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▽レス始

「彼女たちのひとりごと3 僕の名前 (GS+リキミ・スキッドさん作「彼が選んだ道」)」

S (2005-01-12 21:50/2005-02-16 01:29)
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 きっかけは、ほんの些細な思い付きだった

 自らの手で配下たる魔族を生み出すようになった言え、真に優れた眷属を作り出すのは、彼女たち『王』と呼ばれる魔族にとっても容易なことではなかった
 だからこそ、神界との力の天秤は保たれ(一部では、宇宙意思の干渉が実しやかに囁かれている)、今尚数の上では、期待外れに終わって放逐された下級魔族が大半を占めている
 自分の周りを『成功例』だけで固めようとする変わり者もいないわけではないが、多くの上級魔族は、生まれた『失敗作』には殆ど興味を持つこともなく、彼らは慈悲ではなく無関心ゆえにその命を繋ぐことになる

 彼女は、王としてはまだ若く(幼く)、それ故に様々なことに興味を抱いていた
 他の上級魔族が苦笑するようないたずらをすることもあった
 そんな中、彼女は強い魔族を生み出したいと思った
 強くて……そして、滅多にいない魔族を
 どんなのにしようかなぁ
 うきうきしながら、手の中で核を転がす 彼女も最初からいきなり強い魔族を生み出すのが難しいことは知っていた
 だったら、だんだんに強くなる魔族を作ればいいんじゃない
 魔族とて成長する 資質と運がよければ、下級魔族から上級魔族に上り詰めることもあるかもしれない
 だが、そんな当たり前のものを生み出して、何が面白いというのだろう
 もっと簡単で、突拍子もないほうがいいわ
 ちびり と、グラスを傾ける
 性格からか、その容貌も幼いものだったが、彼女は「酔う」という感覚が好きだった
 つまらないと思っていたものが、それだけで面白く見えてくるから(酔っている彼女の目に留まった魔族は不運である)
 魔族の中には、他者の力を取り込み己が力とする者もいる サキュバスやインプ、吸血鬼もその類だろう
 尤も、他の魔族と同様、その中でも上級と呼ばれるものが少ないのは、資質と言う越えられない壁があるからなのだが
 そういうのって、偶然に頼っちゃう部分が大きいからなぁ 同じことに何度も挑戦するなんて趣味じゃないし
 むぅん 首を捻る
 お酒のお代わりを持ってこさせて、ついでにぐちゃりと叩き潰す 部屋に入るときは右足からだって言っておいたのにあれ? 左足からだったっけ? まあいいや
 こくこく ぷはぁ
 そうだ だったら、自分の中に力を取り込むんじゃなくて、相手の存在力で引き上げられるようにしちゃえばいいんだ
 それなら、本人の資質がどうこうなんて、関係ないもんね
 わたしって、頭いい
 どろり 薄桃色の綺麗な爪の先から、気の狂うような濃密な呪が滴る
 神族には、なんでも見抜いちゃう覗き屋がいるのよね、確か
 あれには負けないようにしないと
 何がどう勝ち負けなのか けらけらと笑いながら禍言を紡ぐ彼女にも、分かっていないのかもしれない
 ぎちぎちと絡み付く強大な呪いに、小さな核が声ならぬ声で悲鳴を上げる
 うるさいな せっかく強くしてあげるんだから
 ぎちぎち みちぎち
 本来あり得たかもしれない形を、無残に歪められ 引き裂かれ さらに呪を注がれる
 いやらしい覗き屋にしてあげる……誰からも好かれることのない あはははっ 嬉しいでしょう
 ぐちゅり どくっどくっ ぬちゃぁ
 相手が何を考えているのかどこで何をしているのか……どれだけあなたを疎ましく思っているのか……知れば識るほど、あなたは強くなるの
 たくさんの魔族と繋がって、いっぱいいっぱい覗き見して……あなたはこう言うのよね……たくさん秘密をおしえてくれてありがとう、おかげでこんなにつよくなったわ これからももっと掻き回してあげる って
 言葉にならない悲鳴……わたしそんなことしたくない
 うるさいな どぶどぶぐぶどろり
 ぎゃあああああ

