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「無限の魔人 第二十四話(GS)」

紅眼の狼 (2005-01-12 18:31)
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無限の魔人 第二十四話 〜封印と開封〜


空が暗くなってから、暫く経った。


今俺たち3人が居る場所は、とても広い廃工場。


バブル景気の時代、波に乗って事業拡大しまくった挙句、崩壊と同時に放置されてしまった数ある中の1つ。


プラスチックの容器を加工する工場だったらしい。


「ねぇ、まだかな? 結構寒いんだけど」


ラピスがしゃがみ込んだ姿勢のまま、立っている俺を見上げて言う。


「もうすぐだろう、もうちょっと待ってくれ」


苦笑しながら1つの文珠を取り出す。


[暖]


「あ、あったかいや。ありがと界人!」

「いえいえ、どういたしまして。」


丁度良い位置に頭が有ったので反射的に撫でる。


「ん〜♪」


猫みたいで可愛いと思ってしまった。


「界人、戦況が動いたよ」


俺の隣に居たメドーサが、1つの方向を見ながら言った。


「そうか」


メドーサの隣から顔を出してみる。


「なぜなの!? なぜ娘まで狙うの!?」


美神美智恵が建物の影に隠れながら、反対側の建物の屋上に居るハーピーに向け問う。


「時間移動能力を持つ人間を根絶やしにするためじゃん!私たち魔族は大昔からお前達みたいなやつらを見つけ出しては殺してるんだよ!」


やっぱりハーピーはこの仕事に向いてないな・・・不必要な事までべらべらと教えてしまっている。


「――令子には時間移動能力は無いのよ!!あの子の事は放っておいて!!」


彼女も相当なものだ、わざと会話で情報を引き出そうとしている。

あの辺りは見習うべきだな。


「でも、子孫にはまた能力者が生まれるかもしれないじゃん? だから、あんたの一族は根絶やしにするのさ!」


ハーピーが構えている、恐らく飛立つ前準備。


「そんな力があっちゃあ、魔族が人間に滅ぼされる危険もあるじゃん!殺すのが私の指名なもんでね!」


それを聞いた俺は疑問に思った。


魔族が時間移動能力程度で滅びるか?


「そんな訳ないじゃない、大体君以外は過去なんて変えられないんだよ」

「声に出してたか」

「「ああ(ばっちり)」」


再び目線を戦場に向ける。


飛立ったハーピーに向け、言い放つ。


「だったら、尚更あなたには負けられないわ!令子に手出しなんてさせるもんですか!!」


隠れていた建物から完全に身を出した。

恐らくあれはわざとだろう、隠れたままでは大きいダメージが見込めない。

肉を切らせて骨を断つ・・・言うのは簡単だが、実践するとなるとかなりの度胸と経験が必要になる。


「ほざけ!」


ハーピーが自身の羽を1つ、投付けた―――――


横っ飛びで避けようとするが、羽は最初から着地位置へ投付けられていた。


「まだだ、ギリギリまで引き付けて!」


着地と同時に顔を左に捻る。


スビュンっ!


頬を少し引き裂かれながらも見事に回避成功。


「なっ!!紙一重でかわした・・・!?」


ハーピーが驚いて動きを止めた一瞬を狙い、霊体ボウガンを――――


「本当に優れたGSが、こんな攻撃避けれないと思うの!?」


左手をボウガンの支えにし、狙いをつけ―――ビュン!―――放った。


ズシュッ!


