「貴様っ!!何故、拙者を狙う!!」
「汝、我の餌なり、我、汝を食らい更なる力を得る。」
辺りは既に暗闇となっている。場所は静かな住宅街であった。
その中で、対峙する二人の存在。見る人が見ればこの両者がかなりの腕を持つことが
わかるであろう。それもそのはずこの二人、互いに人間ではないのだから。
たった今、餌扱いされた男は古風な格好でまさに浪人といった風貌であった。
そのため背負っている巨大な風呂敷があまりにも似合わない。
その大きな特徴は右目に一閃された斬り傷が見られた。あれでは間違いなく右目は
見えていないだろう。そしてもう一つの特徴、それは尻尾が生えていた事であった。
尻尾が生えている時点で人間じゃないのがわかる。そうこの男、人狼である。
そしてもう一人の男、頭はパンチパーマで黒いバイザーを付けていた。
体系はマッチョで上にはベストのみといった実にいい趣味をしている。
何より笑えるのが、ベルトにDと一文字書いているところであろうか。
なおこの者が人間で無いとわかるのは背中から大きな黒い翼が生えていたからだ。
・・・この説明で男の姿がわからないなら最後に一言。
早い話、原作でワルキューレにライフルで瞬殺された魔族である。
――心眼は眠らない その15――
それは深夜での出来事であった。。
「「「「『!!!』」」」」
その異変に気付いたのは僅か数名。
これに気付けた彼らは間違いなく、日本で屈指の実力を持っているということになる。
一人目は亜麻色の髪の守銭奴。
現在、自室にて就寝中であったが、突如発生した霊圧に目を覚ました。
「・・・ま、いっか。結構離れているし、お金になるわけじゃないし。」
そんなわけで再び寝なおした。
”いいのか、それで?”とは言わないでいただきたい。これが彼女のスタイルなのだから。
二人目は黒尽くめの目つきの悪い男。
彼はバンダナの巻いている友人をタカリに・・・もとい尋ねる最中であった。
「おもしれーじゃねぇか、誰かが戦ってやがる。」
そのまま事件の発信源に急いで向かう男、間違いなく乱入するのであろう。
自分が楽しめたらそれでいいという精神丸出しで走り始める。
三人目はトレーニングウェアを着込んだ和風の美形。
走りこみの最中だったのか、かなり汗だくである。
深夜なのに実に涙ぐましい努力家だ。
「なんやこれは!!・・・誰や、これは知らん霊気やけど。」
男はしばらくその場で立ち止まり、考え始める。
深夜の住宅街でポツンと突っ立っているので怪しさ爆発だが、この際気にしないでおこう。
考えがまとまったのか、結局はこの異変を見過ごすわけにはいかず現場へ向かう。
四人目と最後の一人、いうこれは少し語弊があるだろう。
最後の存在は人ではないのだから。先ほどの目つきの悪い男に危うくたかられかけた
バンダナを巻いた男とそのバンダナの宿る使い魔的な存在である。
横島忠夫、心眼である。彼らは今、自分のアパートの部屋で深夜の子供はダメよ、
な番組を見ていた(見せられていた)。
『横島!!今の霊圧を感じたか!?』
「ん、確かにすげー霊気を感じたな、なんだもしかして俺に行けというのかよ。
そんなんいやだっての、金にも女にもならんってのに。」
流石師匠してしてこの弟子ありといったところか、習わんでいいとこに限って、
しっかり美神から素晴らしい教育を受けていた。最近活躍気味の横島であったが、
やはり餌がなければ何もしない男であった。心眼はため息を吐くような感じになる。
『あのな、この気配は間違いなく片方は魔族のものだぞ、もしかしたら美神どの
を狙いに来たやつであったらどうするのだ?』
「・・・でもよ〜命あってのものだしってそんな睨むなよ。
じゃ心眼、一つ頼みがあるんだけどいいか?」
実は横島はある事が気になっていた。貧乏神の試練を強制的に受けさせられた時である。
その時、赤貧のドアの向こうには自分の見知らぬ美女がいた。
後で聞けば、心眼が自分に何か暗示をかけたらしいことを貧から聞いた。
それから横島は心眼にその事を尋ねるが知らないと一点張りである。
そのためこの際、その女性が誰かは置いとくことにした。
「あのさ、前みたいに俺に暗示かけてくんね?夢の中でいいからもう一回見たいんだよ!!
