「どうしんたんですか?美神さん、中世から戻ってきてから、
少し機嫌悪かったようですけど?中世でなにかあったんですか?」
「別にっ!そんな大したことじゃないわよ!」
美神はオキヌの指摘どおり、中世から帰還後ご機嫌斜めだった。
言葉とは裏腹に態度で嘘を言っているのがわかる美神。
「それにしても横島さん、無事に着いたんでしょうか心配です。」
「あ〜大丈夫でしょ。アイツには心眼が付いているんだし。」
現在、二人が居る場所はいつものオフィスではない。
美神の寝室にいる。
その訳は単純に美神が風邪をひいてしまったからである。
そのためオキヌは美神の看病を行っていた。
「ま〜今頃はイギリスに着いたんじゃない。」
横島、単身イギリスへ―――
――心眼は眠らない その11――
横島が何故イギリスへというのはひとまず置いといて、
何故、美神の機嫌が悪かったのかをいうのは。
―――ヌルを倒した数日後
「いつもすまない、ヨコシマ。」
「気にしないでくだいよ、好きでやってる事っすから!」
場所はマリア姫の寝室、
現在そこにマリア姫、横島、マリアがいた。
横島はマリア姫にヒーリングを行っている最中であった、
マリアはもちろん横島の監視である。
横島たちはすぐに元の世界に帰らず今だ中世にいた。
理由は他人に対して初めてヒーリングを実行した事もあって、
なんらかのトラブルが起きないかどうか見極める必要があった。
他にも美神がカオスの資料を漁っていたということもあるが。
横島はあの時、マリア姫に応急処置を施しただけでなく、
その後も定期的にヒーリングを施していた。その甲斐もあって、、
マリア姫の体調は徐々に回復していきもうすぐ一人で歩ける所まで
回復していた。
だがヒーリングをするだけで収まらないのが横島忠夫。
ヒーリングと偽ってセクハラ行為に及ぼうとするたびに
美神、マリア、そしてカオスから妨害されていた。
まぁ一応それだけではなく自分の世界の話を語ったりして、
マリア姫とは一日の内の何分の一を過ごしていたりもした。
(何か、おもしろくないわね・・・)
と、これが誰の気持ちかは伏せておく。
まぁ自分はカオスの研究を調べるのに必死だったため、
しばらく横島を放置していたのでしょうがないだろう。
ある時、マリア姫と横島がいつものように楽しく雑談していると、
美神が部屋に入って来た瞬間。
「ヨコシマは好きな相手はいるのか?」
「えっどっどうしたんすか!?」
咄嗟に何故か隠れた美神、
ちなみに入り口付近は二人の位置からは見えない構造である。
どもった後、横島は、
「そりゃ〜もちろんマリ「私はカオス様が好きだ!!」ア姫って・・・え!!」
突然のマリア姫の告白に驚く横島と、隠れてしまい出るに出られなくなった美神。
驚いた理由は、予想はしていたがまさか自分に色恋沙汰を、
ぶちまけるとはおもっていなかったらしい。
マリア姫は続ける、
「そなたと話していると本当に心が和む・・・もし私に兄弟がいれば
そなたのような・・・だから私はそなたにだけは自分の気持ちを
知ってほしかったのかもしれない・・・」
「・・・姫さま・・・まぁアイツは女ッ気ないから姫さまが告白すれば
大丈夫ですよ」
流石に横島も空気を察したのかボケをすることはしなかった。
だがマリア姫は自分が付いていても足手まといになるだけだから
影ながら見守る事を誓う。
「ヨコシマ、もしカオス様より先にそなたと出会っていたら・・・
いや言うまい。」
「あっいえ・・・」
大阪人の魂は何処にいったのか、この後もボケる事が出来なかった横島。
マリア姫はその後、マリアと二人で話したいことがあるらしく、
横島は部屋を後にした。
「ヨコシマも明日には帰るのか・・・寂しくなるな」
「イエス・心中・察します・横島さん・居ると・皆・明るくなります」
部屋に残ったマリア姫とマリア、
「おまえは私の分身として作られたらしいな」
「イエス・ドクター・カオス・マリア姫・亡き後・マリア・作る」
カオスはマリア姫が亡くなった後、マリアを制作した。
何十年も一緒に居た相手と死別し寂しさがあったのかも知れない。
「マリアはヨコシマの事をどう思う、その・・・好きか?」
「イエス・横島さん・マリアを・対等に・扱ってくれる
ドクター・カオスの・115.34%・好き」
微妙にカオスより好かれているようだ。
「そうか・・・私は浅ましい女なのかもしれないな・・・
たった数日しか過ごしていない男に好意を持つとは・・・」
顔を下に向け自嘲気味にわらうマリア姫、
しばらく経った後、顔をあげる。
「マリア、伝言を二つほど、たのまれてくれないか?」
「イエス・なんでしょう」
「あぁそれは―――」
伝言を聞いた後部屋から出て行くマリア、
ベッドに体を沈めるマリア姫。
「せめて・・・私の分身くらいはな・・・ねぇカオス様」
彼女の一人声が部屋に響いた。
(・・・いつ出て行けばいいの?)
