「皆さん、一斉にどうしたのですか!?」
いきなり大量の来客に驚く小竜姫。
皆はそれぞれ挨拶を交わしていく。その中でも小竜気が注目したのは横島と雪之丞だ。
明らかに以前あった時とは違う。二人とも通常状態でありながら発している霊圧は
一般GSを凌いでいる。もし戦闘モードになればどれほどのものになるか楽しみだ。
「あの〜そこの人狼の子供は?」
「拙者、犬塚シロと申します。横島先生の一番弟子でござる!!」
ささっと礼儀良く挨拶をするシロ。小竜姫は横島が弟子を取っていた事を驚く。
それでも心眼から詳しく話を聞いてようやく納得する。
「とにかく俺たち三人の修行の方頼むぜ!断る理由はねえよな?」
「ええ!私はそのためにこの地にいるのですから。」
そういった後、雪之丞、鬼道は小竜姫から手渡された書類にサインをする。
その後に、雪之丞は横島に書類を渡す。
「ほれ、横島。」
「ん、あっそか。美神さん、雪之丞が美神さん怖いから俺から渡してくれって!」
ゲシッ
「何いってるのよ!アンタが受けるのよ、アンタが!」
「へっ!?・・・・・・・・・・おっ俺っすか!?」
『煩い。』
――心眼は眠らない その19――
美神の制裁によって倒れている横島。
美神はその隙に横島の手を取って拇印を押す。
「・・・え〜とこれで横島さん、雪之丞さん、鬼道さんの三名
ウルトラスペシャルデンジャラス&ハード修行コース契約完了ですね。」
復活した横島が何か言っているが無視される。
「だいたいなんで美神さんはしないんですか!?」
「私はもうすでに一度してるのよ、だから今回は小竜姫と話をしにきただけ。」
一同は銭湯の脱衣所みたいな所に向かう。横島の喚きは完全に無視されている。
まぁそれでも修行用の服には着替えているが。
三人は着替えが終わり、横島が前回来たことがある修行場に到着する。
そこに中心には何故かベレー帽を被った誰かがいた。
「アッテンション!!私の名は魔界軍情報士官ジークフリード少尉!! これから諸君は私との模擬試合を行ってもらう!!心してかかるように。」
「お〜ジークはんやないか、ひさしゅう。とりあえず帽子とってくれへんか?」
ジークは言われた通り帽子を取る。その後、いきなり性格が変わり皆を悩ませる。
鬼道は前回経験しているため皆の様子を見て笑っていた。
その後、ジークは自分がワルキューレの弟である事を告げる。
「さて、最終試験の前に皆さんにはテストを受けてもらいたいのですが、
ジークフリードさんと一戦してもらえますか。あっでも鬼道さんはすでに
大体の実力は分かっているので結構です。戦うのは横島さんと雪之丞さんの
お二人のみお願いします。」
「そういうことですからこれからお二人は私と一対一で戦ってもらいます。
別に勝つ必要はありませんよ。審査を受けるに値する実力を持っていることを
証明してください。」
その言葉でヤル気がみなぎる雪之丞と対照的にどんよりする横島。
雪之丞は先手は俺だといわんばかりにリングに上がる。
「雪之丞ーー!!徹底的に頼むぞ!!俺の出番がなくなるぐらい。」
なんとも自分勝手な応援をする横島。
まぁ雪之丞にとっては強敵と戦えるチャンスなので言われなくて全開で行く気満々である。
中央で対峙する二人。
するとジークの手から一つの剣が現れる。
それを掴み、構えを取るジーク。
「ではお好きにどうぞ。」
「言われなくてもいくぜ!!」
魔装術形体に変わる雪之丞、距離を詰め打撃を開始する。
ジークはそれを巧みに剣であしらい、反撃を開始する。
「あの剣ってもしかして・・・」
「お気づきになりましたか、美神さん。でも二人には黙っていてくださいね。」
「あの剣が曲者なんやな〜」
美神は何かに気付くが小竜姫は美神にそれを横島達に伝える事を許そうとしない。
鬼道も知っているのかのんびりと戦闘を観察している。
横島は一生懸命、雪之丞を応援している。なにやら”殺せ”とか物騒な言葉が
飛び出ているが気にしないで置こう。シロは目の前で展開されているハイレベルな戦いに興奮していた。
