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▽レス始

「心眼は眠らない その13(GS)」

hanlucky (2004-12-24 21:48)
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横島は怒っていた。
それはそうだ髪と顔は女の命とまでいわれている。
それなのに相手は躊躇もせず、切りつけにかかった。

ここで横島がすぐに突撃しなかったのも心眼の説得が大きかっただろう。

『横島、本来戦いでは冷静さを失ったものから朽ちていくのだ。
 今回の相手は今までのように、感情任せの攻撃は通じんぞ!』
「っち!!わかってるよ・・・ただあの野郎は俺が倒してやる!!」

横島からは普段からは考えられない霊圧が揚がっていた。

それはその強さにオカルトGメンの数名は、その場から動けなくなってしまうほどであった。

『(ふぅ〜全然わかっとらんじゃないか・・・まぁだからこそかもしれんがな)
 いいか、まずは敵のリズムを掴め!!攻めるのはそれからだ。』
「わかってるって!!」


――心眼は眠らない その13――


横島が魔鈴にかまっている間に西条はジャックと対峙していた。
西条はジャックの攻撃になんとか反応するもジリ貧状態が続いていた。

(くそ!!前回と強さが格段に違うじゃないか!!
 この数日間の間に何があったんだ!?)

向こうは疲れ知らずで常に全力で来る。
そうなれば不利になっていくのは西条だ。

(僕は斬りあって初めて以前と違う事に気付いたというのに、
 横島クン、君はなんて・・・)

ジャックの俊敏な斬撃が西条を後手に回らせる。

(よく考えてみれば、僕の霊刀ジャスティスとコイツの刃物は何度も
 切りつけあってるのに向こうは全く痛んだ気配はない。
 ・・・考えるんだ!きっと何か方法がある!!)

依然劣勢の西条であったが、
後ろから突如跳ね上がった霊圧に驚く。

「!!!この霊圧・・・横島クンか!!」
「西条さん!このクソヤロウは、一気に片付けますよ!!」

西条と横島が並ぶ。
お互いの視線の先には連続殺人鬼ジャック・ザ・リッパー。


「「いくぞっ!!」」


横島が右、西条が左から攻撃を開始する。

だがジャックは男を斬る事には興味がないのか、
お構い無しに魔鈴の元に向かっていく。

そして魔鈴は先ほどの攻撃により動きが鈍い。
もし横島たちが突破されればお終いだろう。

だがそんな事は横島がさせない。
疲労した西条にかわって、ジャックと対峙する。

「西条さん!!アイツに切られたら、力を吸収されるみたいだから気をつけて!!」
「了解した!!」

二人は即席の連携とは思えない動きで敵に迫る。
正確にいうと横島の突撃紛いの攻撃を西条がうまくフォローする形になっていた。

横島は感情任せの攻撃を繰り出していくのでいつもより隙が多くなってしまう。
それを西条がカバーする役割を果たしていた。


最悪な事とは決まって続けて起きるようであった。
魔鈴を切りつけることに成功したジャックは、
先ほどまでとは比べ物にならないお強さを手に入れていた。

そのため前回は横島が足手まといがいながら防げていたのに、
今は西条と二人掛りでも互角という状態になってしまった。

「くっそーー!!」

西条を己を奮い立たせ、ジャックと斬り合う。

だがジャックは西条の方を集中的に狙い始める。
これはジャックが西条の方が組し易しと思っての行動であろう。
言っておくが西条は決して弱くはない。ただ相手がすでに強くなりすぎていただけであった。

それを今度は横島が西条のフォローをしながら戦線を盛り返す。

それでもジャックは魔鈴を斬りつけてから徐々に強くなっていく。
そしてこちらは人間、徐々に弱り始めてしまう。


ぐっ!?