過去最高の隠れ方でその場を凌いだ美神であった。
―――回想終了
(本当、マリアもなんであんなのがいいのよ!!
・・・そりゃ、最近少しは頼りになるなぁ〜とか、
ここ一番のあの顔はちょっとはいい顔してるじゃないとか
思ってたりした事は少しはあるわよ・・・少しだけね!!)
ベッドに寝転がりながら一人思考に入る美神であった。
「でも、オカルトGメンでした?すごいですね〜
美神さん、そんな人たちと共同で除霊退治するなんて」
横島がイギリスに行った理由。
それはオカルトGメンの要請で共に除霊を行う必要があったからである。
オカルトGメンの目的は近いうちに日本に支部を置く事になるので、
日本有数の実力を持ち長者番付1位の美神を知る事によって、
日本のオカルトの現状を知る事が出来ると判断したらしい。
当初は美神と横島がいく手筈であったが、美神が風邪を引いた為
断ろうとしたが、メンツの問題や心眼の進言もあり、横島が単身で
除霊の現場であるイギリスに向かうことになった。
(まぁ、今のアイツなら・・・やっぱいいや)
―――横島がイギリスに行く事が決定した時
「おっ俺だけッすか!!」
『ふぬ、美神どの、決してそのオカルトGメンに舐められないように
我等の実力見せてこよう!』
「まぁ〜アンタも大分使えるようになったからね。」
途端、妄想爆発モードの横島。
そこに激しいツッコミをいれ帰ってこさせる美神。
「いい!!アンタはこの事務所の代表で向かうのよ!!
へましたらどうなるか・・・・わかってるんでしょうね」
最後のセリフにえらくドスをきかせる美神。
「いい、あんたらお役所なんか日本に必要ない!!って思わせてきなさい!!
できたら・・・まぁ時給の事考えていいわ」
「ほ『まかせよ!!!』んとう・・・」
横島より張り切り始めた心眼がそこに居た。
―――回想終了
イギリスに到着した横島の顔には赤いモミジができていた。
機内ではスチュワーデスの悲鳴が聞こえていたようだが、
それが関係しているかどうかはわからない。
『でこれからどうするのだ。』
「ああ、オカルトGメンの本部がロンドンにあるからそこに来いってさ。」
辺りは既に日が沈み始めていたので横島は本部に急ぎ始めた。
「しかしな〜心眼、なんか嫌な空気が流れているよな〜」
『仕方あるまい・・・ロンドンとは別名《魔都》とも呼ばれていた事もある。
その名残があるぶん、オカルトも発達しているが逆に魔物の強さも、
同じように上がっていると考えるべきだな。』
もうすでに日は沈み、街路には人気が減ってきている。
ゾクッ
「・・・心眼、流石は魔都ロンドンと言ったほうがいいんか?」
『下らぬ事をぬかすな、急ぐぞ!!
相手は移動している、見失うな!!』
横島は霊視で敵の向かう方に追走する。
『しかし大分、様になってきたではないか、おぬしの霊視。』
「そりゃ〜毎日あんだけしごかれたらな〜」
走りながら会話する両者、
相手はかなりの速度で移動しているが、
こちらも伊達に美神と心眼に鍛えられてきたわけではない。
横島の逃げ足は世界を狙えるほどのなのだから。
「はぁっはぁ。」
『アヤツの目的はなんだ?・・・まぁいい横島、決して気付かれぬなよ!!』
すでに霧の都と呼ばれているロンドンは魔都に化していた。
ここで相手の動きが止まる、
『横島!!近いぞ、油断はするな!!』
「はぁっはぁっ、わ〜ってるよ!!」
横島は息を整えつつ、相手の位置に向かう。
「きゃーーーー!!」
女性の悲鳴が聞こえる。
横島はすかさず反応し、全力で相手の元、女性の元に向かう。
角を曲がると、そこには目の前の謎の男に震える女性。
そしてその男はメスのような刃物を持っていた。
「こっち!!」
女性は横島の声に反応して横島の元に向かう。
横島はその間サイキックソーサーで相手を牽制する。
だがそう簡単にはいかない。
男は己の武器でサイキックソーサーを切り裂く。
そしてそのまま女性に突撃する男。
「%&$#&$*」
男はわけのわからない事を叫びながら尚も向かってくる。
そこで間に割ってはいる横島。
ちなみに横島は女性の姿を見て、俄然やる気をだしていた。
女性は美人のようだ。
「(ふっふっふ、チャンス。ここでいい所を見せてそのまま(以下略))
