無限の魔人 第二十二話 ~香港編~
僅かな浮遊感と落下。
「キャッ!」
ズドンッ
「うげぇ」
「界人っ!もう少し優しく出来ぬのか!」
「人の上で何を喚いてやがる!さっさと降りろっ!!」
先ほどから尻の下に暖かい何かが・・・・!!
「なっ!」
急いで乗っていた者から降り、周りを見渡す。
界人、メドーサ、ラピスの姿は何処にも無い。
「なんだとっ!?」
14%の確率に引っかかった?
いや、それよりもここが何処かの方が重要だ。
それによってこれから取る行動を決める。
・・・日本では無い・・・ようだ。
「いきなり降ってきやがって、謝罪も無しかコラッ!?」
倒れていた・・・いや、下敷きにしてしまっていた男が立ち上がった。
「ああ、ひでぇ目に会っ・・・・・ママに似ている」
男が私を見て呆然としていた。
良く見てみると目つきの悪く、背の低い・・・・
「伊達雪之丞?」
見覚えがあると思ったらGS試験で横島と闘った男だった。
「てめぇ、何もんだ!?」
雪之丞が居るという事は、別の世界という訳でも無いだろう。
そもそも不思議だったのが「あの」界人が失敗する可能性が高く、危険も高い事に態々私たちを巻き込むかだろうか?
否、そんなことは絶対にしないだろう。
まだ界人と出会って日は浅いが、心から信頼できる存在だ。
ならば界人がわざと失敗が有ると嘘をつき、失敗に見せかけ私を此処に飛ばした?・・・・ありえる話だ。
と言う事は此処は・・・・・香港か?
私にチャンスをくれたのだろうか?
ダメだと言いながら、メドーサを危険に晒すと分っていながら、私の好きなように動いても良いと言う事か・・・・あの男は本当に・・・・。
失敗すればあやつが動くしかない。
ならば絶対に失敗など出来ぬ!
「おい、コラッ!無視してんじゃねーっ!」
「ん?」
「さっきから無視しやがって!ふざけんじゃねーぞ!」
「ふむ・・・雪之丞、お主は此処で何をしておる?」
「俺か? 俺は此処でモグリのGSを・・・ってそんな事よりてめぇは誰だ?」
「私は龍美・・・そうだ雪之丞、私を手伝わんか?」
「は?いきなり何を言いやがんだお前は」
「龍美だ。これから香港の風水士が次々に殺されるのを防ぐ、どうだ?」
「どうだって言われてもな・・・報酬は?」
報酬か・・・何が考えられる?
手元にあるのは界人から貰った文珠位か。
む・・・4つ貰ったはずだが、6つある・・。
界人には悪いが、1つ位・・まぁいいだろう。
「報酬はこの文珠だ」
「文珠? なんだそりゃ?」
「文珠とは―――――――――
(説明中)
――――――――だ」
「なるほど、それが本当なら精霊石なんて目じゃないな。いいぜ、手伝ってやるよ」
「すまない、助かる」
「なっ・・やっぱりママに似ている・・(////)」
メドーサが界人に見せるような反応だな・・・・はて?・・・あ!
気づかなかった事に・・・・うむ。
「さて、雪之丞は此処の言葉がわかるか?」
言葉・・・界人にも言われた事だが、私は日本語以外出来ない。
言葉の壁と言う物は思っていたよりもかなり厚い物。
ここは雪之丞に頼るしか道は無い。
「ああ、広東語なら多少は分るぞ」
「そうか、私は全く分らないからその辺りは頼む」
界人に貰った文珠で[翻][訳]や[伝][心]などの念を込めれば通じるだろうが、貴重な文珠だ。
言葉がわかる者が居るならば無駄に使う必要は無いだろう。
「で、風水士ってのは何処の誰が狙われるんだ?」
「分からん」
「そうか・・・って、分らないんじゃ防ぎ様が無いじゃないか」
「ああ、その辺りは香港のGS協会に行けば大丈夫だろう」
「どう言う事だ?」
「先日、日本のGS協会にメドーサが乗り込んでこう言った『もうすぐ香港で面白い事が起こる、風水士共が次々に死んでいくだろう。頑張って防いでみな、これはゲームだ』と。」
・・・メドーサには悪いが、悪者になってもらおう。
「メドーサか・・・その辺りの事を知っているって事は、やはり俺があいつの仲間だった事も知ってるんだな?」
「ああ、私も試験会場に居たからな」
「なんだと? 俺はあの会場に居たやつらなら一通り見たがあんた見たいな美人は居なかったぞ?」
界人に言われると恥ずかしくて体中が熱くなるが、こやつに言われるとそんなことにはならないが、悪い気もしない。
「秘密だ・・が、ちゃんとあの場には居たぞ。お主が気づかなかっただけでな」
「ふーん・・・そうなのか」
「もう良いか? そろそろ動き出したいのだが」
「ああ、とりあえずGS協会だったな」
「うむ、早ければ早いほど良い」
それから二人で香港の町を歩いてGS協会へ向かった。
香港。
南中国海に突き出た。小さな半島と235の島々からなる東京都のおよそ半分というエリアである。
古くから自由貿易港として栄えたアジアとヨーロッパの融合する地。
その中心部九龍と香港島・・・その近くに居るらしい。
