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「無限の魔人 第二十六話(GS)」

紅眼の狼 (2005-01-14 21:50)
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無限の魔人 第二十六話 〜死神デスマッチその1〜


「暇やなー・・・・・。」


ずずっ


ああ、甘酒が美味いなぁ。


正月に飲みきれなかった甘酒を飲みながら思う。

美智恵さんが過去に帰ってからは、美神さんもどことなく覇気が無いし、自分から進んで仕事をしようともしないので、最近は暇な時間が多くなっている。

今日も特に仕事は無く、大掃除で綺麗にした部屋でぼーっと過ごしている。


ぼー


ぼー


ドンドンドンッ!


静寂が打ち破られた。


「横島君、仕事よっ!居るんなら出て来なさい!ていうかむしろ助けてっ!

「令子ちゃ〜ん、お願い助けて〜!」


美神さんと・・・このおっとりした喋り方は・・・冥子ちゃん!?


ドタドタドタ


「休日に会いに来てくれるなんて、やっと俺の愛が通じたんっすねー!!」


ガチャ


ルパーンダイブを決行。


目標は・・・やっぱり美神さん!


「冥子迎撃!」


げ!


「キャーッ!!」


美神さんが冥子ちゃんの後ろに隠れ、式神が影から・・・。


「ギャアアアアア!!」


15分後


勿論ボロボロになった俺が居る訳で。

「・・で、一体何の仕事っすか?」

おキヌちゃんに手当てされながら美神さんに尋ねる。

ちなみに俺の部屋の中・・・ではなく、冥子ちゃん家所有の真っ黒いリムジンの中だったりして。


「これなの〜」

冥子さんが見せてくれたのは一枚の・・・お見合い写真!?

「み、見合いするんすか?!」

 見合い
  ↓
 結婚
  ↓
 人妻
  ↓
嬉し恥ずかしドキドキの初夜!?


「いやーーーーーーっ!!冥子ちゃんの最初の男になるのは俺なんやーーーー!!」


向かいに座る冥子ちゃんに――――――


ドゲシッ!


「ゲフッ」


後頭部強打・・・美神さんの拳って硬いよな・・。


「あんた最近言う事が段々過激になってんのよっ!それに、こんなとこで冥子に暴れられたら本当に死ぬわよっ!大人しくしてなさい!!」

そう言われればその通りだった・・・俺って命知らず・・いや、これも若さゆえの・・・。

「大丈夫よ〜、今式神は全て私が抑えてるから〜、それに、それは見合い写真じゃなくて果し合いの写真なのよ〜」

とは冥子ちゃんの母親の六道冥さんだ。

そう、母親が隣に居るにも関らず娘に飛びつこうとしていた俺・・・。

今思うとすっげーことしたなぁ・・・。


「果し合い!? どういうことっすか?」


説明してもらった所、果し合いとは「式神使いの家による式神の奪い合い」らしい。
古〜いしきたりで、果し合いを受けたら避けることは出来ず。
有力な式神使いの一族は年々少なくなっていっているが、未だにそのしきたりは有効で、式神が奪われると勝った家の軍門に負けた家が下るらしい。
そんなことをしていれば式神使いが減るのでは無いかと危惧したが、「負けた家は吸収されるから〜別に式神使いが減ることは無いのよ〜」とのことらしい。

六道の家が日本有数の財閥なのも頷けるという物である。

長年勝ち続けてきたんだろうな〜。

さらに「あなた意外と頭が回るのね〜、おばさん驚いたわ〜」なんて言われてしまった。

・・・俺ってもしかして馬鹿に見られてる!?


「今更何いってんの?」


止めが美神さんのこの一言。


シクシクシク


そんなこんなで六道の家に着き、ひろ〜い庭の一角に案内された。

そこがバトルフィールドなのだろう、布で四方を囲んでいた。

中に入ると既にその場には1人の顔の色が悪いおっさんと、1人の若い男(多分美神さんと同じか上くらい)の二人が居た。


相手は平安時代から続く陰陽師の家系で式神使いの一族・鬼道家。
昔は名を馳せていたが、没落に没落を重ね、徐々に式神使いとしての力を弱めていき、今では雑魚式神使いに成り下がってしまったらしい。


