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▽レス始

「彼が選んだ道−5−(GS)」

リキミ・スキッド (2005-01-09 21:59)
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横島が修練所についた時には中は多くの魔族で賑わっていた。
異常な新米魔族とワルキューレ直轄部隊の副長の訓練といえども模擬戦が始まろうとしているのだから、当然といえば当然の事態だった。
修練所の真中ではリムルが漆黒のコウモリのような翼を生やして完全に戦闘体勢に入っている。

「ったく、いつのまに訓練じゃなくていつのまに模擬戦をすることになったんだよ。」

口では不満を言っているが横島はこうなることは予測できていた。
心配そうに眺めてくるレイドルに向かって横島は笑ってみせる。
強者とはいままで何度も戦ってきた。
そして学んでいた。
戦うしかないのであれば、全力でぶつかるまでと。
群がっている魔族を押しのけるようにしてリムルの前に立つと苦笑いを浮かべてみせる。

「普通の特訓じゃないんですか?」
「模擬戦も普通の特訓の一つよ。」

リムルの霊気が上がっていく。
人間とは比べ物にならないほどの出力の霊気を前に横島も霊気を高めていく。
そして必死に自分に言い聞かせる。
人間として戦え、と。
魔族と人間では霊気の絶対量が違うのだから横島の霊気は魔族としては少ないほうだが、人間としては十分なのだ。
人間として戦い、数多くの魔族を退けた時の力の使い方を横島は必死に思い出そうとしている。
思い出せ。人間の時の力の使い方を。

「いくわよ。」

リムルの宣言を皮切りに戦いが始まった。
人の頃ではまず捕らえられなかったであろう速度でせまるリムルの動きを魔族の動体視力で捕らえ避ける。
逃げることに関しても異常な才能を誇る横島は変則的な動きでリムルの攻撃を避けつづける。

「逃げるのだけは一人前みたいね。」

そうリムルは笑い、さらに速度を上げる。
そうなると横島は気配と感だけで避けることになる。
その様子を見て他の魔族からブーイングがあがるが横島は構ってはいられない。
横島はチャンスを待っていた。
未だに人としての霊気の操り方を思い出すことは出来ていない。
ならば、魔王としての霊気の操り方で一撃必殺を狙うしかない。
確実に、相手に直撃させなければ横島に勝機はない。

「どうした? ちっともあたらないぞ。」
「なんですって!!」
「生まれたばかりの俺にも見えているぞ。お前の遅い攻撃がな。」
「――貴方。」

ぴたりとリムルの動きが止まる。

「殺してあげる。」

リムルの瞳が金色に輝いた。
そして突如として横島を疲労感が襲う。
それもじわじわと来るものではない、体力が根こそぎ奪われたような感覚を持ってである。
実質横島の体力は奪われていた。
淫魔の持つ魔眼その名も吸収眼。目に映る対象の体力を奪い取る瞳である。
魂や霊気など吸収するの物には色々なものがあるが、リムルの魔眼は体力を奪い取るに秀でていた。

「魔眼・・・だと!」
「へぇ。魔眼の存在をご存知なんですか。とことん異常なんですね貴方は。」
「うるさい。お前と比べて頭の出来がいいだけだ。」
「その出来のいい頭、私が砕いてあげましょう。」

リムルが動く。
魔眼は未だに爛々と輝いていて、横島は絶えず体力を奪われていたがそれでも待ちに待ったチャンスが来たということで力を振り絞る。
横島は待っていたのである。リムルが直線的に横島に向けて迫ってくるのを・・・!!

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!」

咆哮を上げた。持てる霊気をつぎ込んで自分が一番最初に覚えた技サイキックソーサーを具現させる。

「それを盾にでもするつもりですか!!」

後少しでリムルの腕が横島を攻撃の射程内に収めようとしたとき横島は笑みを浮かべた。
最初で最後のチャンス。
外せば次がない。
そのスリルが横島の闘争心をかきたて、そして確信させた。
俺は勝つ、と。

「どっせい!!」
「なっ!?」

まるで横島がまだ人であった頃の最初の戦いをなぞるようにサイキックソーサーはリムルへと吸い込まれるようにして直撃する。
爆発音が大地を揺らし、煙が巻き上がる。

「やった・・・・・・か?」

油断なく横島はリムルのいた場所を見つめ、そして悪寒と共にその場から飛びのいた。
風が駆ける。
横島がいた場所を突風が通り過ぎ、修練所の床を裂いた。
その風は体から血を流しながらその動きを止める。