既に限界が近づいていた西条から、痛みを堪えた声が聞こえた。

そう、よりにもよって西条までもが斬りつけられてしまった。

それによりジャックは新たに力を増し、加速をする。

西条は反応しきれず蹴り飛ばされる。

そして西条を失い、横島は途端に押され始める。

「っぐ、早!!心眼、どうする!?」
『これ以上は厳しいな・・・ほっておけばあの刃物の霊気容量が限界になるまで、
 強くなり続けるぞ。しかもすでにあの刃物を単純に破壊するのは、
 我等では不可能に近いだろう。・・・だからアヤツの特性を逆手に取ってやれ。』

横島は心眼から方法を聞きつつ、ジャックの攻撃を間一髪のタイミングで防ぎ続ける。

魔鈴、西条まで力を取られ、本来なら横島も反応はできない速度で迫ってくる。
横島が耐えれるはひとえに後ろの魔鈴の存在であろう。

「全く、たまには楽なやり方教えろよな〜。」
『そういうな。ワレはおぬしならできると確信しているから言うのだ。』

横島は心眼に文句をいいつつも準備を始めていく。

横島はさらに集中力は高めていく―――


(魔鈴さん、見ていてください。この勝利をあなたに、そして・・・)

・・・実に素晴らしい高め方だ。


蹴り飛ばされた西条は己の不甲斐なさを嘆いていた。
最後には気をつけろと言われていたのに斬られてもいた。

「はぁっはぁ・・・くそ!!」

連夜の張り込み、昼は膨大なデスクワーク、そして予想を遥かに上回る敵。
あと10秒横島の加勢が遅かったら、西条はこの世に居なかったろう。

それほどまでに魔鈴の霊力を奪ったジャックは強かった。

(確か、一説ではアイツが殺害した人数は13人とも言われていたな。
 くそ!!空白の5日間で5人殺害されていれば、見事にビンゴじゃないか!!)

西条の予感は的中していた。ジャックは西条のいうとおりの事を実行していた。

ここで運が悪かったのが、その中に霊圧が高い犠牲者が居たという事だ。
そして今、魔鈴の霊力を奪い取った。

その時点の強さはすでに西条を凌駕していた。

おまけに西条自信が斬られたばかりだ。
もう横島一人で止めるのは無理だろう。
いや自分が加勢したところで形勢が変わるのは難しい。

「だからといって、ただ黙って見てるわけにはいかないんだ!!」

西条は再び、ジャックに向かう。
予想通り、横島は押され続けていた。
いや、今耐えている時点で表彰ものだ。

(本当に君は大したものだ。・・・令子ちゃんが羨ましいよ、こんな優秀な助手がいて。)

完全に勘違い街道まっしぐらな西条であった。


その時、


横島の動きが変わった。


いや横島が豹変した。


先ほどまでの劣勢が何処にいったのか、押し返し始める。

ジャックの攻撃を無駄なく凌ぐ横島。

一歩、二歩、三歩。

押し続ける横島。

ジャックの一撃目を栄光の手を巧みに使い受け流す。
ジャックの二撃目を左のサイキックソーサーで弾く。


ここでジャックは初めて後退しようとする―――


―――がそれを栄光の手を伸長して、ジャックを掴み逃がさない。


(なんだ!?あの強さは・・・)
(すっすごい!!)