 ……もしかしたら、この核は、高い資質を備えていたのかもしれない
 興に任せて注ぎ込まれる呪いにも、消し飛ぶことなく耐えているのだから
 ちょっとだけ、惜しかったかな でも、まあいいや
 それにしても……あ〜あ 変なの造っちゃったなぁ
 考えてみれば、これを強くしようと思うのなら、まず『王』たる彼女自身と繋がらせるのが一番 でも
 いやよそんなの 覗かれるなんて趣味じゃない
 そうされたところで、ラインを逆に辿って焼き切るくらい造作もないことだが、折角造ったものを自分の手で消してしまうのも、それはそれで面白くない
 これには、かなりの手間が掛かっているのだ
 何人か思い浮かんだ他の王にしたところで、ラインを繋いだ瞬間に消し炭だろう
 ここまで来ると、彼女自身にも本当は何がしたかったのか、分からなくなる
 ずるり
 玉座の前 子供の背丈ほどに大きくなった核の中で、もうすぐ生まれそうとしている魔族が苦しげに身を捩る
 透けて見える姿……どうやら、ここまで弄り回したにも関わらず、まともな姿で生まれるらしい
 ……何となく、自分の魔力がばかにされたような気がした
 こうなったら、思いっきり無駄にこだわってみるのもいいかもしれない
 既に存在を定めつつあるそれに、無理やり、呪を重ねる
 あ……あああっ……ああ!
 相反する呪い
 自分より弱いものにしか、ラインを繋げない と
 ……なら、何のためにラインを繋ぐの? ただ嫌われるためなの?
 ぎ きき きぎぎびきびぎぃっ!
 矛盾に耐え切れなくなった核が砕け散り その跡には
 一人の魔族が蹲っていた

 濡れた長い髪 澄んだ瞳と、作り手たる彼女と良く似た顔立ち
 けれど、浮かべる表情がここまで違うのは……いっそシュールですらあった
 へぇ
 自分が苦痛に顔を歪めるところなど想像もできなかったけど、こういう風なのね
 はぁはぁ……あ……ぐ……
 白く滑らかだったはずのその身体を覆い尽くす、おぞましい呪印
 かたかたと、小刻みに震えている背中 肩を抱く腕 尻で、呪印がぬらりと蠢くたびに
 くぅっ
 苦しげな呻きが漏れる
 ふふ それを聞けただけでも、生み出した価値はあったかもしれない
 いいわ 立ちなさい
 刻み込まれた呪は、そのまま彼女を縛り、支配する 逆らうことなどできなかった
 もっと良く見せて……ふぅん へぇ
 羞恥 は、まだ分からなかったけれど、操られるままの自分が、哀しかった


 あぁ、おもしろかった でも、もう飽きたから 好きなところに行っていいよ


 呪われた自分には、本当の居場所なんてないのかも知れない
 でも、仮初とはいえ、今は自分の意志で歩いている
 それが、嬉しかった

「……そうだ 僕の名前、何にしようかな」

 今までは、それさえも許されなかったんだから
 名前は、とても大事なものだ

「もしかしたら……僕と友達になってくれる人がいるかもしれないもの」

 右手を見つめる

 ……もしかしたら、いつか……


 それは、彼女と彼が握手を交わす、ほんの100年前のこと……


Fin


(お礼と後書き)
本SSは、リキミ・スキッドさんの許可を得て、「彼が選んだ道」2,3話に置ける魔族(及びオリキャラであるレイドル)の設定をお借りして書かせていただいたものです
リキミ・スキッドさん、ありがとうございました

彼女がレイドル本人であるかどうかは分かりません
レイドルがいつごろ呪いを受けたのか、その呪いの本質なども含めて、分からないことも多いですから
でも、もし生まれたときから呪われていたのなら……こんなこともありうるのかな と

独自設定
彼女はラインを繋いだ相手に引き摺り上げられる形で、(修行などの)段階を踏まずに強くなることができる……はずでした
ですが、追加された呪いによって、自分より弱いものとしかラインを繋ぐことができなくなりました
(100年後彼と会ったときの)彼女の今の力は、ラインに頼ったものではなく、訓練によって身に着けたものです
例外は、ラインを繋いだ相手(その時にはまだ彼女より弱い)が成長した場合、彼女も一緒に強くなることができます
(もし彼女がレイドル本人だった場合、横島が強くなれば、彼女もそれに準ずるレベルにまで一緒に引き上げられることになるのですが……実際はどうなんでしょうね(笑))

ここに掲載するに当たって、虐待シーンと調教シーンとエッチシーンはカットしちゃいました(つい書きかけちゃいましたけど、我に返って慌てて消しました)
やっぱり、お借りした娘さんをひどい目に遭わせるわけにはいきませんものね(笑)

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