途中何度か軽薄そうな男が話し掛けてきたが、全て雪之丞が殺気付きの睨みで追い払った。
「あんたと歩くと注目を浴びちまうな・・・せめてサングラスくらい買うか」
「注目を浴びると何か不味い事でも有るのか?」
「あのなぁ・・・俺はモグリのGSなんだよ、協会のやつらに見つかったら捕まっちまうだろ」
「忘れていた・・・ならGS協会には入れぬな」
すっかり忘れていたが、モグリのGSは協会から睨まれている存在だ。
GS免許を持たずに、除霊行為を行う・・・信頼はされず、依頼料も一般のGSが受け取る10分の1もあれば良い方だろう。
悪い所ばかりだが、本当に金が無く、藁をも掴む思いの者達は意外に多く、モグリのGSに必死の思いで託す。
除霊出来る程の力が無く、金だけ貰って逃げるような輩も結構多いと聞く。
雪之丞はその中で本当に除霊が出来るモグリのGS。
余り誉められた物ではないが、これが雪之丞の出来る精一杯の罪滅ぼしなのだろう。
今では噂が噂を呼び、香港では中々に有名らしい。
「困ってるやつらってのは意外と地獄耳でな、どこからか俺の噂を聞いてやってくるのさ」
照れたように語った雪之丞は以前のような歪んだ笑みを見せる事は無く、柔らかく笑っていた。
「あんたも協会に入れないのか?」
「ああ、私もGSでは無いのでな、日本から連絡が来ていれば何らかの対策が成されると思ってな・・・」
「その協会側の穴を塞ぐ形でやるのか?」
「ほぅ、意外と頭が回るようだな」
協会側がどの程度の範囲で風水士を守ろうとするかが分れば良いのだが・・・協会に入れないとなると。
「雪之丞、お主は香港のGSに知り合いは居らぬか?」
「居るには居るが、最近旅行に行っちまったぞ」
「・・・タイミングが悪いな」
仕方ない、文珠を1つ使うか。
「着いたぜ、ここが香港のGS協会本部だ」
結界も張ってある。やはりそれ位はしてあるか。
[隠]
文珠を1つ使い、結界と周りから私と雪之丞の存在を隠した。
「行くぞ、余り離れるな。効果が切れると不味いのでな」
協会は5階建てで、かなりの広さがあった。
「自動ドアじゃなくて良かったな」
「うむ、自動ドアだったら人の後ろに付いて入らねばならぬ所だった。」
1階は受付や応接間などしか無い。
此処ではないようだ。
「上へ行くぞ」
「ああ・・・そういえば」
「なんだ?」
「昨日電話で伝わってるとして、今日会議やらなにやらを開くとは限らないんじゃ無いか?」
「・・・気にするでない、もしそうだったら他の手を考える」
「行き当たりばったりってのは俺も良くやるが、侵入した後に気づくのも何だな・・・。」
・・・・・。
2階、3階と進み、4階に来て漸く沢山の人の気配がした。
「此処のようだ、15・・17人か」
中には17人ほどの気配がある。
「行こうぜ」
雪之丞は全く音を立てずに部屋の扉を開けた。
「お主、妙に手馴れておるな?」
「ああ、食うもんに困ったときにちょっとな」
・・・・何も言うまい。
入り口は部屋の中では下座の方だった。
部屋の中は広く、真中には四角型に木製のテーブル8つ置いてあり、皆座っていた。
上座の位置には4人が並んで座っていた。
恐らくこの4人が此処の代表者だろう。
右から白い髭の中年、頭の禿げた眼鏡の老人、20代後半だろう茶髪の女性、道士風の格好をしたサングラスをした男。
何か喋っているが・・・・さっぱり解らぬ。
「お主だけ侵入すれば良かったな・・・私にはさっぱり言葉が解らぬ」
「・・・今更だな、まぁ俺が教えてやるよ」
無限の魔人 第二十二話 ~香港編~
end
あとがき
龍美香港で雪之丞と出会うの巻
龍美は知識は有っても経験はありません。やることなすこと穴が空いてます。
雪之丞も細かい性格・・とは似ても似つかない方なので、ほぼ似たもの同士と言っても良いでしょう。その似たもの同士の二人が織り成す香港編はさっぱり筆(?)が進まず困ってたりします!
界人君側の方が楽だなー・・・。
最後に愚痴を「香港の描写ってさっぱりわかんねー」
レス返し 感想ありがとーぅヾ(´ー`* )ノ
>法師陰陽師さん
ぬぉ、ハーピーってこんなに難しい存在だったんですねー・・・勉強になりました。この知識を役立てる日が来たら良いなぁ。
それと、龍美の活躍を期待しててくださいっ!
>九尾さん
龍美は横島君をGSで合格させる為に、女風呂を覗きに行かせたりするような人です! 勝つためなら手段を選ばない人でありながら、何故か精神論では甘っちょろい事を言い切るような矛盾を抱えています。・・・これも人故でしょうか。
>トレロカモミロさん
横島君より先に雪之丞と出会いました。(ぷっぷっぷ
いやー・・・自分で言うのもなんですが、横島君報われませんね。
きっといい事あるさー。
>柳野雫さん
ハーピーと龍美が気になって、横島君側が疎かになりそうな予感がしてます。
がんばれ横島!君にはきっと・・・明るい未来(?)が待ってるさー。