動きを止めたままだったハーピーの左腕に着弾。


既に退魔札を取り出していた彼女は、ハーピーにすぐさま近づき―――


「悪魔よ退け!!生まれ出でたる暗き冥府へと帰るが良い!!」


「ぐわっ!こ、これは・・。」


ハーピーの体が徐々に封印空間に引き摺られてき、やがて姿が消えた。


―――ハーピーが封じられた。


「はぁはぁ・・・令子・・・。」


空を見上げながら娘の名を呟く様は、母親という物を思い出させた。


「母親・・・か。」


俺を生んだ親はもう何処にも居ないが、思い出の中ではいつも優しさと恐ろしさを持っていた。


「ん?何か言ったかい界人?」


「いや、なんでも無いさ」


しばらく空を見上げていたが、雷が落ちるような天気では無いと判断したのだろう、すぐさま廃工場を出て行った。


「ようやく終わったね、ハーピーを倒すまで2日も掛かるなんて予想外だったね界人♪」

「そうか? 1人であいつを倒すのに2日は早い方だと思うが。」


そう、下級とは言え魔族を1人で倒すなど現代ではほとんど考えられない事だ。

1人1人で倒せないからこそ、人間は群れ、道具を作り、技を生み出し、他を蹂躙する事をしてきた。

いくら道具を使っているとは言え、たった1人でハーピーを倒すのは容易ではない。


「もうお金の残りも少ないよ、これからどうするのさ?」

メドーサが問う。

そう、2日も3人で行動するのだから金の減りも相当だった。

ここ、過去ではあまり目立つ事をしたくなかった為、金を稼ぐなどという事は不可能だった。

ラピスもメドーサも目立つ事この上なく、町を歩けば必ず人目を引くし、俺が少しでも離れるとすぐに声をかけられる始末だ。


「雷が来るまで美神美智恵は未来へ飛べない。つまり、その後を追って移動しようとしていた俺たちもそれまでここで生活を続けるしかない。」


文珠を使えば、単独でも時間移動は可能だが、コントロールの難易度が右肩上がりになる。


例えばここまで来た[時][間][移][動][追][跡]は6文字で済んでいるが、単独で移動しようものなら、[時][間][移][動][1][9][9][○][年][1][2][月][△][×][日]と、15文字にもなってしまう。

これでも1人ならば何とかなっただろうが、ラピスとメドーサの二人が居る為確実に成功する確信が持てず、実行などしない。なので、現在金欠になりつつあるわけだ。


「お金・・・稼ぐの?」


ラピスも心配そうに俺を見てくる。


「・・・金の心配は後回し、今はハーピーを・・・。」


おもむろにハーピーが封じられた辺りの空間を手で調べながら歩く。


「見つけた。」


反応があった場所は封印空間・・・所謂亜空間に繋がっており、退魔札・・入り口をこじ開ければ封じられているハーピーを出す事が出来る。

勿論、一般人や例えGSだろうと、一度封印空間に封じてしまった者を再び外へ出す事など出来はしない・・・むしろ封印空間の入り口でさえ見つけることなど出来ないだろう。


「ちょっと強引だが面倒だしな・・・。」


文珠を取り出し、文字を込める。

込める文字は


[開][封]


の二文字、[解]の文字でも出来るだろうとは思うが、一文字よりも二文字、二文字よりも三文字・・・・の方が力が強くなる為、安全を期し文珠を二つ使う。

文字が多ければ多い程力は増すが、その分制御が難しくなる・・・ほぼ万能と言われる所以でありながら、万能の壁は遥か遠い。


文珠が退魔札の力を反転させ、封じていた物を引っ張り出す。


バシュゥゥウウ!


ハーピーが封印空間から引き出されて来た。


手が先に現れ、徐々に腕や足、そして顔が出てきた。


完全にハーピーが吐き出されると、地面に落ちた。


ドサッ


「死んでるの?」


ラピスが恐る恐る・・・ハーピーを指でつんつんしていた。


「コラコラ、封じられていただけだ。今は気を失ってるんだろう」

「ふーん」


ラピスを見て、ハーピーに視線を戻すと――――


「フン」

ハーピーに刺さっていた矢を徐に抜こうとするメドーサが居た。


「お、おい「あ”あ”ああああああぁぁぁ」


ハーピーが矢を引き抜かれた痛みで目覚め、絶叫を上げた。


「情けないね・・これくらいの痛みで」


メドーサとは違うだろう・・・。

五月蝿いので文珠で痛覚を遮断した。


[無][痛]