ここで雪之丞は連続霊波砲を放つ。
ダンッ
ダンッ
ダンッ
ザンッ
ザンッ
ザンッ
だがそれをジークは剣を使用して全てを引き裂いたり弾いたりする。
その切れ味は超一級品で斬られたら雪之丞の装甲でも危ういだろう。
「ちっやるじゃねか!!」
「そちらこそ、しかしそれだけですか?」
ジークは軽い挑発を繰り出す。
ここは流石雪之丞、見事にのってしまい突っ込む。
雪之丞の特攻をジークは確実に対応して斬撃をお返しする。
ザシュッ
あやうく勘九朗と同じ目になりそうになった雪之丞。(隻腕の事です。
なんとか直撃をさけるが見事に魔装を切り裂き腕からは血が流れる。
「!!」
「これでどうだ!!」
今ので勝負を決めるつもりだったジークには隙が生じてしまう。
雪之丞はすかさずカウンターを放つ。
その閃光のような一撃はジークの顔面を捉えるが―――
「残念ですが、僕は不死身なんです。」
「ばかな!!」
―――全くものともしないジーク
渾身の一撃が全く効いていなくて一瞬呆然とする雪之丞。
その間にジークは雪之丞にとどめをさそうとするが、体が勝手に動いたのか
なんとかそれを回避しようとする。
「くそっ!!」
しかし今度は足にも裂傷がはしる。
「小竜姫どの、この際横島どのも一緒に相手をしてもいいですよ。」
「そのようですね、横島さん。雪之丞さんと共闘するのを認めます。」
「げっ!!」
雪之丞の劣勢を見て嫌がる横島であったが、美神に蹴られ無理やり参戦されられる。
雪之丞は先ほどの一撃が何故無傷なのか不思議がっていた。
横島は考え中の雪之丞と合流する。
ご丁寧にジークは地面に剣を突き刺して待っていてくれるようだ。
「横島、なんでさっきに攻撃がきいてねえんだ!?」
「あ〜よくわからんがアイツの体、あの剣を掴んでた時は全身に見たこと無い霊波を
纏ってやがったんだが、でも今は剣を離してるから普通の感じにしか見えんし。」
横島は雪之丞にヒーリングをかけながら質問に答えてやる。
もちろん事だが出力は女性の時と比べ格段に低い。
「さぁもういいですか?」
雪之丞へのヒーリングが大体完了したと見たのか、再び剣を掴む。
横島の目からはまた今まで見たことがない霊波がジークを纏う。
『横島、本気でいかねば即刻たたっ斬られるぞ。集中せよ!』
「うっ、なんかそれっぽいな。」
「来るぞ!!」
ジークの攻撃が再び開始される。雪之丞もヒーリングによってある程度は回復できた
のか、運動速度は戦闘開始から変わらない。
横島はすかさずサイキックソーサーを放った後、右手に栄光の手
左手にサイキックソーサーとお決まりのスタイルをとる。
ジークは迫ってきたサイキックソーサーを一太刀で切り伏せ横島に迫る。
「ハァァァッ!!」
「ぬぉっ!!」
ジークの剣は横島の栄光の手を切り裂こうとする。
驚いた横島は左手で所持していたサイキックソーサー投げながら後ろに下がる。
バァァァン
ジークがサイキックソーサーを斬ろうとした瞬間、それは爆発する。
案の定、ジークは無傷であったがめくらましにはなったようだ。
その隙をついて横から雪之丞が霊波砲を放つ。
ドォォォン
やはりダメージは無いようだが、衝撃までは殺せず横に吹き飛ばされるジーク。
「クッ・・やりますね!!」
相手の不死性の謎がわからない今、雪之丞は深追いはしない。
今のも横島を援護したに過ぎなかった。雪之丞は横島がジークの弱点を見極めるまでの
時間稼ぎを買って出るつもりであった。
現在の横島はジークの弱点を調べるため必死に霊視をジークの真正面から行っていた。
「くそ〜。見えね〜、心眼どうすりゃいい!?」
『・・・北欧神話って言葉を知らんのか?』
心眼は呆れた口調で横島に答える。
横島からすれば何故心眼が呆れているのか全くわからない。
「んなもん、知るか!!」
『威張るな!!・・・霊視を続けていればいずれわかる。』
横島は今度は試しにサイキックブレットを撃つ。
バァン
「ぬぉ、危ねえじゃねえか!!」
ジークはその弾の速度に反応できず肩に直撃するが予想通り無傷である。
