「はっ!!・・・あ〜夢だったのか、せっかくあの姉ちゃんを押し倒す一歩手前だったのに。」
『・・・(ワレはそのような暗示などかけていない・・・肖像権の侵害だ!!)』
横島、早速エロさ全開のお目覚めである。心眼にとっては迷惑極まりない。
部屋を見回すと、親指をくわえている寝ている雪之丞。壁にもたれて寝ている鬼道。
シロガネは何故かいない。
「?・・・あのおっさん何処いったんだ?」
横島が不思議に思いながらも朝飯の準備をしていた最中に部屋のドアが開いた音がする。
「おはようございます、横島どの。」
シロガネが元気一杯の顔で戻ってきた。何処に行っていたか聞いてみると、
サンポにいっていたらしい。普段、昼は狼の姿になる人狼であるが、
シロガネは結婚指輪と思われるものに精霊石がついていたため、昼も人の姿でいられるらしい。
しばらくして雪之丞、鬼道も起きて朝食を済ませる。
横島は美神と学校に休む事を連絡する。
「ではそろそろ参りますか。」
いざ、人狼の里へ。
――心眼は眠らない その16――
時刻はすでに夕方になったおり、一行は雑談を交わしながら山道にいた。
なんでもシロガネは子供が一人おり、妻はすでに他界しているようだった。
なおシロガネがどうやって食料を買ったかというと、人間界で暮らしている人狼から
たまに仕送りがくるらしい。
鬼道は父親をなんとか隠居させ、次のGS試験を受けるため現在修行中らしい。
一時、六道から教師にならないかと誘いがあったがまだ自分は未熟といい断ったらしい。
雪之丞は相変わらず、その場その場で生きているらしい。
鬼道も雪之丞もGSまがいの仕事を繰り返して生計を立てているようだ。
現在シロガネが先頭を歩いていたが何も無い所で止まる。
「もしかしてこりゃ結界か?」
「ほ〜横島どの、やるではないか、この結界を見極めるとは。」
『当然だ、ワレがしっかり教えているのだ。』
横島は辺りの雰囲気から霊視を始めていた。シロガネは結界を見破った横島に驚く。
心眼は横島が褒められたのがうれしかったのかご満悦である。
シロガネは懐にしまっておいた通行手形を取り出す。
その手形を空中にかざすと目の前の突然変わり始め、洞窟が現れた。
「さっ、この洞窟の奥が人狼の隠れ里です。」
洞窟の奥には戦国時代風の集落が緑豊かな森に囲まれていた。
「犬塚!!何故人間を連れている!!」
横島たちの目の前に3名の人朗が現れる。その中のリーダー格の男がシロガネに問いただす。
「まぁ落ち着け犬飼、この者達は拙者の命の恩人なのだ。詳しいことは長老の前で
話す。」
「ふん!!人間よ、おかしな真似をしたら即刻たたっ斬るからな!!」
リーダー格の男は犬飼というらしい。犬飼は長老が呼んでいることを告げると、
残りの二人を連れて集落に戻っていった。
「すまなかった、アイツは酷く人間嫌いでな。まぁそんな気にせんでくれ。」
シロガネは犬飼の代わりに侘びを入れつつ長老の屋敷に向かう。
横島たちはとりあえず同行することになった。
長老の屋敷に入ってみるとかなりの人狼が集まっており、中央にいるのが長老であろう。
「よく帰ったな犬塚、で道中なにがあったのだ?この者たちは?」
シロガネは魔族に襲われた事、横島たちに助けてもらったことなどを説明する。
その後は、互いに自己紹介を済ませ、今夜行われる宴に横島たちも参加する事になった。
会談が終わった後は、シロガネは自分の家に横島たちを案内することにした。
我が家に入るシロガネ、それに続く横島たち。
「父上!!おかえりなさいませ!!」
「留守番ごくろうだった、シロ。」
中には子供の人狼が一人いた。名前はシロというらしい。
シロガネは横島たちにシロを紹介する。その後、宴の準備をしなくてはならないのか
どこかにいってしまった。その場に残されたシロと横島たち。
