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「繋がりの年代記 五話(GS+終わりのクロニクル)」

伏兵 (2005-01-05 15:48/2005-01-05 18:33)
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 車のライトの照らす先に、複数の人影が見えた。

「――!」

 西条は咄嗟にハンドルを切り、タイヤを滑らせて横向きに急停車。
 後部座席の二人がドアを開け放って飛び出たのを確認し、自身も助手席に置いていた剣を持って飛び出る。

「何用でござるか!?」

 両手に霊波刀を生み、シロが誰何の叫びをあげた。

「こんな時間に武装して車道で待ち伏せしてる連中なんて、犯罪者以外の何者でもないわね」
「僕らもこんな時間に武装して車道で待ち受けていたわけだが」
「私はいいのよ」

 言い切るタマモの狐火が照らす視界、四つの人影がある。どれも黒い長衣に身を包んだ男達だ。
 四人は皆、己の身体の一部を本来の形とは違うものにしていた。

 ……サイボーグ、か?

 機械の手足を持つ四人を観察しながら、懐からオカGの手帳を取り出す。

「こちらはオカルトGメンだ。諸君らには物資強奪の嫌疑が――」

 言葉を遮り、男達が飛び掛ってくる。
 先頭、両腕義腕の男が拳を振りかぶり、いきなり横に跳ね飛ばされる。
 シロだ。人狼の筋力でぶち当たった彼女は両手の霊波刀を十文字に構え、姿勢を崩した相手に追撃をかける。
 霊気の刀の動きは刺突。
 準物質化した霊波刀は物質にすら衝撃を与える。防御する暇も与えず右の刺突が男の腹に直撃。
 が、と呼気を漏らした相手に、シロがさらに左の刺突を放とうとするが、

「――!」

 右の義腕に止められた。
 体勢を崩した男は、しかし左足で強く踏み込んで正拳を繰り出す。

「シロ君、下がれ!」

 叫び、西条はホルスターから銃を引き抜く。
 銃種はベレッタM93Rだ。
 躊躇無く相手に銃口を向け、トリガーを引く。

「ゴム弾頭に破魔印を彫りこんだ模擬弾! 対人殺傷能力は低いが当たれば痛いぞっ!」

 三点バーストで放たれた弾丸を、相手は鋼の義腕で防御。弾かれた弾丸がアスファルトの道路に散らばった。
 西条は構わず射撃を続けるが、

「面倒ねっ……!」

 声に危機を感じて飛び退くと、熱波が来た。
 タマモの狐火だ。
 薙ぎ払うように放たれた炎熱が大気を焼き、アスファルトを溶かす。
 隣、同じ様に炎渦から逃れたシロと共に、妖狐の少女に向かって抗議の叫びをあげた。

「タマモ君ー!?」
「焼け死ぬかと思ったでござるよー!?」

 詰め寄る二人に、タマモは汗。視線を彷徨わせ、

「あー、ほら、敵が逃げるわよ」
「――しまった!」

 振り返った視界には、逃げ行く四人の後姿がある。

「逃がさんでござる――」

 追いかけようとシロが一歩を踏み出し、

「きゃうっ」

 道路に転がっていた銃弾を踏んでコケた。


             ○


 人狼の背に右の足で蹴りを入れた佐山は、その蹴り足で強く踏み込んだ。
 上着を投げ捨て人狼の背を踏み台にして跳躍し、宙を舞う少女に手を伸ばす。
 だが届かない。蹴りを放った分だけ跳躍が小さくなっている。

 ……駄目か!?