雪之丞が何か言っているがこの際無視だ。何故か雪之丞の肩もかすったような気もするが。
ジークの剣は雪之丞の装甲も関係ないということが分かっている今、特攻はできない。
しかもこちらの攻撃は全く通用しない。ジリ貧状態が続く。
「あのバカ二人は本当に何やってんのよ。」
「しかしお二人とも大したものですよ。実際テストとしては十分合格ですし。」
美神はジークの弱点が分かっているのか、二人の知識の無さに呆れている。
小竜姫としては始めから二人の実力はテストを受けるまでも無いことは分かっていた。
「へっ?じゃあ、なんでまだ戦っているの、もういいじゃない?」
「本当は以前、美神さんも戦ったゴーレムとカトラスがテストの相手でしたのですが、
何故か、ジークフリードさんがぜひとも戦いたいと言っていたので、急遽このように
なってしまったのです。」
実は小竜姫は事前にジークから自分が納得いくまで戦わせてくれと頼まれていたのであった。
”姉上が認めた相手とぜひ勝負したい”
というのが理由らしい。実はワルキューレ、魔界に帰った時に中間報告を持ってきた
ジークと鉢合わせする事になり、横島たちの事を話していたのだ。あの人間を見下して
いたワルキューレを変えるほどの人物、ジークはぜひとも自分の身をもって
知りたかったらしい。
そのために自分の愛刀である魔剣グラムまでも持ち出してきてしまった。
ジークはグラムを使用した時のみ、ある部分を除いて不死性になるという特性を
持っていたのだ。そのためそこ以外を攻撃してもまったくダメージをもらわなく
なるのであった。
(しかし、横島さん。まだ全力じゃないようですね。勘九朗の腕を絶った時は動きは
今の比じゃなかったはず。)
小竜姫としても横島の実力を今一度見極めるチャンスだったので、ジークの提案は
都合が良かった。自分が見込んだ相手がどれほどの存在であったか知りたい。
小竜姫はある意味、横島に夢中になりつつあった。
「でも横島はんには心眼はんがついてるからな〜もうそろそろこの戦い、動くで。」
流石、鬼道。心眼を勝手に心の師匠にしているのは伊達ではない。
鬼道の読みは正しかった。
『やれやれ、横島。伊達と連携を取り相手の後ろを取れ。話はそれからだ。』
「ふう、やっと指示がきた。」
ジークのふざけた攻撃力を前に回避するしかなかった横島も心眼からの指示を聞いて
ヤル気が少しもどる。
横島は雪之丞と接近した瞬間、ジークに聞こえないようにうまく挟み撃ちをするために
作戦を伝える。
「ハァァァァ!!」
ジークは再び横島に斬りかかる。神話でも名高い竜殺しの魔剣。
横島が栄光の手を展開させても一秒も、もたないうちに斬られてしまう。
「反則やーー!!その武器反則やーーー!!」
『泣き言を言うな!!』
まぁ確かに反則であろう。美神もあの魔剣をよだれが出そうな感じで見ている。
不死性こそジークにしか適応されないがその切れ味はハンパではない。
ここが人間界でなければその一太刀は風圧で大地すら切り裂くのだ。
むしろ横島の栄光の手が一瞬でも耐えている事が異常であった。
ちなみに美神はどうやって魔剣を奪うか考えているようだった。
横島が栄光の手を展開させ命からがら凌いでいるうちに雪之丞はジークの後ろに回る。
雪之丞は霊波砲を放つ。
「!!!」
ジークはこの戦い初めて焦りが生じた。
急いで雪之丞の方を向き霊波砲を斬る。
そして横島もこの戦い初めてジークの後ろ姿を見る。
「あっ!!」
『気付くのが遅い。』
横島は霊視でジークの背中の一部分が全く霊波を覆っていないのを気付く。
すかさず横島は雪之丞にその部分を狙えと伝える。
「流石ですね、僕の弱点を見抜きますか。デミアンの本体を見極めたのはマグレでは
ないようで安心しました。でも―――」
ジークの威圧感がさらに増す。
それに一瞬怯んでしまう横島と雪之丞。
「―――そう簡単には後ろを取らせません!!」
そしてさらに勢いをつけ横島に斬りかかる。
『横島!!』
「おうっ!!弱点さえわかれば」
――サイキックモード発動――
(横島さんの雰囲気が変わった!?)
