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▽レス始

「無限の魔人 第十四話(GS)」

紅眼の狼 (2004-12-28 15:39)
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無限の魔人 第十四話  〜天駆ける箒再び〜


「うわあああああああああ、は、速過ぎるよーーー」


「ラピス! もっとスピードを落とすように念じるんだ!」


「ちょっとむりーーーリーーィ(ドップラー効果)」


「かいとおおお、とまらぬうううう」


私とラピスは今空を飛んでいる・・・・箒に乗って。


―――――――――――――――――――


「「「魔法の箒?」」」

その時、私とメドーサ、そしてラピスの声が重なった。

「そ、まぁ取りあえず行くぞ」

ラピスは私の時と同じようにメドーサに服を借り、4人で街へ行った。


[美術館・倉庫]

「おい界人、ここは立ち入り禁止では無いのか」

先ほど明らかに「関係者以外立ち入り禁止」のロープが張ってあった場所を跨いできたのだ。

今更言う事でも無いが、一応言って置く。

「ああ、まぁ盗む訳じゃないし平気だろ。それに、犯罪は見つかってからが犯罪だ」


「「それはどうだろう(ね)」」


メドーサとラピスが声を揃えて言った。

「細かい事は気にするな、ほらこれだこれ・・・まだ此処に有ったんだな、スペイン秘法展まだやってたし」


「まだ有ったんだなって、知ってたから此処に連れてきたんじゃ無いの?」


「いや、無かったらどこに運んだか聞くつもりだったからな・・・まぁ良いじゃないか有ったんだし」

行き当たりばったりで楽天的・・と言うのだろうか、今のところ害は無いから良いが・・。

「では、説明しましょう!これは炎の狐と言って、俗に言う[空飛ぶ箒]。何とこの箒は・・・自らの意思を持っているんだ。そんなにはっきりした意思じゃないから、念じればその通りに飛んでくれる優れもの、中世ヨーロッパ時代に作られた逸品で現存する数少ない内の一本だ」

「それが何故折れておる?」

「それは・・・ちょっと昔に炎の狐が美術館から逃げ出した事があって、その時に横島忠夫を箒が自ら乗せたんだ。まぁ・・・音の壁にぶち当たって折っちゃった」


「「「折っちゃったって・・・」」」


「ま、まぁ過ぎた事は置いといて、この炎の狐を文珠でコピーして龍美とラピスに与えようと思う」

「俺は自力で飛べるし、メドーサは然り。龍美は元から飛べないし、ラピスはばれない為に」

「おーけい?」

「おーけい」「ああ」「うむ」

「よし」

順に頭を撫でなれたが

「や、やめなっ!」

メドーサだけは嫌がっていた。

顔は赤かったので、照れているのだろう。


箒の前に立った界人は、文珠で箒の意識を一旦[取]り[出]し、コピー[複][製]した方を炎の狐に[宿]らせた。

その後箒を2本購入し、もう一度箒の意識を[複][製]してそれぞれの箒に[宿]した。

ちなみに私が乗っている方が本物の炎の狐だ。

文珠でのコピーは完璧なのであまり意味は無い。

さっそく飛行訓練とばかりに乗ってみたのは良いが、これが意外と難しいもので・・・。


「きゃあああああああああああ」


ブフォオオオオオオオオン


「うわああああああああとまってーーーー」


バヒュ ゴォオオオオオオオオン


炎の狐は元気がありすぎた・・・・。


文珠で[姿]を[消]しているので、いくら飛び回っても人にばれる事は無いので安心ではあるが・・・そろそろ「とめてくれえええええ」


「炎の狐が久しぶりに飛べて喜んでるんだろうな」

「あんた、のんびりそんな事言ってて良いの?」

「大丈夫だろ、炎の狐もまさか2度も折れたいとは思わないだろうから」

「なら良いんだけど」


イヤアアアアアアアアア


ビュビューン


「ふふ・・メドーサ、2人が心配か?」

「なっ!か、勘違いするんじゃないよ!私は唯「はいはい、分かってるから・・な?」


「・・・ふん!」


「ところでメドーサ、何か悩み事があるんだろう?」

「・・・ふぅ、あんたには敵わないねぇ」

「自称賢者だしな、それなりじゃないと格好がつかないだろう?」

「ふふ、あんたらしいさね」


とめてえええええええええ


「あの時、倉庫で暴れてたのはやりたくも無い仕事をやらされたから・・・違うか?」

「・・・GS試験の時は別に嫌な仕事って訳でもなかった。ただ、上から命令されるのだけは我慢がならなかった。」


「香港へは行くのか? 嫌な事をやりに」


おろせえええええええええ!