大体が「六道家」対「鬼道家」なのに、なぜ美神さんの所に仕事(?)が来たのかと言うと―――


「おねがい令子ちゃ〜ん!追われてるの、かくまって〜〜!」


――と、闘うのが嫌で冥さんから逃げるために美神さんの所に来て巻き込まれたのだとか。


冥子ちゃんの行く場所なんて俺でさえ予想できるくらいだ。
(美神さんかエミさん・・・・・捻って考えても唐巣神父の3つしかない)
勿論、冥さんが解らないはずも無く、捕まってしまった。

なし崩し的に巻き込まれた美神さんも1人が嫌で、さらに俺を仕事という名目で巻き込んだらしい・・・。


「鬼道政樹です。よろしゅうお願いします。」

あれが冥子ちゃんの相手か。

「い、いえ、ここは若い人に任せて私はた、退散を〜〜〜」

冥子ちゃんがしどろもどろになりながらお見合いでの常套句を口にした。

「お見合いじゃ無いって言ってるでしょ〜〜〜!!!」

冥さんが怒っているが、冥子ちゃんもそんな事は解っているだろう・・・本気で闘いたく無いんだろうなぁ。


それと見学席なんて物が用意されていた。
唯単に立て板に「見学席」と、書いただけの物だが。

「あら〜、けっこーいい男じゃない」

「そうですねー」

美神さんとおキヌちゃんが言った。

「けっ、美形は嫌いじゃ!!冥子ちゃんのプッツンで死ぬが良い!!」

なんて言ったが、プッツンされたら俺まで被害を受けそうだ・・・一日に2回も式神にどつかれたくは無い・・・・どうか穏便にすみますように。


「これはわが鬼道家と六道家の命運をかけた真剣勝負!そのよーなフニャけた態度は感心しまへんな。」

顔色の悪いおっさんが言った。

所詮他人の家の争いだしなー・・・俺たちはフニャけてても別に問題無いと思う。

「政樹!我が家に伝わる式神夜叉丸を見せたりぃ!!」

「はい、父さん。出て来い、夜叉丸!!」


鬼道の影から出てきたのは、着物を着たような人型の式神だった。


「さて、掟はご存知でっしゃろな。」


顔色の悪いおっさんがこの場を仕切っている冥さんに言った。


「ええ〜〜。『戦いに負ければ自分の式神を相手に差し出す』ってやつね〜〜」


なんでも無いように言った冥さんにに比べ、冥子ちゃんはとてもびびっている。


「お、お母さま〜〜!!!!」

「大丈夫よ〜、ウチの子達が負けるわけ無いわ〜」


手を口元にやり、笑いながら一気に言った。


「昔は有力な式神使いの一族だったけど、今じゃ唯のザコ式神使いよ〜」


おっさんを見ると・・・哀れや・・・拳を握り締めながら眉間の皺を増やしプルプル震えていた。


「くっくっくっ・・・今日勝負を挑んだのは六道家の式神を我が物とし、再び鬼道家の栄華を取り戻す為・・・!!わしはこの日のためにせがれに鬼のよーに厳しい修行をさせてきたんや!!」


わはははは〜と笑いながら歪んだ人生の一部を語ってくれたが、すぐに冥さんが・・・。


「あ、そうか〜〜私が鬼道ちゃんの求婚断ったの、今でも根に持ってるのね〜〜。」


おっさんが大きく後ろに仰け反った・・・顔を殴られたらしい。(精神的に1人シャドー)


「それとも事業に失敗した時お金を貸してあげなかったからかしら〜〜?」


今度はボディブローを受けたようだ。

少し地面から浮き上がっているのが見えた・・・きっと気のせいに違いない!


「しかもその原因が打ちの主人の会社だったから〜〜?」


お、テンプル!


「私ね〜〜鬼道ちゃんのそーゆーシツコイとこ、昔からキライ〜〜!!」

おほほほほ〜〜っと軽く言ってくれた。


おっさんは拳を握り締め怒りにプルプルと震えていた。


「なっさけな〜〜。」

美神さんは六道家に関るからそうなるのよ・・・と哀れみを込めた目で。


「クズやなーー」

俺は取り合えず復讐の道具として育てられた鬼道に同情して。


「かわいそうです。」

そして最もきつかっただろう・・・・「幽霊」のおキヌちゃんからのこの言葉!


「やかましーーーーーッ!!!」


おっさんは我慢の限界に来て、ぶち切れていた。


「ね〜〜〜やめましょうよ〜〜〜、式神はビー玉やメンコじゃないのよ〜〜〜」


お、冥子ちゃんが必死に戦いを回避しようと積極的に話し掛けているっ!