(あんな姉ちゃんが一身同体だぞ!!もう一回みて正体を確かめねば!!
そんでもって、うふふふふふ(略))」
『・・・(・・・)』
完全に沈黙する心眼、横島は怪訝そうに心眼の様子を伺う。
心眼には横島の考えがうすうす読めたようだ。しばらく考えた後何故か呆れつつ、
”まぁかまわん”と思い了承する。準備を整えた後、横島も現地に向かいだした。
ちなみに横島の部屋にDVDプレーヤーや数万はしそうなDVDセットが置いてあったのは心眼が買わせたのであろう。
皆が向かった場所はちょうど、美神、雪之丞、鬼道、横島たちの距離がちょうど円周上
になっているのであった。そのためオカルトGメンの支部にいなかった
西条は気付けなかったのである。横島と美神の距離が駅二つ分と考えると彼らは
駅一つ分離れていたのに察知した事になる。つまりそれほど対峙している両者の腕前が
凄まじいという事になるのであろう。
横島、雪之丞、鬼道が向かい始めた時、人狼と魔族にも動きが見られた。
人朗は風呂敷を道端に置き、腰に差していた刀をぬく。
何故か風呂敷の中から何かの缶詰が大量に出てきたがこれは置いておこう。
魔族は己の力をさらに開放し、辺りに瘴気が漂い始める。
「きっ貴様!!このような人が住んでいる場所でそのような瘴気をだせば、
どうなるのかわかっているのか!?」
「我に関係なし、我が求めるのは強き魂。」
魔族の言葉に人狼は怒りに震える。人狼はこのような汚いまねを見逃す事は決してしない。
人狼はすかさず上段の構えをとる。睨みあう両者であるが、急がなければ、この付近に
住む人たちにも危険が及ぶ。人狼は覚悟を決め攻めにでた。
「ぬおぉぉぉぉ!!」
「せいぜいあがけ、我のほうが遥かに優れているだ。」
人狼の上段切りを腕で受け止める魔族。魔族の腕からは僅かな緑の血が流れる。
魔族はすかさず反撃するが、人狼も持ち前の身体能力を活かし後ろに回避する。
「我から血を流すとはな・・・思った以上に、汝はうまそうだ!!」
「拙者の一太刀を受けるだと!!だったら急所を攻めるまでだ!!」
最高の一太刀を防がれても人狼は絶望しない。魔族の攻撃を受け流しつつ、
機会を虎視眈々を伺う。しかしそう簡単には訪れない。
なにしろ向こうは一発でこちらを倒せるのだ、対するこちらは相手の急所をついても
倒せるかどうかわからない。実に分の悪い勝負が展開され続けていく。
劣勢の人狼、それでも焦らず相手の腕や脚を剣で捌き続ける。
しばらくこの状態が続いていると、魔族が自分達に近づいてくる何者かに反応する。
戦いに集中していた人狼は気付かない。
「ふん!!また、餌がきおったか。」
「余所見をするとはいい度胸だ!!」
人狼はここぞとばかりに魔族に一太刀を浴びせる。
ザシュッツ
魔族は防御し損ねたのか、腕を一刀両断される。
「グッキッキ・サ・マ」
そこに第三者の登場。
「何、こんな住宅街で瘴気撒き散らしてんだよ!!てめえら両方ぶっ殺す!!」
雪之丞が到着する。ちなみに雪之丞にとっては両方敵のようだった。
魔装術ですかさず臨戦態勢をとる雪之丞。そのまま攻勢にでようとした時、
「待たれよ、拙者はそなたの敵ではない!!」
「なんだ、じゃあとっととワケを話しやがれ!!」
魔族が腕の修復を行っている最中、のんきに事情を聞き始める雪之丞。
この場合、ほっとかれている魔族は喜ぶべきか悲しむべきか微妙な所だ。
なんだかんだしている間に、次の乱入者が現れる。
