「よいか? 御主らが知っているように、魔族の本質は殺戮と破壊じゃ。 怒りは魔族の意識を覚醒する働きがある。 どんなときでも平静を保ち動じない精神を磨き上げろ」
Legend of Devil vol.6 Counter Attack その1
バン!
「先生ぇ~~!!!」
ドゴ!
「グフッ!」
勢い良く横島除霊事務所の扉を開けたシロは、そのままの勢いで横島にボディータックルをかました。
飛び込んだときの勢いを殺すことができなかった横島とシロは進行方向に転げ回り壁に激突してしまった。いきなりの出来事に横島除霊事務所所員は全員目が点になって立ち尽くしていた。シロと共に美神とおキヌが来ていることに気付くこともなく。
横島といえば、激突の衝撃で目を回してしまい再起に5分を要した。
「タマモが!!!?」
再起した横島と来客の美神、おキヌ、そしてシロは美神除霊事務所での一件について応接間で話していた。
「はい、このことを横島さんに伝えてくれって・・・・・・・・・」
俯きながら答えるおキヌ。
「そのまま捕まったと考えてもおかしくないわ。 悔しいけど、私たちにはどうすることもできなかった」
親指の爪をかみながら苦悶の表情で言う美神。自分たちが何も出来なかったことに屈辱を感じているのだろう。憎悪の念すら見て取れる。
「せんせ~~、タマモを、タマモを助けてくだされ!」
横島にすがりつくシロ、一見飼い慣らされた犬のようにも見える。
「分かってる」
シロの頭をなでながら立ち上がった横島は怒りを露わにした表情で窓の外を見据えていた。
「横島くん! あいつら私たちを人質としか見てなかった、あいつらの狙いは横島くんよ! なんの策も無く行くなんて自殺行為だわ!」
美神も立ち上がり粛正を賭けようとしたが、
「でもタマモをそのままにしておくことなんて出来ませんよ! 俺はもう・・・・・・・・・!!!」
その瞬間横島の脳裏に映ったモノは断末魔咆に呑み込まれそうになるルシオラの姿、そして自ら結晶を破壊した瞬間だった。
「「「!!!!?」」な、なに!? この霊力」
怒りと共に発せられた横島の霊力は美神達にとって驚くべきモノだった。以前の状態から考えるとおよそ5倍近くの霊力が感じられた。そして、微量ながらも魔力も発していたが、美神達には感じられなかった。
バン!
突然応接間のドアが開き必死の形相で小竜姫が中へと入ってきた。
「横島さん! 老師のお言葉をお忘れですか!?」
「!!!!?」
「怒りで精神を乱してはいけません! 状態を悪化させるだけです!」
「「「?????」」」
「す、すいません」
小竜姫の言葉に冷静さを取り戻し、霊力を抑える横島。当然美神達にはなんのことかさっぱりの様子だ。
「これを、たった今届いたメドーサからの果たし状です」
そう言って小竜姫から渡された手紙には
“狐の小娘は預かった
無事に返して欲しくば、今夜0時に△□工場跡地まで来い。
無論1人であることが条件だ。
この条件が呑めないのならば小娘の命は保証しない”
と書かれていた。
「・・・・・・・・・なんつうか、一昔前の果たし状だな」
「コギャルになっても頭はオバハンね」
「微妙に凄味を感じないような・・・・・・・・・」
横島、美神、おキヌの反応はイマイチだった。それもそうだろう、こんな果たし状の書き方はオーソドックスだが時代遅れにも程がある。
「うぅ~、先生! 拙者も連れて行ってくだされ! 女狐にばかり良い格好はさせられんでござる!」
言葉としては悪いが必死だ、シロにとっては“群れの仲間”の危機である。狼は群れの仲間を救う為ならばその命をかけて戦う種族だ。仲間の危機を黙って見ていられる筈がなかった。
「ダメだ! これには“1人で来い”となってる。 タマモのことを考えるなら此処は俺1人で行く方がいい」
平然と答える横島。
「し、しかし! 相手は魔族3人でござる! いくらなんでも先生1人では勝ち目がないでござるよ!」
「そうよ横島くん! 1人じゃ死にに行くようなモノだわ!」
「そうですよ! ここはみんなでタマモちゃんを救い出す作戦を練りましょう」
シロ、美神、おキヌが抗議するが横島は依然として聞き入れなかった。更に笑みを浮かべながら言葉を繋ぐ横島。
「大丈夫だよおキヌちゃん。 1人の方が何かと動きやすいし、それに・・・・・・・・・俺これでもちょっとは強くなったんスよ」
「確かに霊力自体は大きくなってるけど・・・・・・・・・」
「そんなの無茶ですよ!!」
「いいえ、此処は横島さん1人でやってもらいましょう」
美神達の心配をよそに小竜姫も笑みを浮かべながら答えた。
「小竜姫あんた何言ってんのよ!!」
仮にも神様である小竜姫の胸倉を掴み怒鳴りつける美神だったが笑みを浮かべたままの小竜姫を前に手を引くしかなかった。
「・・・・・・・・・勝算があるの?」
「「ハイ」」
声を揃えて言う横島と小竜姫を前に同行することを諦めるしかない美神達であった。
続く
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