西条は、いや魔鈴もオカルトGメンの皆もその戦いに魅了される。

何かが感じられた。

もう自分達が加勢する必要ない。

それほどの威圧感を敵に、安心感を味方に、横島は放っていた。


戦況は既に一方的なものに変わっていた。
横島が攻め、ジャックが守る。それが続いていき
そして今、横島は栄光の手で凶器を持っている右腕を切り落とす。

「$&%’$+*」

切ったその直後、右腕を残して、消滅する体。
それに対して、一瞬気を抜いてしまう横島。


『気を抜くな!!これからだ!!』
「!!わるいっ!」


その瞬間、敵の右腕にある刃物に異変が起きる。


「危ない!!」


西条は叫ぶ。


刃物が右腕ごと横島に向かって一人でに飛んでくる。


だがその刃物をかわす気がないのか、横島は手を向けるだけ。


迫り来る狂気という刃。


だがそれをギリギリのタイミングで横島は柄の部分を掴む。


「「「「なっ!?」」」」


辺りからは悲鳴とも歓声ともおぼつかない声があがる。


横島が手にした凶器は以前動きを止めない。

ここで西条たちは信じられないものを目にする。


グサッ


―――横島が自らの腕を刺した。


「何をしてるんだ!!横島クン!!」
「ぐぁぁぁあ!!」
『集中せよ!!ヒーリングを全開で掛ければ、意識を保てるはずだ!!』

もしここで横島が手を離せば最悪の化け物がロンドンに野放しにされる。

「「横島くん(さん)!!」」

奪われ続ける横島の霊力。
奪い続ける凶器。


「#&%$*?+#」
「ぐぅぅぅ!!いってぇぇぇ!!」
『しっかりせよ!!おぬしがこの程度の怨霊に負けはせぬ!!』


ここで風船を思い出してもらいたい。
風船に空気を入れ続ければどうなるか。


「ちきしょーーーー!!」


風船が許容範囲を超える空気を得た時―――


パキッ


―――そう、破裂する。


「############」


心眼は霊視によって刃物の最大容量を大体であるが掴んでいた。
横島の霊力を吸い切る前に亀裂が走るだろうと予測していていたので、
問題は横島がその間耐えていられるかであった。
もし横島がヒーリングを取得していなければこの策は成功しなかったであろう。

ともあれ刃物から断末魔があがる。そして凶器からは徐々に反応が無くなっていき、
凶器が奪い続けた霊力は元の持ち主の所に返っていった。

横島がこの作戦を承諾したのはそこにあった。
単に破壊できたとしても、それでは奪われた霊力はあまり戻ってこない。

このように相手の自滅を誘って初めて殆どの霊力が還元される。
するとどうなるか?
そうすることによって魔鈴の傷の手当てがうまく行えるからであった。

ヒーリングをかける方も、受ける方の霊力があるに越した事は無い。
全ては魔鈴のために(西条は元から頭に無い)なくなく決断したのであった。


凶器からはその後何も反応が見られず事件は解決した。結局あの怨霊の正体は、
刃物に籠められた怨念が誰かの手によって、具現化されたのであった。

これからはその誰かを探すためにオカルトGメンは動き出す。

しかし、すでにその正体に感づいている者もいた。


『(メドーサ・・・お前は・・・白蛇《ハクジャ》なのか?・・・だが何故魔族に?)』


心眼は凶器から残った僅かな霊波から犯人をメドーサと特定する。
だが己の思考に入ってしまい、申告するのを忘れてしまった。

ちなみに現在の横島は魔鈴へのヒーリングに必死であった。

「どうっすか?まだ覚えたばっかなんであんま自信ないっすけど。」
「いえそんなことないですよ、あの〜傷の方はどうですか?」

魔鈴は先ほど傷つけられた頬の部分を尋ねる。
もちろん横島はその部分は特に行っているので、傷はすでに見えないようになっていた。

「よかった〜本当にありがとうございます。」
「いっいえ!」

魅力的な笑顔でお礼を言われ、どもる横島。

「いやなかなか、お似合いじゃないか二人とも♪」
「えっあっあれ!?」
「西条先輩ったらそんな事いったら横島さんが困るじゃないですか♪
 (まぁ〜将来性は○ですね♪)」

実は西条、すでに狙いは美神しか入っておらず、
従業員で弟子である横島の印象を良くしておけば、
美神への印象も良くなると思い、いろいろ頑張っていた。
例えば、飯を奢ってあげたりとか。
ついでにいえば、この危険人物となり得る男を誰かとくっつけさせるとか・・・