「あああぁぁ・・・・・あれ?」


左腕を抑えて絶叫していたハーピーが痛みが消えた事で我に返ったようだ。


「っ!・・・・お前ら何なんじゃん!?」


いきなり目の前に知らない3人組、左から魔族、魔族、人間(魔人)が居たら驚くだろうとは思う。

警戒を解かずに敵か味方かの確認を問う。


「そう警戒するな、少なくても敵じゃない」


肩を竦めながら答えてやる。


「・・・敵じゃない証拠が無いじゃん?」


警戒するなと言われて警戒を解くような馬鹿は生きては行けない。

正しい判断だと言えるだろう。


「封じられていたお前を助けたのは俺達だ・・・その事実は疑い様は無いだろう?」


「・・・・・それは信じてやるじゃん」


ブチッ


何かが切れるような音が聞こえた気がした。


「ああ!?うるっさいんだよ!下級魔族の分際で!」


メドーサが魔力を解放しながら殺気をハーピーに向けた。


ビクッ


「ヒッ!!」


ハーピーが蛇に睨まれた蛙のようになってしまった。


「おいコラ、俺は話し合いを・・・。」


魔界は正に弱肉強食。

強さが全て、弱さは罪。

単純だがこれが唯一のルール。

魔族は上下関係がハッキリしている。

実力が伯仲しているのであればまた違った対応もしただろうが、下級魔族であるハーピーが上級魔族であるメドーサに対して発していい言葉では無かった。


「メドーサ落ち着け」


取り合えず結界を張り、メドーサの気を静める。


「ああ、悪かったね。ちょっと気が立ってしまって」


ハーピーに背を向け、俺を見ながらウィンクしながら言った。

ああ、そう言う事か。

メドーサの意図を察し、頭を撫でながらハーピーに語りかけた。


「そんなに怯えなくていい、俺たちはお前を助けに来たんだ。まずは腕の治療をしようか・・な?」


小動物に対するように優しく優しく。


ぶるぶると震えながら、ゆっくりと頷くハーピー。


恐らく、自分より遥かに強大な存在であるメドーサに言う事を聞かせた俺を、さらに上位の存在だと思っているのだろう。

大人しく従ってくれた。


「まずは矢を抜く、痛みは消してあるから安心しろ。」


左腕に刺さっている矢は、腕の真中で止まっているらしく鏃が貫通していない。

このまま引き抜くと怪我がさらに酷くなるので、ぐっっと矢を押し込み貫通させた。

ハーピーは痛そうな表情を見せたが、痛みは無いはずなので、単純に自分の体が傷つけられているのを見ての反応だろう。

貫通させた鏃の根元を霊波刀で斬り、矢を抜き、文珠で[癒]す

怪我を完全に治して、ハーピーにかけていた[無][痛]の効果を[消]した。


「これで終りだ・・・どこも変じゃないだろう?」


ハーピーは腕をぐるぐる回して一通り確認すると


「あ、も、もう大丈夫です。ありがとうございました。」


お礼を言ってきた。


「ああ、別に良いさ・・・・それよりも君に話が有ってね」

「は、はいっ!」


完璧にびびってる・・・脅しすぎだろメドーサ。

これほどまでに魔族の上下関係は強いのか・・・まぁ、自分の命を軽く奪う事が可能な存在に生意気な事は言えなくなるだろうな。


「脅して悪かったね、それとそんなに縮こまらなくても良い。」


「い、いえ!大丈夫です」


・・・硬さが全く取れない・・俺としては自然体で会話したかったのだが。

まぁ、説得が楽になったと思っておこう。


無限の魔人 第二十四話 〜封印と開封〜


end


あとがき
ハーピーの説得まで全てやりたかったのですが、長くなったので一旦ここで区切ります。
メドーサは原作で上級魔族だと自分で言っていましたので、こう言う展開になりました。メドーサが龍

美と香港に行っていればもっとハーピーも穏やかに会話できたでしょうが・・・まぁ、運が悪かったと

諦めてもらいましょう。
それと前話の美智恵はこの話の後という位置になります。

レス返し

>トレロカモミロさん
美智恵さんにも気に入られたようで、横島君が美神の夫となる日は近い!?・・・いや、まだまだ先だろうなー。

>九尾さん
れーこのお兄ちゃんと、令子のお兄ちゃんが混じってしまわないか心配だったんですが、どうやらちゃんと分ってもらえたようでよかったです。
千年の恋も、実はかなり小さい時に既に再開&再会していたんですね〜。
浪漫溢れるお話ですが、美神と横島の性格が台無しにしてますよね・・・あはは。

>法師陰陽師さん
多分成功・・・いや、次の話辺りでメドーサに殺さ・・・いえいえなんでもないです。
ハーピーってなんとなくザコかと思ったらそんな立派な仕事をしてたんですね!?

>siriusさん
う・・・美神ならありえそうですね〜>時給を下げる。
でも、横島君が初恋の相手だと割り切っちゃったりしたら・・・なかなか下がらないかも?・・・でも照れ隠しで下げたり・・・ありそうですねw

>MAGIふぁさん
職場は常にボケと突っ込みに溢れ、セクハラをしても訴えられず!
素晴らしい職場でしょうね?(え

>柳野雫さん
>出番の無い某虎や吸血鬼に比べたらっ!!(爆)
ぶっちゃけ忘れてたッ!!
ごめんよ、タイガー&ピート・・・・だって原作でも出てこないんだもん。でも、そのうち・・・活躍してくれるでしょう・・・勘九郎と共に・・・ゲハッ

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