無限の魔人 第二十話 ~過去からの手紙~
「走れよこちまーーーー!!」
「ブヒヒーーン!」
今俺は・・・馬になっている。
「きゃははははは」
「パカパッパカパッ!」
俺の口から伸びる紐は背中のれーこちゃんが握っている。
「ひぃ、膝が痛い」
れーこちゃんが目覚めてからずっと遊び相手を務めさせ“ら”れている。
子供は嫌いじゃないけど、無限とも言える元気の塊なのが少し困る。
バタンッ
「・・・よく、体力続くわね――」
「あ、美神さんおはようございます。」
美神さんが寝起き状態のまま出てきた。
枕を片手に持ったまま、瞼も完全に開いては居ない。
美神さん朝弱いからなー・・・って既に昼近いんだが・・。
「起きてからずっと相手しててくれたの?」
「横島さんって子供と遊ぶのとっても上手なんですよ。」
「あたしゃダメ・・子供って・・・同じ絵本を100万回読ませるわ、少しもじっとしてないわ、やかましいわ、自己中心的だわ・・・」
例を上げて行くと徐々に顔が険しくなっていく。
「子供なんか皆滅べば、世の中もっと楽しくなると思うッ!!」
世界がその前に滅びます・・とは流石に言えずに。
「この子はあんた自身でしょーが・・!」
無難な回答をしておいた。
「いやなのよっ!子供のキンキン声聞きたく無いっ!!寝かしつけるのもご飯食べさせるのも遊んでやるのも全部イヤッ!! ママ―――――早く迎えに来てよ――――!!!」
枕を壁にバンバン叩き付けながら早口で言い切った。
「まだ、一晩しかあずかってないのに・・・」
むしろその前に、最初のキンキン声以外全てやってるのは全て俺とおキヌちゃんなんです・・・ぅうぅ。
その時、電話が鳴った。
プルルルルッ プルルルルッ
ガチャ
「はい、こちら美神除霊事務所・・・・・ええ!? メドーサが昨夜協会を襲った? ええ、はい・・・いえ、今のところは無理です。ええ、立込んでまして・・はい、分りました『ブツリッ ツーツー』」
「何か有ったんですか?メドーサって聞こえたんですけど・・」
GS試験からまだそう日は経っていないのに、また動き出したのか。
「美神さん?」
憤然とした様子で振り返った美神さんは言った。
「昨夜GS協会をメドーサが襲ったらしいわ」
「ええ!?協会を?」
「ええ、それで次は香港で風水士達が襲われるぞって態々言いに来た見たいね。それにこれはゲームだって挑発のおまけつきで」
「へぇ・・・で、協会は何て?」
「余裕の有るGSは、香港のGS協会と手を組んで防いでくれって」
「行くんですか?香港」
「行けるわけ無いでしょ!ママが迎えに来るまで動けないのよ」
それが無かったとしても、態々香港まで行かないと思うな・・・協会からの依頼って儲からないし。
「あ、そうだわ」
何に気が付いたのか、また受話器を取り上げてかけはじめた。
「どこに電話するんすか?」
「親父よ」
「!」
そういや母親は亡くなってるとは言ったけど父親が亡くなってるとは言ってないしな。
「お父さんはお元気なんですか?」
「まぁね・・・もしもし、東都大学動物行動学教室?」
「美神公彦をお願いします・・・・いえ、私美神教授の娘です」
「へぇ、大学の先生なのか。でもなんか怖い感じが」
「何か事情があるのかもしれませんね。」
「お電話代わりました、教授の助手の松井です。お久しぶりですわ、令子さん。」
お! 恐らく美人の声!! 間違いないっ!
「先生は研究で南米に行ってらして来月までお帰りになりませんが・・・」
「またか・・・あの馬鹿親父・・!」
美神さんの顔がかなり怖くなっている。
何か嫌な思い出でもあるのか。
「留守中、あなたから連絡があれば渡すように言われている物があるんですが・・・。なんでも亡くなった奥様との約束だったとか・・・お母様のこと、とても愛してらしたんですね・・・先生とても寂しがっておいでですよ。たまには――
「私達、お互い忙しいですから・・・その内また会いましょうつっといて!とにかく、直に伺いますわ!」
「つーわけで東都大に行って来るわ!」
「とーとだい・・? 知ってゆ!れーこのパパのかいしゃだよ!」
会社って・・うーむ、子供に説明しても分らんからなー。
「れーこも行く!」
「行ってもパパは居ないわよ?」
「いいの!行く!」
部屋で遊ぶの飽きたんだろうなぁ・・何処でも良いから外に出たいみたいだ。
「はいはい、じゃ行くわよ」
早すぎるっ!
なんで街中でカーチェイスせなあかんのじゃー!?
「もっともっとぉー!きゃはははは」
「もっとぉ~?じゃあしっかり掴ってなさいよ!?」
「いやいやいや、美神さん早すぎますってぇーーー!いくら何でも出しすぎ!!」
美神さん・・・昨日の嵐で動けなかった分発散してるのか?