小竜姫は横島の変貌に慌てる。しかし何かの感じに似ていることを悟る。
(あの感覚、まさか超加速!?でも動きの速さはあまり変わっていない。
・・・もしかして目と脳だけ!?)
目の前の横島はジークの剣を掻い潜ったばかりだ。
ジークは危険を感じたのか距離を取ろうとする。
しかし、
「サイキック猫だまし!!」
「クッ!?」
ある意味、接近戦では無類の強さを誇るサイキック猫だまし。
いくら不死性があっても眩しいものは眩しい。
見事にジークは眩しさから目を一瞬瞑ってしまう。
そのせいでジークは横島を見失ってしまう。
その隙に裏を取る横島。
ジークは闇雲に剣を後ろに振るう。
だがしゃがんでいた横島には当たらない。
「おりゃぁぁぁ!!」
(いけないっ!!)
横島のサイキックスマッシュがジークの弱点を―――
「はい、そこまで。」
―――小竜姫が割って入り終了
小竜姫は横島の手を掴み、ジークの剣は怖いので蹴り飛ばした。
・・・流石、竜殺しの魔剣。
「あっ僕のグラムが!!」
ちょっとへこむジーク。
『横島、これが超加速というものだ、完全に時間の流れを遅らせ、周りから見れば
まさしく音速を超える速さ。』
「あぁ見えたぞ、小竜姫さまがこっち来た瞬間、胸を触ろうと思ったら早すぎて
触れなかった。・・・ちくしょう!!」
『・・・』
主のあまりに情けない感想に結構へこむ心眼。
小竜姫は思わず胸を腕で隠してしまった。
「こほん!え〜と、横島さん、雪之丞さんはテストに合格です。三人はこちらに
来てください。」
顔を赤らめつつ小竜姫は以前美神を連れて行った場所に案内する。
今回、小竜姫が勝負を止めたのはワケがあった。
ジークはグラムを装備すると、背中の一部分以外にどのような攻撃を受けようが
ダメージを貰わなくなる代わり、その急所は全く霊波が纏っていないので、
攻撃を受けると命取りになるのであった。横島のサイキックスマッシュが
あのまま直撃すればかなりのダメージを負ったであろう。
仮にジークがすかかず剣を離したところで、背中から攻撃を貰う事にはかわりない。
どの道、大きなダメージは約束されてしまうのであった。
「ではここからはジークフリートさんの指示に従ってください。中では私の
上司でありお師匠さまでもある方がまっていますから。」
「小竜姫さまの上司で師匠!!」
お決まりのように大竜姫を想像する横島。
すぐに美神に蹴られ我にかえり案内されている空間に入る。
中には合計四つのイスが置かれており、ジークがリラックスしてかけるように指示する。
「それじゃ皆さん、がんばんって」
ヴィン
横島たちとってはいきなり部屋の模様が変わる。
『なるほど(ほぉ〜仮想空間か)』
心眼は即座にここがどこか見極めたようだ。
横島たちはジークに連れられ何処かの部屋に案内される。
その中にいたのは、
「「「・・・猿?」」」
妙神山、最難間の修行は猿神が展開する仮想空間で一時的に魂の出力を増幅させ、
その後の猿神との戦いで潜在能力を引き出すものであった。
横島たちにとっては数ヶ月の期間も現実の時間では、一秒も経っていなかったのである。
そのため美神たちにとっては一瞬であっただろう。
横島たちが中に入っていき、すぐに出てきたのだ。・・・猿をつれて。
