々とエミといったGS連中が降りてくる。今回、死津喪比女退治に
参戦したのは西条、エミ、冥子、カオス、マリア、魔鈴、ピート、タイガー、唐巣である。
西条としては雪之丞、鬼道の両名にも力を借りたかったが、行方が掴めずじまいで
あったので呼べなかった。
美神が西条に頼んだもの、それはエミの呪いを籠めた細菌兵器であった。
その効果は死津喪比女に直撃すれば一気に呪いが伝染していきそのまま本体も
呪い殺すという危険極まりないものであった。

「それじゃ、私は横島さんの捜索に行ってきますね。」

今回、西条に同行した魔鈴が横島の捜索に向かい始める。
魔鈴の今回の作戦の始めには呼ばれていなかったが横島が行方不明と知り魔鈴にも
知らせたのだ。魔鈴の反応は西条の予想通りで自ら同行を申し入れて横島の捜索に
乗り出すことにしたようであった。


一同はホテルで準備などを整えた後再び、早苗の家に向かい決戦始めようとする。


「ふ〜ん、いろいろあったわけね。」

森を歩いていき早苗の家に向かう一行。
情報交換などを行って死津喪比女戦に向けて万全を尽くそうとする。

「・・・霧?」

美神が辺りがいつの間にか視界が急速に悪くなっていく事に気付く。

「これは・・・まさか!!皆、罠よ!!」

視界が悪くなったのは横島が死津喪比女に苦しめられた花粉が辺りに飛んでいたのだ。
当初、死津喪比女は東京に花粉を撒き散らすつもりであったが、横島に大量の花を
焼かれてしまったのでそれすら不可能になっていた。そのためまず近場の付近から
確実に自分のエリアにしようと目論んだ。そう、自分の狙ってくるGSを一網打尽で
倒すために。

「かっ花粉、ヤツの花粉なのか!?」

呪いの弾丸が込められたライフルを持っている西条が叫ぶ。
すでにマリアはモーターの故障で戦闘不能。冥子は少しのダメージでも気絶するような
子なのでもちろん気絶。


ボコボコッボコッボコ


目の前から現れたのは死津喪比女。

「わしを倒すために集まったのかえ?愚かな・・・それぐらい予想の範疇であるという
 のに。お前達はこうしてわしの罠に嵌ったということぞ。」
「西条さん!!」
「分かっているさ!!」

西条は美神に言われるまでもなくすでにライフルを構えて今、撃鉄を引く。


バァァァン


死津喪比女は弾丸の一発ごとき何とも思っていないのかかわそうとはしない。
弾丸は見事に死津喪比女を貫く。

途端、死津喪比女は呪いによって次々に体が連鎖していき崩れていく。

「なっ!?この弾丸、ただの弾丸ではないのかえ!?」
「ゲホッゲホ・・・アンタのためにこしらえた特性の弾丸よ!!存分に味わいなさい!!」

徐々にだが、辺りから花粉が消えていく。美神は死津喪比女に対して死の宣告をする。

「あんたをぶっ殺すために強力な呪いが掛けられているのよ!!根まで腐って土に
 なるがいいわ!!」

死津喪比女はすぐに本体に感染するのを防ぐために枝を切ろうとするが感染の方が
早い。

「ぐっぐぞおおおおおおおおおおおお!!」

そのまま崩壊を起こしていき目の前の死津喪比女は消滅した。

「ふ〜何とか終わったみたね。」
「あぁ向こうが油断してくれてよかったよ。」

美神と西条を始め皆が一息つこうとした瞬間、地響きが起こる。

「何っ!?」

ドォォォォン

遠く離れた所で大爆発が起きる。
爆発が起きた場所からは、あまりにも巨大な球状の怪物が現れる。

「よくも・・・よくもわしから全てを奪いおったなーーー!!殺してやる。お前らも道連れだ!!」
「あれが本体だというのか!!」

上空にいる死津喪比女は目から雷のような光線を発射する。
地上にいる美神たちは回避行動を取る事しか出来ない。

だがここで、


「僕が行きます!!」
「ピート!!」

マリアが動けない以上、この中で唯一空を飛べるピートが単身死津喪比女に向かう。

空中で相対してピートは神聖エネルギーを繰り出す。


「主よ、精霊よ!!」


ピートとて香港の事件以来何もしなかったわけではない。
自分の改めて鍛えなおすために今まで以上に唐巣に自然の力を味方につける方法を
学んでいた。


「我が敵を打ち破る力を我に与えたまえ!!」


なら何故彼は活躍できなかったのか?