「横島どの、もしよろしければ昨晩の話をしてほしいでござる。」
「えっ!俺か?」
流石、子供に懐かれる男、横島もいやな顔せず話を始める。
”お前昨日何もしてないだろ”ってツッコミはやめておこう。
鬼道と雪之丞は暇なんで村の様子を見に行った。
「―――そこでな俺が危ないところを魔族を栄光の手でな」(注意:してません)
「ふむふむ(栄光のてってなんでござるか?)」
「―――んでサイキックブレットで阻止したんや。」(これは本当です)
「ふんふん(サイキックブレットってなんでござるか?)」
本当の中に嘘を混ぜる。コレが綺麗な嘘のつき方です。
シロは先ほど気になった横島の必殺技について聞く。
横島はシロのリクエストに答えとりあえず栄光の手を発動される。
「こっこれは霊波刀でござるか!」
「ん、そうともいうな。」
『普通はそうとしかいわん』
心眼の華麗なツッコミが入る。シロは物珍しそうに心眼を見つめる。
横島はシロに心眼の紹介をする。それからも横島は自分の持てる技をシロに見せまくる。
今まで自慢などできなかったからよっぽど自慢したかったのであろう。
しばらくすると鬼道や雪之丞、そしてシロガネが戻ってきた。
どうやら宴が始まるらしい。
「そういえば何を祝ってるんすか?」
「今年の農作の祈り等、様々なことですよ。」
周りではすでに酒を飲み始めている人狼もいる。広場の中央ではキャンプファイヤー
のような火が灯されていた。その周りで舞を踊る人狼たち。
すでに雪之丞は酒を飲み始めていた。鬼道も進められ雪之丞にならう。
「さぁ横島どのも宴を楽しんでくだされ、ん!?あれは・・・(あれは犬飼?)」
「どうしたんすか?」
シロガネはなんでもないと答えた後、何処かにいってしまった。
横島も大して気にも留めず、中央の踊りを眺める。
広場とは離れた所にある神社。ここにはこの集落に伝わる名刀が奉られている。
そこには今、一つの影が存在した。
「長老達も今は浮かれておる、八房を持ち出すなら今しかなかろう。
しかし犬塚め、人間を連れてくるとは本当に何を考えておるのだ。」
実に説明口調な男、横島たちが里に来て始めてあった人狼、犬飼ポチである。
犬飼が八房が置いてある所に行こうとした時、
「何をしておるのだ、犬飼。」
「!!・・・犬塚か、しれたことよ、拙者の目的は狼族に自由と野生を取り戻す事ぞ。
そのためには人間を殺し狼王になる必要がある!!そしてそれには八房が必要
なのだ。犬塚、邪魔をするというのなら・・・どうなるかわかっているな?」
邪魔をするなら殺す、そう遠まわしに犬飼は答える。そういった後、犬飼は社の中に
入ろうとする。だがシロガネがそれを許さない。
「犬飼、なぜお主がそうなったのか拙者にはわかるまい。だがお主の凶行、友として
それを許すわけにはいかぬ!!」
「ふんっ!!ならば押し通るまでだ!!」
互いに刀を抜き距離を詰める猛者達。
初撃からお互い急所を狙う。
キィィィィン
刀が悲鳴を上げる。
続く二撃目はシロガネの方が早いがそれを犬飼は後ろに飛び回避する。
追撃をするシロガネだが、犬飼はいつの間にか刀を鞘に収めている。
「抜刀術かっ!!」
「さらばだ!!」
犬飼の抜刀がシロガネの胴を断とうとする。
それをすんでで回避するが二の太刀がさらにシロガネを襲う。
だがそれすらも刀で防ぐシロガネ。
シロガネが二の太刀を防いだ瞬間、犬飼はシロガネに左足で蹴りを繰り出す。
シロガネは己の視覚から来た蹴りに反応できず、苦悶の表情をする。
その瞬間―――
ザンッ
「ガハッ!!」
「残念だったな・・・せめてお主の右目が見えていたら今のも防げたであろう。」
一瞬の隙を見逃さず犬飼はシロガネを絶ち切った。
最初の一撃が入った後、犬飼は止めといわんばかりに斬撃を繰り返す。