それにしたってこれは・・。
「折角のコブラよ? 抜いてやらなきゃ勿体無いわ!」
「そんな危険な事はもっと広い場所で! あ、れーこちゃん暴れないで」
れーこちゃんは俺の膝の上ではしゃいでいる・・・。
「はやいはやーーい!」
「コラー!!そこのコブラ止まれ!・・・あ、加速するんじゃない!止まらんかぁあああ!!!」
「ふ、私に喧嘩を売るとは良い度胸ね!? ぶっちぎってやるわ!」
「美神さん!そんな事してないでさっさと東都大に「いっくわよぉーーーーー!!」
「いやあああああ!!」
東都大とは全然関係ない方向へ・・・
「まてぇええええ」
街中での追いかけっこが始まった。
「あー、スッキリした」
「それはあんただけや!」
1時間街中をぐるぐる走り回って、ようやく警察を撒いた。
「・・・それにしても美神さん、車のナンバー覚えられてますよ?」
「心配ないわ、そのナンバー偽物だし」
なっ!
そこまでやってるのか・・・やっぱり用意周到だな。
「あんた達はその辺で待ってて」
そう云って1人大学内へ入っていった。
「どうしますか~?横島さん」
「うーん、ここは大人しく待ってた方が良さそうだね。直戻ってくるだろうし・・・れーこちゃんも・・・って居ない!?」
「あ、横島さんれーこちゃんがあっちに!」
おキヌちゃんが指をさした方向へ向いたら・・・れーこちゃんが大学内へ入っていった所だった。
「ああああああああ!!れーこちゃーーーん!」
俺は急いでれーこちゃんを追いかけた。
「待ってくださ~い、横島さーーーん!」
「ごめんなさい、ごめんなさい本当にごめんなさい」
「ごめんなしゃい」
俺とれーこちゃんは必死に土下座していた・・・・美神さんに。
「あんたねぇー!?子守りもまともに出来ないのっ!?」
れーこちゃんはあの後、講義中の教室に乱入し散々悪戯をした挙句、先生の残り少ない白髪を・・・・。
その時丁度れーこちゃんに追いついた俺達だったが、時既に遅し、先生が泣きながら走り去っていってしまった。
そのせいで講義は中止、大学側からの苦情が美神さんに行ってしまったのだ。
美神さんの怒りは主に俺に対してだ。
「はぁ・・・兎に角帰るわよ!」
「あれ、預かり物ってもういいんですか?」
「ええ、もう受け取ったわ」
「そうっすか」
「れーこ、行くわよ」
「はーーい!」
さっきまで怒られて泣きそうな顔だったのに・・・。
帰り道、美神さんが預かり物だった母親からの手紙の内容を話してくれた。
「ママはハーピーって言う魔族に命を狙われてたの。流石のママも小さい私を守りながらじゃ無理だったらしくて、一時的にハーピーが手を出せず尚且つ信用できる相手に子供の私を預ける事にしたのよ。つまり、未来の私に」
美神さんが語ってくれた事は、概ね昨日予想した範囲内だった。
「え、でも何で俺の所に来たんすか?」
「それはね、時間移動ってのは感覚的にしか分らないらしくて『ここ』って所に出るみたいなの。それで問題だったのは『ここ』って感覚を私を頼りにしてたらしいんだけど、横島君が私と離れてしまったせいで、『ここ』って感覚が2つになったらしいわ。それで迷った末に出たところが・・・」
「俺の所だったと」
「そういうことね。」
「なんで俺が『ここ』って感覚になってんすか?」
「多分、長い間私と一緒にいたから、私の霊力が横島君に多少移ったのかも」
「へぇ、そんなこともあるんですねー」
「多分よ、多分、核心があるわけじゃないわ」
無限の魔人 第二十話 ~過去からの手紙~
end
あとがき
美智恵が横島君の所に出た原因が簡単な理由でした。あーぅ。
原作とあんまり変化なし・・・実は読まなくてもよさげ_| ̄|○
界人側に比べ横島側は・・・原作に沿うようにしなければならないので、なんか味気ない・・・次こそはっ!
レス返し
>片やマンさん
メドーサのギャップがっ萌え(死
香港編は今頑張って執筆中ですので、もう暫くお待ち下さい!
>九尾さん
3つの視点を同時進行だとかなり展開が遅くなりますが、頑張って読んでくださいねー。遅々として進まない話に嫌気がさしたり・・・ガ━━━(゜ロ゜;)━━ン
>紫竜さん
魔族は良い意味で単純なのです。やりたいことをやる・・・解りやすくて良いですねーメドーサも・・・ああ好きだーーー(壊
>通りすがりにdisturb orderさん
変装・・・さすがですね。私は全く気づきませんでした。 _| ̄|○
キーやん哀れな私をお救いください。
でもでも、「メドーサに危険がある」っていうのは龍美に対する楔の1つだったんですよ。・・・と言い訳。
気にしちゃ駄目です(逃げ文句
>法師陰陽師さん
親子・・・うーん、見た目は大きいので親子は難しいと思いますね。
精神的には親子・・・ありえますねー。
>トレロカモミロさん
むぅ、見破られてましたか。お察しの通り界人君にはもう1つの策が!
これはまだ内緒です。
>柳野雫さん
勘九郎ってやっぱりその程度ですよねー・・・あっはっは。
誰か勘九郎救済企画でもやらないかなー・・(人任せ