「願わくば悪に成すものに主の裁きを下したまえ!!」


簡単である。


「アーメン!!」


出番がなかっただけだ。


ピートの神聖エネルギーは死津喪比女に見事に直撃する。
だがその巨体ゆえ、そう簡単に倒す事はできない。

「そう簡単にはいきませんか!!だったら―――」

死津喪比女の光線をタイミングよく自らの体を霧状にしてかわす。
ピートは己の出せる最大の攻撃を繰り出す。ここで早苗の様子が変わる。


「殺害の王子よ、キリストに道を譲れ―――」


詠唱するごとに集中力を高めて出来る限り接近する。

「ダメです!!ピートさん、目を狙っては!!」
「オキヌちゃん!!」

いきなりオキヌは早苗に感応してピートに警告しようとするが、距離がありすぎて
聞こえるわけはなかった。


「―――主が汝を追放する!!」


詠唱が終了した瞬間、特大の神聖エネルギーが死津喪比女を襲う。


「馬鹿め!!」


だがピートはここで最大の失敗はここで目を狙った事であろう。
ピートの攻撃は目に向かっていくが、


ズカァァァァン


向こうも狙っていたのか今まで一番の光線を発射する。
その光線は神聖エネルギーを貫きピートに迫る。
最大の攻撃を放っていたピートは硬直状態になっていたためかわしきれない。

「うわーーーー!!」

霧状にもなりきることができず光線はピートは貫き墜落していく。
その様子を見ていた唐巣やエミは叫ぶも彼の耳には届かない。

ピートも倒した死津喪比女は今度こそ美神たちに狙いを定める。

美神達の頭上からは雷が降り注ぐ。

「くっあんな所にいられたらどうしようもないじゃない!!」
「流石に、敵の本体がアレとは予想外だったね。」

こうなったら美神たちにできる事は自分たちに出来る限り注意を引き付けておき
敵のエネルギーを待つしか方法はなかった。霊波砲などを放とうにもあまりにも
距離があり過ぎたのだ。

そして事態は美神が最も恐れていた展開に発展する。


「美神さん!!ごめんなさい!!」
「オキヌちゃん!!・・・まさか、ダメよ!!それだけは許さないわよ!!」

オキヌは最早これまでと覚悟を決めて実行に移した。


そう、片道切符のバンザイアタック(特攻)を。


(みんなは・・・守らなきゃ・・・)


早苗の体は崩れ落ちてすぐに早苗の意識が回復する。
大分、霊媒にされることが慣れてきたようだ。

「わっわたすは?」

今は早苗の質問に答えている暇はない。
神社の方から強力なエネルギーが向かってくる。
地脈のエネルギーを受けたオキヌの霊体である。


(この下の景色、横島さんと初めて出会ったところ・・・)


上空を高速移動しながらオキヌは横島たちと出会ってからの出来事を思い返していた。


幽霊の自分をナンパする横島。
殺そうとした相手なのにかわいいから許すなんていう横島だった。


とある事がきっかけで不良女子高生に憑依した時に横島から告白されようとした事。
ただ雰囲気だけで、目を見てくれただけで自分に気付いてくれた横島であった。

(ふふ、横島さんって変なところで勘がするどいんですよね・・・)

それがどれだけ嬉しかった事かわかっているのか?
多分、彼はわかっていないだろう。しかしだからこそ彼なのかもしれない。


(私がいなくなっても大丈夫かな?横島さんたら時給が上がってもいつもお腹すかして
 いたし・・・)