「お前、伊達はんやないか!?あんさんも騒ぎを聞きつけてか!?」
「おお!鬼道じゃねえか、ちょうどいいこの魔族をぶっ倒すところだったんだ。
見物していけや。」
雪之丞、一人で倒す気満々である。鬼道も雪之丞の実力を知っているせいか、
魔族の実力を確かめた後、特に何も言わなかった。
辺りに漂っていた瘴気も魔族が治療を始めたせいか、止んでいる。
人狼は何か騒いでいたが、雪之丞は無視ッた。
「我をなめるな!!!」
「ふんっそのセリフそっくりお返ししてやるぜ!!」
本当にここが住宅街ということをわかっているのか、両者、霊波砲を放つ。
驚いた後、すかさず人狼と鬼道は左右に分かれて、周りの家に被害が及ばないように、
衝撃波を霊波刀や夜叉丸を使って防ぐ。
「何考えとんのや!!伊達はん、接近戦でいってくれへんか!!」
GS界良識人、男部門ノミネートの鬼道がちょっと切れる。
人狼も全くだといった感じで頷いている。
鬼道の言葉でここがどこか思い出したのか、距離を詰める雪之丞。
接近戦は望む所といった具合に魔族も突進する。
スピードは遥かに雪之丞が上、巧みなフットワークで敵の剛拳を掻い潜る。
そのまま敵に乱打を加える。確実に相手にダメージを蓄積される雪之丞。
「・・・ところで横島はんは、いつになったら出てくるんや?」
「うっ!!」
いつの間に来ていたのか、隠れて見物していた横島は鬼道に発見される。
横島はこのまま帰ろうかなと思っていた時に見つかったらしい。
見つかったため、鬼道の方に向かっていく横島。
「おぉ久しぶり、鬼道!!」
「ほんまにやな、とりあえず今はこの戦闘に集中しょうか。」
ちなみに横島、心眼が頼みを了承したため、とっとと用事を済ませたいため
凄まじい速度でここまで走ってきていた。そのため雪之丞が現れたすぐ後に、
ここに到着していたのである。そこからはずっと隠れて見物モードであった。
横島忠夫、美女もいなけりゃ、報酬もなしではまず動かない男である。
現在の雪之丞VS魔族だが、魔族の攻撃は一度も雪之丞に当たっていなかった。
ドラ○エV風にいうと、ボスト○ールみたいなやつだ。(古いな・・・
ただこういうのは決まって追い詰めると、
「キサマラ・・・全員皆殺しだ!!!」
『んっ!!いかん!!』
雪之丞に蹴り飛ばされ距離が開いた魔族から、無差別に付近に口から霊波砲が放たれる。
慌てた雪之丞は急いで止めを差しにいく。人狼と鬼道は出来る限り、
住宅に被害が行かないように凌いでいるが、全てを捌く事などできない。
そのうちにひとつがアパートに向かっている。
「くっ!!しもた!!」
「誰か!!アレを頼む!!」
鬼道と人狼から悲観的な声が発せられる。
横島も自分付近に飛んできたのを対処していたためそんなに余裕があるわけではないが、
『横島!!あそこに美人の姉ちゃんがいたらどうするのだ!!』
「なんだって!!」
すかさずサイキックモードになりサイキックブレットを放つ横島。
見事命中し互いに相殺して、アパートに当たるのを阻止する。
心眼の言葉に何一つ疑いを持たないのは信頼故か、それとも横島だからなのか。
ともかく横島はそのままサイキックソーサーを投げ雪之丞の援護をする。
バァァァァァン
「横島のヤツ、余計な真似をしやがって!!」
魔族の目の前でサイキックソーサーは爆発し、雪之丞を視界から見失う。
「くらいやがれ!!」
雪之丞が魔族の後ろに回りこみ全力での霊波砲を零距離で放つ。