唸れ、栄光の手!!」
内心、ものすごく邪な事を考えつつも栄光の手を楯状に使用し、
男の攻撃を防ぐ。
だが、思った以上の攻撃に後ろに後退させられる横島。
「コイツ、思ったよりやっかいじゃねぇか!!」
『なかなか、俊敏な動きをするな、腕力が無いなら瞬発力で補うとは。
・・・しかし、これは悪霊・・・いや怨霊か!』
横島は敵が素早い上に女性を狙い続けるので防戦一方になる。
女性は腰が抜けているようでその場から動けなかったようだ
サイキックモードは使用すればどうにかなるかもしれないが、
あくまで”かも”という可能性がある以上、迂闊に博打を
打つわけにはいかない。通常の状態で凌げるなら無理をする必要は無い。
「くそ〜うっとうしい!」
『横島、先ほどからこちらに霊圧の高い連中が向かっている。
それまで耐えろ。』
横島もこれまで数多の修羅場を潜り抜けてきた。
いくら女性を庇いながらといってもこの程度の相手にはやられはしない。
だからといって攻める事ができない戦いはかなり疲労する。
「ちきしょう!!まだか!!」
『もうすぐ・・・来たぞ!!』
―――横島と男が邂逅する数十分前
「被害者はエリザベス・ギュスターフスドッター、
死因は喉の裂傷と思われます。
やはり喉が二回ほど切られています。」
「くそっ!!・・・アイツが目印にしているのは名前だけなのかい?」
長髪の男は助手のような男に尋ねる。
「だとしたら、今日のうちにヤツは犯行を重ねるはず・・・
急いで、キャサリン・エドウズさんの所に向かうんだ!!」
長髪の男はすぐさま皆に指示し、自分自身も動き始める。
車に乗りまた、考えを巡らせる。
(史上とは違い、日時、年齢、場所、職種は異なっている。
唯一同じなのが、性別、そして名前か・・・
全く、イギリス最後の事件なのになかなか終わりやしない)
長髪の男が思考していると無線で連絡が入ってくる。
無線の内容は次に狙われると思われる女性の居場所であった。
長髪の男が車を走らせ、現地に一番乗りというところで、
先ほど被害者から感じられた霊気と全く見知らぬ霊気が流れてきた。
「これは・・・誰かが戦っている!?
アイツ相手になんて無茶を、アレは僕ですら一人で倒すのは難しいのに。」
そう見知らぬ相手を叱咤しながら、長髪の男は車から降りる。
そして、目の前での光景に一瞬足を止める。
「なんだ、アレは・・・」
目の前では一人の少年があの化け物と戦っている。
おそらく自分よりも10近く年が下だろう。
右手には霊波刀、左には霊気の盾を装備して女性の前に立ち防いでいる。
冷静な判断だ。相手の能力もわかっていないのに下手に仕掛ければ、
自分が大丈夫でも女性はそうはいかなくなる。
少年は我々が来るまでずっと耐え凌いでいたのか。
「そこまでだ!!」
長髪の男は叫びながら少年に加勢する。
「そこまでだ!!」
長髪の男が横島の加勢に入る。
「よくやったよ、君!」
「だれだか知んないけど、助かった〜。」
横島はやっと来た加勢に、安堵する。
横島がここで油断しても、心眼はしない。
それゆえに、相手は隙すらつけなかった。
長髪の男が来てから、さらに加勢が増えていく。
「オカルトGメンだ!!覚悟しろ!!」
「えっ!!」
屈強な男達が女性を襲った男を囲んでいく。
形成不利と見たのか男はすかさず層の薄い所から離脱を図る
「「させるか!!」」
二人の声が重なり、長髪の男は銃弾を撃ちこむ。
横島はサイキックソーサーを投げつける。
二つは見事にターゲットに直撃するが、まるで効いていないのか
そのまま逃走を図る。
そのまま逃げ切られ戦闘は終結する。
長髪の男は横島に振り返り、
「ああ、自己紹介がまだだったね。僕は西条。
オカルトGメンの一員さ。」
――心眼は眠らない その11・完――
あとがき
その10では大分ご指摘ありがとうございました。
実は今作でマリア姫回復後の話を書くつもりだったんです。
今回はまぁ前フリってことで、ロンドン編、続きます!!
横島と、西条がどう絡むのか・・・
そういえば西条の名前ってなんだっけ?
>wataさん
ご指摘ありがとうございました。
それと西条の本名教えてくださった皆さん、ありがとうございます。