クリスマスの時、織姫の服をプレゼントされた時。
理由はどうであれ、下手すれば死ぬかもしれないというのにわざわざ織姫に所に
向かい自ら服を貰いに行った横島であった。
彼が自分に服をプレゼントしてくれた。その事が自分にとってどんなに嬉しい事で
あったか。


(横島さん、あの服は今も大切に保管していますよ・・・)


思えば、横島と出会ってからからは全てが眩しかった。
出会いは最悪といってもいいかもしれない。
しかしそんな出会いなど彼には、横島には関係なかった。

彼がいると皆が明るくなる。

彼がいると私は嬉しくなる。

だが、そんな彼は自分の価値がわかっていない。


(道士様は私が生き返れるっていってたけど・・・生き返ったって何百年もたって
 から生き返ったって・・・・もう・・・)


そして、そんな彼だからこそ自分は―――


(最後に一言・・・一目・・・)


(横島さん・・・)


「オキヌちゃん!!」

美神の悲鳴はもう届かない。
周りの皆も自分の無力さを呪っていた。
自分たちは何のためにここまで来たのか。
決まってる、仲間を助けたかったから来たのだ。

しかし無常にも上空を眺める事しか出来なかった。

もうオキヌと死津喪比女との距離はほとんどない。
恐怖に震えながらも死津喪比女は光線を発射してオキヌを沈めようとする。

「くっくるなーーーーーーー!!」

オキヌからすればこちらも命を掛けているのだ。そんな攻撃に当たるわけには
いかない。

(横島さん、美神さん、みんなに会えて嬉しかった・・・)

オキヌの霊体はいよいよ死津喪比女を捕らえる。


(横島さん・・・)


バァァァァァァン


突然に出来事に戸惑う一同。

「えっ!?」

オキヌはまだ死津喪比女にぶつかっていなかった。
しかし目の前では死津喪比女が爆発していき、
今、完全に崩壊した。

「なんで・・・まさか!?」

オキヌは沈み行く死津喪比女などすでに視界に入っていない。


ただ彼を探した。


普段は、全然なのにここ一番で皆を驚かせる彼。


そして今、自分を助けてくれた彼。


姿も見えないのに何故、彼が倒したと分かるのか?


決まっている。


そんな事、彼にしかできないに決まっているんだから!!


「横島さん!!」


オキヌは今の自分の思いを込めて彼の名前を叫んだ。


「お見事です、横島さん。見事に命中しましたよ♪」
「・・・」

魔鈴の呼びかけに横島が返事する事はない。
横島は今の攻撃に全霊力を籠めて意識を失っている。

二人が現在いるの場所は死津喪比女が居た場所からはかなり離れたところにいる。


横島は崖から落ちた時、既に文珠を切らしていたが《伝》の存在を思い出した。
地上に墜落する直前に《伝》《浮》に再構成し落ちた時の衝撃を和らげたのだ。
《伝》の文珠を失ってしまった事もあって美神とは連絡が取れず、文珠の再構成や
いろいろ無茶を行ったこともあって半日近く気絶していた。

目覚めた後は直に美神と合流しようと、とりあえず人気の多いところに出た時に
魔鈴と合流したのだ。その後は移動しながら魔鈴からオキヌの事や死津喪比女の
事を聞いて改めて死津喪比女を倒す事を誓う横島であった。


そして先ほど何があったのかというと―――


「もしかして、あれって!?」
『霊気の感じからして死津喪比女だな、しかも本体だ。美神どのや西条どのが本体を
 引き出す事に成功したようだ。』

横島たちの位置からは巨大な球状の死津喪比女が見えていた。

「まさかアレって・・・オキヌちゃん!?」
『まずいぞ、横島!!あれは間違いなく死ぬつもりだ!!』

横島の顔が引き締まる。
魔鈴はその様子を見つめている。

(やっぱり、この顔は反則ですね♪)

えらく場違いな事を考えているようだ。

横島はすぐに霊視を開始弱点を見極めようとする。

時間はない。使用できるの技は限られている。
文珠を今、先ほど生成できた一つしかない。

(考えろ、考えろ、考えろ!!折角、生き返れるっていうのにそんな事させねえ!!!)

