無限の魔人 第二十一話 〜過去の鳥〜
・・・・・。
「何を考えてるんだい?」
「・・・いや。」
「そんな顔をされてたら『気にしてください』って言ってるようなもんさ」
「そうそう、気になることがあるなら言っちゃわなきゃ」
「皆仲間であろう?」
3人にこうまで言われれば言わざるを得ないか。
「ふぅ、敵わないな全く。これでもポーカーフェイスは得意になったんだが」
「はっ!確かにポーカーフェイスだけど、雰囲気が全然違うよ」
笑いながらメドーサが言った。
・・雰囲気か、そんなのが読める奴なんて今まで居なかったからな。
「そうか、次からはばれないように工夫する。」
「いや、そんなことを言ってるじゃなくて、何を考えてるか聞いてるんだよ?」
ちっ、話が逸らせなかったか。
「分った分った、俺が考えていたのは・・・」
「「「考えていたのは?」」」
「ハーピーの事だ」
「「「ハーピー?」」」
「ハーピーとは誰だ?」
「「ハーピーね(か)」」
「ハーピーってのは魔族の殺し屋的存在だな。日本名は人面鳥だったかな」
「それがどうしたのさ?」
「いや、美神親子を狙って封印されちまうんだが、そろそろ復活するはずなんだ」
「ふぅん」
「そやつを倒すのか?」
「いや、殺し屋って事は頼まれたから殺してるんであって、自分の楽しみのためにやってるんじゃないしな。その辺りはGSと同じだな。霊、妖怪、悪魔を祓う・・・な?」
「それはそうだね、GSってのは依頼で人外の者を祓うからね」
「それで、どうするのだ?」
「うーん、そこを悩んでるんだ」
「「何故?」」
「いやー、美神親子を狙われるのは正直言って困るんだけど、ハーピーって俺にとって完璧な悪人って訳でも無いからさ・・・狙うのを止めるなら助けようかなって思ってるんだけど」
「なら助ければ良いではないか」
うんうん とメドーサとラピスが頷いている。
「ああ、だけど何時助けようかなって」
「「「何時?」」」
最近3人でのシンクロ率が益々上昇しているな。
「ハーピーを助けるのは結構簡単だ。今だともう勝手に封印が解かれるから無理だとして、美神令子に退魔される瞬間に助けようとすると私念が残って、狙うのを諦めてもらうのは無理だろうしな」
「では助けられないでは無いか」
「そうなんだよ・・・」
うーん
「だったら封印されて直に助ければ良いんじゃない? 未来はもう自由を得ているんだし」
ラピスがそう言った。
そうだよな、時間移動してしまえば・・。
「・・・そうか、その通りだな。ラピスでかした」
ラピスの頭を撫でてやる。
「えへへへ」
そういえばラピスとメドーサって俺より年上だよな・・・妙に子供っぽいんだが。
「界人」
「ん?」
「時間移動・・・出来るのかい?」
「ああ、文珠を使えば可能だと思うが」
「皆で行けるのか?」
「うーん、やってみなきゃ分らないけどな・・・そもそも文珠で時間移動なんて初めてだから」
時間移動なんてやろうとも思わなかったからなぁ。
「俺1人なら間違いなく行けると思うが、皆で行ってみるか? 俺の予想では成功率86%だが」
「失敗した場合どうなる?」
「さぁ、時空間を彷徨ってどこか別の時間帯に落ちるか、そのまま彷徨い続けるか・・・後は分らないな」
「私は一緒に行くよ」
メドーサが言った。
「俺としては皆に留守番してて欲しいんだが・・・」
「僕も行くよ、時間移動一度は体験してみたかったんだ!」
・・・観光気分。
「龍美はどうする?」
「私も勿論行く、1人で留守番など耐えられん」
前振りはしたし・・・飛ばしてやるか。
どういう結果になるかは龍美次第だ。
理想と現実をもっと知るべきだからな。
「よし、んじゃ全員で行くぞ。念のために1人4つずつ文珠をやる、使いかたは分るな?」
「「「ああ(うん)」」」
「別の時間に行ってしまっても俺が直に行くから安心しろ」
文珠を全員に渡し、改めて時間移動に使う文珠を作る。
[時][間][移][動][追][跡]
俺達を光が包む。
その時に
[転][移]
を作り投げた。
「着いたみたいだな」
「もうかい・・・一瞬だったね」
「あんまり楽しく無いね」
「お前は時間移動に何を求めていたんだ?ラピス」
「うーん、空を飛ぶ以上のスリルを」
「炎の狐で十分だろ」
「い、いや、あれはもう相当なあれだけど・・・」
焦ったように手を振りながら言った。
改めて回りを見渡せば、美神除霊事務所の公園だった。
カップルが二組に・・・居た!
「二人ともこっちに来い」
小声で二人に話し掛ける。
「へ?二人?」
ようやく気づいたか。
「龍美ちゃんは?」
周りを見て言った。
「香港だろうね、全く甘いんだから」
メドーサだけはあの一瞬を見ていたらしい。
「ふ、まぁ行くぞ。あの人に見つかるとやっかいだ」
美神美智恵が公園内を見鬼君を持って歩いている。
こちらに反応されないように、文珠で気配を[絶]っているので見つかる心配は無い。
「ねぇねぇ、龍美ちゃんは香港って本当?」
3人で公園内の林の陰に隠れている。
「ああ、あの忠告だけじゃ内心満足してないみたいだからな、世の中の厳しさを一度は知るべきだ。」
それがあいつの為・・・俺と共に居るなら甘い考えでは生きてはいけない。
「へぇ、あの女結構やるみたいだね。あの攻撃を避けるなんて」
見るとハーピーの攻撃を全て避けたところだった。
「ああ、あの人はGSの中でトップクラスだからな」
「ハーピーじゃ荷が重いのも確かだね」
「ハーピーは人界専属の暗殺者だろうね、あの程度なら魔界じゃ通用しないよ」
それはそうだろうな、魔界じゃ軍が大きく幅を利かせているから、あの程度の力じゃ蹴散らされる。
下級魔族の中でも強いってわけでもなさそうだ。
「遠くからの狙撃が避けられるなら、罠を張って決定的なチャンスを作り出すしか無いな」
「・・・そこまで考えるかね?」
「無理じゃないかな? ハーピーは人間にしたら強すぎるくらいだから、初めてあんな強敵と戦ってるはずだよ。初めて経験する状況で罠を考えるなんて無いと思うよ。」
「その通りだろうな―――さて、ハーピーも逃げたし、飯でも食いに行くか」
「そだね」「ああ」
ハーピーを美神美智恵に退けられる前に説得する事も考えたが、そうすると美神美知恵が死んだ事にはならないだろう・・・これは修正力が働いたとしても非常に大きい歪みがでる。そうなると予想も出来ない事が起こる可能性が高いので止めた。
およそ20年もの間封印される・・・か、どんな気分になるだろうな。
そんな事されれば、任務に関係なく恨みを抱くだろう。
その前に助け出さなければ。
その後美神美智恵と接触するのも面白いかもしれない。
無限の魔人 第二十一話 〜過去の鳥〜
end
あとがき
会話・・・が多いぃ・・・地の文を増やさねばー。
ところでハーピーって強いのかな?
拳銃乱射されたら・・・うーん、そう考えると強そうだなー。