「グギャーーーーーー!!」
魔族は前方に吹き飛び腹には大穴を空けている。
それでもしつこく反撃しようとする魔族を鬼道の夜叉丸が首を刎ねた。
その後、魔族の体は煙を揚げながら消滅していく。
それを見つめるは大の男4名と心眼。
辺りが騒がしくなったのでこの場から移動する事を鬼道が言い出す。
先ほどの場所から離れてしばらくした後、大風呂敷を背負った人狼が話を切り出す。
まず始めに自己紹介を済ませていく。この人狼、名前を犬塚シロガネと呼ぶらしい。
「かたじけない、そなた達のおかげで本当に助かった。なんとお礼をいっていいやら。」
「そんなん気にせんでいいですわ。」
「けっ、こっちが好きでしたことだからな。」
「お礼っていってもな〜、おっさんだし、金もなさそうだし。」
ちなみに移動している方向が横島のアパートであるのは何故だろうか。
この人狼の話を聞くと、自分は村の代表で、年に数回しかない祝い事のために
ある缶詰を買出しにきていたらしい。その帰り道に突然あの魔族に襲われたようだ。
心眼はその時、魔族がしゃべっていた事を洗いざらい聞き出そうとする。
「―――その時であったのが、あの魔族おかしなことをつぶやいてまして、
”我はハーピーとは違う”といっておりました。」
「心眼!!」
『まさか本当に美神どのを狙っていたとはな。』
現在の皆の場所だが、横島の部屋である。男4人が集まって暑苦しい上に狭い。
鬼道は行儀よく、シロガネの話を聞いていたが、雪之丞は案の定、横島の食料を
漁っていた。っていうか現在カップラーメンを勝手に食している。
先の戦いの話も終わり、彼らは自分達の修行話を語りだす。
ちなみに雪之丞は勘九朗の話はしなかったらしい。
途中からシロガネも加わり、自分の右目の傷の理由なども話してくれた。
その話に鬼道が感動したとかしてないとか。
「どうかな、一度我等の里に来てみてはいかがかね?いや、ぜひそうしてくれ!!」
シロガネの言葉にバトルマニアの雪之丞や日々修行の鬼道は乗り気のようであった。
横島は始めは行く気がなかったが心眼との交渉でしぶしぶいく事を決定する。
なんでも夢がどうとか。
「それでは明日にでもいこうぞ。」
「んじゃ今日はここで寝泊りさせてもらうぜ。」
「悪いな〜横島はん。」
こんな事しているから横島の学校の単位も危ないのであろう。
勝手に寝始める連中。(一応鬼道は謝ったが。
「おい、心眼。それじゃ今日の夢たのんだぞ!!(ぐふふふふ一身同体姉ちゃんまっとれよ〜)」
『・・・仕方あるまい』
横島の言葉にもう一度ため息をつく。
その後、横島に暗示をかける心眼。
その夜、横島がどんな夢を見たかはわからないが、
(・・・普通、口調で気付かんか?)
全くだ。
――心眼は眠らない その15・完――
あとがき
リアルで真剣忙しい今日この頃、学生には年末休みとか関係ないんですよね〜。
今帰ってきて、速攻UPしました。
ところでシロの父親って名前なかったですよね?
え〜実は以前言っていた心眼(竜神)の絵がとりあえずキリがいいところまでかけました。
初めて書いた癖に微エロです。・・・見たいですか?
初めてCGを描いたのでそんなに期待はしないでください。
でないとこんなの俺の心眼じゃねぇ〜ってなるかもしれませんよ。
それでも見たいって人が多かったら次の更新と同時にUPします。
まぁ初めてにしては上々かなってぐらいっす。
それではフェンリル編開始っす。