「どうしようかね・・・神族が嫌で魔族になったのは良かったんだけど、魔族の連中からは元神族ってだけで睨まれちまってね、自棄になってたってのもあるのさ。」

「だからあんな変な事をしたのか?」

「ああ、唯の嫌がらせさ・・・私の嫌いな竜神族のお嬢さんが困った姿を見たかったからね。必ず出て来ると思ってたし」

「気は晴れたか?」


かいとおおおおおおおおぉぉぉ


「いや・・・虚しくなっちまったよ。なにやってんだろうね・・・私は。」


「神界にも魔界にも居場所が無いなら、ずっと人界に居れば良い。俺も龍美もラピスも居るしな」

「それに・・・どんなに強い奴も孤独には勝てないし、泣きたくなる時もある・・俺もそうだったからな・・・だから、泣きたい時は泣いたって良いんだ」


「・・は!この私が泣く・・だって? 舐め・・るんじゃ・・な「よしよし、もう大丈夫だ。もう1人じゃないから、我慢する事は無い。俺が居てやるから・・な、少なくとも今は・・・泣いても良いぞ」


「っ・・・く・・・う・・ぅ・・・うぁ・・あ・・・」


押し殺した泣き声が界人の胸の中から漏れ出る。


「ああ、よく1人で頑張ったな・・・偉い偉い・・・もう大丈夫だ」


トン トン とリズム良く背中を叩き続けながら、頭を撫でている。


「ぅ・・ぅぅう・・あ・・・く・・ぁ・」


トン トン トン


太陽が西に沈んでいく。


トン トン トン


その様子をメドーサを抱きしめたままの界人は見る。


トン トン トン


彼は思う。


トン トン トン


昔の自分は何て狭い範囲でしか世界を見ていなかったのかと。


トン トン トン トン


こんなにも苦しんでいたメドーサを・・・・。


だが、彼は後悔はしない。

そう、決めているから・・・。


「わ、悪かったね・・・見っとも無い所をみせちまって」


眼が赤くなっているメドーサが言う。


「見っとも無くなんて無いさ、それに、格好良いだけのやつなんてどこにも居ないんだからな」


「いつかあんたが泣きたくなったら、こ、今度は私の胸を貸してやるよ!」

メドーサが身を乗り出し。


スッ


「あ」


唇に触れるだけの柔らかい口付け。


すぐに離れてメドーサは界人の瞳を覗き込んだ。

その時、彼女の沸立っていた心は急速に静まっていった。


彼の瞳には深い悲しみと、嘆きが映っていたから。


(何て瞳をしてるのさ・・・悲しみと深い・・絶望・・?)

「・・しまった」

「ぇ?」

「いや、なんでもない・・・さぁ、そろそろ2人が戻ってくる」


彼の呟きはメドーサには幸か不幸か聞こえては居なかった。


踵を返し、二人を迎えに行く彼の背中は何者も近づけぬ迫力があった。


彼は何れ消える。


この世界でも謎が解けなかったら。


それが100年の後に・・・魔族の長い寿命では、彼が消える瞬間に立ち会う事になるだろう。


彼は初めて彼女の好意に気づいた・・・いや、以前から気づいていたのかもしれない。


だが、無意識にそれを拒絶していた。


何れ来るだろう別れが・・・両者の心に少なくない傷を残すのだから。


彼は何年たっても心弱き[人]であった。


臆病で、けれども強くあろうと願い続け・・・人としての心を守る為に・・・。


(いつかあんたのあの瞳を・・・いや・・)

1人メドーサは思う。

いつの間にか心が軽くなっていた。

彼の背負う物はわからない、唯・・・共に居たいと願った。


黒に空が染まる時、飛ぶ事に満足したのか、2本の箒は主人を解放した。


その後、彼女達はあまり箒に乗りたがらない。


彼の苦悩を知る者は未だ居ない。


無限の魔人 第十四話  〜天駆ける箒再び〜

end


あとがき
この十四話は自分でも好きな話です。
界人とメドーサが二人きりでの会話・・・燃えました!(え

只今20話製作中。徐々に執筆スピードが低下しています。困った困った。


レス返しー 沢山の感想有難うー

>デモンさん
初めましてー。
いえ、寧ろデモンベインって何ですか? というレベルです。w

>法師陰陽師さん
いずれ違和感が違和感で無くなり、元の感覚が逆に違和感になることでしょう(?

>ROM者さん
わざわざご指摘ありがとうございました。

>夢現さん
デモンベインってどの辺りがそれっぽいですか?
ゲームなのは分るんですけど・・・アクション?
私は今全然ゲームやってないんで・・・情報誌も読みませんし・・流行遅れでごめんなさい。

>無貌の仮面さん
>なんかメド丸くなってきましたねぇ。性格が。
元に戻ってきたのか、界人君に影響され始めたのか・・・まぁ悪い変化では無いと思いますので・・・うん。

>リョウさん
そうかもしれません、私もそう意識して読み返したら「渚君じゃないかっ!」って感じでした。少しずつ、徐々に違和感が無いように修正を入れたいと思います。
・・というか、どこのキャラも全部似たようなものかなーなんて開き直りつつ有ったり・・・。

>九尾さん
炎の狐、こうなってしまいました。
ビュンビュン飛び回って楽しそうで良いかな・・・ダメ?w

>でぃおさん
初めまして〜。わざわざすいませんでした。
でぃおさんの作品は楽しく読ませてもらってましたので、名前が被ったのはそのせいかと思われます。
これからもお互いがんばりましょうー

>ジョースターさん
すいませんが、脳内変換で頑張ってください 僕→私
“僕”は1つの罠でしたが、今から変える事は出来ないです。

>柳野雫さん
界人君は人生経験豊富な自称賢者ですので、きっと父親役も果たしてくれると思います。がんばれ界人君!

>通りすわりさん
1発キャラだったラプラスをレギュラー化、これから性格が決まっていくでしょう・・・その内ナイスキャラ化を目指したいと・・・ふふ。

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