文珠は一つ。どう考えても足りない。

だったらすることは決まっている。

(集中しろ!!一回できたんだ、今度だって!!)


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「『横島(さん)!!』」


右手に意識を集中させる。

失敗は許されない。

失敗すればオキヌの死が待っているのだ。


輝くその手からは文珠が2個生成される。


「はぁっはぁっ、よし!!」
『いくぞ、横島!!』


今日、生成できた1個、そしてフェンリル戦の時みたいに強引に生成させた2個。
ちなみに強引に生成させてしまうと反作用として何が起こるのかというと暫くの間、
文珠を生成する事ができなくなってしまう事であろう。例えば、本来2個生成するの
にかかる時間が、4日であればその分の期間文珠の生成が無理になるという事である。
簡単に言えば先送りして生成していることになる。もう一つ強引に生成するという事は
その分生成の成功率が下がるといったことがあげられる。


――サイキックモード発動――


世界の流れが横島を中心に遅くなっていく。

だが自分の目は別だ。


手を死津喪比女に掲げ―――


《籠》・《必》《中》


―――今までになかったサイキックブレットが弾ける。


横島の全霊力が《籠》められたサイキックブレットは死津喪比女の弱点である後ろの
新芽を直撃し、爆発する。そのずれは全くない。


死津喪比女は今、300年の時を経てその生涯を閉じた。


「横島さん!!」
「あら♪オキヌちゃんが呼んでますよ、横島さん。」

魔鈴は気絶している横島の髪を撫でながらささやく。


―――回想終了


「うっう〜ん。」
「横島さん!!」

目覚めそうになる横島にオキヌや美神が声をかける。
GSチームや魔鈴はオキヌに遠慮したのか、すでにこの場にいない。
横島が死津喪比女を倒した後、魔鈴は気絶した横島を連れて皆と合流したのだ。そしてその後、美神除霊事務所の皆のみがオキヌの遺体が置いてある所に向かった。


起きた横島は周囲を見渡して驚く。
見知らぬ女性がオキヌの声でしゃべっていたり、オキヌの遺体が氷付けにされていたり、
何故かワンダーフォーゲルがいたりしているのだから。


「ずっと前から愛してました!!」

ゲシッ

「アンタは起きた早々それかい!!」

とりあえず、早苗の事を知らない横島は告白するが美神の肘鉄によって撃沈する。
そんな変わらない横島を見て笑顔を浮かべるオキヌ。

「お久しぶりっす、横島さん!!」

ワンダーフォーゲルが今まで現れなかったのは地脈が死津喪比女に制圧されていて
身動きができなかったらしい。ワンダーフォーゲルは自分の話を置いておき、
今からオキヌの復活をさせようとする。そしてそれに喜ぶ横島と美神。

「よかった・・オキヌちゃん。本当によかった」
「横島さん・・・」

抱きしめあう二人。美神はその光景にちょっとムッとするが、そのまま笑ってオキヌの
復活を祝う。

さっそく横島は何処からとりだしたのか、つるはしを用いてオキヌの遺体を
掘り起こそうとする。だがワンダーフォーゲルが霊波刀を使用するように伝える。

「まっ待て、横島さん!!・・・今すぐ生き返らなくてもしばらく元の幽霊のままで
 いられないんでしょうか?」
「なっ何いってんだよ、オキヌちゃん!?」

オキヌが復活するのをためらうのには理由があった。
300年ろいう長い時間氷付けにされていた事もあって、もしここで生き返っても
幽霊だった時の記憶など覚えていられる事ができないのである。まるで夢のように
忘れてしまうのであった。

「じゃあ、じゃあ、俺たちの事もオキヌちゃんにとってはただの夢っていうんですか!?」

オキヌは横島たちの事を忘れるくらいなら幽霊のままでもいいと言うが、
ワンダーフォーゲルがもうそれでは長く持たないという。
横島は今だ迷っているが、美神は覚悟を決まる。

