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「無限の魔人 第十六話(GS)」

紅眼の狼 (2005-01-02 21:57)
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無限の魔人 第十六話 〜正しい未来と有り得ぬ未来〜


[倉庫]


「そう言えば界人、聞きたい事が有るんだ」


「ん、何、言ってみな?」


「君は誰?」


唐突な問い掛けだった。


「「「は?」」」


何を今更と思うが、その質問の意図が知りたかった。


「「「どういう意味だ?」」」


「僕は未来を知っていた。つまり歴史上全てを知っている事になる。だけど君と言う存在が生まれた記憶が無いんだ」


「いや・・・俺は横島忠夫の未来だからじゃないか?」


首を横に振るラプラス。


何が違うんだ・・・俺は元々横島忠夫として生きた存在だったはずだ。


「そうじゃないんだ、横島忠夫が未来で生き続けている・・なんて事は有り得ないんだよ」


何を言っている? 


生き続けることが有り得ない? 


じゃあ、ここにいる俺は・・・。


「横島忠夫は霊能力に目覚め、アシュタロス一派との戦役を戦い抜いて魔人・界人となり、過去に戻った」


「いや、それがそもそも有り得ない事なんだよ。なぜなら横島忠夫は―――――


龍美もメドーサも完全に付いて来れていない。


俺も混乱しているからな、当たり前だ。


―――――――死ぬ運命にあった」


静寂が4人を包み込んだ。


「な、死ぬとはどう言う事だ!?」


龍美が一番先に沈黙から脱し、そしてラピスに詰め寄った。


「うわぁ、ちょ、ちょっと龍美ちゃん落ち着いて!」


取り乱し、ラプラスの肩を掴んで前後に激しく揺さ振っていた。


「落ち着け龍美、死ぬ運命に”あった”と言っただけだろう。それに俺は今此処に居る。」


人が取り乱す姿を見ると逆に落ち着く、と言うのは本当らしい。


俺は龍美のお陰で冷静に今の言葉を理解し、そして諌めた。


メドーサも龍美の姿を見て落ち着いたのだろう。


口を挟まずに会話を聞く事にしたらしい。


「説明してもらおうか、ラピス」


「うん良いよ」


「まず、君が現れる前までの不変だった未来での話。その未来で横島忠夫は、中世ヨーロッパの地獄炉の前で死亡、そしてそのまま地獄炉の中へ消え、美神令子とアンドロイド・マリアの2人だけで現世に戻る。その後アシュタロス一派に美神令子が狙われ、護り切れずに結晶を奪われる。魔神アシュタロスはコスモプロセッサを完成させ・・・そして白い世界が現れる」


「白い世界?」


「うん、僕もそれについては何も解らないんだ。そしてその後も・・・」


またもや沈黙が場を支配する。


各々が今の発言を理解しようと勤めているのだろう。


「つまり・・・俺はこの世界の未来ではありえない・・・と?」


俺はラプラスをじっと見つめる。


「そう、君が未来から過去・・・つまり今[この時]に来たと言う事は有り得ない」


「では、界人が居た未来は存在しないと言う事か?」


先ほどまでとは打って変わって冷静にラピスに問う龍美。


「そこが解らないんだ、僕の理解の範疇を超えるんだ。界人と言う存在は・・・。」


三度の沈黙。


回復が一番早かったのは俺だった。


「じゃあ、ここは俺の居た世界の平行世界って事か?」


「いや、平行世界って言うのは[似た世界]の事であるけれど、全く別の世界って訳じゃない。つまり、ここの世界を仮に第一の世界だとしても、この世界と似た平行世界でも[時間の流れは一緒]なんだよ。ここ、第一世界でまだアシュタロスが現れてすら居ないのに、他の平行世界でアシュタロスを倒して戻ってくるなんて事が[出来るわけ無い]の」


四度目の沈黙。


「なんだって良いじゃない。界人は界人・・・だろう?」


メドーサが面倒くさそうにそう言った。


「うむ、それはそうなのだが・・・・界人は界人・・・そうだな」


ふふ、俺が言った言葉だ・・・・俺は俺。


―――そうだな、何を考える必要がある?


