(・・・苦しい!)
“何か”に閉じ込められた者の声がした。その者は自分の中に侵食してくる底知れぬ恐怖だった。
(来ないで!私の中に入って来ないで!!)
その者の意思も虚しく
その者は全てを侵食され
存在を・・・変えられた。
エピソード伍 疾風の豹
「嫌じゃ〜〜〜!!もう検査は嫌じゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
横島は身体に付けられた器具の感触に小さく嫌悪しながら身体を捩る。
「我慢したまえ。この前の事件からまだ三日しか経ってないぞ。それ位我慢できないのかい?」
「じゃかしい!!何日もこんな嫌な感触の器具を付けられてたら嫌になって当然じゃ!!」
そう、この前のGS試験で横島が変身したのを見て不安を覚えたおキヌと小竜姫は、美神に頼み西条の知り合いの医者がいる病院を紹介してもらったのである。西条も遺跡に載っていた戦士の情報を仕入れたいため同行しているのである。
「よし、どうやら検査結果が出たらしい。来たまえ、横島君」
「命令口調で言うなや!!」
そう言いつつも付いて行く横島(苦笑)
その頃美神除霊事務所では・・・。
「美神さ〜ん、私横島さんのお見舞いに行きたいです!」
「大丈夫って言ってるでしょ。おキヌちゃんも心配性ねぇ、あんなゴキブリ並の生命力をもったアイツの事だから心配ないわよ」
この前の事件以来常に横島の傍に憑くようになったおキヌを軽く流す美神。
「第一、西条さんも付いているんだから問題ないわよ。もしもの時は連絡とればいいだけよ」
「でも〜」
(本当は私が看護してあげたいです〜〜〜)
(あの馬鹿!!速く帰ってきなさい、仕事が出来ないじゃない!!)
形は違えど横島を心配する二人だった。
「・・・はっ!?」
いきなり素っ頓狂な声を上げる横島。何に驚いているのか?
部屋に入って西条の知り合いの医者が『上条時雨』という極上の美人だったからではない。
その医者が見た目清楚で中身は大雑把と分かったからではない。
では何か、それは・・・。
「君は人間ではなくなり始めている」
という言葉だった。
「ちょ、ちょっとどういう事すか!?」
「言葉通りの意味だが?」
「めっちゃ意味分かんないッス!!」
時雨の言葉に混乱する横島。まぁ無理もない、いきなり人間じゃ無くなり始めていると言われれば普通はそういう反応を取るだろう。
「こら時雨君。君をある程度理解していない人にそう言う言い方は厳しいと思うぞ」
「私流を通すのが私」
「・・・(汗)」
時雨の言葉にでっかい汗をかく西条。そんな西条を無視し時雨は横島の方を向く。
「まあ確かに端的に言い過ぎたね。簡単に言うと君の身体は西条君からの報告に載っている戦士の状態になった事により、君の中の霊基構造が異常強化されてしまったんだ。更に言えば君の下腹部に霊力が凝縮された石が出現していたのだ」
「石っすか?」
「うむ。まあ霊石というべきかな」
時雨の言葉にふむふむと肯きながら納得する横島。
「まあ今のところはまだ大した異常はないようだ。しっかり休むといい」
「分かりました、ありがとうございます」
そう言って部屋を出ていく横島。そして部屋を出た瞬間
「あ゛〜〜〜〜〜〜!!遅刻や〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
いつもの癖で走り出す、その行動にこける二人。
「彼は馬鹿なのか(汗)」
「馬鹿だと僕は思うがね」
散々馬鹿と言いまくる二人であった。
「すんませ〜〜〜ん!!遅れましたーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
大声で謝りながら事務所に入っていく横島。
「どうしたの横島君?」