 思った時、背後に力を感じた。
 目だけで振り返る。こちらの足元、左足の辺りに光る六角形の盾が飛んできている。

 ……あのゴーストスイーパーか。

 頷き、笑みを浮かべた。

「中々に優秀なようだね……!」

 佐山はその盾を左足で踏んだ。
 足場を確保すれば跳躍が出来る。
 跳んだ。
 手を伸ばし、指を伸ばし、彼女のスカートを掴む。

「……っ!」

 吐息一つで強引に引き寄せた。
 受け止めたと同時に着地。
 抱きとめる腕の中、確かに熱を持つ少女の身体がある。
 見れば、彼女の右手にはいまだ杖が握り締められている。佐山は故意に足を滑らせて急制動をかけ、着地の衝撃を受け流した。
 そして彼女の肩を掴む右腕で、細い身体を揺さ振った。

「――無事か」

 問いかけつつ視線を人狼に向ける。
 顔に巻きついた上着を外そうとする獣に、横島が手から伸ばした光る剣で切りかかっている。
 上着は、個別に縛った両袖と裾のポケットに石が入れてあり、投網の原理の応用で獲物を捕らえるものだ。

 ……時間稼ぎだが、役に立ったようだ。

 思考の間に、腕の中の少女は言葉ではなく、動作で返した。
 まぶたを薄く開き、視線を佐山に寄せたのだ。
 汗の浮いた顔。乱れた黒髪。わずかに涙の浮かんだ瞳がこちらを見て、

「え……?」

 目が開かれる。


           ○


 視界を閉ざされた人狼が、むきになって腕を振るう。
 無作為な動きは先が読みにくいが、その分動き自体は稚拙だ。
 かいくぐり、霊波刀で鳩尾を突く。
 だがダメージは浅い。

「ちっ……!」

 舌打ち一つで人狼の攻撃圏外へと逃れ、思考を作る。
 このような相手に覚えがあった。
 以前、同じ様に山中に除霊に行ったときだ。冬眠明けの熊と遭遇し、死闘を繰り広げた。
 霊力を持たない熊には霊波攻撃が通用せず、身体能力は人間以上。文珠を使って辛くも生き延びた苦い記憶がある。
 サイキックソーサーや霊波刀の効きが弱いのは、それらの打撃力しか通じていないからだろう。

 ……霊力が効かないんなら……!

 いまだ背負っていたリュックサックを降ろし、武器を取り出す。
 その間に人狼は上着の戒めから逃れ、こちらに向かって体を倒しつつあった。
 前傾姿勢は疾走の前振りだ。一瞬の後には、獣の身体がこちらに飛んでくる。

 ……速い!

 何よりもまず相手の動きの速さに感心する。
 真っ直ぐ突っ込んでくる人狼に、横島は手に持った武器を振り下ろした。
 それは一見すればただの棒。神通棍と似た形状をしているが、違うものだ。

 ……獣にゃ解んねーだろ……!

 打音。
 人狼の爪と、横島の持った棒とが打ち合わされた。
 両者が互いの武器に力を込め、暫しの均衡が訪れる。しかし明らかに人狼の方が力が強い。
 圧される。
 横島は人狼を見て、笑みを浮かべた。

「……俺は力比べなんてしないぜ」

 そして、手に持つ棒のグリップ近くにあるスイッチを押し込む。
 かちり、と音がした。
 何も起こらない。

「……。あれ?」

 横島の額に汗が流れる。
 人狼は構わず力を込めてくる。受け止めている棒、象でも殺せるように違法改造したスタンロッドが軋み、音を立てた。

「わーっ、わーっ! 待てストップWaitタンマ――!」

 人狼が構わず更に力を込め、スタンロッドが折れた直後、

「何を遊んでいるのかね?」

 少年の声と共に、銀の一閃が人狼に突き立った。


             ○


伏兵です。今回の見所は落ちてた銃弾でコケるシロ。そして戦闘中はいずこへと退避中の鈴女。
冒頭の四人組は、終わクロを読めば何処の連中かわかるので、特に説明はしません。
相変わらず話は進んでません。次あたりでVS人狼に決着つけて、さっさとUCATに行きたいところ。


ってか修正箇所多すぎでした_| ̄|○

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