こんな冥子ちゃん見たこと無いなー。


「こんな古いしきたり野蛮よ〜〜〜〜」


確かにそうだな、言うなれば「負けた方が舎弟になる」って感じ・・・・。

俺って負けまくってるから、こんなしきたりが有ったら親分が一杯居そうだなー・・・・・・虚しくなってきた。

「君の話はきいとるよ、すごい式神を12匹も持ってはるんやろ? 倒してみたいんや、そいつを・・・あ、別に式神は夜叉丸で十分やさかい、そっちが負けても式神を取る事はないで。」


「へ〜、あいつ解ってるじゃない。」


美神さんが驚いたように言った。


「え、何がっすか?」


一体何を解っていると言うんだ?・・・も、もしや冥子ちゃんのスリーサイズとかっ!?


「んなわけあるかっ!!」


バゴンッ

「なっ・・・なんで俺の心を・・・。」

「はっきり口に出してたわっ!・・・・私が言ったのは、あいつじゃ冥子の式神を制御する事なんて出来ないって事を理解しているって事よ。冥子本人はあんなにぽよんぽよんしてるけど、あの子に流れる六道の血は伊達じゃないのよ。あの子の霊力キャパシティーは恐らく世界中のGSの中でも3本の指に入るわね。式神って言うのは表に出している間は常に一定の霊力を消費する物なのよ。いくら鬼道家が平安から続く陰陽師の家系でも鬼道ってやつじゃ12匹もの式神を制御する事は出来ないわ。」


「・・・冥子ちゃんって唯の暴走プッツン迷惑霊感娘じゃ無かったんすね。」

「あんたが冥子のことをどう思っているのか良く解ったわ。」

あ、しまった!

「み、美神さん・・・ど、どうかこの事は冥子ちゃんには言わないでくださいっ!」

こんな事が冥子ちゃんに伝わってしまったら・・・・い、命の危機が。

「ふーん・・・どうしようかしらねー? このまま教えてあげても面白そうだけど〜?」


あ、悪魔や・・・一匹の悪魔がここに・・・・・・・。


「ふっふっふ、今日ここにあんたが居るのは、冥子がお友達として呼んだだけ・・・・良いわね?」


ぐっ・・・そ、そんな・・・今日は仕事だって言ったやないか。

折角の休日が・・・何の実りも無い一日に・・・・・・でも命は惜しい・・・・。


「っ・・・わたくし、横島忠夫がここに居るのは・・・冥子ちゃんに呼ばれたからです・・・くっ。」

「おーほっほっほっほ。」


どちくしょーーーーーーーーーーー!!!!!!


無限の魔人 第二十六話 〜死神デスマッチその1〜


end


あとがき
一回で終わらないよー・・・鬼道、横島・・哀れや。
ちょっとずつ違うところは有るものの、起きた事件は大体その通りに進みます。
六道の家が大きくなった理由云々を独自解釈で書きました。
式神を奪われる→傘下に入る は行き過ぎたかな?とも思いましたが、鬼道親父の「式神を奪って栄華を取り戻す」と言うセリフがあったので、こんなでも良いかな?と。


レス返し 毎回どうもありがとー

>トレロカモミロさん
本格的に動くのは次回ですね。まだ全然考えてません。_| ̄|○
取り合えず土日で33話くらいまで一気に書き上げますよー。
…『黒風 速女(くろかぜ はやめ)』良いですね!
よくハーピーというものを表わしていると思います。

>法師陰陽師さん
ゆっきーは熱い熱い漢ですから・・・きっともっと・・むふふ。
『鳥野 風音(とりの かざね)』・・・むむむ、良い名です・・・迷います。

>Danさん
>新コンビ結成ですかね?w
です。このコンビならきっと何か大きな事をやってくれるでしょう。
>彼女は既に予約済みですから、大人しく弓さんといいなかになってね♪
そんな事は・・・界人君次第かなー・・・なんてw
「美鳥(みどり)」ですか・・・響きが良いですねー。苗字くらい頑張って自分で考えるのも良いですね。

>かれなさん
どうも初めまして。
そう思っていただけるならこれほど嬉しい事はありません。あくまで私がこうすると面白いだろうなーと思って書き進めている物ですが、共感してくれる人がいて嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。

>柳野雫さん
ゆっきーは何て言うか・・・良い意味でいじりやすい?キャラなので、活躍しそうです。次の話では雪之丞が熱く語ってくれる予定ですので、お楽しみに!

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