「あ♪横島さん!!どうしたんですか?」
突然の来訪に驚く二人。
「え?今日は出勤なんじゃ?」
「あのね〜、あんな事があったんじゃ流石に私もアンタを休ませようと思うわよ」
「でもよかった。横島さんが無事で♪」
そう言ってまた横島に憑くおキヌ。それを見てピキリマーク(♯)をたてる美神。
「まあそれだけ元気なら問題ないわね。横島君、仕事よ」
「随分と山ん中に来たっスねーーー」
「まあ今回の依頼が依頼だからね、しょうがないわよ」
「確か今回は、“せっしょうせき”っていう石に封印された妖怪を除霊するっていうのでしたよね?」
「その通りよおキヌちゃん」
正確にいうと殺生石と呼ばれる石に封印された妖弧である。『金毛白面九尾の妖弧』、通称『九尾の狐』。かつてインドと中国を壊滅的な混乱に陥れ、平安の時代に日本に流れてきた妖怪と伝説で伝えられている。
「でもその伝説って迷信らしいんじゃないんすか?」
「そうね、確かにこの伝説は結構歪んでいるって話もあるしね。でもね・・・・(汗)」
「でも・・・何すか?」
美神が冷や汗を垂らしながら言いよどむ。そして覚悟を決めて一言
「ギャラが高かったからついつい契約しちゃったのよね〜〜〜」
二人はマジでずっこけた。
≪ガサガサ≫
突如周りの木々が騒がしくなる。何かに反応している証拠だった。そして邪悪な霊気が辺りを包む。
(この邪気・・・どっかで・・・?)
発せられている邪気に覚えがある横島。彼がそれを考えようとした時
「クルゥアアアアアア!!」
異常な速度で飛び掛ってくる一つの影。
「サイキックソーサー!!」
横島が入院中に名前を決めた霊気の盾を出現させガードする。
「重っ!!」
耐え切れず吹き飛ぶ横島。そしてその影が美神たちの方を向いたときその姿を現した。
それは
全身を黒い皮膚で覆い
どこかの民族衣装のような物を着て
下腹部に銅色のベルトを着けた
豹だった。
「な、なによこいつ!?あん時の奴と一緒じゃない!!」
突然の出現に驚く美神。それにより動きが止まってしまう。それをチャンスと見た豹は美神に襲い掛かる。
「させるかーーーーーーーーーーー!!」
そう叫びながらサイキックソーサーを出現させる横島。その時、サイキックソーサーの色が赤色に変わり始めた。そして・・・横島自身も炎の空牙に変わった。
「嘘・・・また変わったの!?」
「頑張ってください横島さん!!」
片や驚き片や喜ぶ。炎の空牙はソーサーを軽く宙に投げる。
「ショットガン・ソーサー!!」
叫びと共に拳をぶつける。そして拡散したソーサーが豹を襲う。
「フー!!」
しかし異常に運動神経が高いためか全部を高速移動で避ける。そしてそのまま空牙に近づき
「キツ・・・・ネ・・ビ・」
片言の言葉を喋り目の前に炎を出現させる。そしてそれを空牙に向けて放った。
「マズ!!」
空牙はソーサーを出現させるがイキナリなため収束率が高くならずすぐに砕かれ
「がはあ!!」
空牙を襲った。
≪バタン≫
炎を受け一回転して倒れる空牙。おキヌはすぐに空牙に近寄る。
「横島さん!!横島さん!!しっかりしてください!!」
泣きながら揺らすも全く反応がない。そのうちに豹が美神に近づく。
「ちょ、何すん!!・・・・」
首に手刀を受け気を失う美神。そして豹は美神を連れて走り去った。
「美神さーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」
ただ一人意識のあるおキヌの悲しい叫びが森に響き渡った。
あとがき
なんとかここまで書けましたweyです(寝不足)
『上条時雨』ですが、ばっちしオリキャラです。クウガでいう椿秀一みたいな役柄になる予定です。後この豹の正体ですが・・・もう分かっちゃいましたよね(汗)では次回までさらばです。