知っている美神はなんとも思っていないが、っていうよりグラムをどうやって
奪うかまだ考え中であった。
「なんでござるか!?あの御老体は!?」
「一応、斉天大聖老師よ。まぁ私からすればただのゲーム猿だけど。」
美神、ゲーム三昧だったのがよっぽど嫌だったようだ。
シロは意味が分からずはてな顔であった。
「さっここは危ないわ、結界の外に出るわよ。」
そういって美神はシロを連れて脱衣所の所に向かう。
後からは小竜姫とジークがついて来た。
「美神さんは心配じゃないのですか?」
「私だって馬鹿じゃないわよ。・・・アイツの力は私が一番わかってるんだから!」
ちょっと顔を赤らめ恥ずかしげに言い放つ。
(へぇ〜あの美神さんが・・・流石は横島さん、私が見込んだ人です。)
・・・あまり関係ないと思うが。
ともあれ美神たちの目の前では、絶対的な強者、猿神が横島たちに猛威をかざしていた。
夜叉丸の攻撃などものともしない。
雪之丞を紙くずのように吹き飛ばす。
横島のサイキックブレットはかわす必要すらないのか無視し、如意棒を振るう。
「ぐおっ!!」
「うっ!!」
「こんなん勝てるかぁぁぁ!!全然弱点すら見えへんやんけ!!」
『落ち着け!!とにかく今は防御に徹しろ!!』
夜叉丸のダメージがあまりにも大きかったのか思わず気絶しかける鬼道。
雪之丞も吹き飛ばされ、なかなか復活できない。
横島はだめ元で栄光の手を最大出力で盾を展開するが、如意棒はそんなの
関係ござらんといわんばかりに貫く。
ゴッ
「ゴフッ」
『いっいかん!!しっかりせよ、正気を保て!!』
猿神の如意棒は横島の脳天を揺さぶりながら吹き飛ばす。
(こら・・あかん・・・シャレにならん・・)
復活した鬼道が再び攻撃を仕掛けるが全く無意味に終わり吹き飛ばされる。
”―――もう終わるのか”
(あっ!?一心同体の姉ちゃん)
雪之丞は歯を食いしばり意地で猿神に向かっていくが、無常にも弾き飛ばされる。
”―――ワレの見込み違いだったかな”
(ちょいまち!!いくらなんでもあんなんに勝てるか!!)
雪之丞、鬼道は今度は連携を取り、猿神に迫る。
”―――己に勝てずに敵と戦おうなど笑止”
(うっ・・・)
だが猿神にはあまりにも非力な攻撃。
”―――まぁいい、ワレが勝手に期待して、勝手に失望しただけだ”
(なっなんだよ、それ。本当に勝手じゃねえか!)
どれだけ攻めても猿神には無意味。すかさず如意棒の餌食になってしまう。
”―――でも本当に失望したのは自分自身かもしれんな。”
(はいっ!?)
突如、雪之丞と鬼道の様子が変わる。
”―――ワレはおぬしがこのような状況に落ちても何もしてやれない。
いつからだろうな・・・ワレがおぬしの背中を守りたくなったのは”
(だからあんた誰なんだよ!?)
雪之丞の魔装術の肩の部分がまるで飛翔するために存在しているように変化していた。
「これって!?まさか飛べるのか!?」
男の夢、飛べるヒーローと化す雪之丞。
もちろんそれだけでなく以前より霊気が収束しており、
下半身は今まで何も纏っていなかったに対して今は、決して動くために邪魔に
ならないような部分に装甲が追加されていた。
”―――さぁな、おぬしが生きていればいずれ会えるかもしれぬぞ”
(ホントやな!!絶対に正体、確かめてやっからな!!)