俺は俺だ、横島忠夫でもなく、未来の横島忠夫でもなく、唯の界人。


「そう、俺は俺だ。そしてそれはずっと変らない――――メドーサ」


「うん?」


「ありがとう」


俺は心からの礼をメドーサに言った。


一言だけだが、その言葉に沢山の感謝を込めた。


「・・・・。」


メドーサが俺の顔を見たまま動かなくなった。


「メドーサ?」


メドーサの眼前に手をかざし、左右に振ってみた。


「えっ、あ・・・な、なんだい?」


焦ったようにメドーサが反応した。


「いや、いきなり動きが止まったから・・・大丈夫か?」

「な、なんでも無いよ・・・うん」


「・・ぷ・・ぷはぁはははははは」


突然ラピスが笑い出したので驚いた。

今度はこっちか? と。


「どうしたラピス?」


涙まで出して笑っている。


「あははは・・はぁはぁ、い、いやとっても面白くて。あははは、まさか界人は界人なんて答えられると思わなかったし、メドーサの反応が可愛くて」


「笑うなっ!」「むぅ・・。」


顔を赤くしたメドーサがラピスに怒鳴り、己の出した答えを馬鹿にされたと龍美は不貞腐れ。


なんでこうなるかな・・・。


ソファの真中に座る俺の右腕は龍美に抱かれ、左腕はメドーサに、そして一番やっかいなのがラピスで――――


「ん♪」


等とのたまり、後ろから俺の首に抱き付いて頬擦りされていたりする。


「なんでこうなるんだ?」


「「「なんとなく」」」


今回も見事なシンクロを見せてくれた。


姦しくおしゃべりする3人を見ながら思う。


さすがにこんな事されたらなぁ・・・。


ここまでされて、自分に向けてくれる好意に気づかない訳にも行かず・・・龍美は微妙に男としての好意かどうかは判らないが。


解かないとな・・・絶対に―――もう悲しむのも悲しませるのも嫌だから―――。


彼は新たに決意する。


その決意は彼の心の中で大きく、そして広く支える物となる。


彼の云う[未来]は有り得ない。


それが知に優れた悪魔、前知魔ラプラスの言葉。


だが、彼は此処に居る。


確かに此処に、あの激しいアシュタロス戦役を生き抜き存在している。


解らない、分からない、判らない。


だが、彼と彼らは答えを見つけた。


いつも通りに、彼らしい、彼ららしい言葉で


「俺は俺」


「界人は界人」


それが真実で絶対である事は変らないのだから。


無限の魔人 第十六話 〜正しい未来と有り得ぬ未来〜


end


あとがき
んー、ここに来て今までの流れを否定。
どうなりますか!?

レス返し 今回もありがとー、前回軽く返してごめんなさい。

>九尾さん
GSらしくって言うのが一番難しい所なんですよね。崩さないように頑張ってますけど、そろそろ限界が!?(え

>法師陰陽師さん
おキヌちゃんの日記は何と無く思いついたんですけど、意外と自分でも気に入ってまして、また出るかもしれません。

>ぴええるさん
>982円がどこから出たのか判らないです。何かの伏線?
ふっふっふ、これは伏線と思わせる為のです!! 
気にしてくれてありがとうございます。私は非常に嬉しいです(え
時給を高めにしたのは(それでも普通のGSに比べれば低すぎるくらいですが)美神&横島除霊事務所云々が有耶無耶に成ってしまった事への美神からの隠れた謝罪の意味も込めています。
982円ですが昔テレビで見たことです。
大阪のおばちゃんは1000円で高くて、999円で安いと思う・・とか何とかでしたので、最初は999円案がありました。ですが、そのままじゃ何か変だなーと思いまして、次なる案は980円でした。
しかし、捻りが足りない? 何て思ったことから2円上げてみました。
まぁぶっちゃけあんまり深く考えてません。(気にしちゃダメです

>岩飛酉さん
今回は如何でしたでしょうか?
微妙な感じですが、何気にメドーサ高感度アップを狙いました。
対界人への隠れパラメーターが!?(何

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