無知とは怖いものである・・・いやこの場合は勘違いか。
というかなかなか姑息なヤツである。


まぁ魔鈴の方も横島の活躍や先ほどのヒーリング等で、それほど嫌がってはいない。
その後も二人にからかわれ続けた横島であった。


現在、空港には横島、西条、そして私服姿の魔鈴がいた。

「それじゃ横島クン、日本に帰ったら令子ちゃんによろしく言っといてくれ!
 (まぁ〜僕も近いうちにそっちに行くがね。)」
「寂しくなりますね、横島さん。また私の料理食べてくださいね。
 (日本か〜私も近いうちに行けそうですね。資金も溜まってきたところだし。)」

実は事件も解決した後、横島は日本に帰るまでに、
魔鈴にお礼という事で、何度か家で料理を作ってもらってたりした。
話も弾み、なかなかいい雰囲気だったらしい。

「うっす!西条さんも魔鈴さんもいろいろありがとうございました。」

横島は元気よく日本に帰っていた。

後に残る二人、

「しかし西条先輩も大変ですね、 美神さんってあの横島さんより強いらしいじゃないですか。」
「まぁね、でも僕には大局的に戦える戦術を持っているから、
 彼女の力にもそうは劣りはしないよ。それに横島くんの言ったことが本当かもわからないしね。」

横島、何か間違った伝え方をしたらしい。
・・・いや間違ってはいないような気もするが。

「魔鈴くんは大分横島クンの事気に入っていたようだけど?
 (ライバルは出来る限り減らしておきたいね)」
「あれ、西条先輩?もしかして自分のために横島さんと私をくっつける気ですか?」

微妙な誤魔化しをする男と、そんなに満更でもない女がそこにいた。

・・・というか結局、やっぱり勘違いしたままの西条であった。


横島が帰国して数日が経ったある日。

西条は予定通り、美神除霊事務所の前にオカルトGメンの支部を置くことに成功する。
現在は美神たちが自分に気付いていつ乗り込んでくるのかと待っていた。

「おっ外が騒がしくなってきたな、もしかして・・・」

期待を胸に秘めながら急いで、玄関に向かう西条。

「騒がしいな。おや?」

わざとらしくしゃべりながらドアを開ける西条。
開けた先には西条が待ち望んでいた人物、美神がいた。

「令子ちゃん!ひょっとして令子ちゃんかい!?」
「やっぱり西条さんだったんだ、うちの従業員からあなたが近いうちに、
 日本に来るって聞いてたんですよ。」

途端に固まる西条、西条は横島にその事を言わなかったのだ。

「西条さん、実は魔鈴さんに聞いたんっすよ。」

疑問の答えを教えてくれる横島。というかいたのか横島。
予定が狂いギクシャクしてしまう西条。

「それじゃ西条さん、これからは商売敵になっちゃうけど、
 事務所には気軽に尋ねてきてください。・・・じゃ横島クンいくわよ!!」
「あっちょっと・・・」

美神は西条に一言二言挨拶を交わした後引き上げていた。
事前に情報を知っていた分、美神の感動は薄かったようだ。

もっと詳しく言えば、美神は多少西条に怒りを覚えていた。
”よりにもよって何故、私の事務所の前に?”と考える暇があったからだ。

もし西条が美神たちをロンドンに呼ばす、普通に日本に来ていれば、
感動の再開を演じれたであろう。

姑息な策を仕掛けずにでた事勝負ででればなんとかなったのに、
人はこの事をこう言う。


”策士、策におぼれる”


――心眼は眠らない その13・完――


おまけ


結局西条は美神をオカルトGメンに誘う事もできずじまいであった。

それでも西条はあとで横島に美神の事を好きだといい、
結局はライバル関係になりつつある二人であった。

”西条さん”が”西条”に変わるのも近いだろう。


あとがき

あ〜また伏線を張ってしまった。
メドーサと心眼(竜神)の関係は如何に!?

しかしこの時期の飲み会は酒が苦手な自分には死ぬほどきついッス。

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