夜叉丸の右手に弓が、左手に矢が現れる。
「なんやこれは!?」
鬼道は夜叉丸を操作し、剣と盾も弓矢と入れ替えで出せることを理解する。
また夜叉丸の外装も冥子の式神を吸収したときのように変わっている。
これは鬼道のイメージと夜叉丸自身のイメージがその時の姿を覚えていたことが大きい。
そして操作している鬼道自身も霊力が急激に上昇していた。
”―――ふふ、期待しているぞ、横島忠夫”
(なっ!!・・・その顔は反則や)
横島は立ち上がる。その瞬間後ろから何か聞こえてくる。だが今は関係ない。
横島の手からはいつの間にか複数個の玉が生成されていた。
『バカなっ!!それは!!』
(その前には、誰だか知らんが、目の前のヤツをぶったおす必要があるな、うん。
さっさと倒して、・・・美女が俺を待っているんや!!)
”―――ふっ、おぬしにはやはり、それぐらいがちょうどいい”
後ろから美神やシロや小竜姫が何か言っているが今は関係ない。
ただ目の前の相手を、斉天大聖老師を、自分に立ち塞がる相手を―――
『文珠だと!!』
―――ぶちのめす。
猿神は横島から発せられた気により臨戦態勢を保つ。
「ほぉ、まだ向かってくる元気があるか。」
横島には意識がない。ただタガが外れたのであろう。
ワケも分かっていないのに猿神に突撃する。
相手が猿神だと認識していないのであろう。
《超》《加》《速》
――超加速・発動 & リミッター解除――
横島は文珠の扱いなど全く知らない。
ただ速く、速くと願い、結果的に超加速を生んだに過ぎない。
猿神も流石に驚く。
人の身でありながら超加速を体現させたのだ。
そしてその隙はあまりにも大きかった。
己が迎撃に走ろうとした時には完全に横島の間合いであった。
「うらああああ!!」
《粉》《砕》
渾身の拳が猿神に突き刺さる。
ダァァン
「グッ!!」
ほんのわずかではあるが、猿神から嗚咽が聞こえる。
猿神が反撃に出ようとするが、
途端に横島は全ての力を使い果たしたのか倒れこんだ。
「「「「横島(クン)(さん)(はん)!!」」」」
「先生!!」
皆が横島に駆け寄る。
だが猿神がそれを制す。
「小竜姫、すまぬがコヤツはわしが面倒を見る。皆を外に連れて行ってくれ。」
「お師匠さま!?・・・わかりました、皆さんこちらへ。」
一同、納得はしていなかったが、猿神に睨まれ大人しく脱衣所の方に向かって
外の空間に出て行った。
残されたのは現在、気絶中の横島、心眼、猿神。
猿神はとりあえず元の大きさに戻る。
「やれやれ、このわしを多少とはいえ傷つけるとはな。将来が楽しみな小僧だ。」
しばらく横島を見つめ後、猿神が重い口を開く。
「さて、この小僧も興味深いがそれよりも肝心な事があるな―――
―――封印刑を受けた筈のお前が何故ここにいる、答えよ―――
―――同胞殺しの―――
―――先代、黒竜将《コクリュウショウ》。」
――心眼は眠らない その19・完――
おまけ
じょーーーーー
犬飼はナワバリを主張していた。
「ふ〜・・・狼王の復活は近い」
・・・何か決まらない。
あとがき
ジーク(グラム付き)と戦う事を予想できた人はいるでしょうか?(いなかったら嬉しい
しかしそれ以外は展開読まれまくった作者っす。(アハハ
しかしやっと文珠を覚えた〜(長かった。
この横島は原作終了の横島より霊的コントロールが優れている(+心眼)ので、
三個同時制御にしました。
さぁいよいよ心眼の謎が明らかになってきました。
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