「生きて、オキヌちゃん!!生き返った後、またあらためて本当の友達に
 なりましょう!!」
「みっ美神さん・・・そんな事言われても・・」

オキヌはすでに涙目で美神に何かを訴えようとする。
そして横島も覚悟を決まる。

連戦を重ね、すでに疲労の極致だというのに、横島の霊波刀は今までに
ないくらい綺麗に輝いていた。

まるで、オキヌを祝福するように・・・


「俺だって・・・俺だって別れたくないよ!!だからさよならはなしだ!!」
「待ってください!!待って、横島さん!!」

横島の霊波刀はオキヌを纏っていた氷に突き刺さる。

「生きてくれ、オキヌちゃん!!」

ピシッピシッ

氷は砕けていく。

「迷う必要なんてないって・・・俺たちは何も失くしたりしない、
 俺たちの《心》は離れたりしない・・・また会えばいいだけさ・・・だろ?」

早苗からオキヌの波動が薄れていく。

「横島さん!!私、思い出しますから!!」


氷は砕け散りオキヌの遺体にはまた再び命が宿ろうとする。


「二人の事、絶対に思い出しますから!!」


雪の降る中、学校の校門付近で二人の少女は会話をしていた。

「オキヌちゃーん。今日さあ、私少し遅くなるんだけど!!」
「早苗おねえちゃん!また山田先輩とデートなの?」

その言葉に早苗は照れながらその通りという。
オキヌも父母にうまくいっておくと了承する。

オキヌはその場にとどまり早苗と山田先輩の後姿を見送る。

「ふ〜帰ろっかな。」

オキヌは自転車庫に行き、財布から鍵を取り出そうとする。

コトン

「あっいけない。」

鍵を取り出そうとした時に財布から自分が何故か大切にしている玉が落ちてしまった。
すぐに玉を拾い、そのまま見つめてしまう。

「なんでこの玉をみていると懐かしい感じがするんだろう?」

今でこそ大分慣れたが、始めのころはこの玉を見ただけで涙が溢れてしまったものだ。

オキヌはその玉のある部分を眺めて微笑んだ後、大切に財布にしまう。

「さて行きますか。」


その玉にはこう刻まれていた。


《心》


――心眼は眠らない その27・完――


おまけ


目の前では自転車に乗ったオキヌが過ぎ去ったばかりである。

「そういえば、美神さん。《心》の文珠どうしたんですか?」
「ふふふ、さ〜ね。」

今は自分たちのチームは不完全であろう。

しかし、美神は予感する。

彼女は必ず帰ってくると。


あとがき

分割するわけにはいかずこんな長さになってしまいました。(あと少しで30K
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
それとピートおめでとう。(一瞬だったけど

今回はオキヌちゃんがヒロインということもあって早苗についてはごめんなさい。

さてここで

”皆で創ろう、心眼計画・第3弾本調査”

たくさんの名前考えていただき本当にありがとうございました。
自分が心眼の”アレ”や心眼自身のイメージにあった名前をいくつか選ばせていた
だき、皆様の投票で最終決定したいと思います。では、

1、闇針(あんし)・・・闇が持つ鋭さ。(凪風様、命名

2、闇輝(あき)・・・心眼が持つ光と闇。(sara様、命名

3、悠闇(ゆあん)・・・悠久の闇という闇の闇。(丸猫様、命名

この中から投票の方お願いします。

他にも様々な名前を考えていただき本当に皆様ありがとうございました。
作者として嬉しい限りです。それではこれからもよろしくお願いします。


加筆修正しました。
ご指摘の所をある程度増やしたのですが、これで少しは読めるようになったなら嬉しい限りです

>ムギワラ梟
全然不愉快じゃありません!!指摘してくれるというのはちゃんと読んでくれている証拠だと思っているので
むしろ嬉しかったです。これからも至らない所がありましたらどんどん言っちゃってください。

もう一回修正しました。

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