そしてそれは全てシロガネに直撃し倒れるこむ。
「ふん、おろかな・・・」
犬飼はシロガネの傷が致命傷なのを確認し八房を取りに社に入っていく。
しばらくすると犬飼が八房を持って出てきた。
その時にはすでにシロガネは虫の息であった。
「去らばだ、犬塚・・・いやシロガネ、我が友よ。」
犬飼がこの場を去ろうとした時、
「何か、やばい時にきちまったな。」
「あんさん、これはちょっとな〜」
「勝手にどっか行こうとしてんじゃねえよ!!」
「ちっ父上!!」
横島、鬼道、雪之丞、シロが神社にたどり着く。シロガネと犬飼のお互いが刀を
抜いた瞬間跳ね上がった霊圧に心眼と横島が反応し、雪之丞と鬼道にも声を声を
かけた後、神社に行こうとしたとき、その同行に気付いたシロも一緒に行くこと
になったのだ。
シロはすかさず父親の元に向かおうとするが、鬼道が止める。
『鬼道、雪之丞、おぬしらはヤツを相手を、横島、おぬしはヒーリングの準備だ。
それとアヤツが手に持つ霊刀、斬った相手の霊力を吸収する可能性が高い故
気をつけろ。』
合図と共に皆が弾ける。雪之丞は即座に魔装術を使用、鬼道は夜叉丸を犬飼にぶつける。
横島はシロガネの元にたどり着きヒーリングを開始する。
シロはシロガネの手を掴み泣き続けている。
「父上!!父上!!」
『これは酷いな、横島さらに出力をあげるのだ!!』
「やってるわい!!」
懸命にヒーリングをかけ続ける横島、だが状態はかんばしくない。
一方の犬飼と戦闘中の雪之丞たちは、
「ちょうど良い、この八房の試し切りはおぬしらに決定だ!!」
「けっ、できるもんならな!!」
雪之丞は一気に距離を距離を詰めようとするが、犬飼が八房を振るう。
ザッザンッザザン
途端に八房から八つの閃光が飛び出す。その一つ一つが凄まじい殺傷力を
持っていることがその速度から伺われる。
「何っ!!」
「伊達はん!!」
すでに接近していた雪之丞は回避が間に合わず直撃する。夜叉丸はまだ離れていたため
難を逃れる事ができた。回避された斬撃はそのまま木々を薙ぎ倒す。
「ほ〜今の一撃に耐えるのか・・・おもしろいが・・・死ね。」
単純な防御力なら雪之丞の装甲は、現在間違いなくGS界一であろう。
流石の八房も耐え抜かれた。だが衝撃までは消せるわけも無く、雪之丞は、
なかなか立ち直れない。そこに新たな八房の斬撃が攻めてくる。
ここで夜叉丸が雪之丞の隣に立ち八つの斬撃を半分以上防ぐ。
しかし全てを捌くことができず、一撃もらってしまう。
その衝撃が夜叉丸を通じて鬼道にも伝わる。
「くっ、やっかいな刀やなあ!!」
「わりい、もう大丈夫だ、いくぜ鬼道!!」
鬼道も伊達に毎日鍛えているわけではない、夜叉丸に何発食らおうが、そう簡単に
倒れこむ事はしなくなっていた。
雪之丞が復活し、夜叉丸と共に犬飼に迫ろうとするが、八房が邪魔で前に進めない。
それでも後退はしないところを見ると決して負けているわけではない。
この状態がしばらく続き、
「ちっ!!これ以上は村の皆も来るか!!」
これ以上は時間的に厳しいとみたのか、犬飼は逃走を開始する。
それを雪之丞が追いかけようとするが、心眼が待てをかける。
ここで運がよかったのが雪之丞が魔装術の使い手だったこと。
鬼道が式神使いだったことであろう。八房は人間を斬って初めてエネルギーを
吸収するので、雪之丞は装甲のおかげ、鬼道は直接ダメージを受けたのが夜叉丸
だったため吸収されずに済んだ。
犬飼との戦いはひとまず終わったが、こちらではかなり分の悪い戦いが続いていた。
横島は未だに限界でヒーリングをかけていたが、復活の兆しが見えてこない。
シロも傷口を舐めてヒーリングを施そうとするがこちらはあまり効果がない。
しばらくして他の人狼達もこの場に駆けつけてきた。
「犬塚っ!!しっかりせよ!!」