「そんな・・・あれでその程度のダメージだと?」
「よくも・・・・・・やってくれましたね。」

血を流してはいるがリムルには致命傷になるような傷はどこにもなかった。
そこで横島は明確に二人の間にある事実を確認した。
根本的な能力が違いすぎるのだ。
横島が勝利を確信したタイミングはリムルにとっては余裕を持って防御壁をはれるほどのタイミングであったのだ。
もはや横島には霊気は残されていない。霊気の回復の源である闘争は、目の前の事実で霧散へと散ってしまっていた。

「そんな、馬鹿なことがあってたまるか。」

横島の敗因は、無意識のうちに横島が抱いていた慢心に他ならなかった。
魔王であった頃の自分が使っていたサイキックソーサーと同じ威力があるはずと、そう慢心していたのだ。
生まれたばかりの魔族にそんなものが出せるはずがないということを理解できていなかったのだ。
横島は死を感じた。
守ってくれる人もいない、相手を退ける力もない、状況は絶望的。
死が横島に迫っていた。

「うっあ・・・・・・。」
「ワルキューレ大尉の言う通り面白い戦いをする人ですね。」
「あっああ。」
「でも、それだけです。」

リムルが笑みを浮かべる。
リムルは勝利を確信している。
いや、リムルだけではない他の魔族も当然のことながら横島の敗北を理解していた。
レイドルは沈痛な面持ちで横島を見つめる。
恐怖で歪んだ横島の顔を、ただ一心に見つめることしかレイドルにはやることがなかった。
何度かレイドルは横島とのラインを通して、霊気を送ろうとしたり体を操ったりしようかと考えた。
だがこれは模擬戦といえども一対一の果し合い。
魔族としての誇りが試合への介入を許さなかった。

「絶望の淵で眠りなさい。」

金色の魔眼が灰色へと色を変えた。
これこそリムルが戦闘タイプではない淫魔でありながらワルキューレの片腕にまでのしあがることの出来たもっともの原因である精神破壊の魔眼。
周りの魔族は絶対にリムルの瞳を見ないように目をそらせた。

「生まれたばかりの赤子はいったいどんな絶望をみるのかしら?」
「アッアッアアアァァァァァァァァァァアアアアア!!」

横島の絶叫が響き渡る。
喉をつぶさんがばかりに上げられる声には絶望が込められていた。
その様子をリルムは唇を愉悦に歪めて眺める。
これでまた、ワルキューレの心を占めるものはいなくなる。
リルムはそれが嬉しくて仕方がなかった。


力が欲しいと思ったのだ。
彼は絶望の丘で大切な人を守れる強さを欲したのだ。
誰にも奪わせないために、
誰からも守るために、
守れるだけの、
奪われないだけの、力を彼は欲したのだ。
自分の為に求めた強さではなかった。
大切な人が笑顔でいてくれるならば
大事な人が幸せでいられるのなら
それだから、世界に満ちるほどの絶望を吹き飛ばす力を彼は欲したのだ。
故に一人で立ちはだかった。
故に一人で立ち向かった。
その先には永遠に絶望が続くとわかっていても、彼はその足を踏み出したのだ。


「グゥゥゥゥゥゥゥウァァァァァァァアアアアア!!」


馬鹿ね、と彼女は涙ながらにそう言った。
彼は絶望に染まった大地の上で、空の下で、彼女に笑いかけた。


あとがき
伏線投下の今回。対リムル戦は前後編になりました。量的にも展開的にもその方が良いと判断したからです。
今回の横島君の戦い方は如何だったでしょうか? 
横島君にとって自分が人間だった頃の戦いで一番最初に思い出すのはやはり始めての本格的な戦い。
GS試験での対雪乃丞戦だろうという考えからこうなりました。
今回の後半には実は言うと魔界パートの核心のヒントが少しばかり隠れていたりします。
かなりひんまがったヒントなんですけどね。

>九尾様  横島君、しばかれるのを通り越して本気で殺されかけています。人間くさい戦い方を思い出すのはもう少し先になりそうです。
人間とはどういうものかを忘れている横島君には仕方がないんですけどね。

>D,様  勝機はゼロでした。文殊は使えない。霊気の操り方は未だにできていない。これでどうやって勝てと? でもまぁそんな中でも横島君は横島君なりに頑張ったんですけどね。今は自業自得、もしくは自分を正しく理解できていなかったことで苦境に立たされていますけど・・・・・・。

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