『気が散るから黙れ!!それより薬草を急いで持ってこい!!』
一喝する心眼、言われた人狼も心眼の剣幕におされ言うとおりにする。
また長老の言葉で他の人狼たちは犬飼を追うことをしなかった。
長老としてはこれ以上の人狼の犠牲は避けなければならなかった。
「父上、ちちうえ!!」
「くそったれ!!(・・・ママ)」
「ちきしょう、心眼、眩暈がしてきたぞ。」
『今、ヒーリングを止めればシロガネどのは助からん、無茶を承知でいう、
続るのだ。』
すでに横島の霊力は枯渇する寸前であった。それもそのはず、すでに10分近く
ヒーリングを全力でかけ続けているのだ。普通のGSだったら、とっくの昔に
気絶しているであろう。それでもここまで横島がヒーリングを続けたのは、
シロの涙する姿を見せられてはやめるわけにはいかなかった。だが限界はすぐ
そこまでせまっていた。
『・・・そうだ!!シロよ、あの指輪は普段からシロガネどのが身につけておるのか!?』
「ふぇっ!?・・・確かそうでござる、母上の形見故、常に大切そうに見につけておった
でござるよ。」
心眼には何か考えが浮かんだのかシロに指輪を横島に渡すよう指示する。
それを受け取る横島。
『これが最後のチャンスだぞ、横島。精霊石とは一種の霊力の増幅器、しかもこの
石にはシロガネどのの霊力が貯蔵されている。これなら横島のヒーリングを増幅
させると同時に、シロガネどの自らの霊力も戻ってくる。いくぞ横島。』
「ほんとに人使い荒いやっちゃな〜。安心しろよ、俺がお前の親父助けてやるからな!」
「横島どの・・・」
減らず口を叩きながらも神経を研ぎ澄ます横島。まだ会って大した時間もないが、
ガキの泣き顔等、横島も見たくないのだろう。最後にシロに笑いかけながら
最後のヒーリングを開始する。
その瞬間、シロガネを中心に辺りが光に包まれる―――
―――話は朝まで遡る
「それで昨夜美神さんを狙った魔族を倒したんですけど・・・」
現在美神は横島から電話で連絡を受けていた。主な内容は、今日から2,3日休む事と、
昨夜魔族と交戦したことであった。
「まぁわかったわ、とっとと帰ってくるのよ。」
美神はそういった後、電話を置く。場所はすでに事務所である。
美神がぼーっとしているとオキヌがお茶を持ってきた。
「じゃあ、横島さん。休みなんですか。」
「まぁね、幸い、除霊関係の仕事はここ2,3日ないしちょうどよかったわ。」
美神は書類と向き合いながら昨夜の出来事について考える。
何故自分が狙われたのか?
答えは母親や自分が時間移動能力者だから。
敵の数は?
単独とは考えない方がいい。常に最悪のケースを予測して動かなければならない。
ならこの場合考えられる最悪のケースとは?
メドーサ級の相手が集団で自分を狙っている事だろう。
ではどう対処すればいい?
メドーサ級がいるなら自分一人ではあまりにも厳しい。あのバカもこういうときに
限って何処かにいっている。援軍が必要、西条あたりに頼むのが妥当か。
美神は思考をめぐらせる。その時、人口幽霊一号から外に誰かがいることを伝える。
外には黒いショートカットの美女がいた。横島がいたら間違いなくナンパしている
だろう。服装は如何にもOLといった具合である。
美神しばらく女性を見つめた後、玄関に向かう。何か予感を感じたのか後手には
霊体ボーガンを所持していった。
「で、あんた誰?」
その女性はその容姿に相応しい凛々しき笑みを浮かべ、
「私の名はワルキューレ、美神令子、お前を守りに来た。」
―――戦乙女見参。
――心眼は眠らない その16・完――
あとがき
横島の戦いは次という事で・・・
絵の方をレス返しが終わった後にUPします。
まぁあたたかい目で見てください。まぁこんなんだろ?って感じで。
>ひとつだけさん
ご指摘ありがとうございました。